【ティワナク編】 * **【第一翼:楽園の不協和音】***第四章:激動の1年と迫り来る影
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新しい翼の始まりです 【ティワナク編】第一翼:楽園の不協和音】
よろしくお願いします。私が思うより長〜い作品になりました♪文章力0の私ですがAIさんが頑張ってくれてます。
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【ティワナク編】
* **【第一翼:楽園の不協和音】***第四章:激動の1年と迫り来る影
* **第四章:激動の1年と迫り来る影
万物の調和を描き出すには、何よりも「時間」という最も無慈悲な変数を計算に入れねばならない。砂時計の砂が最後の一粒に向かって流れ落ちるように、私の計算した「大触」の夜――ティワナクが崩壊を迎える運命の日までの365日は、冷酷に、しかし確実に消化されていった。
30歳という、肉体と知性が最も美しく噛み合うその盛りでこの超古代にパラレル転移した私は、昼と夜で全く異なる二つの顔を使い分けていた。
昼は王宮の退屈な第一王子「レオナルド」として、父である鳥人王ウラヌスの御前で退屈な儀式に参列し、叔父オロの不穏な視線を笑顔で受け流す。
そして夜は、外套を深く被った「探偵」であり、未だ見ぬ世界の救済を紙の上に紡ぐ「小説家」として、下層街の地下深くへと潜る。そんな二重生活のなかで、私の純白の翼は、日に日に研ぎ澄まされる大気の圧力を敏感に捉えていた。
「レオナルド様、本日の『紫の霧』の押収量です。下層街の第3区から第5区にかけて、もはやこの魔薬に手を染めていない若者を探す方が難しい。防衛隊の目をごまかすのも、これが限界に近づいています」
地下貯水池跡に設立された秘密工房。その薄暗い入口の影から、漆黒の毛並みを持つ黒豹族の戦士シザルが音もなく現れた。彼の差し出した革袋のなかには、禍々しい紫色の光を放つガラス瓶が何十本も詰め込まれており、部屋の空気をオゾンのような焦げ臭さで満たしていく。
「ありがとう、シザル。君の隠密部隊の働きには、前世のフィレンツェで暗躍していたいかなる密偵も敵わないよ。……ふむ、分析するまでもないね。
液体の粘度が三ヶ月前よりも明らかに増している。叔父オロの魔導プラントは、キマイラの因子の純度をさらに高めたようだ。これを取り込んだ獣人の肉体は、もはや進化ではなく『崩壊を伴う暴走』の領域に達するだろう」
私は自作のノートに炭のペンで、細胞の変異速度を示す放物線を書き加えた。グラフの先端は、1年後の「大触」の日に向かって、垂直に近い角度で突き上がっている。時間は、私たちの味方ではなかった。
「しかし、王子。こちらの『仕掛け』も、職人たちの執念によって形を成しつつあります。彼らの手先は、もはや神の領域に達している」
シザルの琥珀色の瞳が向いた先――地下貯水池の広大な中央空間には、数ヶ月前には単なる骨組みだった巨大な機械が、圧倒的な物理的質量を持って鎮座していた。
それこそが、人族の技術者たちと獣人の職人たちが、私の設計図をもとに命を削って製造してきた『シマティクス共鳴器(調和の鐘)』の全容であった。
「おい! そこの人族の小僧ども! 手を止めるな! 共鳴回路の銀線を巻く角度が、コンマ一ミリでも狂ったら、王子の言う完全調和が歪んじまうんだよ! 意地を見せやがれ!」
