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第11話 時を超えて

 第十一話    時を超えて



 「愛留…… この時代の戦とは凄いものだな……」 慎之介は愛留の部屋に来ていた。


 「そうなの…… 江戸時代より前の時代も壮絶だったろうけど、この頃には飛行機などもあって大量に人を殺したり出来るのよ……」


 愛留は慎之介とYouTubeを観ながら話している。



 焼け野原になった東京。 そこには多くの戦争孤児になったものも出ていた。



 そして慎之介が顔を下に向けると

 (よほど衝撃的だったよね…… 私も経験することもない戦争を体験してしまった。 確かに気が下がっていくわよね……)


 愛留は気分転換にテレビをつける。 お笑いなどを観て気を紛らわそうとしていた。



 しかし、そこにはドキュメンタリー番組が映っていた。

 『戦争を体験した方からの証言です』 テレビの声に二人が目を向けると



 そこに映されていたのは八十八歳のお婆ちゃん。

 「私の母親が空襲の時に瓦礫の下敷きになったのです。 その時、この時代では見たことのない高校生くらいの女の子と、髷を結った侍のような男の人が私を助けてくれたのです……」



 このテレビの映像に二人は目を丸くする。


 「今、思えば “夢でも見ている” のかと思いました。 もし、夢でも私を助けてくれたのは間違いないのです」


 そう話すお婆ちゃんの名前が出ている。

 「まさか……」 愛留の声が震える。 そこには石井 ヨシと書かれていた。



 「ヨシちゃん……?」 「きっとヨシだろう……なんとなく面影が……」 慎之介の目に涙が溢れる。


 「生きていたんだ……」 愛留は両手で顔を覆った。



 「そうか…… しかし、会えるなら会ってみたいな」 慎之介がボソッと言うと、

 「そうだ!」 愛留はテレビ局に電話を掛けた。




 数日後、テレビ局から電話があり

 「対面させるようにしたいので、テレビ局まで来てください」

 そう言われ、愛留はテレビ局に向かったのだが……



 「なんか私だけで心細いよ…… 慎ちゃん、来ないかな」 

 そして立ち止まり、後ろを振り返ると


 「愛留~』慎之介が現れた。


 「慎ちゃん、ナイスタイミングだよ~」 愛留が慎之介の手を握る。



 「いや~ 風呂の湯加減を確かめていたら、思いのほか熱くてな~ 驚いたら鈴が鳴って……」


 マヌケな慎之介に思わず笑ってしまう。


 「それで、どこか出掛けるのか?」 慎之介の言葉に愛留が思い出す。

 「そうよ! これからテレビ局なの。 良かった、一緒に行こうよ」

 そう言って、二人はテレビ局に向かう。



 「いや~ なりきってますね~♪」 局の人間は、慎之介を見るとニヤニヤしている。

 (コスプレだと思っているんだろうな…… 私も最初は思ったし)



 「なんだ? やけに俺を見回しやがって…… それで、早くヨシに会いたいのだが?」 慎之介がムスッとしながら言うと


 「もうすぐですよ。 そして、会ったら驚いてくださいね」

 そういうテレビ局の人間は手で合図をしている。



 そして時間がやってくる。 二人はスタジオの中に入っていくと静かにヨシは座っていた。


 「もしかして愛留さん? それと慎ちゃん?」 ヨシは涙ながらに話しかけると


 「ヨシちゃん…… ううん。ヨシさんよね」

 「つい「ヨシ」と言ってしまいそうだが、ヨシ殿だな」 慎之介と愛留は再会を喜んでいた。



 その後、スタジオでヨシがどのように過ごしていたかを話してくれた。

 親戚に拾われ、大きくなって結婚をしたこと。 そして、それからも元気に過ごしたことだった。


 「よかった……」 愛留は涙を流す。



 そこに 「はいカットです。 お疲れ様でした~」 テレビ局の人間が合図をすると、


 「何が「カット」だ! こんなにも再会で感動しているのに!」


 こうして慎之介は、テレビ局の人間と喧嘩を始めてしまった。

 (この再会で何してんのよ……) 愛留とヨシは目が点になってしまった。



 その後、愛留はヨシと連絡先を交換した。



 愛留のスマホに着信が入る。 「もしもし……」 電話に出ると、相手はヨシだった。



 日曜日、愛留はヨシに伝えられた住所に来ていた。

  “ピンポーン” チャイムを押すと、

 「はーい」 子供のような声がする。 『ガチャ』 玄関が開くと、そこには中学生くらいの男の子がやってくる。


 「お婆ちゃん、来てくれたよ~」 


 中に案内され、部屋に入るとヨシが座っていた。

 「ヨシちゃん、会いたかった~」 愛留はヨシに抱きつくと

 「こんなお婆ちゃんでも、「ヨシちゃん」と呼んでくれて嬉しいわ」 



 「この子は孫の裕太。 随分と遅い孫だから可愛くてね~」

 ヨシは裕太を見て目を細める。


 すると、裕太が庭を見つめ

 「誰かいるよ!」 指をさす方向に慎之介が歩いていた。


 「慎ちゃん―」 愛留が大声を上げると、慎之介も気づく。



 「それで、本当にお侍さんなの?」 裕太が目を丸くすると



 「お婆ちゃんも本当に夢だと思ってたのよ…… 歳が経つにつれ、あれは夢や妄想と思うようにしていたの。 そんな事はないと思っていたけれど…… こうして二人に会えて良かった。 そして夢じゃないことが分かったんだから」



 そう言って、ヨシは涙を流す。


 「そうだな…… ヨシ殿も元気で良かった」 慎之介も笑顔で話すと


 「そうね。 防空壕から出ても自宅は見つからない…… 困って三人で地下鉄の駅に隠れたものだもの。 あの時は元気も無かったのに二人に励まされて……」 それからヨシは戦争の残酷さを話していく。



 「わかった…… 僕、もっと勉強してお婆ちゃんの時代の事も調べるよ。 そして、慎之介さんの時代も勉強するよ」 裕太の目は輝いていた。



 「あらあら…… 慎ちゃんの時代まで勉強するの? 昔すぎるんじゃない?」

 ヨシはニコッと微笑む。



 「裕太君、いっぱい聞いて勉強してね♪ 生きる教科書が二人もいるんだから」


 愛留はヨシと慎之介の肩に手を回し、満面の笑みを見せたのであった。



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