第24話 18:53
倉橋が自席に戻ると、上司も席に戻っていた。
見るからに不機嫌だ。
「負けたんですか?」
「そっちじゃねえよ。この送還の件。
調査班の送還なんて聞いたことねぇ」
「この世界の調査員なら良かったんですがね」
「特例の見直しが必要だな、これは…」
上司は頭をかいていた。
倉橋はちらっと上司を見た。
あの様子だと、負けたな。
PCを立ち上げる。
申請関係は通っているようだ。あとは機材を会議室に設置すれば、準備は完了する。
機材は通い箱で届いていた。
安っぽいスピーカーのような外見だが、これまで着実に仕事をしてきたやつだ。それが、4機。
帰還紋が、うっすら熱を持ち始めていた。これからする事が分かっているように。
自席で機材のチェックをしていると、白木がやってきた。
「彼女は?」
「なんとか落ち着かせたよ。まだ泣いてるが…」
白木は何歳か歳をとって見えた。
「身近な存在が送られるのは……辛いな」
「……どちらにとってもな」
白木は目を丸くした。
「お前にも、そんな感情があるんだな」
「茶化しに来たんなら帰れ」
倉橋は機材のチェックを続ける。
白木はそれを眺めていた。
「彼女の側にいてやれよ」
倉橋は手元から目を離さず言った。
白木はため息をついた。
倉橋は時計を見る。
18:30
「もう、時間ないぞ」
白木は首を振って、戻って行った。
犬が近寄ってきて、倉橋の横に座り直した。
時間が迫っている。
慣れているはずだ。
それでも、慣れきらない。
機材に不備はなさそうだ。
細かい仕組みは知らないし、分からない。
ただ、帰還紋が平常を保っている。
それで十分だ。
犬が立ち上がった。
倉橋も立ち上がる。
「行くか」
倉橋は機材をバッグに詰め、
会議室へと歩きはじめた。
犬が先導する。
会議室には誰もいない。
机、椅子を移動して、部屋の中央にスペースをつくる。
空いたスペースの四隅に、機材を設置する。
あとは送還対象がくれば準備完了だ。
18:53
帰還紋が、強く脈打ち始めていた。




