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おくりかえすひと――異世界帰還者を送り返す仕事  作者: 活呑
おくる人、おくられる人

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18/20

第18話 Cビルの竜


携帯に電話が入った……直帰のはずの上司から。

倉橋は画面に映るその名前を、苦々しく見ながら通話ボタンを押す。

「なにか?」

しばらく上司からの状況説明が続く。

「…計測…目撃…」

「被害が……急いで…」

不穏な言葉が携帯から漏れる。


「分かりました。向かいます」


倉橋は車にのりこんだ。

犬は後部シートでゆったりしている。

「仕事だ。Cビルの屋上。歪みの反応と…どでかい怪鳥が空でぐるぐるしてるそうだ」

そう言って、車を出発させる。30分ほどの距離だ。まだ帰宅ラッシュの時間でもない。


「怪獣映画かよ」

そういう倉橋はわずかに口の端に笑みが溢れる。バックミラー越しに、犬が欠伸をしているのが見えた。


Cビルの周りは人だかりができていた。

警官が立ち入り制限をかけて、人を近づけない様に誘導棒で交通整理をしている。

怪鳥はビルの屋上の更に上で円を描くように飛んでいた。まだこれといった被害はなさそうだが、あの巨体が飛んでいれば肝も冷える。

倉橋は双眼鏡から目を離せなかった。

「怪鳥っていうより、竜じゃないかな?あれは」

表皮に鱗の様なものが見える。しかし、あれだけの巨体がどうやって…。考えても仕方ない。異世界とはそういうものだ。


すっと、心を正す。仕事時の顔。揺らぐ感覚。静かに警官の視線を掻い潜り、ビルへと向かう。

犬が後からついてくるが、警官には見えていないようだった。


Cビルの屋上へは難なくたどり着けた。

エレベーターは稼働していたが、人影は見当たらなかった。不用心だが、本当に身の危険が迫ったら皆こんなものだ。


ゴゥ


風が唸っている。

空は暗く、分厚く黒い雲に覆われていて、渦を巻いていた。その下を竜がのびのびと飛んでいる。

帰還紋が熱をもち、わずかに光っていた。条件は揃っている。問題は距離とサイズ、か。


トゥルルルル…

携帯に着信がある。……白木からだ。

「なにか?」

「撃ち落とすから、上手く狙えよ」

ブツっと通話が切れる。

雲間から、雷の音がし始める。


周りが光に包まれた。同時に轟音。

目の前に、何かが落ちてくる。竜の翼だったもの。狙うのはこれじゃない。帰還紋で対象を視る…竜の本体が屋上に向けて落ちてくる。直撃すれば大惨事だ。落下し切る前に…


再び、閃光。


今度は帰還紋が放った光だった。

竜だったものは、翼も含めていなくなった。


「乱暴すぎるだろ…」

帽子をかぶり直した瞬間、視界が歪んだ。

帰還紋の熱が一気に引いていく。

膝が抜け、屋上の床に倒れ込む。


犬の足音が、遠くで聞こえた気がした。



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