## 第十話:『二色の殺意(パレット)、泥塗れのヨレヨレ名探偵』第三部 第四部 了
二話目の投稿です。
誤字脱字が多くなると思いますが、よろしくお願いいたします。
途中で、脱線することもあると思いますが、ゆっくりと見守ってください。
作品の内容が前後することが多々あると思いますが、大目に見て頂ければ、うれしく存じます。
## 第十話:『二色の殺意、泥塗れのヨレヨレ名探偵』第三部 第四部 了
よろしくお願いします
では、参ります!!
## 第十話:『二色の殺意、泥塗れのヨレヨレ名探偵』
### 第三部:雨のテヴェレ川、三つの狂った懐中時計と消えた凶器(後編・時間トリック編)
## 第五章:土砂降りの石橋、遺された三つの時間
「ダヴィンチさん。テヴェレ川の現場から回収された『3つの懐中時計』の物理的な検証を完了しました。
ですが、このデータはあまりにも不気味です。
時計はどれも壊れておらず、ゼンマイも巻かれている。
なのに、なぜ3つの文字盤はすべて異なる『空白の時間』を指して止まっているのですか?」
激しい雨がローマの石畳を叩きつける、深夜のテヴェレ川。
新助手のルカは、ヨレヨレのシャツをびしょ濡れにした俺の隣で、ランタンの灯りが消えないように必死に手帳を庇いながら、凍える手で鉛筆を握り締めていた。
彼の胸の結晶は、依然としてただの『透明な石』のままで、魔力のスキャンは一切使えない。
現場となった古びた石橋の中央には、胸を鋭利な刃物で一突きにされた、美術商の冷たくなった遺体が横たわっている。
そして、その衣服のポケットから発見されたのが、問題の3つの懐中時計だった。
「ルカくん、そのノートに書かれた『3つの止まった時間』を、もう一度おじさんに読み聞かせておくれ」
「はい。第1の時計は『午後2時15分』。
第2の時計は『午後3時ちょうど』。
そして第3の時計は『午後3時45分』。
それぞれ正確に『45分間隔』で針が止まっています。
被害者が殺されたと推定される時間は午後3時。だとするなら、残りの2つの時計が示す時間は一体何を意味しているのですか?
犯人が仕掛けた、僕たちの脳を混乱させるための非論理的な目眩ましですか?」
ルカが雨水で曇った眼鏡を押し上げ、悔しそうに歯噛みした。
「ははは! 目眩ましじゃないさ、ルカくん。
これは犯人が『自分たちのアリバイ』を絶対に崩されないために描いた、完璧な時間のパースペクティブ(遠近法)なのさ」
俺は泥まみれのシャツの袖で顔を拭い、じっと石橋の欄干から、激しくうねるテヴェレ川の濁流を見つめた。
容疑者である大男のマルコと、帳簿係のルチアは、警察の雨合羽に身を包みながら、石橋の袂で冷酷な笑みを浮かべてこちらを見ている。
彼らの長靴についた川底の黒土、そしてハンカチに付着した凶器の煤はすでに暴いた。だが、この「時計の謎」と「消えた凶器の行方」を完全に脳内で解き明かさない限り、彼らを法で裁くことはできない。
## 第六章:消えた凶器のパースペクティブ、天才の脳内デッサン
「おい、ダヴィンチ。いつまで雨の中で突っ立ってやがる」大男のマルコが、太い声を響かせた。「俺たちの泥のアリバイを疑うのは勝手だが、俺は午後3時には東の倉庫にいたんだ。
この石橋で美術商が殺された時間に、俺がここにいたっていう『物理的な証拠』はどこにあるんだよ! 第一、俺の体をいくら荷物検査したって、凶器のナイフなんてどこにも出やしねえだろうが!」
「そうですわ、ダヴィンチさん。私をこんな雨の中に連れ出すなんて、あまりに野蛮ですわ。凶器もない、時間もバラバラ。そんな状態で私たちを犯人扱いするなんて、ただの言いがかりです!」
