エジプト ギザピラミッド 世界遺産編 9章
二話目の投稿です。
誤字脱字が多くなると思いますが、よろしくお願いいたします。
途中で、脱線することもあると思いますが、ゆっくりと見守ってください。
作品の内容が前後することが多々あると思いますが、大目に見て頂ければ、うれしく存じます。
新作始めます。探偵物です。
世界遺産編エジプトギザのピラミッド開幕です
当初から作品を見ていただき本当にありがとうございます。
大変励みになっております。
これからもよろしくお願いします。
では、参ります!!
エジプト ギザピラミッド 世界遺産編 9章
## 第三十三話:実体化する悪意と、漆黒の隣人
第四の試練であった精神の霧を晴らし、互いの「本当の声」を取り戻したギザの住人たちを待ち受けていたのは、超古代のテクノロジーがもたらす、最もおぞましく、そして最も直感的な自己崩壊の風景であった。
第五の試練――【影の双子(アヌビスの鏡)】。
それは、スフィンクスの背後に聳え立つ第二のピラミッドが、神々の統御を失ったことで放った、精神物質化の呪いだった。 ある朝、住人たちが目覚めると、ギザの至る所に「漆黒の鏡」のような不可視のエネルギーの歪みが発生していた。そして、その歪みから、住人たちと全く同じ姿、全く同じ記憶、全く同じ声を持った「影の偽物」が次々と這い出してきたのだ。
この影の双子たちは、単なる幻影ではない。神々のシステムが、住人たちの心の奥底に眠る「他者への嫉妬、強欲、嘘、殺意」といったパンドラの箱の悪意をスキャンし、血の通った肉体として物理的に実体化させたものだった。
「来るな! 近寄るな! お前は誰だ!」
集落の路地裏で、人間の職人が、自分と寸分違わぬ姿をした「影」に向かって斧を振り回していた。しかし、影の男は冷酷な笑みを浮かべ、職人と全く同じ美しい手つきで石工のノミを構える。
「私はお前さ。お前が昨晩、隣人の食料を盗もうと考えた、その醜い欲望そのものだよ」
集落の生活風景は、一瞬にして「絶対的な疑心暗鬼の狂気」へと叩き落とされた。
街のあちこちで、全く同じ姿をした二人の男が取っ組み合いの喧嘩をしており、どちらが本物で、どちらが影の悪意なのか、周囲の者には全く見分けがつかない。大地族のガラクも、四本の腕を持つ自分自身の影と対峙し、どちらが本物の戦士かを証明するために激しい地響きを立てて殴り合っていた。
住人たちは、愛する家族や戦友すら信じられなくなった。家の中には、本物の妻と、妻の悪意から生まれた影の妻が同居し、互いに「私が本物だ」と主張し合う地獄絵図が繰り広げられている。会話は消え去り、あるのは「自分自身の偽物」をいかにして抹殺するかという、血を洗う自己闘争の風景だけだった。
この漆黒の鏡の世界のなかで、やはり、その完璧な理性を保ち続けている男がいた。レオナルド・ダ・ヴィンチである。
驚くべきことに、レオナルドの周囲には、彼の「影」は一人も現れていなかった。彼の内なる探究心と知性は、神々のシステムすらもスキャンしきれないほど、純粋で底が知れなかったのだ。
「人間の精神に宿る二面性を、素粒子レベルでコピーして物質化するとは。神々の科学は、ついに『魂の複製』の領域にまで達していたか」
レオナルドは仮初めの工房で、時空の羅針盤を見つめていた。
これまでの四つの試練を解決したことで、羅針盤の表面は七分の四――半分を超え、瑞々しいエメラルドグリーンの光を放っている。しかし、磁針は今、自分の周囲を忙しなく動き回る「他人の影」たちの魔力によって激しくブレており、帰還の門を固定できない。
「まだ帰れんか。……だが、自分自身のアリバイを完璧に証明できる『影』が存在するこの世界だ。犯人にとっては、これ以上ない完璧なトリックの舞台が整ったというわけだな」
レオナルドがそう呟いた瞬間、工房のすぐ外の広場から、肉体が激しく引き裂かれるような、悍ましい絶叫が響き渡った。
第十八の、そして探偵業の歴史において最も困難な「自分自身のアリバイ崩し」を要求される、前代未聞の殺人事件が幕を開けたのである。
