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天空都市のコーデックス:6章 マチュピチュ編

二話目の投稿です。

誤字脱字が多くなると思いますが、よろしくお願いいたします。

途中で、脱線することもあると思いますが、ゆっくりと見守ってください。

作品の内容が前後することが多々あると思いますが、大目に見て頂ければ、うれしく存じます。

新作始めます。探偵物です。よろしくお願いします。

https://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/3195922/

では、参ります!!

### 第6章:十人の容疑者

#### 1. 密室の円卓、あるいは崩壊への審問

「ゴゴゴゴゴ……!」

神殿の床板を通じて伝わる地鳴りは、もはや一定の周期を持った「地球の脈動」へと変わっていた。台形の窓から差し込む血紅色の光はさらに濃度を増し、まるで部屋全体が巨大な内臓の内部であるかのような錯覚を抱かせる。

最高神官トゥパックの遺体が横たわる祭壇を取り囲むように、マチュピチュの命運を握る「十人の容疑者」が集められていた。

シャーロック・ホームズは、破壊された門扉の残骸の前に毅然と立ち、仕込み杖を床にコツンと突いた。その目は、恐怖と猜疑心で互いを睨み合う十人の顔ぶれを、解剖学的な冷徹さで見つめている。

「諸君、世界の終わりが外で喉を鳴らしているというのに、我々はこうして狭い部屋で身を寄せ合っている。実にもどかしいが、この『密室の謎』を解かない限り、我々は全員、大洪水に飲まれる前に互いの猜疑心で殺し合うことになるだろう。……では、尋問を始めよう。まずは、クスコ朝廷からの全権大使、ハナン卿。あんたからだ」

#### 2. 十の告白、十の欺瞞(取り調べの応酬)

##### ① 朝廷の全権大使:ハナン(人間)

「無礼な! 私はクスコの皇帝の代理人だぞ!」

ハナンは絹織物の豪華なマントを激しく揺らし、細い指をホームズに突きつけた。その顔は恐怖で青ざめ、額からは脂汗が「タララ……」と滴り落ちている。

「私が何故、このような辺境の呪術師を殺さねえいかんのだ! 私は昨夜、朝廷から運ばれた『聖なる財宝』の目録を自室で確認していた! アリバイなら、私の護衛兵たちが証明する!」

「お気の毒ですが、その護衛兵たちは昨夜、ウルコ親方の手配した酒で泥酔していたそうじゃないですか」ホームズは冷笑した。「あんたの狙いは、トゥパックが独占しようとしていた『空間転移のキープ』だ。朝廷を見捨て、この財宝と共に別の世界へ逃げようとした。違うかい?」

「くっ……! 証拠のない妄言だ!」

##### ② 石工の親方:ウルコ(熊の亜人)

「だから言ったろ、探偵! 俺は殺してねえ!」

ウルコが身の丈ほどもある石割用ハンマーを床に叩きつけると、花崗岩の床が「ドン!」と鈍く響いた。彼の厚い胸板が激しく上下する。

「俺は確かに昨夜、トゥパックのクソジジイに呼び出されて、神殿の床の『耐荷重計算』について文句を言われた! ジジイは部屋に黄金を詰め込みすぎて、床が抜けそうだったんだよ! だが、俺が夜の十時に部屋を出た時、ジジイはピンピンしてやがった! その後は自分の小屋で腰を摩りながら寝てたんだ!」

「だがウルコ、あんたのハンマーの柄に、微かに『純銀の削り粉』が付着している」私は彼の道具を指し示した。「トゥパックの胸を貫いたあの銀のピン、あんたの技術なら、その頭部のコンドルの細工をその場で修復、あるいは加工することが可能だったはずだ」

「な、何だと……!? 俺はそんな小細工はしねえ!」

##### ③ 防衛官:カパック(トカゲの亜人)

「俺を疑うなら、今すぐこの場で白黒つけてやるぞ、人間ども!」

カパックの縦に割れた瞳が、獣特有の獰猛さで輝いた。彼の灰色の鱗が「シャリシャリ」と不気味な音を立てて逆立つ。

「俺は昨夜、午前二時まで『選別の門』の警備を指揮していた! 民衆が神殿に暴動を起こさないよう、前線にいたんだ! トゥパック様が死んで一番困るのは、兵たちの士気が下がることだ! 俺が神官長様を殺す理由がどこにある!」

「動機なら十分にあるさ、カパック防衛官」ホームズが歩み寄る。「あんたは昨夜、マイタから『神殿の地下のバルブが閉じられ、亜人たちが捨て石にされる』という事実を聞かされた。忠誠心が激しい憎悪へとひっくり返るには、それで十分な理由だ。あんたの鱗の間に挟まっていたヴィクーニャの繊維は、その激しい怒りの衝突の証明だよ」

