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ローマ編 ## 第三話:『呪われた黄金杯と、鏡の国から届いた予告状』後編

二話目の投稿です。

誤字脱字が多くなると思いますが、よろしくお願いいたします。

途中で、脱線することもあると思いますが、ゆっくりと見守ってください。

作品の内容が前後することが多々あると思いますが、大目に見て頂ければ、うれしく存じます。

ローマ編三話後編ですよろしくお願いします

では、参ります!!

### 後編:鏡の国の反転ロジック、夜明けの純白と黄金の奪還作戦(解決編)

## 第四章:漆黒のカタコンベ、光なき迷宮の足音

ローマの高台の裏手にひっそりと口を開ける、古代の地下納骨堂カタコンベ。外の世界は不気味な月食の影に呑まれつつあり、細い入り口から差し込む光は、まるで凝固した血のようにどす黒い赤色に染まっていた。

「ダヴィンチさん、足元が急に崩れやすくなっています。気を付けてください!」

暗闇の通路を先導するフランチェスカちゃんが、ランタンの光を前方に掲げながら、白銀の猫耳を周囲の不気味な静寂に向けて過敏にピクピクと動かしていた。彼女の胸元では、愛猫キララちゃんが「にゃあ」と低く警戒の鳴き声を上げ、お嬢さんの軽装鎧の隙間で身を縮めている。地下特有の、湿った冷気とカビの臭い、そして何百年も前に葬られた死者たちの乾いた骨の匂いが、俺の鼻腔を容赦なく刺した。

「ひゃはは、大丈夫さね、お嬢さん。おじさんのこの安物の靴は、下町の泥水で散々鍛え上げられているからねぇ。それよりも、耳を澄ますんだ。スキル【画家】による魔力探知が使えない今、この暗闇の中で犯人の位置を特定できるのは、お前さんのその立派な猫耳と、おじさんの野生の勘だけなんだからさね」

俺はヨレヨレのシャツのポケットから、ただの古びた手鏡と、一階のマルコ店長から借りてきた「火打ち石付きの古い発火装置」を取り出し、指先でその金属の感触を確かめた。

「……ダヴィンチさん、止まってください。前方、約五十メートル先、通路が大きく右に湾曲した広間から、複数の人間の足音と、何か不気味な呪文を唱えるような低い声が反響しています。足音の数は、三人……いや、四人です!」

お嬢さんの白銀の耳が、闇の奥の微かなノイズを正確に捉えた。俺は彼女の肩をそっと叩き、ランタンの火を極限まで小さく絞らせると、壁の凹凸に身を隠しながら、その広間の様子を覗き込んだ。

広間の中央には、粗末な石造りの祭壇が置かれ、その上には眩いばかりの光を放つ、本物の『太陽の黄金聖杯』が鎮座していた。その周囲を、二匹の蛇が鏡を挟む紋章の入った黒いマントを羽織った男たちが取り囲み、呪術的な血の色のインクで床に巨大な魔法陣を描いている。そして祭壇のすぐ傍らの石柱には、ボルゲーゼ男爵の愛娘であるルチアお嬢さんが、シルクの寝巻き姿のまま、虚ろな瞳で縛り付けられていた。彼女の意識は、あの鏡に塗られていた幻覚オイルのせいで、まだ深い夢の中に閉じ込められているようだった。

「――いよいよ月食が完成する。この純潔なる富豪の娘の生命力を、太陽の聖杯の呪いへと注ぎ込め。そうすれば、我ら『鏡の国の残響』は、ローマのすべての富を反転させ、我らのパレットへと収めることができるのだ」

中心に立つ、顔を覆った黒魔術師の男が、不気味に歪んだ声を地下の空間に響かせた。

「ダヴィンチさん、もう一刻の猶予もありません! 私が正面から斬り込んで、男爵のお嬢さんを救出します!」

フランチェスカちゃんが腰の剣を引き抜き、銀色の刃が暗闇の中で鋭い軌跡を描いた。

「待ちなお嬢さん。正面から突っ込めば、あの黒魔术師どもは人質を盾にするか、あの聖杯の魔力を暴発させる。ここは、スキルがないおじさんならではの『視覚の死角トリック』を使って、奴らのレイアウトを内側から崩壊させてやろうじゃないかい!」

