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【ティワナク編】 * **【第二翼:水圏の揺り籠】* **第九章:探偵の罠と裏切りの名士

いつもお読みいただきありがとうございます

新しい翼の始まりです  【ティワナク編】第一翼:楽園の不協和音】

よろしくお願いします。私が思うより長〜い作品になりました♪文章力0の私ですがAIさんが頑張ってくれてます。

探偵ダ•ヴァンチをこれからも応援してくださいね!



* **第九章:探偵の罠と裏切りの名士




万物の調和を司る流体力学において、最も破壊的でありながら美しい現象は「キャビテーション(空洞現象)」である。流体の速度が局所的に極限まで高まるとき、圧力は飽和蒸気圧を下回り、水の中に微小な気泡(空洞)が無数に発生する。


そしてその気泡が、再び高圧の領域へと移動して押し潰される瞬間、極小の空間に数万気圧に達する超高圧の衝撃い波が生まれるのだ。水は優しき調和の象徴ではない。牙を剥けば、己の肉体をも内側から爆破する恐るべき金属の刃となる。


チチカカ湖の水底に沈む、始祖たちの宇宙船の第二隔壁――「黄金宮(中央制御室)」


部屋を満たしていた青紫色の禍々しいマナの光は、私が「連続の式」を用いて主水門を開放したことによって、その輝きを失いつつあった。しかし、真鍮の制御盤の前に立つ人族の最高幹部、執政官マルコの瞳に宿る憎悪の炎だけは、いささかも衰えてはいなかった。


「おのれ……おのれ、レオナルド王子……! 始祖の結界を、ただの計算で破ったというのか! だが、まだ終わらん! この『水神の怒り(大量津波発生装置)』の主幹導管は、すでに最大出力オーバーロードに達している! ティワナクの傲慢な白い鳥どもを、一瞬で泥水の下へと洗い流してやる!」


マルコの狂った怒号が、水中を伝う魔導の念話となって私の頭脳に直接叩きつけられた。

彼の手が、制御盤の最も巨大な真鍮のレバーを、限界を超えて引き絞る。


ズズズ、ズドォォォン!!!


黄金宮の最深部、質量数万トンに及ぶ巨大な吸水シリンダーが猛烈な勢いで駆動を始めた。チチカカ湖の全水量が、この部屋の真下を通る幅わずか数メートルの、狭い鉄の主幹導管へと無理やり吸い込まれていく。


湖水が巨大な物理の渦となり、地上へ向かって逆流を始めたのだ。このままでは数分以内に、下層街はおろかティワナクの巨石都市そのものが、大津波の凄まじい圧力によって根底から圧壊してしまう。


「レオナルド様、主幹導管の圧力が臨界点を超えています! 物理的な力でマルコを止めようにも、レバーの周囲に高密度の防護マナが展開されていて近寄れません!」


私の影から躍り出た漆黒の戦士、黒豹族のシザルが、双振りの湾刀を構えながら念話で叫んだ。彼の琥珀色の瞳は、壁の導管が破裂寸前に膨れ上がっている様子を捉えていた。


「焦ることはないよ、シザル。すべては私の描いた(罠)通りに動いている。マルコ、君の政治的な復讐劇は、小説としては非常に面白いが、科学者としての私の目から見れば、君の流体力学の計算はあまりにも不器用で、そして致命的に『美しくない』のさ」


私は純白の翼を静かに広げ、水圧の渦のなかで一歩前へ出た。私の手には、真鍮製の精密な万年筆が、完璧な調和を保ったまま握られていた。


「マルコ、君は人族の知恵を結集して、この津波発生装置を起動した。だが、管の断面積をこれほど急激に縮小させ、マナの出力だけで流速を無限に高めれば、導管の内部で何が起こるか、その優れた頭脳でシミュレーションしなかったのかい?」