ルチアが絹のハンカチを強く握り締め、勝ち誇ったように言い放った。
「確かに、川の中をどれだけ探しても、凶器らしき金属反応はありません。彼らが川に投げ捨てたのだとしても、この濁流では一瞬で流されて発見は不可能です。ダヴィンチさん、凶器が証明できなければ、僕たちの論理は完全に破綻します!」
ルカが焦りからノートの手を止め、俺のヨレヨレの袖を引っ張った。
「ははは! ルカくん、みんな、物の見方が一方向すぎるんだよ。絵画を一枚の方向からしか見ない人間には、裏側に隠された傑作(真実)は永遠に視えないのさ」
俺はクスクスと笑いながら、被害者が持っていた3つの懐中時計のうち、真ん中の『午後3時』で止まった時計を指先で弾いた。
「いいかい、ルカ。この3つの時計はね、犯人が時間を書き換えたんじゃない。被害者の美術商自身が、死ぬ間際に【あるシンプルな法則】に従って、自らの手で針を止めたんだよ」
「被害者自身が!? 命が絶えるその瞬間にですか?」ルカが驚愕に目を丸くする。
「そうさ。この3つの時計は、どれもローマの『職人ギルド』が作った、文字盤の裏に小さな【磁石のストッパー】がついた特殊な精密時計なんだ。
強い磁力を近づけると、針がその場でピタッと固定される。
そして、この石橋の欄干の裏には、美術商が取引に使うための『真鍮のケース』が隠されているねぇ。
ルチアさん、お前さんが美術商を油断させて胸を突き刺したその瞬間、彼は最後の力を振り絞って、そのケースの鍵を川へ投げ捨てたんだよ。犯人にお宝(遺産)を渡さないためにね」
「な、なんですって!?」ルチアの顔から、再び余裕の色彩が消え失せた。
「美術商は知っていたのさ。この3つの時計を、石橋の『特定の場所』に並べて置けば、欄干の裏に仕込まれた鉄の磁力の歪みによって、針がそれぞれ【15分刻み、30分刻み、45分刻み】に狂って止まるという、この石橋の物理的な構造をね! つまり、この3つの時計が示しているのは時間じゃない。
犯人がお宝のケースを探すために、この石橋の『どの位置』を歩き回ったかという、決定的な【犯人の足取りの座標データ】なんだよ!」
「――ッ!!!」ルカがハッと息を呑み、即座に手帳に石橋の縮尺図をデッサンし始めた。
「計算完了! 午後2時15分、3時、3時45分という数字を石橋の長さに換算すると犯人がお宝を探して何度も往復した、歩幅のデータと完全に一致します!」
「そして、大男のマルコくん。お前さんが『凶器はどこにもない』と言ったねぇ」
俺は一歩前へ出て、マルコが雨合羽のフードの下に深く被っている、その『大きな鉄製の雨傘の柄』を指差した。
「お前さんが持っているその雨傘中棒の真鍮のパイプが、不自然に削れて尖っているねぇ。
お前さんはナイフなんて使ってない。
最初から、その『雨傘の先端』で美術商の胸を突き刺し、そのまま何食わぬ顔で傘を差して、雨の中に溶け込んだんだよ! だから凶器を捨てる必要もなければ、荷物検査で見つかるはずもない。だって、凶器は今も、お前さんの頭の上で【雨を凌いでいる】んだからねぇ!!」
「う、うわあああああああッッッ!!!!」
マルコとルチアが同時に悲鳴を上げ、土砂降りの石橋の上に激しく転がった。
魔法も、スキルも、異能のインクも一切ない。ただの雨傘の構造、磁力の法則、そして被害者が遺した死の座標。
ヨレヨレのシャツを着た名探偵の圧倒的な『頭脳のパレット』の前に、重厚な交換殺人のペテンは、完全にその全貌を暴き出されたのだった!