## 第三十四話:第十八の審判、完璧なる自己のアリバイ
レオナルドがアシャ(幸いにも、彼の影もまだ現れていなかった)と共に広場へ駆けつけると、そこには大地族の居住区の入り口で、一本の巨大な石柱に括り付けられたまま息絶えている、大地族の長老、ゴルダの遺体があった。
しかし、その現場の異常さは、これまでの殺人事件の比ではなかった。
遺体のすぐ目の前に、二人の「全く同じ姿をした大地族の男」が、血に染まった大斧を手にし、激しく罵り合っていたのだ。その男の名はバル。長老ゴルダの第一の側近であり、次期長長候補の有力な戦士だった。
「俺が本物だ! 影の偽物が、長老を暗殺したんだ!」
向かって左のバルが叫べば、右のバルも全く同じ声、全く同じ怒りの表情で叫び返す。
「ふざけるな、お前こそ長老を妬んでいた影だ! 俺は長老を守ろうとした本物のバルだ!」
周囲に集まった住人たちは、どちらを捕らえるべきか分からず、ただ武器を構えて硬直していた。
レオナルドは冷然と遺体の前に歩み寄り、長老ゴルダの傷口を観察した。
ゴルダの太い首は、大地族に伝わる儀式用の大斧によって、一撃で切断されていた。死亡推定時刻は、ほんの数分前。そしてタチの悪いことに、左のバルも、右のバルも、その大斧にはべっとりとゴルダの血が付着していたのだ。
「レオナルド、これはどうすればいいんだ……! 二人とも、バルの記憶も能力も持っている。どちらかが本物で、どちらかが影の殺人鬼なんだ!」
アシャが頭を抱えて叫ぶ。
レオナルドは二人のバルの前に立ち、その鋭い眼光で彼らを凝視した。
「フフ、実に見事な『完璧なアリバイ』だ。犯人は、自分自身の影が生まれることをあらかじめ予期し、それを利用した。もし左のお前が本物だとすれば、右のお前が殺したと言い張ればいい。もし右のお前が本物なら、左のお前に罪を擦り付ければいい。なぜなら、影は『本物の悪意』から生まれるのだからな」
レオナルドは二人のバルの衣服、手のひらのタコ、そして大斧の刃の欠け具合を細かくスキャンしていった。神々のコピー能力は完璧であり、物理的な差異は一分子の狂いもないように見えた。
だが、レオナルドの脳内にある万能の計算機は、物理的な形ではなく、彼らの「行動の幾何学」から、決定的な矛盾を導き出していた。
「バル。お前たちは二人とも、自分が本物であり、相手が長老を殺した影だと主張するな。だが、お前たちは重大な『自然界の法則』を忘れている」
レオナルドは自身のペンを取り出し、パピルスに二つの反転した曲線を素早く描いた。
「影の双子は、本物の『悪意や欲望』を物質化したものだ。つまり、本物が『長老を殺したい』と強く願ったからこそ、その殺意の塊として影の双子が誕生した。……問題は、実際に大斧を振るって長老の首を刎ねたのが、本物の肉体なのか、それとも実体化した影の肉体なのか、という点だ。バル、お前たち二人のうち、一人は『長老を殺した記憶』を持ち、もう一人は『長老を殺そうとした強い意志』を持っている。私はその内なる精神の質量を、今から解き明かしてみせよう」
第十八の殺人事件。それは、自分自身のドッペルゲンガーを容疑者に仕立て上げるという、究極の密室ならぬ「人間密室」の謎解きであった。天才探偵のメスが、バルという一人の男の、引き裂かれた精神の深淵へと突き立てられようとしていた。
## 第三十五話:第十九の模倣、鏡の中の連続猟奇
バルの事件の審問が続くなか、ギザの地にはさらなる混沌――第十九の殺人事件が、まるで鏡の反射のように連鎖して発生した。
現場は、ピラミッドの影が最も長く伸びる、集落の北端にある「織物師の天幕」だった。
被害者は、人間たちの間で美しい衣服や防壁用の布を織っていた、大人しい気質の女性、セリア。彼女の遺体は、自らが愛用していた巨大な織機(織り機)の糸に、まるで「蜘蛛の巣に囚われた蝶」のように全身を複雑に絡め取られ、窒息死していた。
