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第五話・番外編:『水底の金貨と、跳ね馬亭の極彩色なる大宴会』

二話目の投稿です。

誤字脱字が多くなると思いますが、よろしくお願いいたします。

途中で、脱線することもあると思いますが、ゆっくりと見守ってください。

作品の内容が前後することが多々あると思いますが、大目に見て頂ければ、うれしく存じます。

新作始めます。

宴会始めます。ウララとキララが大活躍???

では、参ります!!

第五話・番外編:『水底の金貨と、跳ね馬亭の極彩色なる大宴会』



本編:溢れる黄金、悪党の遺産と下町の愉快な大喰らいたち

テヴェレ川の暗い水底から引っ張り上げられたチェーザレ商会の隠し金庫には、下町の商人たちから不正にむしり取られた、まばゆいばかりの純金貨がぎっしりと詰まっていた。

ローマの憲兵団による押収の手続きが完了した後、事件の第一発見者であり、命懸けで魔獣を退治した我がダ・ヴィンチ探偵事務所には、正当な捜査協力報酬として、その山分け分からずっしりと重い革袋が三つも転がり込んできた。

「ひゃははは! 見てごらんお嬢さん! この目の眩むような純金の輝きを! これぞ、あの強欲なチェーザレが泥ヘドロまみれになって遺していった、最高の『黄金のカンヴァス』さ!」

俺は探偵事務所の汚れた床の上で、革袋から溢れ出た金貨を錆びた虫眼鏡で覗き込みながら、まるで子供のように目をギランギランと輝かせた。ヨレヨレの白いシャツの袖には、まだ昨夜の事件で付着した川水の生臭さが微かに残っているが、そんなものはこの金貨の香りの前には画家の絵の具の匂いも同然だった。

「もう、ダヴィンチさん、はしたないですよ! でも……これで本当に、マルコ店長への何ヶ月分もの家賃の滞納が、一気に帳消しになるんですね。私、今朝は嬉しくて、白銀の猫耳がずっと前を向いたまま、ピクピクと動くのが止まらないんです!」

事務所の机の横で、我が事務所の記念すべき最初の助手であるフランチェスカちゃんが、泥を綺麗に洗い流した白銀の鎧を朝日に輝かせながら、最高の笑顔を咲かせていた。彼女の胸元からは、愛猫キララちゃんが「にゃあ」と満足そうに鳴き声を上げ、お嬢さんの軽装鎧の隙間から小さな顔を覗かせている。おじさんのシャツの懐のウララまでもが、金貨の擦れ合う金属音に機嫌を良くしたのか、ゴロゴロと体毛から心地よいピリピリと静電気を放っていた。

「よし、そうと決まればお嬢さん、今夜は一階の『跳ね馬亭』を貸し切りにして、いつもおじさんたちを支えて(あるいは脅して)くれる下町の常連の仲間たちを全員集めて、歴史に残る大宴会の構図を描こうじゃないかい!いい案だろう!」

俺たちは金貨の詰まった革袋を抱え、階段を転がるようにして一階の酒場へと駆け下りていった。

夜が更けると、跳ね馬亭の店内は、夏の終わりの爽やかな風と共に、これまでにないほどの熱気と、脳髄を激しく揺さぶるような【至高の肉と香辛料の匂い】で満たされていた。

「なんて美味そうな匂いをさせてやぁがるんだ!コンチクショ!!、」

広大なオーク材の円卓の上には、マルコ店長がその強靭な腕を振るって作り上げた、目も眩むような極彩色の料理が、まるで一枚の巨大な油絵のように隙間なく並べられている。

「おい、貧乏探偵! 今夜ばかりはお前を『大先生』と呼ばなきゃならねえな! よくぞあの強欲チェーザレの鼻を明かしてくれた! 乾杯だァァァッ!!」

最初に豪快に木製のジョッキを突き出してきたのは、もちろんこの店の主であり、俺たちの大家でもある**【マルコ店長】**だ。彼は熊のように逞しい肉体と、下町一番の頑固な顔つきを持つ男だが、今夜は滞納されていた家賃がすべて黄金で支払われたため、その太い眉毛をフニャリと下げて、見たこともないほどの極上笑顔でエールを喉に流し込んでいた。

