表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

第2話 路地裏の応酬

 東京都、渋谷区。


 晴天の下、早足で道を急ぐサラリーマン。

 露出の激しい若者たち。

 スマホで写真を撮る外国人。

 はしゃぐ子供たちに、道端で休む老人。


 呆れるほど平和な光景だ。

 まさかこの中に、人々の日常を脅かす“恐怖”が潜んでいるとは思うまい。


 ダンジョン――

 それはモンスター共の巣窟そうくつ

 この世界に突如として発生し、ゲートを通じて現実と異界を繋ぐ。


 ゲートは脈絡なく世界中に出現し、日常を侵食した。

 初めは恐怖に震えていた人々も、今では慣れきってしまっている。


「喉元過ぎれば、何とやらだな」


 独り言は、誰に聞かせるわけでもない。

 目的地は、もうすぐそこだ。


 ◆


 そして俺とは別に。

 渋谷の現場では、既に面倒事が始まっていた。


「……おい。ギルドからの連絡は?」


「まだ、ありません……」


 高層ビルが立ち並ぶ一画。

 ビルとビルの間には、立ち入り禁止のテープが幾重にも張られている。


 その奥――

 路地裏からは、青いもやが滲んでいた。


 靄の前には、公安の男が二人。


「ちっ、馬鹿野郎どもが……! 状況分かってねぇのか? 足元見やがって、くそがっ!!」


 苛立った男――茂宮しげみやは煙草をくわえ、煙を吐き出す。


「……報酬金、今いくらだ?」


「……二百万、ですね……」


「ちっ……。四百まで上げて、一週間様子見ろ。それで無理なら【特隊とくたい】を動かす」


「特隊って……! またうちで攻略するんですか!? 無謀ですよ茂宮さん! ここ最近立て続けじゃないですか! 予算、もう――」


「アホ!! んなもんどっかからひり出すんだよ!! ブルーゲートにこれ以上の報酬は出せねぇ!」


「…………それは……確かに、そうですが……!」


 茂宮は吸殻を地面に投げ捨て、靴で踏み消す。

 苛立ちを隠さず頭を掻く。


 その背後に、五人の影が現れた。


「ん~? これはこれは~! 公安様じゃねぇか?」


「……あん?」


 武装した五人の男たち。

 鎧を着込む者、ロングソードを帯刀する者。

 全員が薄気味悪い笑みを浮かべている。


「公安がこんな路地裏で何してんだぁ?」

「お仕事サボり中でちゅかぁ?」

「勘弁してくれよ~! おめぇらの給料、どっから出てると思ってんだよ~?」


 下品な笑い声が響く。


 茂宮は目を細め、彼らの装備を見定めた。


「……探索者か。ここは立ち入り禁止だ。外のテープが見えなかったのか? とっとと出てけ。仕事の邪魔だ」


 敵意を向ける茂宮に対し、リーダー格の男が前に出る。


「んだよ、ちょっと様子を見に来ただけだろ? もう噂になってんだぜ、コレ。ゲートが発生したの、確か六月頃だったよなぁ? で、今何月よ? ん?」


 茂宮の顔に影が差す。


「だいたい三か月……そろそろリミットだろ? スタンピードでも起きたら、こっちはたまったもんじゃねぇ。クックック……」


「……用件はなんだ。さっさと言え」


 会話の主導権は、完全にリーダー格へ移っていた。


「ギルドが動かねぇんだろ? そりゃ当然だ。最近、報酬金が目減りしてんだよ。ギルドも反発してんだ。あんたら公安様の対応になぁ」


 男はスマホを取り出し、画面をトントンと叩く。


「渋谷ブルーゲートの攻略金、二百万ね……いやぁ、世知辛い! 命懸けで攻略して、国から貰えるのはたった二百万! そりゃギルドも動かねぇってなぁ、お前ら!」


 下品な笑いが重なる。


 笑いが止むと、リーダー格の男は声を潜めた。


「だが、俺らなら話は別だぜ? 公安様よぉ……?」


 ◆


 そしてこの路地裏に、もう一人。

 渋谷ブルーゲートを探す男が近づいていた。


 ――この俺、御剣 一真だ。

 ――――用語一覧――――


【特隊】

 公安特務部隊こうあんとくむぶたいの略称。

 自衛隊と双璧を為す、日本の国防の要となる実力組織。人類史上初めてダンジョンが観測された、1994年に発足。自衛隊が対国際的な抑止力として機能する一方で、公安特務部隊はダンジョン攻略に特化した組織として、防衛省の傘下に置かれている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