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リリアをめぐる物語  作者: 夢のまたゆめ
第二章 出会いと悪夢

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10/12

2-8 書簡 バーナム領のバカンス


父上 様


 お元気ですか? お祖父様、お祖母様もつつがなくお過ごしでしょうか?

 僕は今、バーナム領の海辺の別荘に来ています。ウォルター家は毎年夏のバカンスをこの海辺で過ごすので、一緒に連れてきて頂きました。


 バーナムの海は濃い藍色をしていてポートフォードの海とは全然違っています。

僕たちは午前中少しだけ勉強して、あとは海で泳いだり釣りをしたりしています。ランチは浜辺で火をおこして魚介類のバーベキューです。見たこともない魚や貝がたくさんあって、とても美味しいです。


 昨晩は、浜辺で花火をしました。

 花火は遠い東方の国から輸入されたもので、細い棒の先に火をつけると、文字通り火の花がパチパチと出てきます。棒の半分くらいまで燃えると、だんだん火の花が小さくなって、最後はほんとに小さな真っ赤な火の玉になって、それが、ぽたんと落ちて消えてしまいます。

 とても綺麗だけど消えた瞬間になんだか寂しくなりました。


 最後の1本が消えた時、急に真っ暗になって、それまで賑やかだったのに皆黙ってしまったから、波の音がザーザーと聞こえました。


 そんななか、レティシアが「星、きれい…」と言ったので見上げてみると、海よりもっと深い藍色の空に降るような星が瞬いていました。僕は、この星空のどこかに母上もいらっしゃるのだなぁと思いました。


 ウォルター領には大きな自然公園があって、レイモンドと僕は、時々公園まで乗馬します。川で馬に水を飲ませながら、レイモンドは学業や将来の計画を話してくれます。


 僕も、ひとつ目標ができました。来年ポートフォードに帰るまでに、体術で「初段」クラスになろうと思っています。

 勉強も頑張っています。歴史では国の成り立ちや各領の役割を学びました。今は政府ができて形は変わったけど、公爵様や父上は、先祖代々受け継いでいる領を守り、使命を貫かれているのだと理解できました。

 僕も、立派に父上の後が継げるようレティシアとともに励んでいきます。


 それでは父上、またお会いできる日を楽しみにしています。


                                心をこめて

                                アルバート




親愛なるアルバート


 手紙ありがとう。私も、お祖父様お祖母様も元気にしているよ。

アルバートも、いろいろ頑張っているようで嬉しい。頑張りすぎて身体をこわさないように気をつけるのだよ。


 レイモンド君とも良い関係が築けているようだね。私も大学時代は、ウォルター公爵とよく馬で走ったものだ。公爵とは、ほんとに色々な思い出がある。アルバートもたくさん良い思い出を作って欲しい。

 

 少し難しい話になるが、わがエルディア王国とゴルド共和国、シャンバル帝国、3カ国のエルド海に関する通商条約が締結された。

 シャンバル帝国との交易は、隣領を通る陸路のみだったが、これからはエルド海を渡る海路も利用することとなる。そこでイーストポート港を開港することになり急ピッチで工事がすすんでいる。サウスポート港よりエルディアの王都にもシャンバルの港にも近いからね。

 これからは領都エルポートと、サウス、イースト両港の3拠点を軸に開発を進めることになった。ウォルター公爵のご厚意で都市計画の専門家も派遣されている。


 農業の面でも進展はあった。アルバートが帰ってきたら二人でじっくり話そう。

元気でな、アルバートの健康と成長を心より祈っている。

                                

                                  父より


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