彼の特技は何と言っても、下町の荒くれ者たちを一言で黙らせる圧倒的なお説教と、一度食べた料理の味を完璧に再現する神がかり的なパレットだった。

「ひゃははは! 店長、そんなに喜んでくれたなら、おじさんのこのヨレヨレのシャツも少しは報われるってものさね! さあ、みんな遠慮せずに食ってくれよ!」

円卓の正面で、ものすごい勢いで肉を口に放り込んでいたのは、マルコの従兄弟であり、大市場の解体庫の責任者である**【ジロー】**だ。彼は頑丈な体格に似合わず、前回の魔物の前ではガタガタ震えて腰を抜かしたコミカルな男だが、その特技は「肉の繊維を指先で触るだけで、その獣の年齢と育った山を完璧に言い当てる」という、市場の生き字引のような目利き能力だった。

「もぐもぐ……美味い、美味すぎるぞマルコ! この牛のばら肉の煮込み、肉の繊維が口の中でバターみたいに溶けていきやがる! さすがは第一解体庫から仕入れた最高級の肉だ!」

ジローの横で、上品にフォークを使いながらも、信じられないスピードで大皿の料理を平らげていたのは、下町の路地裏で小さな診療所を営む老医師**【ドクター・パオロ】**だ。

彼は白髪混じりの髭を綺麗に整え、いつも穏やかな目をしているが、その特技は「どんな複雑な魔術の呪い毒であっても、道端の雑草をすり潰した特製ハーブ薬で一瞬にして中和してしまう」という、生ける医神のような医術だった。おじさんの偏頭痛の薬も、いつもこの先生に格安あるいはツケで処方してもらっているのさね。

「いやはや、ダ・ヴィンチくん。君の脳細胞が今回の事件で破裂しなくて本当に良かったよ。もし君の脳の回路が焼き切れていたら、私のハーブでも再生は難しかったからね。さあ、このハーブ液をエールに混ぜて飲みなさい、頭痛が和らぐよ」

「おお、先生、ありがてえねぇ!」

俺がジョッキを受け取ろうとした瞬間、その横からひょいと長い手が伸びて、俺のつまみ用のクシ焼きを奪い去っていった。

「探偵の旦那ぁ、手柄話を聞きに来てやったぜ! 祝いの席なんだから、その美味そうな焼き鳥はアタイがいただくよ!」

泥棒のように素早い手つきで肉を掠め取ったのは、下町の情報屋であり、自称・義賊の少女**【ルチア】**だ。

 彼女は常に猫のようにしなやかな身のこなしをしており、頭には汚れたバンダナを巻いているが、その特技は「ローマ中のあらゆる鍵を、ただの錆びたヘアピン一本で、わずか3秒で解除してしまう」という、驚異的な指先のレイアウト(鍵開け)だった。彼女の網羅する裏社会の噂話がなければ、おじさんの推理も途中で構図を失っていたに違いない。

ルチアの向かい側に座り、大きな樽から直接ワインを注いでガブガブと豪快に飲んでいたのは、テヴェレ川の古参の船頭である**【大髭のピエトロ】**だ。彼は波に揉まれて真っ黒に日焼けした頑強な肌と、胸元まで伸びた見事な白髭を持つ海の男で、その特技は「どんなに濃い霧が立ち込める嵐の夜であっても、川底の水の匂いを嗅ぐだけで正確な現在地を言い当てる」という、野生の羅針盤のような航海術だった。今回の幽霊船のドックの隠し場所を教えてくれたのも、このピエトロの旦那だったのさね。

「ガハハハ! チェーザレの野郎、ざまぁみやがれだ! 川の神様を怒らせるから、魚のハラワタまみれになってお縄になるんだよ! 探偵、お前のおかげで、明日からまた安心して網が引けるぜ!」

ピエトロがドスンと机を叩くと、その振動で皿の上のソースが飛び散りそうになった。それを目にも留まらぬ速さで、手にした大きな鉄のフライ返しでカッと受け止めたのは、厨房から顔を出したマルコの店の給仕長であり、元・凄腕の冒険者である**【大女のマリアさん】**だ。彼女は身長が2メートル近くあり、並の男よりも遥かに分厚い肉体を持っているが、その特技は「店内で暴れる荒くれ者どもを、左右の両手で同時に襟首を掴んで、そのまま窓の外のドブ川へと30メートル放り投げる」という、人間離れした怪力デッサン(強制退場)だった。マリアさんが微笑むだけで、店内の空気は一瞬にしてピシッと引き締まるのさね。

