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エジプト ギザピラミッド 世界遺産編 8章

二話目の投稿です。

誤字脱字が多くなると思いますが、よろしくお願いいたします。

途中で、脱線することもあると思いますが、ゆっくりと見守ってください。

作品の内容が前後することが多々あると思いますが、大目に見て頂ければ、うれしく存じます。

新作始めます。探偵物です。

世界遺産編エジプトギザのピラミッド開幕です

夜中に間違えて9章を投稿してしまいました。

8章投稿します。読んでいただけると嬉しいです。

当初から作品を見ていただき本当にありがとうございます。

大変励みになっております。

これからもよろしくお願いします。

では、参ります!!


エジプト ギザピラミッド 世界遺産編 8章


## 第二十九話:紫の帳と、狂える耳


第三の試練であった石化の呪いを解き、大河に清らかな真水を取り戻したのも束の間、ギザの住人たちには、肉体ではなく「精神」を直接破壊する最も陰湿な天罰が待ち受けていた。

第四の試練――【嘘つきのイシスのヴェール】である。

太陽が西の地平線に沈み、超古代の夜がギザを包み込んだその瞬間、スフィンクスの足元の亀裂から、ねっとりとした不気味な「紫色の霧」が噴き出し始めた。霧は瞬く間に大河を、ピラミッドを、そして住人たちの集落を完全に覆い尽くしていった。

この霧は、ただの気候変動ではない。神々が去ったことで防壁を失った、人の心の「猜疑心」を増幅・具現化させる精神汚染のヴェールであった。

霧を吸い込んだ者の耳には、恐るべき変調が起こる。他者が発するどんなに親切な言葉も、どんなに温かい感謝の言葉も、すべてが「自分を貶め、嘲笑し、殺そうと企む呪詛や悪口」へと変換されて脳内に響いてしまうのだ。

「アシャ、今日も水を運んでくれてありがとう」

そう微笑みかけた人間の少女の言葉は、アシャの耳には、

『役立たずの猟師め、早く飢えて死ねばいいのに』

という、歪んだ毒々しい罵声となって突き刺さった。

「な、なんだって……!? 君、今なんて言ったんだ!」

アシャは耳を塞ぎ、血走った目で少女を睨みつけた。少女もまた、アシャの戸惑いの言葉が『この醜い泥棒猫め、お前の喉を掻き切ってやる』と聞こえ、恐怖に悲鳴を上げて逃げ惑う。

集落の生活風景は、一晩にして「音のない冷徹な孤絶の世界」へと一変した。

声を掛け合えば必ず殺し合いに発展するため、住人たちは誰一人として口を開かなくなった。

人間、大地族、天空族、水精族……昨日まで手を取り合って真水を喜び合っていた彼らは、今や互いを完全に「言葉の通じない怪物」として見なし、家の中に引きこもって扉に何重もの閂をかけていた。

外を歩く者は皆、厚い布で耳と口を固く縛り、視線が合うだけで武器の柄に手をかけるという、極限の精神的暗殺空間が完成していた。

この狂気の霧のなかで、唯一、その知性の異常な高さゆえに精神汚染を跳ね返している男がいた。レオナルド・ダ・ヴィンチである。

彼はルネサンスの外套の襟を立て、紫色の霧が漂う中央広場に一人、佇んでいた。

「音波の振動そのものが、大気中の魔力粒子によって鼓膜の手前で反転している。実に悪趣味な、しかし完璧な精神力学だ。人間の脳がいかに脆く、他者の言葉という不確定なものに依存しているかがよく分かる」

レオナルドは懐から「時空の羅針盤」を取り出した。

これまでの三つの試練をクリアしたことで、羅針盤の表面は七分の三――約半分近くまでエメラルドグリーンの輝きに満たされている。しかし、磁針は紫色の霧の魔力に拒絶されるように、ピクリとも動かない。

「まだだ。この精神の迷宮を解き明かさねば、私はルネサンスの地を踏む前に、猜疑心の泥沼で狂い死ぬ。……そして、誰も言葉を信じぬこの世界だからこそ、犯人にとっては最高の『舞台』が整ったというわけだ」

