3-2 不思議なリリア
編入学してきたリリア・コックスはCクラスに配属された。
リリアは、同じクラスにサラがいることに安堵したが、地方から半年遅れの入学ではとても授業についていけず、サラが見かねて声をかけた。
「ねえリリア、春休みはどうするの?」
「寮に残るわ、来たばっかりだから。」
「まあ、ちょうど良かった。私も帰らないから勉強の特訓しよう!」
「えっ?」
「ずっと授業がわからなかったら辛いわよ。幸い冬学期はもう終わるし、ここは休みの間も図書館を使えるのよ。リリア改造計画をたてるから私に任せて!」
「改造計画?」
リリアは驚いたが、素直にサラに従った。
◇
春休みに女子寮に残ったのは5人だった。寮には住込みの寮監がいて教師ではなく世話係のようなものなのだが、なぜかスミス先生と呼ばれていた。
申し込みをした人数分だけ、スミス先生が食事を食堂に用意してくれる。朝は雑穀入りパンと酢づけの野菜、夜は野菜と豆の入ったお粥、ソーセージかベーコン、たまに果物がついた。飲み物は各自で用意した。
5人は自然一緒に食事をするようになった。リリアはあまりしゃべらなかったが、要領がわかってくると誰よりも早く食堂に来て、皿を並べ、パンを切り分け、スミス先生が作り置きした鍋を温め直し、飲み物用の湯を沸かした。
食事後は、自分たちで食器や鍋を洗って片付けるのだが、リリアはいつもそれを引き受けた。
食事以外の洗濯や掃除は自分でしなければいけない。リリアは、たまたま誰かと洗濯場に居合わせると、その人の分まで洗って干して部屋まで持っていった。要領がわかると相手がハンガーにかけるのか畳んでしまっているのかまで把握して。
スミス先生の仕事はルーティーン化している。リリアは要領がわかると、廊下を掃除し、外回りを掃き清め、ついにはスミス先生の茶の時間を把握して湯を沸かした。
リリア以外の4人は目を丸くしたが自分達に何の損もない。むしろ自分がしたくもない家事をしてくれる。そのうちリリアに雑用を頼み始める者もいたが、リリアはにっこり笑って引き受けるのだった。
「リリア、ここは勉強する所よ。そんなこと引き受けなくていいのよ。」
サラはリリアの代わりに怒ったが、リリアは気にしていなかった。
サラの特訓もすすんだ。リリアはサラとの約束もおろそかにしなかった。リリアは自分から求めて学問を追究しようとはしなかったが頭は良かった。春休み中に遅れていた学習はほぼ追いついたのだった。
春学期が始まって、Cクラスは不思議な雰囲気に包まれた。
1週間ほどで全ての科目が一巡して要領がわかると、リリアは、教師が生徒に準備させようとしたことを先んじて準備し整えた。
また誰かがボタンがとれた、少し破いた、といえば、リリアは瞬く間に修繕した。
「何をいい子ぶっているのかしら」
とやっかむ生徒も現れたが、リリアにとってそれが自然なのだとわかると、そんな声も消えていった。
◇
メリンダは苛立った。自分が10歳の時にみた‘ストーリー’は何も起こらないからだ。
リリアは(ルビアのはずなのだが)男子生徒の人気を集め、アルバートとも懇意になっていくはずだった。確かにリリアは、よく気がつきよく働くので男子生徒の人気はあったが、媚びを売るようなこともなく、いたって普通だった。
クラスが違うせいで、リリアはアルバートに近づくどころか何の接点もなかった。それにアルバートは「レティ病」と言われるほどレティシアを溺愛している。
メリンダは決してアルバートとどうにかなりたいとは思っていない。ただあの‘ストーリー’のとおりにならないと気がすまなかったのだ。




