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おくりかえすひと――異世界帰還者を送り返す仕事  作者: 活呑
おくる人、おくられる人

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第16話 二つの反応


あくびをした。

倉橋は、自分で珍しいと思った。

犬もあくびをしていた。


別に眠いわけでも、息苦しいわけでもない。

上司の視線がギロリとした。


上司と何か話をしていた山岸が、手を口にあてて笑いをこらえている。


「何もすることがないなら」

上司の額に青筋が浮かぶ。これも珍しい。


「昼飯でも食ってこい!」


昼食には少し早い時間だ。

しかし、せっかくだ。


「では少し早いですが、昼食へ行ってきます」

倉橋は社食へ向かう。

犬も遅れてついてくる。


「送還係も、今から飯か?」

白木たちだ。


「こちらのご飯、楽しみです」

有森優希もいる。


「ソウカンガカリさん、とおっしゃるのですか?」

「…倉橋です。白木には昔からそう呼ばれてます」


有森優希はぱあっと笑顔になる。

「じゃあ、私と一緒ですね。白木さんに名前つけてもらって」

「そういうことじゃないんですが…」


倉橋は頭をかいた。


時間が早いせいで、社員食堂には人があまりいない。

倉橋と白木たちは同じテーブルについていた。

犬は少し離れたところで、フードボウルに盛られた食事を食べている。


倉橋は蕎麦で、白木たちはみんなカレーライスだった。

「報告書で知ってはいたけど、カレーに飢えてるんだな」


「色んな香辛料を使うってのが贅沢だしな。ご飯と味噌汁も捨てがたいが。」


「これが、白木さんの言ってたカレーライス…」


有森優希がスプーンで一口、口に運ぶ。

「…不思議な味です。辛いけどそれだけじゃない…美味しいですね」


倉橋は蕎麦をすする。

犬は食事を終えて、有森優希をジッと見つめていた。


「白木、このあと会議室で少し話せないか?」

いつもの感情の伴わない声。


白木は怪訝な表情をした。

「送還係が、俺たちの活動に関与できると思ってるのか?」


「いや、単に情報が欲しいのと、場合によっては協力要請だ」


「話を聞きたいなんて、珍しいね。まぁいいだろう。俺たちの報告書の一番の読者には、サービスしなきゃな」


帰還紋が、有森優希に未だ関わったことのない世界の残滓を見つけていた。

そういった熱だ。

条件は揃っている…この世界に残りさえしなければ。


食事後、倉橋と白木は会議室へ向かった。

犬が真っ先に部屋へと入り、ついで倉橋、白木が入る。

扉は閉じられた。


「彼女のことかい?」

白木の表情は真剣だった。ある種の殺気まである。


「そうだ。彼女からは、送還対象の反応が出ている。2つだ」

「2つ? 確かに彼女は向こうの世界の人だが、2つだって?」


白木は顎に手をあて、目を瞑った。

「送り返す必要なんてないさ、俺たちと共に帰って、活動を続けるんだからな」

「だが、なにか、起こる」

「…どうすれば良い?」


「今はわからない。ただ、対処のリミットは明後日だ」

白木は天井を見上げた。

「側においておきたい女性なんだよ…」


倉橋は会議室をでた。

「あの……」


横手から声がかかる。有森優希。

「上村さんには良くしてもらって…彼女の代わりになるためにも、頑張りたいんです。

 白木さんの力になってあげてください。よろしくお願いします」

彼女は深々とお辞儀をして、会議室へと入っていった。

他のメンバーは倉橋を気にもかけず、彼女の後をついていく。


会議室の扉が閉まった。


帰還紋が、先ほどよりもはっきりと主張していた。

犬は何も言わず、倉橋の席へ向かった。




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