第一章(3) 出会い→始まり
西日がまぶしい夕方。
俺は森の中(多分近所のだ)で意識を取り戻した。何か夢を見た気がするが……なんだったかな?
まぁいいや。とりあえず今までの状況を整理しよう。
大家さんにみぞおちを殴られる➔家を追い出される➔女の子にみぞおちを殴られる➔女の子に後頭部を殴られる
………………嫌だな。泣いてないよ?
目から流れる汗をぬぐう。
それにしても、この森にこんな開けたトコあったっけ?
ざっと辺りを見渡してみる。そして俺が見たものは……
1・青テント
2・赤テント
3・虹テント
…なぜかテントしかない。しかも、
「虹テントなんてよく見つけたな!!」
思わず大声でツッコんでしまうほど鮮やかな七色。ホームセンターでも滅多にお目にかかれないだろう。
その声が聞こえたのか、テントから三人の人が出てきた。ちっこい女の子と、おどおどした女の子と、ボーッとした男の子だ。
「おー、起きたかー。」
「思ったより早う起きたな!」
「コクリッ」
三者三様の反応。悪いやつらではなさそうだし、これだけは聞いておかなければ。
「俺を殴りやがった女の子を知らないか?」
「「ん」」
間髪入れずにボーッとした男の子と小さな女の子が、もう一人の女の子を指差した。それにしても仲間売るの早ぇな!!
よし、あれだけ強かったんだ。手加減は「ごっ、ごめんなさい!」…許す!上目使いはズルいと思う。
うーん。こんな子が人を殴るなんて考えられない。雰囲気は違うけど外見はこの子だしなぁ…
なんて考えてると、
「いや~、謝るんはウチの方や。『正義感の強い風紀委員』の設定にしたテルを野放しにしたんはウチやし。」
「はい?設定?」
チビ娘が…
「今なんて言った(怒)?」
「なにも言ってません。」
こいつ…能力者か?
こほんっ。関西弁の子が訳のわからん事を言い出した。
混乱しかけたところで、目立たなかった男の子がフォローをいれてくれる。
「とりあえず自己紹介と、輝の説明しない?」
「せやな。それじゃああんたからな。」
ビシッと俺を指差す。
「俺から?まぁいいけど…」
その場の流れで俺から自己紹介。
「俺の名前は木々乃遊。ヲタクでニートな高校一年生。親は昔死んで一人暮らし中だったんだけど、家はさっき無くなった。」
……自己紹介ってこんなに悲しいものだったっけ?
「「はははっ!普通だね~(笑)」」
どこがだ!?
「ほな、次はウチやな。」
「その次は僕ねー。」
チビ…関西弁の女の子が自己紹介を始める。
「難波凛、16歳。関西弁で喋ってるけど、生まれも育ちも東京。家と親の事情はおんなじや!将来の夢はメイクアップアーティスト。よろしくな、ユウ!!」
あんまり宜しくしたくないなぁとか思ってると、次の自己紹介が始まった。
「久原仁、17歳。家はなくて、家族は行方不明。夢は絵師でーす。よろしくねー」
……ツッコミ所が多すぎる。一瞬「あれ?俺って普通じゃね?」とか思ってしまった。
「こいつは?」
一番謎の女の子が残っている。
「きっ黄田輝、16……歳」
「はい、ようできたなー。」
「輝は照れ屋なんだー。素だとあんな感じ。メイクして着替えると、雰囲気に合わせて性格が変わるんだー。」
不思議過ぎるよっ!!
「仁がのんびり説明してる間にできたで~。」
「さっきは本当にスイマセンでした。家や親の事情はみんなと同じで、夢は声優です。凛には音読みでテルと呼ばれています。」
ナチュラルメイクだけでこんなに変わるのか……。
よし、とりあえず整理しよう!
・メイクさん志望の小さなエセ関西人、凛
・のんびりしてて絵師志望、仁
・照れ屋で性格不安定の声優志望、輝
…………わぁお、俺を含めて変人だらけ!!
変人度は、俺<仁<凛≦輝 といったところか。
「「「今、失礼なこと考えてたでしょ?」」」
「滅相もございません。」
疑問形にするなら拳を固めないでほしい。
「まぁええわ。本題に入る。家なし、親なしの状況はウチらと同じや。」
「堂々と言えたもんじゃないけどな。」
「あれ?公園で言ってましたよね?」
「一般論だ。俺は気にしない。」
「……………」
あれ、なんか冷たい目で見られてる。何故だ……
「……続けるで?」
落ち込みつつも耳を傾ける。
「そろそろ話題無くなってきて暇やから、ここに住めへん?タダとは言えへん。テントと食糧は提供する。」
【凛のスカウ〇アタック。32%】
「テントと飯の代償が駄弁るだけって、軽すぎて怪しいんだが……」
「大丈夫。活動中にテルに襲われるから、決して軽くない!!」
「一気に重くなった!?しかも原因はお前だろ!!」
「テヘッ☆」
「キモいぞチビ。」
攻撃を予測してみぞおちをガード。そして、
「ぐはぁ!」
顔面……だと!?というか、交渉中に武力行使ですか?
「とにかく駄弁るだけや!」
【76%】
駄弁るだけなら俺でもできる。駄弁るだけなら………
「気を付けや、テル。」
「「主犯はお前だ!!」」
「あれ、仁まだおったん?」
「……(泣)」
こいつらと居るのは楽しい。一緒に居るのも……悪くないのかもな。
「わかった。これから宜しく!!」
【凛はユウのスカウトに成功した】
あの事故以来、初めて友達らしい友達ができた。
投稿が遅くて本当にスイマセンでした。
ついに仲間たちが登場です!!次回から活動開始するので、
読んでいただけたら幸いです。




