エジプト ギザピラミッド 世界遺産編 6章
二話目の投稿です。
誤字脱字が多くなると思いますが、よろしくお願いいたします。
途中で、脱線することもあると思いますが、ゆっくりと見守ってください。
作品の内容が前後することが多々あると思いますが、大目に見て頂ければ、うれしく存じます。
新作始めます。探偵物です。
世界遺産編エジプトギザのピラミッド開幕です
当初から作品を見ていただき本当にありがとうございます。
大変励みになっております。
これからもよろしくお願いします。
では、参ります!!
## 第二十一話:狂える使徒と、拒絶の砦
第一の試練である砂嵐が止み、ひとときの平穏が訪れたのも束の間、ギザの住人たちは、さらなる絶望の風景に直面していた。
神々が残していった第二の試練――【魔物の使徒】
それは、かつて人間や他種族の「糧」として、また「闘争の訓練」として完璧に制御されていた魔物たちが、神々の手綱を完全に失い、ただの狂暴な殺戮兵器へと変貌する試練であった。
ギザの西側に広がる大密林は、砂漠化によってその半数が枯れ果てていたが、その残された枯れ木の奥深くから、毎夜、地を裂くような異形の咆哮が響き渡る。
かつてアシャたちが狩った「紫鬣の猪」や「紅蓮のトカゲ」といった魔物たちは、体内の魔力核が暴走し、複数の生物の特徴が歪に融合した「キマイラ(合成獣)」へと変異していた。
獅子の頭部に蛇の尾を持ち、全身から青黒い魔力の炎を吹き出す巨獣たちが、飢えと狂気に駆られて集落の境界線を侵食し始めていたのだ。
「防壁を維持しろ! 隙間を作るな!」
大地族のガラクが、四本の腕で巨大な岩を積み上げ、即席の砦を築きながら叫んでいた。
集落の生活风景は、かつての開放的な楽園のそれから、完全に「籠城戦の戦場」へと一変していた。
人間たちは生きた木の家の周囲に何重もの杭を打ち込み、天空族は上空からの魔物襲撃に備えて、常に大気中に警戒の結界を張り続けている。
配給が完全に止まり、湧き出たわずかな真水と、防壁の内側に残された家畜の肉だけで食い繋ぐ日々。住人たちの顔からは笑顔が消え、いつ防壁が破られるかという恐怖と、慢性的な疲労が彼らの肉体を蝕んでいた。
その砦の片隅に設置された即席の作戦小屋で、レオナルド・ダ・ヴィンチは、数枚のパピルスに魔物たちの「変異図」を緻密にスケッチしていた。
「実に見事であり、同時に実に悍ましい生命の暴走だ。神々は生命の遺伝情報を『コード』としてピラミッドに組み込んでいたようだが、その制御が外れた結果、自然界の幾何学が完全に崩壊している。
ライオンの骨格に蛇の筋肉を繋げば、本来なら自重で破綻するはずなのだが……それを魔力という不確定要素が無理やり成立させている」
レオナルドは筆を置き、懐からエメラルドグリーンに微かに輝く「時空の羅針盤」を取り出した。
前回の事件を解決したことで、確かに輝きの一部は戻った。しかし、針が示す「ルネサンスのミラノ」への時空の穴は、依然として強固に閉じられたままである。
「やはり、この第二の試練を完全に解き明かさねば、私はあの美しいイタリアの空を二度と拝むことはできんというわけか。やれやれ、私の工房の弟子たちは、今頃私の失踪に首を傾げているだろうに」
レオナルドがため息をついたその時、砦の西側、魔物たちの咆哮が最も激しく響く最前線の監視塔から、引き裂くような人間の悲鳴が上がった。
「出たぞ! 魔物だ! いや、違う……誰かが、やられた!」
アシャが小屋に飛び込んでくる。その顔は恐怖で青ざめていた。
「レオナルド、来てくれ! 防壁のすぐ内側で、監視をしていた天空族の戦士が死んでいる! でも、普通の襲撃じゃないんだ!」