そして最後に、円卓の端っこで、小さな木彫りの女神像を熱心に磨きながら、時折嬉しそうにエールを舐めていたのは、下町の偏屈な時計職人**【じいさんトト】**だ。彼は常に虫眼鏡を目にハメたままの頑固一徹な老人だが、その特技は「どれほどバラバラに噛み砕かれた複雑な魔術時計の歯車であっても、目をつぶったまま指先の感覚だけで元の完璧な時間に組み立て直す」という、神の指先を持つ工匠だった。俺の錆びた虫眼鏡のレンズを磨いてくれたのも、このトトのじいさんさね。

「ふん、探偵のヨレヨレ頭が少しは役に立ったようだな。だが時計の針は止まらん。今夜の宴会も、人生の一本の線に過ぎんぞ。だから……その美味そうな煮込みの残りをこっちに回さんかい!」

「さあみんな、料理が冷めちまう前に、今夜のメインディッシュを最高のレイアウトで披露してやるぜ!」

マルコ店長が、厨房から立ち上る凄まじい湯気と共に、直径1メートルはあろうかという巨大な鉄鍋を円卓の中央へとドスンと差し込んだ。

その瞬間に店内に広がったのは、トマトの濃厚な酸味と、じっくりと煮込まれた肉の甘脂、そして十数種類の秘伝のハーブが完璧な比率で調和した、五感を麻痺させるほどの幸福な香りだった。

「ひゃははは! 見事な構図だねぇ! 店長、これは一体どんな魔法の絵の具を使って作り上げた料理だい?」

俺が身を乗り出すと、マルコは胸を張り、手にした大きな木べらを大きく掲げて、その秘密のレシピのデッサンを誇らしげに語り始めた。

「おう、これは俺が開発した特製**【テヴェレ風・氷結魔獣の赤ワイン煮込み(カッチャトーラ風)】**だ! レシピは至ってシンプルだが、火加減のレイアウトが命だ。まず、ジローが厳選した最高級の牛のばら肉を、ドクター・パオロの薬草園から失敬したローリエとタイム、それに潰したニンニクと一緒に、丸一日テヴェレの冷水で締める。肉の繊維を極限まで引き締めるのさ。次に、それをオリーブオイルで表面が黄金色のカンヴァスに変わるまで強火で一気に焼き上げる! 旨味のインクを内側に閉じ込めるんだ!」

常連たちはマルコの話を聞きながら、ゴクリと激しく喉を鳴らした。フランチェスカちゃんの白銀の猫耳も、その美味しそうな解説に合わせて前後に激しくピクピクと揺れている。

「そしてここからが最大の隠し味だ! 煮込むためのスープには、ただの水じゃなく、ウバルド商会の地下から没収した最高級の赤ワインをまるごと3本ぶち込む! そこへ、じっくり炒めて甘味を引き出した玉ねぎ、人参、セロリのペーストを加え、さらにコクを出すために、ほんの少しの『乾燥イチジク』を細かく刻んで隠し味として投入するのさ。これを、肉の骨が自ずからホロリと外れるまで、弱火でじっくりと4時間煮込み続ける......! 仕上げに、仕上げにだ、ドクター特製の野生の黒コショウをガリガリと振りかければ、酸味と甘味、そして強烈な辛味が三位一体となった、至高の赤の熱素インフェルノの完成だァァァッ!!」

「うわあああ、もう我慢できません! マルコ店長、私に一番大きな塊をください!」

フランチェスカちゃんが我先にと木皿を突き出した。マリアさんが大きなレードルで、どろどろとした濃厚な赤褐色のソースと共に、フォークが触れただけで崩れそうな肉の塊を盛り付ける。

お嬢さんがそれを口に運んだ瞬間、彼女の白銀の猫耳がピンと垂直に立ち上がり、あまりの美味さにその美しい両目からじわりと涙が溢れ出た。

「――っ! おいしい……おいしすぎます、ダヴィンチさん! お肉が、噛まなくても口の中の熱でジュワッと溶けて、赤ワインの深いコクとイチジクのほのかな甘みが、鼻の奥まで一気に吹き抜けていきます! 昨夜の泥まみれの戦いの疲れが、この一口で完全に消えていくみたいです!」

