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第10話 戦争の光景

 第十話    戦争の光景



  “ドンッ―” 愛留の部屋の大きな音が響く。


 「えっ? 慎ちゃん?」 


 愛留は日曜の朝、ゆっくり寝ていようとするが慎之介が落ちてきたことにより目を覚ます。



 「いたた……」 腰と頭を押さえながら立ち上がる慎之介。


 「おはよう……って、またタイムスリップしたの?」 愛留はクスクスと笑う。

 「これで二度目だ……」


 「二度目?」 愛留はポカンとすると、慎之介が説明を始める。 慎之介は朝にタイムスリップをして昭和の時代へ行ったとのこと。



 「俺の時代でも飢饉があったが、見てきたものも壮絶だった……」 愛留は細かく聞いていくと、太平洋戦争の時代だった。



 「そうなのか…… 山で山菜を採っていた子供がいてな。 助けようとしたら沢へ落ちてしまったんだ……」


 慎之介が話すと、愛留は戦争の悲惨さのYouTubeを見せる。 そこには大変な時代だったことが思い知らされる。



 「慎ちゃんも、怪我はなかった? その子供も心配だけど……」

 「少し、ここを擦りむいただけだ。 心配いらん」 慎之介が気丈にしていると、


 「消毒だけでも……」 愛留は一階に行き、救急箱を取りに向かった。



 「お待たせ!」 愛留が救急箱を見せ、慎之介に近づくと


 「キャッ―」 足を滑らせた瞬間に “チリンッ ” 鈴の音が鳴る。




 「痛っ―」 タイムスリップしてしまった……


 「いたた……」 愛留が立ち上がると、慎之介の額が赤くなっているのに気づく。


 「慎ちゃん、どうしたの?」 愛留が慎之介の額に触れると

 「その箱が俺の額に……」 


 どうやら愛留の持っていた救急箱が慎之介の額に直撃していたらしい……



 「ごめんね……」 愛留が謝ると


 「大丈夫だ。 それよりここは……?」



 その時である。 “ウウゥゥ―” もの凄い音のサイレンが鳴る。

 「まさか―?」 


 愛留が声を出すと、一斉に防災頭巾を被った人達が出てくる。



 『空襲?』 愛留は気づいた。 戦時中の東京だったことに……

 1945年 (昭和20年) 米軍のB29爆撃機よって行われた無差別爆撃。


 東京の下町を中心に攻撃され、死者は10万人にのぼった。



 「アンタ、何しているの? 早くコッチに!」 ある女性が愛留と慎之介に叫ぶ。


 女性は五歳くらいの女の子を逃げている途中だった。


 (これが戦争……) 愛留は全身が震え、固まってしまう。



 「愛留、早く!」 慎之介が手を出すが、 「慎ちゃん、逃げたいけど足が動かないのよ……」 愛留は涙を流し、震えている。



 「愛留! さぁ、おぶされ!」 慎之介は愛留に背を見せてかがむと防空壕に逃げ込んだ。



 「大丈夫か? 愛留……」 慎之介が愛留を抱きしめると

 「本当…… 驚いたわよ。 あんな所でボーッとしていたら殺されちゃうわよ」 そう言ってきたのは、声を掛けてきた母親だった。


 「お姉ちゃん、大丈夫?」 その横にいた女の子が声を掛けると、

 「ありがとう……」 愛留は固まった顔で笑顔を見せる。



 「私、ヨシって言うの。 お姉ちゃんたちは?」

 「私は愛留。 コッチのお兄さんは慎ちゃんだよ」


 こうして緊張も和らぎ、愛留たちはヨシの家に案内される。 


 「こんな時代だからね…… 何ももてなす事を出来ないけど」 そう言って、ヨシの母親がお茶を出す。



 頭を下げ、お茶を頂くと愛留の頭に歴史の勉強をしたことが駆け巡る。

 (「欲しがりません、勝つまでは」や「贅沢は敵だ!」などのキャッチコピーがあったな……) 


 何万通の応募から選ばれたキャッチコピー。 これは小学生の女の子が書いたとして一層の人気にたったとか…… 実際は大人の人が書いていて、小学生の子が送ったことにより人気になったとも言われている。



 「そろそろ食事にしましょうか? 愛留さん、慎之介さんも良かったら食べてね」 ヨシの母親が食事を作っている。 その横でヨシが手伝いをしている姿を見て涙が出そうになる二人。



 (なんていい娘……)


 そして食事が出されると、二人は絶句してしまう。

 ご飯、味噌汁と、サツマイモの弦を茹でたものだった。


 この時代、食事は配給である。 サツマイモなどは自宅の庭で栽培をしている。

 農家などの親戚がいればお裾分けなどがある程度だった。


 「質素なもので済みませんが……」


 「と とても美味しいです……」 愛留は目に涙を溜めて頬張った。



 そして翌日、慎之介は健康な男性ということで徴兵される恐れがある為、身を隠しながらの生活をする。


 愛留はヨシの母親の手伝いをしていた。



 すると、またしても空襲警報のサイレンが鳴る。


 「逃げないと……」 ヨシの母親が叫ぶと、一斉に防災頭巾を被った。



 空には爆撃機。 その下には悲鳴をあげて逃げ惑う人。 それは地獄のような光景だった。



 「ヨシちゃん?」 愛留が見渡し、後ろ姿のヨシを見つける。

 「どうしたの?」 愛留が訊くと



 「さっき、この下から「逃げなさい」って聞こえたの……」 ヨシは涙を流しながら話す。


 (まさか、この瓦礫の下にお母さんが……)


 愛留が瓦礫を持つが、ビクともしない。

 「俺が……」 そこに勢いよく慎之介が瓦礫をどかす。


 そして下の部分に顔を入れると


 「慎ちゃん……」 愛留が声を出す。 慎之介は起き上がり首を振った。


 「お母さん……」 ヨシは号泣する。 そして涙を流して抱きしめる愛留がいた。



 「まだ来るぞ」 慎之介はヨシを背負い防空壕に逃げる。



 その後、空襲が終わり静かな町へと戻っていくのだが……



 町では死体や瓦礫が多く、目を覆うような光景だった。

 「ヨシちゃん、私だけを見て。 他は見ないように」 愛留が言うと、ヨシは背中に顔をうずめた。



 それからヨシの自宅へ向かい、親戚の住所を調べる。 その後、ヨシは親戚に引き取られるようになった。



 「慎ちゃん…… 私達は戻れるのかな?」 愛留は慎之介の背中で泣き始めた。


 「大丈夫だ。 俺が守るから……」



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