レオナルドは外套を翻し、アシャと共に最前線へと走った。狂える使徒たちが砦を囲む極限状態のなかで、新たな「悪意の劇薬」が、その幕を開けたのである。
## 第二十二話:第十二の擬態、牙のなき惨劇
現場は、大地族が築いた岩の防壁からわずか十メートルほど内側にある、うっそうとした枯れ草の茂みだった。
そこに横たわっていたのは、天空族のうら若き戦士、シロフの遺体だった。
彼の役割は、上空から魔物の接近をいち早く察知し、砦に伝えることなのだ。
集まった住人たちは、遺体の凄惨な状態を見て、口々に叫んだ。
「キマイラだ! キマイラの鋭い爪で引き裂かれたんだ! 防壁の隙間から侵入したんだ!」
「もうおしまいだ! 砦のなかも安全じゃない!」
しかし、レオナルドは群衆のパニックを無視し、シロフの遺体の前に冷然と膝をついた。
彼の目は、凡百の人間が見落とす「細部」を冷徹にスキャンしていく。
シロフの胸部は、まるで巨大な猛獣の爪で引き裂かれたかのように、三条の深い生傷が刻まれており、衣服はボロボロに裂けていた。一見すれば、狂暴化した魔物の襲撃による死に違いない。
だが、レオナルドはシロフの傷口の縁をピンセットの代わりに削り出した木片でそっと広げ、その奥を見つめた。
「ふむ……。実に見事な『偽装』だ。だが、自然の造形を愛する私の目を欺くことはできんよ」
レオナルドは立ち上がり、周囲に集まったアシャやガラクたちを見渡した。
「レオナルド、どういうことだ? これは魔物の仕業じゃないのか?」ガラクが尋ねる。
「ガラク、お前は毎日のように魔物と戦っているから分かるはずだ。
本物のキマイラの爪であれば、その一撃は肉を引き裂くだけでなく、体内に宿る荒ぶる魔力によって、傷口の周囲の細胞が『灼熱』するか『凍結』するはずだ。
しかし、このシロフの傷口を見てみろ。切り口は非常に滑らかであり、魔力の残滓が全くない。
つまりこれは、魔物の爪を模して作られた【三本刃の鉄の爪】によって、人間の手で意図的に刻まれたものだ。」
「な、何だって!?」アシャが息を呑む。
「さらに」レオナルドはシロフの首元を指し示した。
「彼の直接の死因は、この胸の傷ではない。後頭部にある、一撃による頭蓋骨の陥没だ。犯人はまず、背後からシロフの頭を鈍器で殴りつけて気絶させ、あるいは即死させた後、遺体をこの茂みに運び、魔物の襲撃に見せかけるためにわざわざ鉄の爪で胸を引き裂いたのだよ」
第十二の殺人事件。それは、外敵である「魔物の脅威」を隠れ蓑にした、極めて計画的な内部の人間による犯行だった。
「誰が……誰がそんなことを……」天空族の長老が震える声で呟く。
「シロフが死ねば、西側の監視の目が遮断される。そうなれば、魔物たちが砦に侵入し、全員が全滅するかもしれないんだぞ! そんな大それたことをする奴が、この中にいるというのか!?」
容疑者は、この砦に籠城しているすべての住人たち。目的は繋がらない。魔物への恐怖を利用した口封じなのか、あるいは、集落全体の全滅を望む狂人の仕業なのか。
外からは狂える魔物たちの咆哮が響き、内からは目に見えぬ殺人鬼の気配が忍び寄る。ギザの住人たちは、まさに内憂外患の地獄へと叩き落とされていた。
## 第二十三話:第十三の共鳴、狂気のオーケストラ
シロフの死によって西側の監視が甘くなった翌夜、第二の悲劇――第十三の殺人事件が、さらに不可解な形で発生した。
現場は、集落の中央にある、負傷した者たちを収容する「癒しの天幕」だった。
被害者は、人間たちの間で薬草の調合を行っていた老医師、ファド。
彼は神々が去った後の限られた資源のなかで、傷ついた戦士たちを救うために不眠不休で働いていた、誰もが信頼を寄せる人物だった。
しかし、朝、アシャが天幕に入ったとき、ファドは自身の調合机の上で息絶えていた。