「……ぐぬぅ!」カパックは牙を剥き、言葉を詰まらせた。

##### ④ 仕え女の長:キリャ(人間)

「私は……私はただ、トゥパック様のお世話をしていただけです……」

キリャは祭壇の傍らに崩れ落ちたまま、胸元の銀のピン(トゥプ)を両手で固く握りしめていた。彼女の瞳には、狂気とも思える盲信の色が宿っている。

「昨夜の夜半、トゥパック様が『これより神聖なる対話に入る。夜明けまで誰も入れるな』と仰り、内側からかんぬきを掛けられました。私はその門のすぐ外で、一晩中祈りを捧げていたのです。誰も門を通っていません! だから、これは人間が立ち入った犯罪ではなく、神の意志なのです!」

「一晩中門の外にいた、ね」ホームズはキリャの足元を覗き込んだ。「お嬢さん、あんたの美しいモカシンのつま先に、不自然な『白い粉』がついている。これは門が内側から削られた、あるいは動かされた際に出る花崗岩の結晶粉だ。中に入っていない人間が、何故この粉を踏んでいるのかな?」

「それは……それは、先ほどウルコ様が門を壊した時に……!」キリャの言葉が震え始める。

##### ⑤ 水路の管理者:マイタ(トカゲの亜人)

「ハハハ! いい気気味だ! あの強欲なジジイが死んだか!」

脇腹から青黒い血を流しながら、壁に寄りかかっていたマイタが狂ったように笑った。

「俺は昨夜、神殿の地下水路のバルブを壊しに行っていた! トゥパックのクソジジイが、地下の『水圧駆動装置』を使って自分たちだけ逃げようとしているのが分かったからな! だが、俺はそこをカパックのバカ兵士どもに見つかって、一晩中地下牢にぶち込まれていたんだ! 殺せるわけがねえだろ!」

「確かにあんたには強固な拘束のアリバイがあるように見える」私はマイタの傷口を観察した。「しかしマイタ、君の爪の間に付着しているのは、地下牢の泥ではないな。これは……神殿の最奥の通気口に生息している、特殊な『発光苔』の成分だ。君は牢に入れられる前に、あるいは脱獄して、あの狭い通気口に干渉したのではないか?」

「チッ……探偵の仲間は、蛇みたいに鋭い目をしていやがる」

##### ⑥ 神殿の若き神官:パチャ(人間)

「私は何も知りません! 私はただの記録係です!」

パチャは怯えた目で、手にした未完成のキープ(結縄)を胸に抱きしめた。

「私は昨夜、トゥパック様から『過去の洪水のサイクルに関する数理データ』を整理するよう命じられ、夜通し神殿の書庫に籠もっていました! 書庫はここから遥か離れた東棟にあります! 私はこの手にある紐を結ぶだけで精一杯だったのです!」

「パチャ、あんたの手を見てごらん」ホームズが彼の右手を掴み上げた。「記録係にしては、人差し指と親指の皮が異常に硬くなっている。これはキープを結ぶための硬さじゃない。細い金属のワイヤーや、強固な『植物繊維の紐』を、強い力で引っ張った時にできる『絞殺痕』に似た摩擦傷だ。昨夜、あんたは何をそれほどの力で引っ張っていたんだい?」

「あ、あれは……! データの整理で、紐をきつく結びすぎたのです!」

##### ⑦ 朝廷の警備隊長:ルミ(人間)

「俺を疑うのなら、クスコの軍勢が黙っていないぞ!」

ルミはブロンズの胸当てを叩き、傲慢に言い放った。しかし、その脚は不自然に刻み震えている。

「俺は昨夜、ハナン様の命令で『財宝の警備』のために、神殿の外周を巡回していた。怪しい影など一人も見ていない! トゥパック様の密室は、俺たちの防衛線の内側にあるんだぞ! 外部の人間が侵入できるはずがない!」

「その通り、外部の人間はね」ホームズが冷徹に微笑む。「だがルミ隊長、あんたのブロンズの胸当ての裏側に、小さな『擦り傷』がいくつもある。これは、神殿の狭い石壁の間を、鎧をつけたまま無理に這い進んだ時にできる傷だ。あんたは巡回と称して、神殿の隠し通路を探索していたんじゃないのか?」