レオナルドがそう呟き、羅針盤を収めたその時。紫の霧の奥から、ドサリという、肉体が冷たい地面に叩きつけられる不穏な音が響いた。

言葉を失った楽園で、第十六の、そして最も「誰も信用できない」猟奇殺人事件の幕が上がったのである。


## 第三十話:第十六の沈黙、密告者たちの五線譜


紫色の霧を透かしてレオナルドが近づくと、そこには人間たちの住居区の真ん中で、頭部を激しく破壊された男の遺体があった。

被害者は、人間たちの間で「通信係」を務めていた青年、ルカ。彼は言葉が呪詛に変わるこの霧のなかで、文字パピルスを使って各種族間の連絡を取り持とうと試みていた、貴重な理性の持ち主だった。

しかし、彼の死体の周囲には、すでに数人の住人たちが集まり、互いに武器を構えて言葉なき睨み合いを続けていた。

大地族のガラク、天空族の戦士、そして人間の過激派。彼らは霧のせいで、互いが「俺がルカを殺した、次はお前だ」と言い合っているように聞こえており、今にも全面衝突が起きる寸前だった。

「全員、その武器を収めよ。お前たちの耳に届いている言葉は、すべて大気が作り出した虚像だ」

レオナルドが毅然と割り込んだが、彼のその言葉すら、住人たちの耳には『お前たち全員をここで処刑してやる』という冷酷な宣告に変換されていた。住人たちの目が、一斉にレオナルドへと向けられる。

「やれやれ、これだから凡俗の耳を相手にするのは骨が折れる」

レオナルドはため息をつくと、懐から一枚の真っ白なパピルスを取り出し、そこに自身の携帯用ペンで素早く「文字」を走らせた。

『静かに遺体を見ろ。言葉ではなく、事実だけを目に焼き付けるのだ』

文字による伝達。これには霧の魔力も作用しない。アシャやガラクたちは、レオナルドが示した文字を読み、かろうじて武器を下ろした。

レオナルドはルカの遺体の前に屈み込み、その破壊された頭部を精査した。

ルカの頭蓋骨は、背後から一撃で粉砕されていた。凶器は周囲に転がっている、ギザの至る所にあるありふれた巨石だ。一見すれば、霧による狂乱のなかで、誰かが突発的に犯した撲殺事件のように見える。

しかし、レオナルドの目は、ルカが死の間際まで右手に固く握りしめていた「一枚のパピルスの破片」に留まった。

そのパピルスには、ルカの血によって、奇妙な「五本の横線」と、その上に不規則に並んだ「いくつかの点」が書き残されていた。それはまるで、ルカが最期に遺した、犯人を示す楽譜(五線譜)のようであった。

「文字による告発か。だが、これはただの音符ではないな」

レオナルドはパピルスを月光に透かし、その点の配置を数学的に計算し始めた。

「レオナルド……これ、ルカが死ぬ前に書いた犯人の名前なのか?」

アシャが震える手でパピルスに文字を書いて見せた。

レオナルドは文字で返答を綴る。

『いや、これは名前ではない。これは、犯人が彼を襲った瞬間に発した【声の周波数】を、耳の肥えたルカが絶対音感で記録したものだ。犯人はルカを後ろから殴る直前、何か言葉を発した。

ルカの耳にはそれが罵声に聞こえたはずだが、彼はその音の「高低」だけを正確にメモしたのだ。……だが、容疑者全員が霧に狂っているこの状況で、この音を再現することは容易ではないな』

第十六の殺人事件。それは、言葉が最大の凶器と化す世界で、あえて「声」を手がかりに遺した、被害者からの命懸けのダイイングメッセージであった。

だが、誰の声がこの楽譜と一致するのか。霧のなかで全員が狂ったように叫び立てるなか、天才探偵は、容疑者全員の「本当の声」を聞き分けるという、不可能に近い聴覚の謎解きに挑むことになる。


## 第三十一話:第十七の狂音、容疑者全員の嘘


ルカの事件の興奮が冷めやらぬ翌日の午後、紫色の霧はさらにその濃度を増し、住人たちの精神を完全に崩壊の極限へと追い詰めた。

もはや文字によるコミュニケーションすら、住人たちは「この文字には裏の意味があるのではないか」と疑い始め、パピルスを破り捨てて互いの家に火を放ち始める始末だった。

そんな地獄絵図のなか、ピラミッドの東側にある「瞑想の回廊」で、第十七の殺人事件が、さらに凄惨な形で発生した。

被害者は、人間たちの間で最も物静かであり、今回の霧のなかでも他者を一切攻撃せず、ただ一人で部屋に閉じこもっていた祈祷師の女性、ミーナだった。

彼女の遺体は、瞑想の間の壁に「生きたまま釘付け」にされていた。彼女の衣服は激しく引き裂かれ、その胸には、神々の儀式で使われるオリハルコン製の長い「調律用の音叉フォーク」が、心臓を正確に貫いて突き刺さっていた。