俺は手鏡を壁の角度に合わせて固定し、手元の発火装置の導火線に素早く指をかけた。

「お嬢さん、おじさんが合図をしたら、あの祭壇の『真上にある古い鍾乳石』を、お前さんの剣の風圧スラッシュで叩き落とすんだ。構図を反転させる最初の線は、上から引くものさね!」

## 第五章:鏡の国の反転ロジック、暴かれる双子の空白

「今だ、お嬢さん! やっちまいなァァァッ!!」

俺の叫びと同時に、俺の手元から「パンッ!」という激しい破裂音と共に、大量のマグネシウムを含んだ強烈な白い閃光が放たれた。それはただの目眩まし(フラッシュ)だが、暗闇に慣れていた黒魔術師たちの視界を一瞬にして真っ白な空白へと染め上げた。

「ぎゃあッ!? なんだこの光は!? 侵入者か!?」

魔術師たちが目を押さえてうろたえる瞬間、フランチェスカちゃんの白銀の剣が虚空を裂いた。

「はあああッ!!」

鋭い斬撃の風圧が広間の天井を直撃し、ひび割れていた巨大な鍾乳石が、凄まじい質量を持って黒魔術師たちの頭上へと垂直に落下した。

「うわあああッ! 壁が崩落したぞ!」

大音響と共に巻き上がる激しい砂埃と石屑。その混乱の隙を突き、お嬢さんは電光石火の速さで祭壇へと跳び、ルチアお嬢さんを縛り付けていた縄を瞬時に切り裂いて、彼女の細い体をその頑強な腕で抱き止めた。

「ルチアさん! しっかりしてください、今助けます!」

「う、うう……ここは……? 私は、お父様の部屋で眠っていたはずでは……」

幻覚から覚めかけたルチアお嬢さんが、戸惑うように長い睫毛を揺らす。

「ふははは! 娘を奪い返したところで、この『太陽の黄金聖杯』がある限り、儀式は止まらん! この聖杯の絶対的な魔力の前には、貴様ら下町の木っ端役人など、一瞬で灰に変わるわ!」

中心の黒魔術師が、祭壇の黄金聖杯を高く掲げ、勝ち誇ったように笑声をあげた。

だが、その聖杯を見た瞬間、俺はヨレヨレのシャツのポケットに手を突っ込み、ひゃはははと腹を抱えて大爆笑した。

「ひゃはははは! おいおい、黒魔術師の旦那。そんな真鍮のガラクタを掲げて、一体何の儀式を始めるつもりだい? お前さんが持っているその聖杯、光り輝いてはいるが……中身は完全にスカスカの、ただの『二流の偽物』だぜぇぇぇッ!!」

「な、何だと……!? 馬鹿なことを言うな! これは私が自ら、ボルゲーゼ邸の最高強度の宝物庫から盗み出した、本物の太陽の聖杯だ! 現に、この圧倒的な魔力の光を見ろ!」

「光に騙されちゃいけないよ。それこそが、お前さんたちが得意とする『鏡の反転トリック』の罠に、お前さん自身がハめられた証拠さね」

俺は一歩前へ出ると、錆びた虫眼鏡を魔術師の顔へと突きつけた。

「いいかい、ボルゲーゼ男爵の宝物庫にあったのは、最初から【真鍮製の偽物】だったのさ。男爵は『本物が偽物にすり替えられた』と言っていたが、それは違う。男爵の先祖はね、数代前に本物の聖杯をどこか別の安全な場所へと隠し、宝物庫には『本物そっくりの、強力な発光魔術を施した身代わり(デコイ)』を安置していたんだよ。お前さんたちは、その身代わりをさらに別の偽物とすり替えたつもりだったが、実は最初に盗み出した時点で、ただの光る真鍮の塊を掴まされていたのさね!」