第十話:『二色の殺意、泥塗れのヨレヨレ名探偵』
第四部(最終章):夜明けのテヴェレ、欺瞞のパレットを洗い流す純白のロジック(解決編)
第九章:崩壊する共犯者、雨傘の下に隠された『第四の罪』
「――さて、ピエロくん、マルコくん、そしてルチアさん。
これでお前さんたちが描いた『交換殺人』の構図は、隅から隅まで完全に真っ白に塗り潰された(デリートされた)わけだがまだ何か、言い残したい『デッサン(嘘)』はあるかい?」
深夜のテヴェレ川。激しかった雨が嘘のように止み、雲の切れ間から冷たい月光が石橋を照らし出していた。
俺は、泥と雨水でドロドロになったヨレヨレの白いシャツの襟元を正し、力なく膝をついた3人の容疑者たちを、静かに、しかし絶対的な威圧感を持って見下ろした。
「あ、あはは。すごい、すごいですよ、ダヴィンチさん。魔法もスキルも使えない、ただのヨレヨレのおじさんだと思ってたのに」
気弱な職人を演じていたピエロが、狂ったような笑い声を上げ、血走った目で俺を睨みつけた。
「僕たちは完璧だったはずだ! お互いのアリバイを交換し、泥を付け替え、時計で時間を狂わせた! 魔法のスキャンでも見抜けない『物理の壁』を築いたはずなのになぜ、なぜただの『観察』だけで、僕たちの人生を台無しにするんだッ!」
「台無しにしたのは、お前さんたち自身さ。芸術っていうのはね、どれほど精緻に模倣しても、描いた本人の『魂のノイズ』までは隠しきれないものなんだよ」
俺は足元に転がった、マルコの『雨傘の凶器』を拾い上げ、その真鍮の中棒の鋭利な先端を月光に翳した。
「お前さんたちの動機は、農園の利権や美術商の遺産なんかじゃない。
もっと矮小で、もっと醜い【魔法への劣等感】だ。お前さんたちは、魔法の才能がない自分たちの無力さを、この『魔法を頼りにする探偵(俺たち)』を出し抜くことで証明したかったそうだね、ルチアさん?」
「フン、お見通しですのね」
ルチアは高級な絹のハンカチを投げ捨て、地面に這いつくばりながらあざ笑った。
「ええ、そうですわ! 魔法使いが支配するこのローマで、私たちは泥にまみれて働くしかなかった! だから、あなたのような『万能』を名乗る男を、物理のトリックだけで地獄へ叩き落としてやりたかったのよ!」
「非論理的です」
新助手のルカが、自身の魔力を失った『透明な結晶』の胸を張り、一歩前へ出た。
「魔法がないからこそ、人間は自らの足で歩き、自らの脳で世界を計測する。それを殺人の言い訳にするなど、僕の論理計算では、1文字の価値もないゴミデータです」
ルカの冷徹な、しかし真っ直ぐな言葉が、3人の共犯者たちの心を完全に打ち砕いた。
まもなく、駆けつけた警備隊によって、3人は手錠をかけられ、夜明け前の暗闇の中へと連行されていった。
ワイナリーの密室と、雨の石橋の時計――。2つの難事件を巡る重厚な推理ドラマは、こうしておじさんの『観察眼』という名の一筆によって、幕を下ろしたのだった。
第十章:夜明けのローマ、眠り姫に捧ぐ真実のスケッチ
「ふぅ。やれやれ、今回の事件は、今までで一番シャツがヨレヨレになっちまったぜ!」
俺は石橋の欄干に背を預け、白み始めたローマの東の空を見つめた。
空は深い群青色から、鮮やかな黄金色とサクラピンクのグラデーションへと塗り替えられていく。
まるで、お嬢さんのあの美しい猫耳の輝きのように。
「ダヴィンチさん。結局、魔法もスキルも使わずに解決してしまいましたね。僕も、少しだけ考えを改めなければなりません。データやスキャンだけが、世界の真実を映し出すパレットではないということを」
ルカが自身の眼鏡をハンカチで丁寧に拭きながら、珍しく穏やかなトーンで呟いた。
「ははは! 気づくのが遅いよ、ルカくん。おじさんはねぇ、最初から言ってるじゃないか。世界は美しい。
だけど、その美しさをデッサンするためには、魔法のフィルターを通すんじゃなくて、自分の生身の目で見つめなきゃいけないんだってね。」
俺たちは、泥まみれの足取りで、街の病院へと戻った。
静まり返った病室の中。フランチェスカは変わらず、白いシーツに包まれて、静かな寝息を立てていた。
「お嬢さん、ただいま。今回の事件は、ちょっと複雑な色彩だったけど、おじさんとルカくんで、完璧にクリーンアップしておいたよ」
俺は彼女の枕元に、石橋のたもとで拾った、雨上がりに咲く小さな青い花をそそっと置いた。
魔法が解けたあとの、静かな、だけど確かな日常の色彩。
フランチェスカはまだ、目を覚まさない。
だけど、夜明けの光を浴びた彼女の白銀の猫耳は、昨日よりもほんの少しだけ、命の輝きを増したような気がした。
「さて、ルカくん、レオ。お嬢さんがいつ起きてもいいように、おじさんはまた新しい『万能の設計図』を練り始めるとするよ。次はどんなハッピーな名画を描こうかねぇ。」
ヨレヨレの天才画家の背中に、ローマの輝かしい朝日が降り注ぐ。
みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?
少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。
励みになりますので、☆☆☆☆☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。
これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
パラレルワールドで魔法と多種族の住む下町ローマで起こる事件を魔法とスキルで解決していく物語です。時代背景は読者の描く時代に当てはめてくださいね。
パラレルワールドで今度は、エジプトギザです
よろしくお願いします。