工房のなかに地鳴りのような怒号を響かせているのは、灰色の剛毛を逆立たせた巨熊族の老鍛冶屋、バルトロだ。
彼は下層街最高と謳われる金属加工の職人であり、私がもたらした「熱力学」と「精密測定」の概念に魂を奪われた、私の最初の技術的弟子だった。
彼の太い腕は、重さ数百キロもある真鍮のギアを精密に調整し、その巨体に似合わぬ繊細さで機械の組み立てを指揮していた。
「分かってるよ、バルトロのクソ親父! こちとら、この半年間、太陽の光も拝まずにこの銀線を編み続けてんだ! 王子の数式を、俺たちの手で汚してたまるかよ!」
言い返しているのは、眼鏡をかけた人族の若い技術者、マルコだった。彼の周囲では、山猫族の少女たちが機敏な動きで複雑な歯車群に魔導油を差し、さらにその奥では、耳の大きな兎人族の職人たちが、音叉の微細な振動を耳で聴き分けながら、ヤスリで金属の表面を極限まで削り込んでいた。
「素晴らしいな、みんな。これこそが、私の描きたかった真の創世記だ」
私は純白の翼を大きく広げ、大気の流れを読みながら共鳴器の最上部、高さ十メートルに達する真鍮の天蓋へと飛び上がった。
この機械は、前世の私が夢想したあらゆる自動機械の知識と、この世界の超古代魔導科学が融合した、文字通りのオーパーツ(時代錯誤の遺物)だ。
中心には、創世のコアから抽出した純粋マナを結晶化させた「共鳴核」が配置され、その周囲を、天文学的な比率で計算された無数の歯車と、人族の繊細な指先が編み上げた銀の導線が幾重にも取り囲んでいる。
「レオナルド様、結晶の同調率が98%で頭打ちです。どうして残りの2%が噛み合わない……!」マルコが地上から、焦燥に満ちた声を張り上げた。
「慌てることはないよ、マルコ。残りの2%は、機械の精度ではなく『大気の摩擦』による計算のズレだ。この地下貯水池は、標高三千八百メートルの高地盆地にある。気圧が低いため、音波の伝播速度がフィレンツェの海沿いよりもわずかに遅くなるのさ。数式を書き換えよう」
私は空中から、指先のマナを極細の光のペンのように扱い、真鍮の天蓋に直接、新しい気圧補正の数式――黄金比を応用した螺旋の紋様を刻み込んでいった。
ガチ、ガチガチガチ!
数式が刻まれた瞬間、共鳴器の内部にある数千の歯車が一斉に滑らかな回転を始め、完璧な調和をもって噛み合った。同時に、機械全体から、耳鳴りのような、しかしきわめて清澄な、魂の澱みを洗い流すような高音が地下空間全体に響き渡った。
「同調率……100%! つながった、つながったぞ!」マルコが叫び、職人たちが一斉に歓声を上げた。猛虎族の巨漢も、人族の小僧も、互いの種族の壁を忘れて抱き合っていた。
しかし、その歓喜の瞬間を切り裂くように、工房の防壁に強力な『魔力の衝撃』が叩きつけられた。
ドカン! と
いう激しい爆音と共に、地下貯水池の堅牢な巨石の天井から、パラパラと土砂が崩れ落ちてくる。
「何事だ!?」シザルが即座に身構え、双振りの湾刀を抜き放った。彼の毛並みが、危機を察知して一斉に逆立つ。
連絡通路の奥から、全身の羽毛を濡らし、息を切らせた翡翠カワセミ族の少女、ミーナが飛び込んできた。彼女は下層街の水路を通じて私たちの連絡員を務めてくれている隠れた脇役の一人だ。
「レオナルド様! シザル様! 上の、上の街が大変なの! バルカの奴ら、大触の夜を待たずに、今夜一斉に暴動を起こしたわ! 叔父のオロ神官長が王宮の結界を内側から解除したの!