「何だと……!? 出力を高めれば、水はより強く、より速く地上の糞鳥どもを直撃する! それだけの単純な等式だ!」マルコが血走った目を私に向け、さらにレバーを押し込む。


ノーさ、マルコ。流体の速度が極限に達したとき、圧力は逆に『ゼロ』へと向かって急降下する。水の中に、無数の真空の泡が生まれるのさ。……前世のフィレンツェで、私が設計した高速水車の翼が、数ヶ月でボロボロに削り取られていた理由を、私はこの超古代の地で完全に数式化(解明)した。それが――キャビテーション(空洞現象)の真実さ」


私は万年筆の先から、純粋なマナの振動を、暴走する主幹導管の表面へと直接投射した。


「流体の圧力を、飽和蒸気圧以下へと強制共鳴させる! ――『空洞の牙よ、内側から鉄を喰らえ』!」


等式が書き換えられた瞬間、主幹導管の内部を流れる高圧マナ水流のなかで、文字通り「億単位の微小な気泡」が一斉に発生した。管の内部は、激しく沸騰したかのような白い泡の嵐と化す。


「な、何だこの音は……!? 導管が……震えている!?」マルコの顔から、血の気が完全に引いていった。


高流速のエリアを抜けた気泡の群れは、次の瞬間、マルコの足元の高圧エリアへと流れ込んだ。そして――。


パチン、パチパチパチパチン!!!


億単位の気泡が、周囲の高圧によって一斉に「押し潰され(崩壊)」、その瞬間に発生した数万気圧の極小の微細衝撃波マイクロジェットが、内側から鉄の導管を猛烈な勢いで乱打し始めた。


物理学における、キャビテーション・エロージョン(壊食)の応用だ。どれほど強固な始祖たちの超合金であっても、この物理の根源的な衝撃波の前には、ただの柔らかい粘土に過ぎない。


バリバリバリ! ドカン!


マルコの足元の床が、内側からの無数の爆発によって木っ端微塵に粉砕された。津波を地上へと送り出すはずの主幹導管は、その強力な水流自体の力によって内側からボロボロに噛み砕かれ、エネルギーを地上へ伝える前に、黄金宮の内部で完全に破裂した。

暴走していた大量の湖水は、推進力を失い、ただの穏やかな、温かい排水となってチチカカ湖の深淵へとダラダラと流れ落ちていった。


「馬鹿な……! 我ら人族の、百年の悲願が……ただの水の泡の力で、内側から壊されたというのか……!」


マルコはレバーを握ったまま、粉砕された床の破片の上に膝をつき、絶望の悲鳴を水流に響かせた。


彼の身体を護っていた防護マナは、導管の破裂によるショックで完全に霧散していた。その隙を見逃さず、シザルの黒い影が一瞬でマルコの背後へと回り込み、その首元に双振りの湾刀を冷徹に固定した。


「そこまでだ、執政官。あなたの描いた悲劇のシナリオは、この偉大な巨匠(レオナルド様)のキャビテーションの罠によって、完全に粉砕されたよ」

シザルが念話で冷たく告げた。


「見事な証明だったよ、シザル、ミーナ」


私は純白の翼を静かにすぼめ、万年筆を胸のポケットへと収めた。神殿の天井の隙間から、水面を抜けて届く本物の美しい陽光が、私たちの翼と毛並みを、優しく、そして暖かく照らし始めていた。


人族のマルコが抱いていた「不平等」の数式は、力による破壊ではなく、これからの和親憲章のなかで、私たちが知性をもって正していかねばならない。偽りの神話が終わり、すべての種族が等しく歩むための本当の夜明けが、このチチカカ湖の水底において、いま確かに証明されたのだ。


黄金宮の制御室を満たしていた緊迫した空気は、主幹導管の破裂による重々しい排水音とともに、ゆっくりと引いていった。周囲の金属壁を流れるマナの血液も、暴走の紫色から、本来の穏やかな青白い輝きを取り戻し、水底の要塞は長い眠りにつくかのように静まり返っていった。


