表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/104

【ティワナク編】 * **【第一翼:楽園の不協和音】 * **第五章:ティワナク燃ゆ、創世の決戦

いつもお読みいただきありがとうございます

新しい翼の始まりです  【ティワナク編】第一翼:楽園の不協和音】

よろしくお願いします。私が思うより長〜い作品になりました♪文章力0の私ですがAIさんが頑張ってくれてます。

探偵ダ•ヴァンチをこれからも応援してくださいね!


* **第五章:ティワナク燃ゆ、創世の決戦:


万物の調和が最終的な決算を迎えるとき、数式は美しき証明のインクではなく、飛び散る鮮血と激しい火花によって巨石の床に刻まれる。


標高三千八百メートルの冷徹な夜空は、いまや完全に引き裂かれていた。ティワナクの天上を覆うのは、美しい星々ではなく、禍々しい紫色の稲妻。中央神殿へと続く大階段は、魔薬「紫の霧」によって理性を剥ぎ取られ、異形の魔物へと変貌した獣人たちの咆哮で埋め尽くされていた。


「ガルルルル!」


「白い羽を毟れ! 偽りの神を引きずり下ろせ!」


背中からトカゲの不気味な羽を生やした猛虎族、四肢がねじ曲がり巨大な爪と化した巨熊族の戦士たちが、王宮の近衛兵たちへと襲いかかっていた。

本来なら高い知性と光魔法を誇る鳥人族の戦士たちも、この圧倒的な質量と狂暴性を前に、次々と美しい羽を血に染めて墜落していく。


私が30歳でこの地に転生して以来、最も恐れていた「楽園の崩壊」のプロットが、いま目の前で現実の地獄として展開されていた。


「レオナルド様、3時の方角から、完全に魔物化した犀人族の重装歩兵が来ます! 防陣を突破されました!」


私の影から爆発するように躍り出た漆黒の戦士――黒豹族のシザルが、双振りの湾刀を閃かせながら叫んだ。彼のしなやかな四肢は、すでに敵の返り血で黒光りしており、その琥珀色の瞳は、押し寄せる異形の群勢を冷徹に捉えていた。


「慌てることはないよ、シザル。彼らの突進軌道は、純粋な直線だ。質量が大きければ大きいほど、急な方向転換は慣性の法則によって不可能になる。……ミーナ! 君の出番だ!」


私が上空から声をかけると、神殿の巨大な水路から、全身の羽毛を翡翠色に輝かせたカワセミ族の少女、ミーナが勢いよく飛び出してきた。彼女は下層街の水流を操る天才だ。


「任せて、レオナルド様! ――『逆流せよ、聖なる水門アクア・ルストル』!」


ミーナが空中での見事な反転とともにマナを放つと、神殿の石床を流れる装飾水路の水が一斉に逆流し、突進する犀人族の足元へと奔流となって押し寄せた。


「ぬおおっ!? 足場が……!」


巨体を誇る犀の戦士たちは、急激に摩擦を失った石畳の上で、私が計算した通りの放物線を描いて派手に転倒し、そのまま神殿の外へと滑り落ちていった。


「見事だ、ミーナ。流体の摩擦係数をゼロに近づければ、どんな怪力も無意味化する。……シザル、このまま太陽の門を突破するよ!」


「御意!」


シザルが私の開いた風の道を駆け抜け、私たちはついに、すべての陰謀の心臓部である「創世の間」へと突入した。


広大な神殿の最深部。そこには、50万年前にこの地へと墜落したという、全長数百メートルに及ぶ結晶質の宇宙船の残骸が、禍々しい紫色に発光しながら鎮座していた。その中心で脈動する『創世のコア』の前に、二人の影が立っていた。


一人は、全身を黒い魔物の外骨格で覆い、手には純粋マナが物質化した巨剣を握る猛虎族のバルカ。

そしてもう一人は、美しい藍色の祭服を血に染め、背中から粘液に塗れた黒い翼を広げた男――

………私の叔父であり、この都市の全信仰を支配する神官長、オロであった。


「おお、レオナルド。私の賢き甥よ。ついにここまで辿り着いたか」


オロの瞳は完全に濁り、その奥で紫色のキマイラ因子がドロドロと明滅していた。


「叔父上、その醜いお姿は、美を愛する科学者としてきわめて不愉快です。あなたの導き出した進化の方程式は、ただの自己崩壊を伴う三流のバグに過ぎない」


私は純白の翼を大きく広げ、空中で静止しながら冷徹に言い放った。

オロは喉の奥で、鳥とも獣ともつかぬ不快な笑声をあげた。


「ハハハ、お前に何が分かる、レオナルド! このコアの力を完全に解放すれば、我ら鳥人族は停滞を脱し、次なる高次元生命体へと進化できるのだ! 10の戒律という鎖に縛られた家畜どもを、いくら屠ろうともな!」