「ミーナまで……! 彼女は何も喋らなかったのに、どうして殺されなきゃいけないんだ!」

アシャは文字を書く余裕すらなく、声にならない叫びを上げた。

周囲にいた天空族や大地族の容疑者たちは、霧の狂気のなかで、互いが「私が彼女を刺した」「いや、お前が彼女の肉を削いだのだ」と叫び合っているように聞こえ、ついに全面的な殺し合いを始めてしまった。広場は、武器がぶつかり合う金属音と、呪詛に満ちた悲鳴で埋め尽くされる。

「愚かな。狂った大気の奏でる不協和音に、これほど簡単に踊らされるとは」

レオナルドが、殺し合いの渦中に堂々と足を踏み入れた。彼は一切の武器を持たず、手にはただ、ミーナの胸から引き抜いた「調律用の音叉」だけを握っていた。

レオナルドは音叉を自分の爪で軽く弾いた。ビィィィン……と、紫色の霧を切り裂くような、極めて不快な高音が周囲に鳴り響く。

その音を聞いた瞬間、殺し合いをしていた容疑者たちの動きが、まるで時が止まったかのようにピタリと止まった。その音叉の響きには、一時的に霧の魔力を打ち消し、人間の脳の聴覚中枢を強制的に「正常化」する周波数が含まれていたのだ。

「全員、今の一瞬だけは、私の本当の声が届いているはずだ」

レオナルドはパピルスを使わず、自らの肉声で冷然と語りかけた。

「第十七の事件、ミーナの心臓を貫いたこの音叉。これに施された加工を見てみろ。

これは、ただの楽器ではない。大気中の『紫の霧』を吸い込み、それを超高圧の精神破壊波へと変換して、特定の個人の脳に直接送り込むための『指向性兵器』だ。ミーナは部屋に閉じこもって沈黙していたのではない。犯人によって、この音叉を使って外から四六時中『偽りの罵声』を脳内に流し込まれ、自ら心臓を突き刺すように【精神を誘導マインドコントロール】されていたのだ。胸の釘は、彼女が暴れないように死後に固定されたものだ」

「何だって……!? 自殺に見せかけた、いや、精神を操った殺人……!?」

ガラクが驚愕で四本の腕を震わせる。

第十七の殺人事件。手口は「音叉を用いた精神誘導と、死体遺棄」。

ルカの撲殺事件とは、あまりにも手口の洗練度が異なっていた。一方は原始的な暴力、一方は神々のテクノロジーを悪用した高等な精神殺人。

しかし、レオナルドの脳内では、この二つの事件が、ルカが遺した「五線譜のメッセージ」を介して、一本の太い線へと繋がろうとしていた。

「容疑者は全員、自分が犯人だと言い張っているな」

レオナルドは不敵に微笑み、音叉を霧のなかへと掲げた。

「だが、すべての嘘が重なり合うその中心に、ただ一人、自らの『本当の声』を完璧に隠している演奏者がいる。アシャ、ガラク、これより、この霧の迷宮の指揮者を告発する」


## 第三十二話:イシスの脱衣、天才の絶対音感


「全種族の容疑者たちよ、そしてこの霧のなかで自らを狂人と偽っている真犯人よ、これ以上の演奏は無用だ!」

レオナルド・ダ・ヴィンチの凛とした声が、スフィンクスの前に集まった数千の住人たちの脳内に、ミーナの音叉の残響と共に直接響き渡った。

住人たちは、一時的に取り戻した理性のなかで、驚愕と共に異界の探偵を見つめていた。

「レオナルド、誰が犯人なんだ! ルカを殺し、ミーナの精神を破壊した、この霧の悪魔は誰なんだ!」アシャが叫ぶ。

「犯人は、悪魔でも神々でもない。この『嘘つきの霧』が始まったとき、最も早く他種族への攻撃を扇動し、かつ『自分は何も聞こえない高潔な存在だ』と嘘をついていた者だ」

レオナルドは一歩前へ出、手にしたルカの五線譜を高く掲げた。

「第十六の事件で、ルカが遺したこの音符。これは犯人の声の周波数だと言ったな。そして第十七の事件、ミーナを殺した音叉の基本振動数。この二つの数字を幾何学的に掛け合わせると、ある特定の種族が、神々の神殿で儀式を行う際に発する【聖歌の音程】と完全に一致するのだ」