「そんな……! じゃあ、本物の太陽の黄金聖杯はどこにあるというのだ!?」魔術師の顔が恐怖で歪む。

「本物の聖杯はねぇ……お前さんたちがルチアお嬢さんを夢遊病にして連れ出す際、彼女に【持たせて歩かせた、ただの古びた手提げランプ】の内部に仕込まれていたのさ! 男爵は娘が『衣服ごと消えた』と言ったが、彼女は普段使っているお気に入りのランプを持って部屋を出ていた。犯行の音の合図に誘導される際、彼女は無意識に、実家の地下の本当の隠し場所に保管されていた『ランプ型の聖杯』を手に取り、お前さんたちの元へと運ばされていたんだよ。灯台下暗し、とはよく言ったもんだ。本物の聖杯は、今、そこでお嬢さんが抱き抱えているルチアお嬢さんの足元に転がっている、その泥だらけのランプの内部の構造そのものさね!」

俺が指し示した先、ルチアお嬢さんの足元に転がっていた真鍮のランプの傘が外れ、その内側から、外の月食の光と共鳴するように、鈍く、しかし底知れない神聖な【本物の黄金の輝き】が溢れ出し、カタコンベの闇を隅々まで白く照らし出した。

## 第六章:夜明けの純白、絵の具の届かない真実のデッサン

「ば、馬鹿な……! 我ら『鏡の国の残響』が、ただのヨレヨレの画家に、すべての計画を見破られるなど……!」

本物の黄金聖杯の光を浴びた黒魔術師たちは、その身に纏う闇の魔力を完全に中和され、糸の切れた人形のようにその場に次々と膝をついた。彼らが床に描いていた血の魔法陣は、聖杯の純粋な霊光によって完全に消し飛ばされ、跡形もなく白い煙となって霧散していった。

「お嬢さん、今のうちにこの悪党どもを、騎士の紐でぐるぐる巻きにしちまいな。それから、ルチアお嬢さんと本物の聖杯を抱えて、地上の光の中へと撤退するぞ!」

「はい、ダヴィンチさん! 悪党たち、大人しくお縄を頂戴しなさい!」

フランチェスカちゃんは頼もしい手際で、魔力を失った魔術師たちを次々と捕縛していった。彼女の白銀の髪が、聖杯の残光を受けて、まるで夜明けの最初の朝日のように美しくきらめいていた。

カタコンベの狭い階段を上り、俺たちが地上のボルゲーゼ邸へと戻ってきた頃には、東の空から月食が終わりを告げ、清々しい夏の朝の光がローマの街並みを包み込み始めていた。

邸宅の門前で、一晩中泣き明かしていたであろうボルゲーゼ男爵が、愛娘の姿を見るなり、激しい地響きを立てて駆け寄ってきた。

「ルチア! ああ、我が愛しのルチア! 無事だったのだな! 神よ、感謝します!」

「お父様! ごめんなさい、私、なんだか変な夢を見ていて……」

抱き合う親子を見つめながら、フランチェスカちゃんは満足そうに猫耳を震わせ、俺のヨレヨレのシャツの袖を引っ張った。

「ダヴィンチさん、今回も本当に凄かったです。スキルが使えなくても、現場の小さな蝋の破片や、ランプの構造の違いだけで、黒魔術の陰謀を完璧に解き明かすなんて。あなたはやっぱり、私の誇りとする最高の探偵です」

「ひゃははは! お嬢さんにそう言ってもらえるなら、おじさんのこのヨレヨレのシャツも、少しは高級な外套に見えてくるかもしれないねぇ。さあ、男爵! 約束通り、お前さんの全財産の半分という名の、最高級の絵の具の報酬をたっぷり頂こうじゃないかい! マルコ店長への家賃も、これで向こう百年分は前払いできるぜ!」

俺が下品に笑いながら男爵に迫ると、男爵は娘を抱きしめたまま、引きつった笑顔で深く頷いた。

こうして、下町を揺るがした黄金聖杯と愛娘の密室誘拐事件は、スキルを持たない一人のヨレヨレ画家の「生身の五感と推理力」によって、一枚の美しい大団円の絵画カンヴァスへと収まったのだった。だが、逃げ去った『鏡の国の残響』の首領の影は、まだローマの歴史の裏側で、次なる邪悪なパレットを用意しているに違いない。俺たちの本当の戦いは、まだまだこれからさね。

(第三話・後編 了)

みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?

少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。

励みになりますので、☆☆☆☆☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。

これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

パラレルワールドで魔法と多種族の住む下町ローマで起こる事件を魔法とスキルで解決していく物語です。時代背景は読者の描く時代に当てはめてくださいね。

よろしくお願いします。

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