「ひゃははは! だろう、だろうお嬢さん! おじさんもこのソースをパンにべっとりと塗りつけて……うおおお、美味い! この濃厚なトマトと肉汁のコントラストは、まるでルネサンスの巨匠が描いた光と影の明暗法キアロスクーロそのものじゃないかい! エールが、エールが無限に喉を通り抜けていくぜぇぇぇッ!!」

円卓の上では、ルチアがピエトロのジョッキから酒を盗み飲みし、ジローが肉の骨を骨まで愛おしそうにしゃぶり尽くし、ドクター・パオロがトトのじいさんの皿にハーブを勝手に盛り付けて怒られるという、下町の強欲で愉快なレイアウトが完璧に定着していた。誰もが笑顔で、誰もが腹を鳴らし、チェーザレの遺した黄金の恩恵をその身体全体で貪り尽くしていったのさね。

宴会が最高潮に達し、店内の全員が完全に出来上がっていたその時、事件ではないが、この平和なカンヴァスを引っくり返す【最悪のハプニング】が、音を立てて発生した。


事の発端は、お嬢さんの胸元から抜け出して、床の上の魚の骨を美味しそうに突いていた子猫のキララちゃんと、俺のシャツの懐から這い出して、机の上のミルクの皿を舐めていた真っ白な長毛のウララだった。

2匹の猫は、宴会の熱気に当てられたのか、あるいはジローが床に落とした最高級の肉の脂身を巡ってか、突如としてお互いに激しく毛を逆立て、シャーッ!と不機嫌な声を上げながら、円卓の上へと飛び上がったのだ。

「あ、あれ!? ウララ、キララちゃん!? ダメですよ、机の上で喧嘩をしちゃ!」

フランチェスカちゃんが慌てて手を伸ばしたが、時すでに遅かった。

興奮したウララは、その真っ白な体毛から、事件の時以上の凄まじい【不気味な青い静電気の火花】をバチバチと周囲に撒き散らし始めた。その電気の刺激が、あろうことか、俺の脳細胞の奥底に眠っていた固有スキル【画家】の魔力回路へと、空気中の水分を通じて一直線に逆流リンクしてしまったのだ!

「――ひゃ、ひゃはははははッ!? お、おかしいねぇ、お嬢さん!! ウララの電気のせいで、おじさんの【画家】のパレットが、完全にコントロールを失って、勝手に『全出力で大暴走オーバードライブ』を始めちまったぜぇぇぇッ!!」

俺の両目がカッと極彩色に発光し、脳を襲う凄まじい偏頭痛と共に、指先から【鮮烈な蛍光のイエロー(超高粘度油膜)】と【真紅の熱素(超高温炎)】の魔力光線が、部屋中に向けてまるで打ち上げ花火のように四方八方へと派手に飛び散った!

「――うぎゃあああッ!? ダヴィンチ、何をしやがる、危ねえッ!!」

マルコ店長が叫ぶのと同時に、俺の放った【黄色の油膜オイルパス】が、円卓の上や、跳ね馬亭の古い大理石の床一面に、一瞬にしてペンキをぶちまけたかのようにべっとりと塗り広げられた。

その結果、摩擦係数が完全にゼロになった床の上で、常連たちのバランスのレイアウトが一瞬にして木っ端微塵に崩壊した。

「うわっととと!? 滑る、止まらんぞ〜ぁ!」

頑丈なジローが、構図を失ったデッサンのように両足を前後左右に派手に広げてツルリと滑り、そのまま隣にいたドクター・パオロを巻き込んで床の上を滑走していった。パオロ先生の持っていたハーブの袋が宙を舞い、中から「強烈な笑いを誘発する乾燥パウダー」が、店内の空気中に大量に撒き散らされる。

「ふ、ふははは! 滑る、滑るぞ! なんだこの滑り気は、可笑しくて涙が出てきた、はははは!」

先生自身がハーブを吸い込んで爆笑しながら滑っていく。さらにその先には、大樽から直接ワインを飲んでいた大髭のピエトロがいた。ピエトロは油に足を取られて巨体を大きく回転させ、手にしたワイン樽を天井に向けて力任せに放り投げてしまった。