下層街の何千という獣人たちが、一斉に化け物になって王宮へ攻め上ってる!」
「計画の前倒しか……!」
シザルが歯噛みした。
「叔父オロ、こちらの動きに気づいて勝負を急いだな!」
「いや、オロにとってはこれも想定内(プロットの範囲内)だろう」
私は共鳴器の上から静かに舞い降り、純白の翼を鋭く引き締めた。私の網膜の奥で、1年かけて組み立ててきたすべての推理と数式が、最終的な決戦の軌道へと収束していく。
「バルトロ、マルコ、みんな、よく聞いてくれ。この工房の入口を完全に封鎖し、君たちはここで待機するんだ。この『シマティクス共鳴器』の起動トリガーは、私が持つこの結晶の鍵へと完全に同調させた。
私たちはこれを持って、中央神殿の最深部――創世のコアの真上へと向かう」
「王子! だが、上の街はすでに魔物の海だぞ! 二人だけで行くのは自殺行為だ!」
バルトロが巨大な鉄槌を握りしめ、私の前に立ち塞がった。
「バルトロ、君たちが1年かけて作ってくれたこの機械は、ただの鉄の塊ではない。この街に生きるすべての種族の知恵と、調和への願いが込められた『未来の叡智』だ。
それを正しい場所で響かせるのが、私の、そして小説家としての私の最後の責任さ。
君たちの作った歯車を、私は絶対に無駄にはしない」
私の毅然とした言葉に、老熊族の鍛冶屋は言葉を失い、やがて静かに道を譲った。
「シザル、行くよ。15世紀のイタリアで果たせなかった万物の救済を、この50万年前の地で完成させる。私たちのタイムリミットは、あと数十分だ!」
「御意、我が主! 暗闇の道を切り開くのは、この漆黒の牙の役目です!」
私とシザルは、崩れかける地下工房を飛び出し、戦火と紫の霧に包まれた地上の大戦線へと向かって、猛烈な勢いで駆け上がっていった。
地上の世界は、文字通りの地獄と化していた。
標高三千八百メートルの冷徹な夜空を、何十本もの禍々しい『紫色の落雷』が引き裂き、ティワナクの誇る巨石の建造物を無残に砕いていた。上層の王宮へと続く大階段は、すでに血と紫色の濃霧で埋め尽くされている。
「ガルルルル!」
「神の翼を毟り取れ! 俺たちが真の支配者だ!」
理性を完全に失い、背中から不気味なトカゲの羽や、何本もの異形の触手を生やした獣人たちが、王宮の近衛兵たちへと襲いかかっていた。
本来なら高い知性を誇る鳥人族の戦士たちも、空中から放つ光魔法が魔物化した獣人たちの圧倒的な生命力によって弾かれ、一人、また一人と美しい羽を毟られて地上へと墜落していく。
戒律という名の鎖が外れた世界は、これほどまでに醜く、そして暴力的だった。
「防衛線は完全に崩壊していますね」シザルが走る速度を落とさず、襲いかかる異形の猛虎族を、双刀の一閃で正確に無力化しながら進む。「ですが、彼らの動きの支点は、すべて中央神殿へと向かっています」
「ああ、叔父オロは『創世のコア』のエネルギーを直接下層へ送り込み、ティワナク全体を一つの巨大な魔導変異プラントに変えようとしているんだ。質量とエネルギーの等価交換を、最悪の形で実践しようとしている」
私は上空を飛行しながら、背中の純白の翼からマナの衝撃波を放ち、群がる異形たちを気絶させていった。
前世の解剖学の知識があるからこそ、どの神経を刺激すれば、命を奪わずに彼らの動きを止められるかが正確に分かる。科学の目は、戦場において最も冷徹な武器となるのだ。
神殿の入り口である「太陽の門」を抜けると、そこにはすでに、王宮の文官の長であった人族の最高幹部、執政官マルコの姿もあった。彼はオロの思想に共鳴し、人族の地位を向上させるためにこの反乱を手引きした裏切り者だった。
「レオナルド王子……! 来たか、異端の天才が!」マルコが魔導銃を構え、私に向かって高圧の水弾を連射してきた。
「マルコ、君の政治的な不満は理解できる。だが、君がオロに協力して導き出したその方程式は、決定的に解が間違っているんだよ」
私は空中できりもみ回転を始め、流体力学の応用によって、迫り来る水弾の軌道をすべて自らの翼の風圧で外側へと受け流した。
「流体は、より圧力の低い方へと引き寄せられる。私の作った気流のなかに、君の魔法の軌道は最初から組み込まれているのさ!」
「何だと……!?」
その隙を見逃さず、シザルの影がマルコの背後から爆発するように躍り出た。
キィン! と刀の腹で魔導銃が弾き飛ばされ、シザルの鋭い蹴りがマルコの胸元を捉えた。人族の執政官は巨石の柱に激寸し、そのまま意識を失って崩れ落ちた。