「御託はそこまでだ、裏切り者の神官!」


シザルが床を蹴り、バルカに向かって突進した。黒い閃光と化したシザルの湾刀が、バルカの持つマナの巨剣と激しく交差する。


キィィィン! という、


空間を震わせるほどの金属摩擦音が響き、神殿の柱がその衝撃波で次々とひび割れていった。


「ガハハハ! 痛ぇなぁ、黒豹の野良犬が! だが、この薬の力には届かねえ!」


バルカの圧倒的な剛力がシザルを押し潰さんとする。魔物化したバルカの筋力は、すでに通常の獣人の限界を遥かに超えていた。


「消え去れ、レオナルド! お前のその無駄な知性ごと、空間の藻屑となれ!」


オロが左手を掲げると、私の周囲の空間が物理的に収縮を始めた。オロの得意とする、質量と空間の相関関係を強制的に書き換える『超重力魔法』だ。


ドクン、と私の身体にかかる重力が十倍、二十倍へと跳ね上がる。

骨が軋み、純白の羽毛が何枚も引きちぎれて床へと落ちていく。視界が赤く染まり、地球のフィレンツェで死を迎えたあの瞬間の感覚が、脳裏をよぎった。


だが、探偵としての私の頭脳は、この絶望的な痛みのなかでも、空間の歪みが描く数式の波形を完全に捉えていた。


「叔父上……重力とは空間の窪みだと言ったはずです。ならば、その窪みの縁を滑るようにして、私はさらに加速する!」


私は翼を極限まで引き締め、前世で幾度となくノートに描いた『黄金比の螺旋(対数螺旋)』の軌道に身を投じた。重力の中心に向かって直線的に落ちるのではなく、あえてその歪みに沿って回転しながら、スイングバイの原理で速度を無限に跳ね上げていく。


「何だと……!? 重力圏のなかで、なぜ墜落せずに加速しているのだ……!?」


「幾何学の調和を、侮るな!」


音速を超えた私の身体は、一瞬でオロの死角へと回り込み、右手に収斂させた純白のマナの光刃を、彼の黒い翼の付け根へと叩きつけた。


「――『ディヴィーナ・プロポルティオー(神聖比例斬)』!」


幾何学的に完璧な角度で放たれた光刃は、オロの肉体内で暴走していたマナの結合点を正確に切断した。ドシュゥゥゥ! という不気味な音とともに、オロの片翼が根元から切り落され、彼は鮮血を散らしてコアの台座へと吹き飛んだ。


「ぎゃあああああああ! 私の、私の完璧な肉体がぁぁぁ!」


オロが絶叫する。しかし、彼は倒れながらも、狂った笑声をあげるのをやめなかった。

「ハハハ……だが、もう遅い! コアの暴走は止まらん! ティワナクは大地ごと消え去るのだ!」


ドクン!!!


