## 第十話:『二色の殺意(パレット)、泥塗れのヨレヨレ名探偵』第一部第二部
二話目の投稿です。
誤字脱字が多くなると思いますが、よろしくお願いいたします。
途中で、脱線することもあると思いますが、ゆっくりと見守ってください。
作品の内容が前後することが多々あると思いますが、大目に見て頂ければ、うれしく存じます。
## 第十話:『二色の殺意、泥塗れのヨレヨレ名探偵』第一部 第二部
よろしくお願いします
では、参ります!!
## 第十話:『二色の殺意、泥塗れのヨレヨレ名探偵』
### 第一部:葡萄畑のテロワール、密室の醸造樽と絞殺のロープ(前編)
## 第一章:収穫祭の裏の悲劇、閂が閉ざした完全密室
「繰り返しますがダヴィンチさん。今の僕たちには、空間の歪みを検知する『クリスタル・スキャン』も、嘘を見抜く『魔力鑑定』もありません。
昨夜の魔力制限のせいで、僕たちの能力はただの『一般人』と同じです。そんな状態で殺人事件の捜査など、非論理的の極みです」
ローマ中央病院の病室で眠るフランチェスカの見舞いを終え、収穫祭の片付けを手伝うためにマルチェロ農園へと戻ってきた俺たちを待っていたのは、最悪の悲劇だった。
ワイン貯蔵庫の最深部、頑丈な鉄の扉の前。
新助手のルカは、自身の胸の結晶が完全にただの『透明な石』と化しているのを確認し、ひどく冷めた溜息をついた。魔法は使えない。俺の指先からも、魔法の炎一つ出やしない。
だが、俺たちの目の前にある鉄扉の向こう側には、葡萄の蔓のロープで首を絞められた、農園の老オーナーの冷たくなった遺体が転がっているのだ。
「ははは! ルカくん、魔法がないからこそ、人間の『脳細胞』は一番美しく輝くんだよ。ほら、現場のデッサンをよく見なさい」
俺はヨレヨレの、絵の具のシミだらけのシャツの襟元を緩め、鉄扉の構造を指差した。
「この扉は、内側から太い真鍮の『閂』がパタンと落とされて完全にロックされていた。窓はない。通気口は直径10センチのネズミの通り道だけ。つまり、犯人はオーナーを殺害した後、この部屋から『物理的に影も形もなく消え失せた』。完璧な密室さ!」
「ガウ」
足元のレオも、魔力切れで火花を散らすこともできず、ただの真鍮の置物のように静かに首を傾げている。
「身内の犯行か、あるいは」マルコ店長が青い顔で扉の周囲を見渡す。「なぁダヴィンチ、本当に魔法なしで、こんな不気味な密室の謎が解けるのか?」
「もちろんだとも、店長。いいかい、ルカ。床をよく見なさい。老オーナーの遺体の足元、そこには彼自身の靴跡のほかに、もう一つだけ『泥まみれの唯一の足跡』が残されている。
だが、その足跡は、部屋の入り口に向かってではなくなぜか、部屋の隅にある『巨大なワイン醸造樽』に向かって途切れているんだ」
「! 犯人は、まだあの樽の中に隠れているということですか!?」
ルカが眼鏡をキラーンと光らせ、ノートを手に構えた。
「いやいや、樽の中は今、発酵中のワインでなみなみと満たされている。人間が隠れていたら1分で窒息れちまうさ。犯人はここにはいない。
だが、足跡は樽へ向かっている。フフ、視えてきたぜ。犯人が施した、魔法よりも美しい『物理トリックの補助線』がねぇ!」
## 第二章:魔力ゼロの検証、ヨレヨレシャツに付いたワインのシミ
「犯人は、この農園のワインの醸造ギミックを完璧に熟知している人間だ。」
俺はヨレヨレのシャツの袖をまくり上げ、部屋の隅にある巨大な木製のワイン醸造樽へと歩み寄った。
容疑者として集められたのは、農園で働く3人の職人たち。誰もが「扉は内側から閉まっていた! 魔法使いの仕業だ!」と口を揃えて怯えている。
「ルカくん、お前さんのそのお堅い頭のノートに、この醸造樽の『排水パイプ』の直径をメモしなさい。直径約30センチ。大人の人間がギリギリ這い出せる太さだねぇ!」
「ダヴィンチさん、まさか犯人はあの排水パイプから脱出したと? ですが、パイプの先は建物の外の泥沼に繋がっています。それに、パイプのバルブは外側からしか開閉できません。部屋の中からバルブを閉めて密室にすることは不可能です。」
ルカが冷静に論理の矛盾を指摘する。
「その通り! パイプから人間が脱出することはできない。だがねぇ、人間が無理なら『ワインそのもの』を脱出させたらどうなるかい?」
