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リリアをめぐる物語 --いつか言葉にできるでしょうか-- (副題変更)  作者: 夢のまたゆめ
第四章 二つの事件

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20/43

4-1 学園祭の事件


 学園祭はステージでの発表会形式となった。1,2年それぞれ5グループずつ10組が、勉学の成果を発表したり、演劇、楽器演奏などを披露する。


 学内の芝生広場には、工業技術課による仮設ステージが設けられ、歴史文化課が作成した「第一回 エルディア王立学園 学園祭」との横断幕が恭しく掲げられた。 壇上とバックヤードとの区切りには、どこかの教室のカーテンが持ち込まれている。 来園者には、芝生広場に思い思いに座って観覧してもらう予定だ。


 食堂では、生徒に人気のメニューベスト10を張り出し、学園祭特別ワンプレートを、生徒は無料、父兄には多少の負担で提供することにした。




 学園祭の日は快晴だった。

アルバートは、汗のにじむ手を開いたり握ったりしながら、あちこち確認して歩いた。


 父兄を迎える正門、広場、食堂、それぞれの運営リーダーに生徒会メンバーがついている。ステージ横に設置した運営本部には、連絡係としてリリアが待機している。

(出演のメンバーも集まっている。警備も増やした。医者と看護の先生にも待機してもらった。大丈夫だ!大丈夫だ!)

 アルバートが運営本部に戻ると、学園長が来賓の方々を案内してきたところだった。来賓のなかにはウォルター公爵夫妻もいて、アルバートに笑顔を向けてくれている。


 やがて父兄と生徒が嬉しそうに連れだって広場に集まり始めた。

 定刻、アルバートの開会宣言と学園長の挨拶のあと、いよいよ生徒達の発表が始まった。我が子が出演していることもあって、笑ったり手を叩いたりする人々で会場は盛り上がった。

 午前の部が盛況のうちに終わり、アルバートはようやく人心地がした。




 ランチタイムをはさんで、午後最初の演目はレティシア達の合唱だ。

 アルバートがバックヤードに様子を見に行くと、生徒達がお互いの胸にコサージュをつけあっていた。白いレースに色とりどりのリボンを花束に模した手作りのものだ。生徒達はコサージュをつけると、ひときわ賑やかになり「緊張するわ」「頑張りましょう」などと姦しい。


 アルバートは、レティシアを見つけると「レティ、頑張って!」と口だけ動かして伝えた。レティシアは、にっこり笑って手を振った。


 紹介を受けて女子生徒達が登壇した。メリンダはピアノへ、レティシアはステージ中央へ進む。さすがに女子生徒60人が並ぶと華やかだ。観客も初々しい彼女たちを見て顔がほころんだ。


 レティシアは観客に向かって一礼をすると仲間の方に向き直って、メリンダに合図しタクトを振った。静かなピアノの旋律と美しい歌声が会場に響き渡る。


 レティシアは、髪をハーフアップにして、アルバートにもらったバレッタをしていた。動くたびエメラルドと琥珀の小さな玉がゆらゆらと揺れている。アルバートは、揺れる玉を幸せな気持ちで眺めながら合唱に耳を傾けた。




 3曲目は『りんごの花』だ。1小節と3小節はリリアが独唱する。

リリアはレティシアの近くまで進み、レティシアは再びタクトを振り始めた。


      ♪いつからでしょう 

       あなたの姿を追っていたのは


リリアが歌い始める。会場はしんとなり観客の眼が一斉にリリアに注がれた。リリアは、ふと一番前にいる男が目にはいった。


      ♪いつからでしょう 

       あなたの瞳が私を写したのは


歌は2小節目に入って仲間の合唱となった。男は苦しそうな辛そうな様子で俯いている。


      ♪りんごの花が芽吹く頃 

       そっと会釈をかわしたの


(おかしい、何だかあの人、おかしいわ)

男は、急に顔を上げたかと思うとレティシアを睨んだ。


      ♪言葉を交わすこともなく

       あなたは戦に旅立った


(えっ?…)

再びリリアの独唱になった。


      ♪いつか言葉にでき…………


男が急に立ち上がった。レティシアに向かってくる。手に何か光る物……


(!! ナイフ!!)


リリアは、咄嗟にレティシアを突き飛ばし、勢いで自分も倒れそうになったその時、脇腹に強烈な熱と痛みが襲い、目の前にチカチカと火花が散ったかと思うと、その後真っ暗になって意識が途切れた。


「きゃあ~~!!!」


あちこちで悲鳴があがり会場は騒然となった

  

警備員が駆け寄り、その男を取り押さえようとしたが、男はリリアを刺すなり自分の腹にもナイフを突き立てた。


「きゃあ~~!!!」


壇上の女子生徒たちは、立ち尽くし、しゃがみこんで泣き始めた。




(い、痛い!!)


 レティシアはいきなり突き飛ばされて何が起こったのかわからず手と足に痛みを覚えた。次の瞬間、あちこちから悲鳴が聞こえ、振り返るとリリアが倒れていた。


(えっ?血? …血!!)


リリアの制服が真っ赤に染まっている。レティシアは意識を失った。


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