「な、何のためにそんなことを……!」

##### ⑧ 天文観測官:ヤンケ(ウシュク/猿の亜人)

「キィキィ! 太陽が怒っている! 太陽が死にかけている!」

ヤンケは長い腕を振り回し、天井の台形の窓を指差して飛び跳ねた。その顔は長い毛で覆われているが、目は恐怖で血走っている。

「ヤンケは昨夜、インティワタナ(太陽をつなぎとめる石)の上で、星の動きを数えていた! 雲が厚くて、太陽の通り道が曲がっていた! トゥパックが死んだのは、太陽が彼を拒絶したからだ! ヤンケは祭壇になんか近づいていない!」

「おやおや、ヤンケ」私はヤンケの長い指先を優しく掴んだ。「君の自慢の灰色の毛並みに、小さな『白いヴィクーニャの毛』が何本も絡みついているよ。これはトゥパックの最高級のチュニックの毛だ。星を数えていたウシュクが、何故被害者の衣服の毛を身につけているのかな?」

「キィーッ! それは……風が運んできたんだ! 嘘じゃない!」

##### ⑨ 農業技術者:チカ(人間)

「私の棚田が、私の作った美しいアンデネスが死んでいく……!」

チカは尋問の最中も、外の崩落の音に怯え、ぶつぶつと呟いていた。その爪は土で黒く汚れ、衣服は泥まみれだった。

「私は昨夜、液状化を止めるために、棚田の最下層で排水溝を掘り続けていたわ! トゥパックが死のうが生きようが、私には関係ない! 土地が崩れれば、私たちは全員死ぬのよ! 私は一晩中、土の中にいたわ!」

「チカさん、あんたの言う『土』についてだがね」ホームズが彼女の泥だらけの手を指差した。「その泥の中に、棚田の赤土とは明らかに違う『高級なインセンス(香木)の灰』が混ざっている。この高純度の香は、最高神官の密室の香炉でしか使われないものだ。土を掘っていた人間が、何故神殿の最奥の灰を浴びているのかな?」

「それは……私は……!」チカは顔を覆って黙り込んだ。

##### ⑩ 謎の預言者:ヴィラコ(人間・素性不明)

「ふふふ……すべては予定された幾何学の崩壊だよ、探偵さん」

部屋の隅で、ボロ布のようなマントを深く被った老人ヴィラコが、不気味に低く笑った。彼は数日前に下界から紛れ込んだとされる、素性不明の男だった。

「私は昨夜、この都市のすべての民の『魂の重さ』を量っていた。トゥパックは自らの質量を裏切り、時空の彼方へ逃げようとした。だから、その因果の糸が彼の心臓を貫いたのだ。私にはアリバイなどない。私は偏在する影なのだから」

「面白いポエムだね、ヴィラコ」ホームズの目が一瞬で細くなった。「だがあんたのマントの裾から覗く、その『ブロンズ製の細い剃刀』――。その刃先には、トゥパックの命の結び目を切り裂いた、あの漆黒のキープの植物繊維が、まだしっかりと付着している。あんたはただの預言者ではない。この都市の崩壊を『加速』させるために送り込まれた、クスコの別派閥の暗殺者だ」

「……ほう、そこまで見抜くとはね」ヴィラコの見開かれた目が、怪しく輝いた。

#### 3. 破綻するアリバイ、論理の迷宮

「誰もが何かを隠し、誰もがこの密室に触れている」

ホームズはパイプの煙を大きく部屋に循環させ、祭壇の上の死体を見つめた。十人の容疑者たちの告白と欺瞞が、部屋の空気の対流をさらに重く狂わせていく。

「かんぬきが掛けられた完全な密室。外からの侵入は不可能であり、十人全員に動機と不審な痕跡がある。しかし、一人が凶器を突き刺せば、その瞬間に『密室を閉じること』はできないはずだ。……だが、ダ・ヴィンチ。僕たちの目の前にある物理的な痕跡は、決して嘘をつかない。この十人の悪意のネットワークを一本の線で結ぶ『驚くべき力学的トリック』の正体が、僕の脳内で今、完全に結晶化したよ」

「ゴゴゴゴゴォォォォ――!!」

その時、最大の地鳴りがマチュピチュを襲った。神殿の壁に巨大な亀裂が「バリバリ」と入り、天井から花崗岩の破片が「パラパラ」と降り注ぐ。太陽祭の最初の光がインティワタナを照らすまで、あと数分。

天空都市の崩壊というタイムリミットが迫る中、ホームズの仕込み杖が、ついに真犯人の方向へと真っ直ぐに突きつけられようとしていた。

【第6章:十人の容疑者・了】

【中編:聖なる密室・完】

みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?

少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。

励みになりますので、☆☆☆☆☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。

これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

この作品を読んでくださる方がいていただけて、とても、うれしくありがとうございます。頑張って新しいアイデアを入れ込んでいきますので、よろしくお願いします。新作始めます。探偵物です。よろしくお願いします。

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