第8話 愛留を驚かせ!
第八話 愛留を驚かせ!
ここ最近、慎之介が頻繁に現代にやってくる。
(どれだけ おっちょこちょいなのよ……) 愛留の苦笑いが増えていく。
「いたた……」 慎之介は愛留の部屋に落ちてきた。
すると、愛留の部屋のテーブルには書き置きがあった。
「なになに…… 私が戻ってくるまでは、これを観ててくれ?」 慎之介は横に置いてあるタブレットを持つ。
不思議そうにタブレットを眺めていると、慎之介の指がボタンに当たり画像が写し出された。
(こんな薄いものに入れるようになるのか…… この時代の者は凄いな……)
慎之介は身体を細め、入れるかを確かめていた。
「あれ? ここに使い方が書いてあるぞ」 慎之介は愛留の置き手紙を読み出す。
「これで、ここを押すと……」 そこに流れたのはユーチューブである。
「わっ― 話し始めたぞ」 慎之介が驚くと、次第に慣れだしていく。
少し経つと、「これ面白いな」 慎之介はユーチューブにハマっていった。
「よし、俺も『ゆーちゅーばー』になるぞ!」
慎之介は立ち上がり、力を漲らせていた。
愛留が学校から帰ってくると、「あら、慎ちゃん来ていたのね」 もう慣れっこになってしまい、驚きもしなくなっていた。
「愛留~ 聞いてくれ! 俺も「ゆーちゅーばー」になりたいのだが……」
慎之介が真面目な顔で言うと、愛留はポカンとする。
「慎ちゃん、どうしたの?」
「俺も、この板に入って面白いのをしてみたいんだ!」 慎之介の目は真剣だった。
(板に入るって、タブレット?)
数日後、慎之介は愛留の部屋に落ちてきた。
「いたた…… 毎回、同じ事を言っているな……」 慎之介は部屋を眺め、安心したように愛留の部屋だと確信する。
(よし、このまま行ってみるか……)
そして着いたのは愛留が通う高校。 (この紙があったから行けたな)
慎之介は、愛留の部屋にあったプリントから学校を知ってしまう。 歩いて学校まで来てしまったのだ。
「よ、よし。 同じようにやってみよう」 慎之介は移動中、帽子を被って髷を隠していた。
帽子を取り、「え~ ゆーちゅーばーの慎之介です。 今日は友達の愛留を驚かせてみたいと思います」
慎之介はカメラが無いのに実況を始める。
慎之介はユーチューバーのように学校へ入っていくと校舎の中をすり抜け、屋上にまでやってきた。
すると、女子高生の声が聞こえる。
(マズイ! 隠れないと) 慎之介は貯水タンクの影に隠れると
「さぁ やるよ!」 一人の女子高生が刀を振りかざす。 よく見ると、斬られそうになっているのは愛留だった。
「危ない! 俺の知り合いと知っての狼藉か? この慎之介が相手つかまつる!」 慎之介が刀を抜いたと思ったら木刀だった。
(しまった! タイムスリップした時は木刀で稽古中だったんだ……)
慎之介は、覚悟を決めて愛留との間に入った。
「し 慎ちゃん?」 愛留は目をパチパチさせている。
「愛留、早く逃げろ! 俺が時間を稼ぐ! 早く!」 慎之介は木刀で構え、戦う姿勢を保っていると
「ぷっ…… あはははは」 愛留と親友の里美は腹を抱えて笑い出す。
「あ~ 笑った。 てか、何で慎ちゃんが学校に?」 愛留が驚いていると、
「いや、俺もゆーちゅーばーになりたくて愛留を驚かそうと思ったんだ……」
慎之介が説明すると、数分の時を無言のまま過ごした。 誰もが理解できない事に思考が止まってしまったのだ。
「ユーチューバー?」 愛留が言葉を出すと、
「そうだ。 俺が驚いた結果だったが、なかなか面白い……」
「それで、カメラは?」 親友の里美が言葉を被せる。
「かめら?」 慎之介はキョトンとする。
そして、愛留と里美がユーチューブの説明を始めると……
「じゃ、これは板に出ないのか?」 板とはタブレットのことである。
里美はニコニコしながら、 「愛留の友達って、本当にお侍だったのね~」
慎之介の周りを動き、ジロジロ見つめると
「もう里美。 許してあげて」 愛留が止めに入る。
「それで、さっきのだけど……それはカメラで撮ってから編集をして……」 愛留が説明していると、誰かが屋上のドアを開ける。
それに驚いた慎之介の鈴が鳴る。 “チリンッ―”
その瞬間、慎之介は江戸時代に戻っていった。
「愛留の言っていたタイムスリップ…… 本当に出来るんだね」 里美が驚きで目を丸くすると
「あははは……」 笑って誤魔化す愛留に、 「やっぱりアンタは飽きないわ~」 そう言って肩を何度も叩いた。
慎之介は江戸時代に戻り、菊にも話していた。
「そんなに楽しいのですか? ゆーちゅーばーという者は……」 お菊も目を輝かせて聞いていた。