「……ハハハ、見事なものだな、レオナルド王子」


シザルに拘束されたマルコは、力なく笑いながら、床に飛び散った真鍮の歯車の破片を見つめていた。彼の瞳からは、先ほどまでの凶暴な紫の光が消え、一人の老いた政治家としての、深い疲弊の色彩だけが残されていた。


「私は人族の誰よりも始祖の文献を読み解き、この黄金宮の構造を理解したつもりでいた。だが、お前はそれ以上の『理』を知っていた。水そのものに内側から鉄を壊させるなど、いかなる魔導の書物にも書かれてはいなかったぞ」


「書物になければ、自分で自然を観察し、数式を作ればいいだけの話さ、マルコ」


私は彼の前に歩み寄り、そのしゃがみ込んだ肩を静かに見下ろした。背中の純白の翼から放たれる穏やかなマナの光が、マルコの暗い影を優しく照らす。


「君の知性は、確かに優れていた。だが、君は『支配への憎しみ』に囚われるあまり、流体が持つ本質的な調和の美しさを見落としてしまったんだ。力で他者を圧倒しようとすれば、その力はいつか、今回のキャビテーションのように、君たち自身を内側から崩壊させる衝撃波となって返ってくる。それが、宇宙の等式の基本原則なのさ」


「……ならば、我ら人族は、これからもあの空の上でふんぞり返る鳥人どもの下で、ただの高級な家畜として生きろというのか」


マルコが歯噛みした。


「そんな事は、私が許さないよ」


私は不敵に微笑み、彼に向かって手を差し伸べた。


「私が王宮の中央広場で宣言した『新ティワナク和親憲章』を忘れたかい? これからのティワナクにおいて、鳥人族も、獣人族も、そして君たち人族も、いかなる支配関係にも縛られない。

君のその優れた行政の知恵と、人族の繊細な技術力は、これからの新しい科学の時代を築くために、絶対に必要な『歯車』なんだ。マルコ、破壊のために命を捨てるのではなく、新しい調和のために、その知性を私に貸してくれないか」


マルコは私の純白の翼、そして差し出された手をじっと見つめていた。

彼の目から、一粒の涙が湖水のなかに溶けて消えた。


「……お前という男は、本当に、理解を超えている……」


人族の最高幹部は、ついにそのプライドを捨て、静かに頭を垂れた。


「レオナルド様、リヴァイアサン族の戦士たちも、宮殿の各所で完全に正気を取り戻したようです」


神殿の入り口から、翡翠色の美しい翼を羽ばたかせながら、カワセミ族の少女ミーナが戻ってきた。

彼女の瞳には、村の大人たちが無事に凍結から解放されたという、大いなる安堵の光が宿っていた。


「よかった、ミーナ。これでチチカカ湖の怪事件は、めでたくハッピーエンドだ。シザル、マルコを王宮の法務機関へと引き渡す手配を。ただし、彼を地下牢に入れるのではない。

私の実験室の『技術顧問』として、軟禁状態での共同研究を許可するよう、元老院に伝えてくれ」


「御意、我が主。罪人を技術の奴隷にするとは、相変わらず手厳しい」


シザルが牙を見せて笑い、マルコを連れて歩き出した。


私は手記を取り出し、チチカカ湖の水底で繰り広げられた物理の決算を、美しい鏡文字で刻み込んだ。


万物は流転し、等式は常に変化していく。だが、私たちがこの深海で響かせた『調和の数式』だけは、黄金宮の金属壁に深く刻まれ、果てしなき未来の進歩へと語り継がれていく。天才レオナルド・ダ・ヴィンチの、この50万年前の超古代における創世の旅路は、美しい新星の光とともに、次なる熱き戦線へと、そのページを力強くめくったのだった。

みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?

少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。

励みになりますので、☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。

リアクションボタンもよろしくお願いします

これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

今回は女子高生のお話です。

よろしくお願いします。

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