広場に、凍りつくような緊張が走る。

「その音程を、このギザの地で唯一、完璧に発声できる者がいる。……水精族の若き歌い手であり、各種族の仲裁人を気取っていた、アルス。お前だ!」

レオナルドの指先が、群衆のなかで最も大人しく控えていた、青い皮膚を持つ水精族の青年を正確に指ししめした。

「な……何を言うのです、レオナルド! 私は水精族のなかでも、最も対話を望んでいた者ですよ! この霧のせいで、私の言葉もあなたには罵声に聞こえているのでしょう!」

アルスが悲しげな声を上げる。

「いや、私の耳にはお前の本当の声が届いているよ、アルス」

レオナルドは冷酷に言い放った。

「お前は生まれつき、大気中の振動を自在に操る特殊な能力ヘカを持っていた。お前は神々が去った後、自分が新たなギザの支配者になることを望んだ。

そのために、ピラミッドの下から『紫の霧』を噴出させるバルブを開放し、この第四の試練を意図的に引き起こしたのだ。ルカを殺したのは、彼がお前の能力による空気の歪みに気づいたからであり、ミーナを殺したのは、彼女の強い精神力が、お前の霧の洗脳を弾いてしまったからだ!」

アルスはしばらく無言でレオナルドを睨みつけていたが、やがてその端正な顔を歪め、狂ったような高音で笑い始めた。

「アハハハハ! さすがは万能の天才、レオナルド・ダ・ヴィンチ! 完璧なアリバイを作ったつもりが、まさか『声の幾何学』で破られるとはね! そうさ、僕がこの愚かな虫ケラどもを霧で躍らせていたんだよ!」

アルスがその本性を現し、周囲の霧を凝縮して無数の「空気の刃」をレオナルドへ放とうとしたその瞬間、ガラクの巨大な石の棍棒がアルスの足元の大地を砕き、アシャの放った猟銃の弾丸が、アルスの喉元を正確に貫いた。本当の声を見失わなかった住人たちの、怒りの一撃であった。

アルスが崩れ落ち、その息が絶えた瞬間、ギザ全域を覆っていたおぞましい紫色の霧は、まるで幻だったかのように、一瞬にして夜空の彼方へと霧散していった。

天空には、神々が去って以来、最も美しい「満天の星空」が広がり、住人たちの耳には、他者の「本当の温かい声」が、ありのままに届くようになった。

「アシャ……ごめん、俺、お前を疑ってた」

「いいんだ、ガラク。俺たち、霧に騙されてたんだな」

各種族は互いに抱き合い、言葉が通じることの奇跡に涙を流した。

レオナルドが懐の「時空の羅針盤」を取り出すと、その表面は、今や全体の「七分の四」――半分を超え、圧倒的なエメラルドグリーンの光を放ち始めていた。磁針はもはや狂うことなく、元のルネサンスの世界がある「十五世紀のイタリア」の座標を、力強く指し示している。

「フッ、半分を超えたか。私の帰るべき我が家が、少しずつ近づいているな」

レオナルドは満足げに微笑み、羅針盤を収めた。しかし、彼の鋭い視線は、満天の星空のなかで、一際不気味に輝きを増した「スフィンクスの瞳」を捉えていた。

第四の試練【嘘つきの霧】が破られたことで、世界はさらなる深淵の罠を用意している。次なる第五の試練――自らの悪意が実体化する「影の双子」の足音が、静まり返ったギザの街に、確かに響き始めていた。

天才レオナルド・ダ・ヴィンチの、時空を賭けた謎解きは、ついに後半戦へと突入する。

みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?

少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。

励みになりますので、☆☆☆☆☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。

これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

パラレルワールドで魔法と多種族の住む下町ローマで起こる事件を魔法とスキルで解決していく物語です。時代背景は読者の描く時代に当てはめてくださいね。

パラレルワールドで今度は、エジプトギザです

よろしくお願いします。

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