俺は醸造樽の底にこびりついた、紫色のワインの結晶を指先で少しだけ削り取り、ヨレヨレのシャツの裾で擦って色を確かめた。
「いいかい、みんな。犯人はオーナーを絞殺した後、この部屋の閂を閉めたんじゃない。犯人は最初から『部屋の外』にいたのさ! 犯人が使ったのは、一本の細い糸と、この醸造樽の浮き(樽の液面を測る木製のウキ)さ!」
職人たちの一人が、一瞬だけビクリと肩を震わせた。
「犯人はあらかじめ、部屋の内側の閂に細い糸を結びつけ、その糸を、この大樽の『排水バルブの浮き』へと繋いでおいた。そして、部屋の外へ出てバルブを全開にしたのさ! 樽の中の大量のワインがパイプから外の泥沼へと一気に排水され、樽の液面が急激に下がっていく。
すると、液面に浮いていた重い木製のウキが下へと引っ張られ、繋がっていた糸が引っ張られて内側の閂をガチャンと下に叩き落とした(ロックした)んだよ!」
「なっ!?」ルカが息を呑んだ。
「最後に、糸は限界まで引っ張られてブチリと切れた。その切れた糸の残骸は、今も樽の底の排水口に吸い込まれて残っているはずだ。ねぇ、職人のピエロさん。お前さんの長靴の後ろ側、外の泥沼と同じ『特殊な赤粘土』が、まだ乾かずにべっとりと付いているぜ? バルブを外から操作したときに付いた、決定的なデッサン(証拠)さね!」
「う、うわぁぁぁぁッ!!」
名前を呼ばれた職人のピエロが、腰を抜かしてその場にへたり込んだ。魔法もスキルも一切使わない、純粋な『液体の重力とギミック』による密室トリック。おじさんの万能の観察眼の前に、完全密室は一瞬にして崩壊したのだった!
「素晴らしいです、ダヴィンチさん。魔法の輝きなどなくとも、あなたの頭脳は最高に論理的だ。」
ルカが初めて、心からの感嘆を込めてパチパチと拍手を送った。
だが、事件はこれで終わりではなかった。
ピエロを連行しようとしたその時、窓の外から激しい雨の音とともに、別の悲鳴が響き渡ったのだ。
「た、大変だ! テヴェレ川の石橋の上で、今度は街の美術商が殺されているのが見つかったぞ!!」
## 第十話:『二色の殺意、泥塗れのヨレヨレ名探偵』
### 第二部:テロワールの逆転、乾いた泥と排水パイプのペテン(中編・密室解明編)
## 第三章:沈黙のパズル、三人の容疑者が紡ぐ空白の1時間
「ダヴィンチさん。僕の手帳に記録された彼らの証言データ、および時間軸の整合性を再計算しました。
ですが、やはり何度やっても『論理的なエラー(矛盾)』が検出されません。犯人はやはり、この物理的な法則を無視できる透明人間か、あるいは幽霊のなのではーー!」
地下のワイン貯蔵庫の冷え切った空気の中、新助手のルカが、自身の透明な結晶の指先をパチパチと鳴らしながら、手帳にシャリシャリと鉛筆を走らせていた。
彼の眼鏡の奥の瞳は、これまでにないほど深い迷宮に迷い込んだかのように曇っているようだ。
現場は内側から頑丈な真鍮の閂が落とされていた完全密室。
そして、目の前に並ぶ3人の容疑者――甥のピエロ、大男のマルコ、帳簿係のルチア――彼らのアリバイは、それぞれが現場のテロワール(土壌)の泥と完璧にリンクしており、誰一人として「午後3時に密室の外に出て、足跡を残さずに逃げる」ことは不可能なのだ。
「ははは! ルカくん、パズルっていうのはねぇ、ピースが綺麗にハマりすぎている時こそ、全体の『額縁』そのものが歪んでいることを疑うべきなのさ。ほら、みんなの顔をもう一度、デッサンするみたいにじっくり観察してごらん」
俺はヨレヨレの、絵の具のシミだらけのシャツの胸元をパタパタと扇ぎながら、不敵に笑った。
「ダヴィンチさん、ふざけないでください! 叔父さんが殺されたんですよ!? 早く犯人を捕まえて、ギロチンに送り込んでください!」
気弱な職人のピエロが、ガタガタと膝を震わせながら、長靴についた赤い乾いた泥をこれみよがしに石畳に擦りつけた。
「そうよ! 私は埃っぽい事務所でずっと数字を数えていたの。この地下のドロドロしたワインの匂いを嗅いでいるだけでも、頭がどうにかなりそうですわ!」
帳簿係のルチアが、高級な絹のハンカチを何度も握り締め、青白い顔で俺を睨みつける。そのハンカチの端には、微かにだが『奇妙な黒い汚れ』が付着していた。
「フン、俺は東の倉庫で重い樽を運んでいただけだ。アリバイなら、俺のこの筋肉と、長靴の湿った黒土が証明してくれている」