「ど、どわあああッ!? 樽が、俺の命の樽がァァァッ!!」

天井にぶつかったワイン樽が真っ二つに割れ、中から数百リットルの極上の赤ワインが、まるで大雨スコールのように、円卓の上の料理や、常連たちの頭上へと一直線に降り注いだ。

「キャッ!? 冷たい! ワインの雨です!」

フランチェスカちゃんも油でツルツルと足を滑らせ、何度も派手にズッコケながら、その美しい白銀の髪と鎧を赤ワインで完全に真っ赤に染め上げ、ポカンとした顔でその場に尻餅をついた。彼女の白銀の猫耳は、あまりのハプニングにヘナヘナと力なく垂れ下がっている。

だが、ハプニングはこれで終わらなかった。俺の指先から放たれたもう一つの光、**【真紅の熱素サーマル・インフェルノ】**のラインが、マルコ店長が掲げていた大きな木べらに正確に直撃し、木べらが一瞬にして「燃え盛る紅蓮のたいまつ」へと変貌したのだ!

「熱っ、熱ちちちちッ!! ダヴィンチの野郎、俺の商売道具を燃やしやがったなッ!!」

慌てたマルコ店長は、燃える木べらを振り回しながら油の床でツルリと滑り、そのまま厨房の入り口に立っていた大女のマリアさんの分厚い腹に向けて、自らの質量と加速のすべてを乗せて大激突したのだ!

「――ズガァァァァァンッ!!!!」

店全体が地震のように激しく揺れ、凄まじい破壊音と共に、マルコ店長はマリアさんの強固な肉体(腹)に見事に弾き返され、自ら作り上げた特製煮込みの巨大な鉄鍋の中に、お尻から真っ逆さまに突っ込んでいった!

鉄鍋からドバァァァッ!と溢れ出た濃厚な赤トマトソースが、円卓の周囲にいたルチアやトトのじいさんの顔面に、まるで飛び散ったインクのように容赦なくぶちまけられた。

「あっ、熱ッつー!!」ルチアとトトじいさんが吠えた。

「ぶ、ぶほおおおおおッ!?!?(マルコ店長の、この世のものとは思えない潰れたカエルのような悲鳴)」

鍋の中でお尻をアツアツのソースで温められた店長は、顔中をトマトまみれにしながら、

「熱い、熱い、誰か冷水をくれぇぇぇッ!!」と、

鼻水を垂らしながら涙目で絶叫した。下町で最も恐れられる大家の男が、自らの料理の中で文字通り【トマトまみれの人形】へと成り下がった、完璧なハプニングの瞬間だった。

「ふ、ふははは! 面白い、これぞ芸術の大爆発だ、はははは〜ッ!」

パオロ先生の笑い粉を吸い込んだルチアとトトのじいさんも、顔を真っ赤なソースで汚したまま、お互いにお腹を抱えて床の上をゴロゴロと転がりながら爆笑していた。

「も、もう! ダヴィンチさんの大バカ者ーーーッ!! 家賃を払ったからって、お店をめちゃくちゃにしてどうするんですか! 今夜の片付けは、全部あなた一人でやってもらいますからねッ!!」

ワインまみれになったフランチェスカちゃんが、床の油に足を取られて何度もズッコケながら、涙目で俺に向かって絶叫した。彼女の猫耳は怒りでピンと逆立っているが、その顔には楽しそうな笑みが隠しきれていなかった。

「ひゃ、ひゃははは! すまねえ、すまねえみんな! だがね、これこそが下町の、おじさんたちの本当の『生きているパレット』の色なのさね!」


 俺は頭を押さえ、偏頭痛の冷や汗と飛び散ったトマトソースを拭いながら、愉快な仲間たちの泥まみれで笑顔溢れるデッサンを、その生身の五感に深く刻み込むのだった。事件がなくても、俺たちの探偵事務所の日常は、いつだって極彩色に騒がしいのさね。

(第五話・番外編 ――完――)

みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?

少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。

励みになりますので、☆☆☆☆☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。

これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

パラレルワールドで魔法と多種族の住む下町ローマで起こる事件を魔法とスキルで解決していく物語です。時代背景は読者の描く時代に当てはめてくださいね。

よろしくお願いします。

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