第12話 熟達者
「それで? 俺にいったい何の用だ?」
人目の多い大通りを避け、閑散としたシャッター街に到着した。にやつく5人組。その中から、例のデカ男が前へと躍り出る。
「おめぇさっきのブルーゲート、一人で攻略したんだってなぁ?」
一応、茂宮も隣にいたのだが。
悲しきかな。はなっから、頭数に加えられていない。
軽んじられているな、公安。
市民を守る、正義の味方だろうに。
「だったらどうした?」
「んで、報酬は受け取らねぇってか?」
「……何度も同じことを言わせるなよ。金に興味はないんだ」
デカ男のこめかみがひくついた。
チッとひとつ舌打ちをすると、顔面を思いっきりこちらへと近づけて、凄む。
「困るんだよなぁ、勝手にダンジョンを潰されるとよぉ……! 俺らはなぁ、ダンジョンを攻略して、公安様からありがたーい感謝の気持ちを頂いて、日々慎ましく暮らしてんだよ。おめぇみたいなソロ野郎に好き勝手されっと、俺らの食い扶持が狭くなるんだわ!」
……好き勝手やっているのは、むしろお前らはぐれ探索者の方だろうに。
自分たちの事を棚に上げて、随分な言い草じゃないか。
「で? 結局何が言いたい? まさかわざわざ文句を言う為に追っかけて来た訳じゃないよな?」
「へっ、あたりめぇだろっ――――!」
デカ男がパチンと指を鳴らすと、取り巻きが一斉に武器を構える。
「御剣ぃ……あのブルーゲートの攻略報酬は200万だったんだ。でもなぁ……それじゃあちと少ねぇ。中には管理者が居たんだろ? だったら話は別だよなあ?」
デカ男は雄弁に語りながら、腰に付けたロングソードに手を掛ける。
「一千万!! これで手を打ってやるよ! おめぇが勝手に攻略しちまった、あのダンジョンの報酬金! この場で俺らに支払いな! もし、拒むってなら――――」
ロングソードの切っ先を、真っすぐこちらへ向ける。
「………ちーっとばかし、痛い目見てもらうしかねぇんだよなぁ? 御剣ぃ?」
目の前にずらりと並ぶ、武器の数々。
中心のデカ男がロングソード。左右取り巻きがそれぞれモーニングスターにハルバード。更にその後ろに控える2人が、ハンドアックスとセスタス。
(見事に近距離ばっかだな。これでパーティーのつもりなのか……?)
だとすれば、あまりにもお粗末だ。
こいつらが用いている武器は、ギルドから支給される正規品。
当然、ギルドははぐれ探索者に武器を卸したりはしない。つまりこいつらには、どこかしらの小、中ギルドとのコネがあるに違いない。
金の繋がり、だろうか?
……下らねぇ。
「いいぜ。来な」
俺は手刀を作り、指先をクイクイと動かす。
こいつら相手に魔道具を使うのは、流石にオーバーキルが過ぎる。
「調子こいてんじゃねぇぞ、コラァッ――――!!」
まず動いたのは、ハルバード。
自慢のリーチを活かし、男は力いっぱいに振り下ろす。
男が異変に気付いたのは、そのすぐ後。
――――その手の中に、既にハルバードは無かった。
「………………は?」
「ふーん。やっぱギルド製は持ちやすくて、癖が少ないな。これが5万そこらで買えるってんだから、すげぇ技術力だよ。ほんとに」
俺の声で我に返った男が、呆然とこちらを見つめている。
「『誰でも扱いやすい!』って謳い文句は、明確な強みだよな。特に、ビジネスする上では」
俺は自分の手元で、ハルバードを転がす。
「なあ、お前らもそうは思わないか?」
男から奪ったハルバードの先端を向け、そう呟く。
男の顔からは、恐怖の色が滲み出る。
「なっ……何しやがったっ!?」
「そんな驚く様な事でもないだろ? アンタのハルバードを拝借させてもらったんだよ。動きがあんまりにもトロかったんで、つい出来心でな」
「――――っつ!!」
男は羞恥に焼かれたのか、顔が真っ赤に染まった。
探索者には、それぞれランクが存在する。
一番上は、S級――――
単独で国家と同等の戦力を有する、異端。
人の理を超えし、化け物たち。
日本には、5人だ。
そこから順にA、B、C、D、Eの、計6段階。
S級は人外なので、実質、探索者における最高ランクはAと言って過言でない。小中ギルドの長も、大体はこのランクに収まる。
もしも目の前のこいつらに、ランクを当てはめるならば――――
真ん中のデカ男がB級。
俺がハルバードを奪った男を含めた、左右の取り巻きがC級。その後ろの2人は、せいぜいD級ってところだろうか。
俺はハルバードを右手、左手へと交互に持ち替え、振り回す。
長物は久々だったが――――
思いのほか、手に馴染むじゃないか。
「さあ。かかって来いよ、ハイエナ共」
人間同士の争いに、全く持って興味はないのだが。
降りかかる火の粉であれば、払わない訳にはいかないからな。
読んで頂きありがとうございます。
面白いと思って頂けたら、ブックマークや評価で応援頂けると励みになります。




