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第9話 狂気に呑まれて

 後ずさる管理者ゲートマスターを地面に組み伏せて、馬乗りになる。

 ウエストポーチより取り出した小瓶。中身は残り、半分ほど。


 蓋を開ける。


「グギィッ……グギィッ……!」


 弱弱しい鳴き声、既に戦意はない。

 当然だ。


 こいつらの王は、死んだんだからな。


「ふふふっ……! クックックックッ……!!」


「おい、どうした御剣……? 何する気だ?」


「何って……お愉しみの時間だよ、茂宮しげみや……!」



 俺は短刀を管理者ゲートマスターの顔面に突き立てて、切っ先を眼球に向ける。




 グチュリ――――


「グッギャアアアアッ――――!!!!!」


 とどろく呻き声。

 管理者ゲートマスターの右目に、刃の先端が埋没する。


 痛みに悶え、地面を掻きむしる管理者ゲートマスター

 股からは失禁の跡も見て取れた。


「おいおい、もう降参か? まだまだ始まったばっかだぞ? はははっ……!」


 俺は小瓶を握りしめながら、狙いを定める。

 瓶を傾け、毒液を刀身へと向かって垂らす。


 刀身を伝った液体は、徐々に下へと向かう。


 管理者ゲートマスターの、眼球へと――――


「ガッ、ギャ、ギャアアアアアアア――――!!!!!!!!!!!!!」


 耳をつんざくほどの叫び声。

 眼球を毒で犯される、気分はどんなものだろうか?


 是非ともこいつに聞いてみたい所だ。



「はははははははははっ!! あーはっははっははははっはァ!!!!」



「おっ、おい!! 御剣っ!! おめぇ何やってんだっ!!」


「何って、教育だよ。きょ、う、い、く! 人間をダンジョンに閉じ込める様な悪い子には、お仕置きが必要だからなあ?」


「…………教育、って……? なに……言ってんだよ……?」




 あの時も、そうだった。

 俺と朱里あかりが閉じ込められた、ダンジョン。


 管理者ゲートマスターは、俺たちの足掻きを見て――――

 後ろでへらへらわらっていたに、違いない。




「知ってるかぁ、茂宮? モンスターつってもなあ。急所は俺らと同じなんだよ!」


 俺は後ろで騒ぎ立てる茂宮に視線を合わせ、言い聞かせてやる。


「特に、()()は別格だ。目ん玉ん中になぁ……毒を流し込んでやると、コイツら、いーい声で鳴くんだわ……! あっはっはっはは……!!!」


「ギャアアアッギャアアアアアアア――――!!!!!!」


 茂宮が俺の肩を持ち、後ろへと引っ張る。


「――――っつ、もうやめろって!!」


「何だ茂宮、モンスターをかばうのか? コイツらは人間にあだなす害虫だぞ? だったら、その身に刻み込んでやんなくちゃいけねぇよなあ? 人間に歯向かったら、いったいどうなるのかって事を、なっ……!!」


 短刀をかぎの様に、半回転。


「ガッ、アアアアアアアアッツ――――!!!!!!!!」


 右目が膨張し、破裂。

 機能を失った。


 そろそろ毒が脳髄のうずいに到達しただろうか?

 徐々に思考が削がれる頃合だ。


「やめろ御剣ぃっ!! 何もここまでする事ぁねぇだろうよ! もう決着はついたんだ! 後はほっといても、モンスターは消滅――――」


「コイツらがっ!!!! 人間を平気で襲って、殺して、犯す様にっ!! 俺はコイツらを追い詰めて、支配して、蹂躙じゅうりんする!! 慈悲なんてねぇ。徹底的に苦しめて、苦しめて苦しめて苦しめて苦しめてっ、最後に殺す!! 殺し尽くすっ!!!! それが俺のやり方なんだよっ!!」


 茂宮の腕を振り払い、俺は獲物に向き直る。


「だから……邪魔すんじゃねぇよ。茂宮」


「……御剣っ! …………お前っ……狂ってるぞ……!」



 狂ってる?

 ああ、そうかもな。


 でも、良いんじゃねぇか?


 一人ぐらい、狂ったやつがいた方が。

 こいつらも、『恐怖』の味ってのを覚えるかもしれねぇだろ?






「……グッ……ギィィッ……ッ……グ……」


 苦痛に耐えかねたのか。

 管理者ゲートマスターは、自らの手で首を絞め、死んでいた。

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