中央の創世のコアが、これまでにない巨大な紫色の大爆発を放った。神殿の天井を突き破り、紫色の光柱が天へと昇っていく。

街全体の物質が分子レベルで崩壊を始める。バルカの力に押され、満身創痍で膝をついたシザルが、私の顔を見上げた。


「レオナルド様……ここまで、ですか……」


「いや、シザル。小説のクライマックスは、いつだって作者が書き換えるものさ」


私は懐から、下層街の地下工房でバルトロやマルコ、何百人もの職人たちが命を懸けて完成させた巨大機械――『シマティクス共鳴器』と連動する、結晶の起導鍵を取り出した。

そして、それを創世のコアの真上にある、幾何学の紋様が刻まれた床へと強く突き刺した。


「みんなの作った歯車(知恵)を、ここで響かせる! ――響け、調和の歌!」


ワン、と世界から一瞬、すべての音が消失した。


次の瞬間、ティワナクの地下深くから、地上のすべての狂気を包み込むような、荘厳で、きわめて清澄な重低音が響き渡った。それは、宇宙の根本的な調和の周波数。


波紋のように広がった目に見えぬ完璧な音波が、神殿を、そしてティワナク全土の空間を瞬時に満たしていった。


「な、何だ……この音は……!? 胸の奥の……イライラが、消えて……」


バルカが巨剣を落とし、その肉体を覆っていた魔物の黒い外骨格が、サラサラと砂のように崩れ落ちていった。彼の瞳から紫色の狂気が消え、元の猛虎族の正気が戻っていく。


「そんな、馬鹿な……! 私の創り出した神の進化が、ただの『音波』で中和されていくというのか……!? 鳥人族の魔導のすべてを超えた、この理屈は一体……!」


オロが自らの残された異形の手を見つめながら、絶望の悲鳴を上げた。


「これは魔法ではないよ、叔父上。この街に生きるすべての種族が、それぞれの知恵を合わせて作った『科学の調和』だ。どれほど強大な破壊の波であっても、正しい逆位相の波を当ててやれば、ただの静かな水面に戻る。50万年後の未来でも、この美しき法則は変わらないのさ」


紫色の光柱は静まり返り、創世のコアは本来の、穏やかな青白い輝きを取り戻した。

神殿の外では、魔物化していた何千という獣人たちが次々と元の姿に戻り、驚きと安堵の表情で互いの顔を見合わせていた。ティワナクを滅ぼしかけた紫の霧は、完全に消し去られたのだ。


オロとバルカは完全に力を失い、その場に崩れ落ちた。シザルが私の隣に歩み寄り、折れた湾刀を静かに鞘に収めた。


「見事なハッピーエンドです、レオナルド様。……いや、大探偵ダ・ヴィンチ様とお呼びすべきですね」


黒豹の相棒が、そのボロボロになった身体で、しかし誰よりも誇らしげに牙を見せて笑った。


「ありがとう、シザル。君という優秀な歯車がいてくれたからこそ、この数式は完成した」


私は純白の翼を大きく広げ、天井の破壊された隙間から差し込む、本物の星空の明かりを見上げた。

偽りの楽園の鎖は壊れた。しかしこれからは、鳥人族も、獣人族も、人族も、互いに知恵を寄り添わせ、自らの足で新しい歴史プロットを歩んでいく。


私は懐から手記を取り出し、炭のペンで、新しい時代の最初の一行を鏡文字で書き始めた。天才レオナルド・ダ・ヴィンチの、この星における果てしなき創世の旅路は、美しい夜明けの光とともに、今また新しいページをめくったのだった。


静寂を取り戻した「創世の間」には、ただ創世のコアが発する安定したマナの低音の羽音だけが、まるで母の鼓動のように優しく響いていた。空気中に浮遊していた紫色の有害な微粒子は、共鳴波動によって分子構造を強制的に均一化され、ただの無害な光の粒子となって石畳の上へと降り積もっていく。


「……信じられん」


神殿の巨大な大理石の柱の陰から、恐る恐る姿を現したのは、灰色の剛毛に覆われた巨体を震わせる老熊族のバルトロだった。彼の背には相変わらず巨大な鉄槌が背負われていたが、その無骨な手は、自らが命を吹き込んだ機械の奇跡に、ただ震えていた。


「おい、バルトロの親父。言っただろう。王子の数式に間違いはないとね」

その後ろから、眼鏡の奥の瞳を輝かせた人族の若い技術者、マルコが、安堵の溜息とともに歩み出てきた。

彼の衣服は煤と油で汚れていたが、その表情には、自らの手で神の領域の暴走を食い止めたという、職人としての誇りが満ち満ちていた。


「へっ、マルコの小僧。分かってらぁ。だがよ、目の前でこんな『宇宙の調和』ってやつを見せつけられちゃあ、俺の自慢の槌の重さなんて、ただの塵芥に思えちまうぜ」


バルトロは頭を掻きながら、私の前に膝をついた。


「王子……いや、レオナルド様。あんたは本物の、この星の新しい夜明けを紡ぐ巨匠だ。俺たち下層街の職人一同、あんたのその白い翼の行く先に、どこまでも付いていくぜ」


「顔を上げておくれ、バルトロ。そしてマルコ、みんな」


私は純白の翼を静かに揺らし、彼らに向かって微笑みかけた。


「この奇跡を起こしたのは、私の頭脳だけではない。君たちが何ヶ月も地下の暗闇で、一ミリ、一ミクロンの狂いもなく歯車を削り、銀線を編み続けてくれたからこそ、私の数式はこの物理的な世界に質量を持つことができたんだ。これは、ティワナクに生きるすべての種族の知恵の勝利だよ」