しかし、この事件の恐るべき点は、彼女の遺体のすぐ隣で、やはり「二人の全く同じ姿をしたセリア」が、互いの髪を掴み合って泥沼の取っ組み合いを演じていたことだ。
「この泥棒猫! 私の人生を奪わないで!」
「お前こそ私の影よ! 消え失せなさい!」
一晩に二度も起きた、同一人物による容疑者の重複。住人たちの理性は完全に崩壊し、もはや誰が本物で誰が偽物かを議論することすら放棄し、全員をまとめて焼き殺そうという過激な声が上がり始めた。
「待て、全員。このセリアの事件は、先ほどのバルの事件とは、本質的に構造が『反転』している」
レオナルドが織物師の天幕に現れ、争う二人のセリアを引き離した。彼の目は、織機に絡みついた糸の「結び目の幾何学」を冷徹に見つめていた。
「レオナルド、どういうことだ? こっちも、どちらかが本物で、どちらかが影のセリアなんだろ?」アシャが尋ねる。
「いや、アシャ。よく見るがいい。この織機に絡みついている糸の結び方は、ギザに伝わる伝統的な結び方ではない。これは……私が以前、十五世紀のミラノでお見せした、衣服の強度を高めるための【特殊な螺旋結び(レオナルド・ノット)】だ」
「な、何だって……!?」アシャが目を見開く。
「セリアは、私のこの結び方を一度も見たことがないはずだ。ではなぜ、彼女の遺体は私の螺旋結びで固定されている? 理由は一つしかない。この事件を引き起こした犯人は、セリアたちではない。……バルだ」
レオナルドの鋭い視線が、天幕の入り口で大地族の戦士たちに連行されてきた、二人のバルの姿を捉えた。
「バルがお前を殺したというのか、セリア?」レオナルドが二人のセリアに問いかける。
二人のセリアは同時に、恐怖に怯えながら頷いた。「はい……昨日、バル様が私の天幕に来て、私の織機の糸を使って何かを実験していました……」
第十九の殺人事件。それは、影の双子という環境の混乱を利用し、全く無関係な人間の犯行に見せかけようとした、極めて悪質な「模倣の罠」であった。
「繋がったぞ」レオナルドの脳内で、バラバラだった二つの猟奇事件のピースが、美しい数式のようにカチリと噛み合った。
「犯人は、神々が遺したこの『アヌビスの鏡』という試練のシステムを完璧に理解し、それを利用して、ギザの権力構造を自分のものに書き換えようとしたのだ。左のバル、右のバル、お前たちのどちらが『本物の天才の殺人鬼』か、今すぐこのスフィンクスの前で白日の下に晒してやろう」
外からは、自分自身の影と戦い続ける住人たちの悲鳴が響き渡る。極限の状況下で、万能の天才による、究極の「自己の証明」の幕が上がろうとしていた。
## 第三十六話:悪意の蒸発、探偵の対称性破り
「全ての住人、そして自らの影と戦う哀れな複製たちよ、今すぐ第二のピラミッドの前へ集まるがいい!」
レオナルド・ダ・ヴィンチの、理性の結晶のような声が、ギザの全域に響き渡った。
住人たちは、自分と同じ姿をした影と互いの腕を掴み合ったまま、しぶしぶ異界の探偵の前に集まった。数千人の広場には、全く同じ顔が二つずつ並ぶという、極めて異様な光景が広がっていた。
「レオナルド、もう限界だ! どちらが本物か分からないなら、俺たちは自分ごと影を突き殺す!」一人の人間の戦士が叫ぶ。
「自害すれば犯人の思う壺だ、愚か者め」
レオナルドは冷然と言い放ち、手にした二つの大斧を地面に突き立てた。
「第十八の事件、長老ゴルダを殺したバルの大斧。そして第十九の事件、セリアを縛り上げたミラノの螺旋結び。お前たちは、これを『影が勝手に暴走して犯した罪』だと考えている。だが、真実は違う。犯人は、自らの影が生まれるよりも【前】に、すでに長老の暗殺計画を完了していたのだ」
広場に、凍りつくような静寂が訪れた。
「神々のアヌビスの鏡は、本物の『心の中の悪意』を物質化するものだと言ったな。左のバル、右のバル。お前たちのうち、一方の肉体は、今朝、ピラミッドの光を浴びて誕生したばかりだ。コピー能力は完璧だが、神々のシステムには一つだけ、自然界の摂理に基づいた『エラー』がある。それは【時間の記憶】だ」