大男のマルコが、太い腕を組んでフンと鼻を鳴らした。
「ふむ。ルカくん、サスペンスドラマの原稿なら、ここで探偵が『あ、閃いた!』って言って1分で解決するんだろうけどねぇ、おじさんの頭脳の絵の具は、そんなに安っぽくはないんだよ。
いいかい、みんな。お前さんたちの『完璧なアリバイ』には、一つだけ、致命的な【色彩の反転】が隠されているのさ」
俺はヨレヨレのシャツの裾をワイルドに捲り上げ、床にしゃがみ込むと、ピエロの長靴の踵についた『乾いた赤い泥』を、人差し指でそっと撫でた。
## 第四章:テロワールのペテン、重力と液体が描く密室の死線
「ピエロくん、お前さんは『北の畑の乾いた赤い泥』がアリバイだと言ったねぇ。ルカくんの計算でも、北の畑の土壌データと完全に一致している」
俺は指先についた赤い泥を、ランタンの炎に翳した。
「そ、そうですよ! だから僕は事件の時間、ずっと北の畑にいたんです!」
「だけどねぇここは地下のワイン貯蔵庫だ。外は秋の収穫祭の直後で、今朝方まで『激しい雨』が降っていた。なのに、どうしてお前さんの長靴の泥だけが、まるで真夏の日差しを浴びたみたいに【カラカラに乾いて硬くなっている】のかい?」
「――っ!?」
ピエロの顔から、一瞬にして血の気が引いた。
「ルカくん、論理の計算の時間だ。雨上がりの北の畑の泥が、自然にここまで乾燥するのに、物理的に何時間かかるかい?」
「! 氷点下、あるいは高温の魔導炉でも使わない限り、最低でも『6時間』はかかります。ですが今の彼に魔法のスキルはない。ということは、この乾いた泥は、事件の午後3時に付いたものではない! 彼はあらかじめ、前日の晴れた日に付いた泥の長靴を、意図的に今履いている!」
ルカがハッと目を見開き、手帳の鉛筆を激しく走らせた。
「その通り! アリバイを偽装するための、お粗末なデッサンさね。そして、大男のマルコくん。お前さんの長靴の黒土は、今も『ビショビショに濡れている』。
東の倉庫の床は石畳で屋根もある。
大樽を運んでいただけなら、長靴が川に浸かったみたいに泥水で溢れるわけがないんだよ。お前さんが事件の時間に本当にいたのは、東の倉庫じゃない。
激しい雨が降る、あの【テヴェレ川の石橋の上】だねぇ?」
「な、何だとぉっ!?」
マルコが巨体を震わせ、一歩後ろに下がった。
「さらにルチアさん、お前さんのハンカチについた黒い汚れそれは事務所のインクじゃない。
テヴェレ川の川底に沈む『特殊な黒い煤』、つまり、街の美術商が胸を刺されて殺された現場に残されていた、あの凶器のナイフを拭き取った跡さね!」
「う、うあぁぁぁぁッ!!」
ルチアが悲鳴を上げ、絹のハンカチを床へと落とした。
「ひゃ、ひゃはははは! 繋がった、繋がったぜぇぇぇッ!! 密室の葡萄樽の殺人と、雨のテヴェレ川の時計殺人――これは単独の犯行じゃない。お前さんたち3人が、お互いのアリバイと泥を交換し、2つの現場のパースペクティブをわざと複雑に歪ませた『交換殺人』だったのさ!!」
俺はヨレヨレのシャツの袖で顔の汗を拭い、3人の嘘つきどもを堂々と指差した。
魔法もスキルもない。だけど、泥の乾き具合、雨の水分、そしてハンカチの汚れという『生々しい世界のデッサン』だけで、おじさんの頭脳は巨大な陰謀の、最初の巨大な外堀(密室)を完璧にぶち破ってみせたのだ!
しかし、本当のサスペンスの迷宮は、ここからテヴェレ川の「3つの狂った懐中時計」の謎へと、さらに深くドロドロと沈み込んでいく――!
みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?
少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。
励みになりますので、☆☆☆☆☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。
これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
パラレルワールドで魔法と多種族の住む下町ローマで起こる事件を魔法とスキルで解決していく物語です。時代背景は読者の描く時代に当てはめてくださいね。
よろしくお願いします。