私は歩みを進め、台座の前に倒れ伏している叔父オロを見下ろした。

彼の背中にあった藍色の美しい翼は、いまや半分が焼けただれ、変異したトカゲのような皮膚も、調和の波動によって本来の鳥人族の滑らかな細胞へと還元されつつあった。

しかし、その精神にかかった負荷は凄まじく、彼の濁った瞳には、もはや私を呪う力すら残されていなかった。


「叔父上、これがあなたの恐れた『停滞』の結末です。力による強制的な進化は、ただの自己破壊を招くだけだ。人間は――いや、この星の生命は、不完全だからこそ、互いに歯車のように噛み合い、摩擦を起こしながら前に進むことができる。それこそが、生命という名の最も美しい彫刻なのだよ」


オロは弱々しく首を振り、何かを呟こうとしたが、そのまま意識を失って床へと倒れ込んだ。


「レオナルド様、王宮の近衛兵たちがこちらへ向かっています」

シザルが耳をぴくりと動かし、神殿の入り口の方向を見据えた。


太陽の門の向こうから、生き残った鳥人族の戦士たちと、下層街で正気を取り戻した猛虎族や巨熊族の若者たちが、互いに武器を収め、困惑と奇妙な連帯感の混ざり合いた表情で、この創世の間へと雪崩れ込んできた。彼らの先頭に立っていたのは、我が父、鳥人王ウラヌスであった。


ウラヌスの瞳は、何万年もの不老長寿によって磨耗し、凍りついた氷河のようであったが、今のその奥には、私の生み出した『残響』に対する、深い驚愕の光が宿っていた。


「レオナルドよ……お前が、この都市の崩壊を止めたというのか。神官長オロの狂気を、その見たこともない機械の音で」


「はい、父上」私は胸に手を当て、鳥人族の王子としての礼をとった。「ですが、私一人の力ではありません。

この下層街の獣人たち、そして人族の技術者たちの知恵がなければ、ティワナクはいま頃、紫の塵となって大気へ霧散していたでしょう。

10の戒律は、私たちを檻の中に閉じ込めるための锁ではありません。互いの個性を尊重し、調和するための『協定』として、いまこそ書き換えられるべきです」


王は長い沈黙の後、私の背後にある巨大な真鍮の共鳴器、そして床に横たわるオロとバルカを見つめ、やがて小さく、しかし重々しく頷いた。


「……よかろう。世界のプロットは、お前の言う通り、新しいページへと進められたようだ」


神殿の外に出ると、標高三千八百メートルの盆地に、本物の美しい朝の光が差し込み始めていた。

アンデス高地の冷徹な大気が、私の純白の翼を優しく撫でる。下層街からは、もうあの忌々しい紫色の霧の匂いは一切せず、ただ、新しい時代の始まりを告げる、清々しい大地の呼吸だけが聞こえていた。


「レオナルド様、これから忙しくなりますね」


シザルが私の隣に並び、新しく昇る太陽を見つめた。彼の黒い毛並みが、朝日に照らされて黄金色の輪郭を描いている。


「ああ。これからは王宮の退屈な王子ではなく、この星のすべての種族とともに、新しい機械を作り、新しい数式を解き明かし、そして最高の『未来の物語』を書き上げなければならないからね。私の小説の次回作のタイトルはもう決まっているんだ」


「ほう、何というタイトルですか?」シザルが興味深そうに眉を上げた。


私は懐から、私の前世の魂が刻まれた手記を取り出し、炭のペンで、美しい鏡文字とともに、その輝かしいタイトルを刻み込んだ。


「『ティワナク創世記――翼と牙のレゾナンス(共鳴)』。どうだい、シザル。君が主人公の、最高の活劇になるよ」


黒豹の相棒は、不敵に笑った。


万物は流転する。しかし、私たちがこの50万年前の超古代の地で響かせた『調和のメロディ』だけは、巨石の隙間に刻まれ、遥かなる未来へと語り継がれていく。天才レオナルド・ダ・ヴィンチの、この世界における本当の創世は、いま、確かな光の中にその第一歩を踏み出したのだった。

みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?

少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。

励みになりますので、☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。

リアクションボタンもよろしくお願いします

これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

パラレルワールドで魔法と多種族の住む異世界でスキル無しで探偵します。

ローマ編も追加しています。17時投稿です!

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