「残るは、最深部だけですね」シザルが息を整えながら言った。彼の防具はすでに敵の爪によってボロボロに引き裂かれていたが、その琥珀色の瞳の光は、いささかも衰えていなかった。
「行くよ、シザル。物語の最終章は、作者である私が直接、ペン――いや、調和の音で書き換えてあげるさ!」
私たちは、神殿の最深部――「創世の間」へと飛び込んだ。
そこには、全長数百メートルに及ぶ結晶質の宇宙船の残骸が、不気味な紫色の光を放ちながら鎮座していた。
その中心で脈動する『創世のコア』の前に、巨躯をさらに倍近くに変異させた猛虎族のバルカ、そして背中から粘液に塗れた黒い翼を広げた神官長オロが立っていた。
「おお、レオナルド。私の賢き甥よ。ついにここまで来たか」オロが狂気に満ちた笑声をあげ、その両手から空間を強制的に収縮させる超重力魔法を放ってきた。空間が目に見えて歪み、周囲の巨石が分子レベルで崩壊し始める。
「叔父上、あなたの作ったその歪んだ世界は、美しくない。――シザル、今だ!」
私は懐から、地下工房の共鳴器と連動する『結晶の鍵』を取り出し、それを創世のコアの真上の石畳へと強く突き刺した。
ワン、と、世界が一瞬、完全な無音に包まれた。
次の瞬間、ティワナクの地下深くから、大地の底を震わせるような、これまでに誰も聴いたことのない荘厳な低音が響き渡った。
それは、人族の技術者たちと獣人の職人たちが命を懸けて作り上げた『シマティクス共鳴器』から放たれた、完璧なる完全調和波動であった。
波紋のように広がった目に見えぬ振動が、神殿を、そしてティワナク全土の空間を瞬時に包み込んでいく。
「な……何だ、この音は……!? 体内のマナが……消えて、いく……!?」
バルカが苦悶の声をあげ、その肉体を覆っていた魔物の黒い外骨格が、ボロボロと砂のように崩れ落ちていった。彼の瞳から紫色の狂気が消え、元の猛虎族の正気が戻っていく。
「そんな、馬鹿な……! コアの暴走が、ただの『音』で中和されていくというのか……!? 鳥人族の魔導を超えた、この力は一体何なのだ……!」
オロが自らの異形なる右腕が霧散していくのを見つめながら、絶望の悲鳴を上げた。
「これは、私たちがこの1年、下層街のすべての種族の知恵を合わせて作った『科学の調和』だよ、叔父上。どれほど強大な破壊の魔法であっても、宇宙の根本的な調和の波数の前には、ただの静かな水面へと戻るしかないのさ」
光柱は静まり返り、創世のコアは本来の、穏やかな青白い輝きを取り戻した。
神殿の外では、魔物化していた何千という獣人たちが次々と元の姿に戻り、その場にへたり込んでいた。ティワナクを滅ぼしかけた紫の霧は、完璧な音波によって綺麗に消し去られたのだ。
オロとバルカは完全に力を失い、その場に崩れ落ちた。シザルが静かに湾刀を鞘に収め、私の隣に立った。
「終わりましたね、レオナルド様。あなたの描いたシナリオ通りに」
「ああ。だが、これは終わりではなく、始まりさ」
私は純白の翼を大きく広げ、神殿の天井に開いた穴から差し込む、星の明かりを見上げた。
10の戒律という鎖によって守られていた偽りの楽園は崩壊した。しかし、これからは鳥人族も、獣人族も、人族も、それぞれの知恵と技術を持ち寄り、互いに歯車のように噛み合いながら、自らの足で新しい歴史を作っていく。
私は懐から手記を取り出し、炭のペンで、新しい時代の最初の一行を鏡文字で書き始めた。
50万年後の未来の私が、いつかこのティワナクの遺跡を訪れたとき、この巨石の隙間から、私たちが響かせた『調和のメロディ』が確かに聞こえるようにと願いを込めて。
天才レオナルド・ダ・ヴィンチの、この超古代における果てしなき旅路は、新星の夜明けと共に、今また新しいページをめくったのだった。
みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?
少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。
励みになりますので、☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。
これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
パラレルワールドで魔法と多種族の住む異世界でスキル無しで探偵します。
ローマ編も追加しています。17時投稿です!
よろしくお願いします。