レオナルドは二人のバルの「右手」を同時に掴み、それを高く掲げた。
「長老ゴルダが殺されたのは数分前だが、彼の部屋の隠し金庫から、各種族の領地を記したパピルスが盗まれたのは、昨晩の深夜だ。バル、お前は昨晩、長老の目を盗んでそのパピルスを奪う際、金庫のオリハルコンのトゲによって、右手の親指の付け根に『微かな引っかき傷』を負ったはずだ」
二人のバルの右手を見る。驚くべきことに、左のバルの右手には細い傷があり、右のバルの右手には、全く傷がなかった。
「傷がある方が……本物か!?」アシャが叫ぶ。
「いや、逆だ、アシャ」レオナルドは不敵に微笑んだ。
「傷がない方――右のお前こそが、昨晩、盗みを働き、長老を殺害した【本物のバル】だ!」
「な、何だって!? 傷がない方が本物なわけがないだろ!」右のバルが狼狽する。
「お前は昨晩、パピルスを盗んだ後、自分の右手の傷を見て激しく後悔し、恐怖した。『この傷のせいで、明日、長老に犯行がバレてしまう』とな。お前のその『傷を消したい、無かったことにしたい』という強烈な自己保身の隠蔽欲こそが、神々のシステムによって物質化されたのだ。つまり、今朝生まれた影のバル(左のお前)は、お前の『傷を負う前の、完璧な状態のアリバイ』として、傷のないお前の肉体から、傷を【反転】させて傷を押し付けられた状態で誕生したのだよ!」
レオナルドのその幾何学的な精神分析の前に、右のバルはガタガタと震え始め、ついにその場に膝をついた。
「あ……ああ……! 俺の傷が……影に移ったのか……! 俺が、俺が長老を殺したんだ!」
本物のバルが罪を認めたその瞬間、左の影のバルは、煙のように儚く大気の中へと霧散していった。
それと同時に、広場を埋め尽くしていた数千人の「影の双子」たちもまた、一瞬にして黒い砂となって崩れ落ち、消え去っていったのだ。住人たちの心の中から、犯人が暴かれたことによる「猜疑心」が消滅したため、影を維持するエネルギーが失われたのである。
第五の試練【影の双子】が、ここに完全クリアされた瞬間であった。
住人たちは、自分の肉体が一つに戻ったことを確認し、涙を流して互いに抱き合った。己の悪意を直視し、それを克服したことで、人間と各種族の絆は、神々がいた頃よりも遥かに強固なものへと昇華された。
レオナルドが懐の「時空の羅針盤」を取り出すと、その表面は、今や全体の「七分の五」――大部分が極彩色に輝き、磁針は元のルネサンスの世界への時空の穴を、眩い光の矢となって指し示していた。帰還の門は、あと二つの試練で完全に開かれる。
「フッ、五つ目も解けたか。私の帰還の座標は、ほぼ計算通りだ」
レオナルドは満足げに外套を翻したが、その直後、ギザの大地が、これまでにない激しい「地鳴り」を立てて揺れ始めた。
影が消え去った住人たちの肉体から、今度は神々のメンテナンスの力が完全に消失し、ただの擦り傷が死に至る病へと変わる、第六の過酷な試練【肉体の限界(クロノスの秤)】の鐘が、超古代の空に鳴り響こうとしていた。
万能の天才レオナルド・ダ・ヴィンチの探偵劇は、ついにクライマックスの深淵へと加速していく。
みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?
少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。
励みになりますので、☆☆☆☆☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。
これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
パラレルワールドで魔法と多種族の住む下町ローマで起こる事件を魔法とスキルで解決していく物語です。時代背景は読者の描く時代に当てはめてくださいね。
パラレルワールドで今度は、エジプトギザです
よろしくお願いします。