その死に様は、周囲の者を凍りつかせるに十分だった。彼の身体には一切の傷がなかったが、その耳、鼻、そして目からは、タラリと黒い血が流れ出していた。
そして、彼の机の上には、魔物の変異種である「共鳴虫」の死骸が、細かくすり潰された状態で散乱していたのだ。
「ファド先生まで……! どうしてこんな、良い人ばかりが殺されなきゃいけないんだ!」
アシャは悔しさに地面を叩いた。
周囲の人間たちは、すぐに異種族を疑い始めた。
「共鳴虫の生態を知っているのは、大気中の音波を観測できる天空族だけだ! 奴らが、ファド先生の耳元で魔物の超音波を響かせ、脳を破壊したんだ!」
「いい加減にして! 私たちがそんな陰湿なことをするわけがない! むしろ、医師の薬を独占しようとした同じ人間の仕業でしょう!」
「静かに。これ以上騒ぐと、私の耳の三半規管まで狂ってしまう」
レオナルドが天幕の奥から現れた。
彼はファドの遺体の状況と、机の上の共鳴虫の死骸を交互に観察し、天幕の「天井」に吊るされていた一つの奇妙な金属製の「鈴」に目を留めた。
レオナルドは椅子の上に乗り、その鈴を取り外して、指先で軽く弾いた。チーン、と澄んだ音が響く。
「ふむ……。この鈴の材質は、第一のピラミッドの内部から盗み出された神の金属だな。そして、この内部の構造……音を何倍にも増幅し、特定の周波数へと変換する『音響兵器』へと改造されている」
「音響兵器……?」ガラクが首を傾げる。
「犯人は、ファドが寝静まった深夜、この鈴を天井に仕掛けた。そして、あらかじめ調合机に撒いておいた共鳴虫の死骸が放つ『死後魔力』と、外で吠え狂うキマイラたちの咆哮が、この鈴を介して『共鳴(共振)』するように設計したのだ。キマイラたちの咆哮が特定の音域に達した瞬間、この鈴がファドの脳へ向けて、不可視の『音の刃』を放ち、彼の脳組織を内側から破壊した。……実に見事な、魔物と環境の力を利用した、幾何学的な暗殺だ」
第十三の殺人事件。それは、外の魔物たちの「声」そのものを殺人凶器として連動させた、前代未聞のトリックだった。
容疑者は一人ではない。天空族の音響知識、人間のオリハルコン加工技術、あるいは大地族の潜入能力。すべての要素が複雑に絡み合い、犯人の目的は依然としてモザイクのようにバラバラで、繋がりが見えなかった。
「手がかりすら、このキマイラたちの咆哮にかき消されていく……」
アシャは絶望に目を閉じた。しかし、レオナルドの脳内では、この「狂気のオーケストラ」を指揮している真犯人の輪郭が、少しずつ形を成し始めていた。
## 第二十四話:遺伝子の崩壊、探偵のチェックメイト
「全ての住人、そして砦の戦士たちよ、今すぐ中央広場へ集まるがいい!」
レオナルド・ダ・ヴィンチの毅然とした声が、砦の外で防壁を叩くキマイラたちの突撃音を貫いた。
住人たちは、相次ぐ恐怖と不信のなかで、異界の探偵の前に集まった。彼らの手には、いつでも互いを突き殺せるよう、武器が握られている。
「レオナルド、もう時間がないぞ! 西の防壁が、キマイラたちの猛攻で今にも崩壊しそうだ! 犯人探しなどしている場合か!」ガラクが叫ぶ。
「いや、今だからこそ犯人を引きずり出さねばならんのだ、ガラク」
レオナルドは冷然と言い放ち、パピルスに描かれた魔物の変異図を高く掲げた。
「第十二の事件、シロフを殺した鉄の爪。そして第十三の事件、ファドの脳を破壊した共鳴の鈴。お前たちは、これらを『魔物の呪い』や『他種族の陰謀』だと考えている。だが、真実は違う。この二つの事件を引き起こし、魔物たちの暴走を裏で手引きしている『コードの改ざん者』が、この中にいる」
広場に緊張が走る。
「魔物たちがなぜ、これほど正確に砦の『西側の死角』ばかりを狙って突撃してくると思う? なぜ、ファドの天幕に仕掛けられた鈴の周波数と、外のキマイラの咆哮が完璧に一致した? 理由は一つしかない。犯人は、魔物たちを操っているのではない。犯人自身が、魔物の『遺伝情報』を書き換え、自らの意志で動く使徒へと作り変えたのだ!」
「そんなことができるのは……神々だけだろ!?」アシャが叫ぶ。
「いや、神々から『原初の炉』の管理権限を一部生前分与されていた者が、一人だけいる。……天空族の長老、お前だ!」
レオナルドの指先が、群衆の先頭に立つ老いた天空族の長を正確に指し示した。
「な……何を根拠に! 私は天空族を率いて、この砦を守ってきたのだぞ!」長老が激昂する。
「お前がシロフを殺したのは、彼が上空からの観測中に、お前がピラミッドの制御盤へ夜な夜なアクセスしている姿を目撃してしまったからだ。そしてファドを殺したのは、彼がお前の体内に宿る『魔物の暴走核』の変異に気づき、お前自身がキマイラ化しつつあることを見抜いたからだ!」
レオナルドがそう叫ぶと同時に、長老の身体が歪に膨れ上がり始めた。彼の背中の美しい羽は一瞬にして黒い蛇の群れへと変わり、その顔面は獅子の如き獰猛な毛並みに覆われていく。長老は、神々が去った後の不安から、より強大な「魔物の力」を我が物にするため、ピラミッドのコードを改ざんし、自らをキマイラへと変異させていた真犯人だったのだ。
「グオォァァァ! 人間の分際で、我が至高の進化を見抜くとは!」
変異した長老がレオナルドへ向かって跳躍した。しかし、その瞬間、アシャの放った光の矢と、ガラクの大斧が長老の魔力核を正確に貫いた。レオナルドの推理によって、長老の動きの死角が完全に暴かれていたからだ。
どさりと倒れた長老の遺体から青黒い炎が消え去ると、呼応するように、砦を囲んでいたキマイラたちもまた、その統率を失って森の奥へと敗走していった。
第二の試練【魔物の使徒】が、ここにクリアされたのだ。
天空からは再び柔らかな光が差し込み、住人たちは自らの長老の裏切りを悲しみながらも、異種族間の真の結束を固め、崩れかけた防壁の修復へと動き出した。
レオナルドが懐の「時空の羅針盤」を取り出すと、その輝きはさらに強まり、全体の「七分の二」ほどが眩いエメラルドグリーンの光で満たされていた。針は確実に、元の世界への時空の歪みを捉えつつある。
「フッ、二つ目のピースがはまったか。だが、休む暇は与えてくれんらしい」
レオナルドは静かに微笑み、羅針盤を収めた。なぜなら、魔物たちが去った直後のギザの大地から、今度は「水」が急速にその姿を消し、周囲のすべての物質を石へと変える、第三の過酷な試練の足音が近づいていたからだ。
万能の天才、レオナルド・ダ・ヴィンチは、未だルネサンスのミラノへ帰ることはできない。彼の探偵業は、さらなる深淵へと続いていく。
みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?
少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。
励みになりますので、☆☆☆☆☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。
これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
パラレルワールドで魔法と多種族の住む下町ローマで起こる事件を魔法とスキルで解決していく物語です。時代背景は読者の描く時代に当てはめてくださいね。
パラレルワールドで今度は、エジプトギザです
よろしくお願いします。




