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神様の剣と懲りない悪党  作者: すたりむ
六日目~七日目:悪党と燎原の魔王
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七日目(5):悪党、推理する

「ゴレム?」


 歩きながら、俺は言った。

 コゴネルはうなずいて、


「ああ。あのプチラとかいう騒がしい虹小人が差し出してきた手帳に書いてあった。この洞窟にはゴレムがいる、と。

 本当かどうかはわからんが、本当だったらけっこうやっかいなことになるぞ」

「どういうものなんだ?」

「基本的には、人の形をしたでかい石の兵隊だ」

「やっかいそうだな」

「石だからどこを削られても動き続ける。手がもげても足が取れてもおかまいなしだ」

「やっかいそうだな!」

「そして本質的には神秘エネルギーの塊なので、正しい手順で停止させないと大爆発する」

「やっかいそうだなあ!」


 もうそれしか言うことがない。なんだそれ。


「実際、死ぬほどやっかいだよ。ゴレムのランクにもよるけど、上位の奴となると完全な神話兵装。バリバリ現役の神や大巨人と戦えるように調整された決戦兵器だ」

「あのプチラとかいう奴、ここで拘束されたら爆発に巻き込まれたときに死んじゃうじゃん! とか言ってたな。まあ、拘束したんだが」

「ずいぶん意地汚く罵ってたな……」

「ま、どうせ拘束抜けの道具でも隠し持っていて、それをこちらに悟られたくなかったんだろ。

 見え見えだったから、ちょいと抜け出しにくい仕掛けにしといた。腕っこきだろうからそれでも抜け出すだろうが、その前には俺たちの仕事は終わってるさ」


 バグルルはにかっ、と笑って言った。

 コゴネルは咳払いをして、


「さて、じゃあ現状を整理するか。

 俺たち以外の連中のうち、サリとトゥトはおそらく罠を回避したと思われる。だから二人で行動しているだろう。それ以外の二人、つまりハルカとテンはちょっとわからん」

「基本的には合流を目指すんだよな?」

「分散していてもいいことがないからな。

 逆に言えば、強制的に分散させられる今回の罠はけっこう怖いものだったな。直接的なデストラップでないだけマシだったんだろうが……」

「そうかあ? デストラップなら間違いなくサリが探知しただろうし、その方が対処が楽だったろ、これ」

「……まあ、バグルルにしちゃ鋭い意見だな」

「お!? こいつめ、ようやく素直になったかわはは!」


 バグルルの馬鹿笑いに、コゴネルはうっとうしそうに顔をゆがめ、それから頭をかいた。


「だが実際、なんの理由があってこんな罠設置したんだ?

 俺たちの耐魔能力をここまで貫通できる性能の罠となると、いくら妖術師が凄腕とはいえ、数日がかりで準備しないと作れない。数日前の時点で、俺たちが防げないタイプのトラップを的確に選んで設置できるか?」

「まあ、そりゃ仕方ねーだろ。明らかに相手の調査能力は俺たちの上を行ってる。

 情報戦で負けてるんだ。サリがこちらにいることもおそらく、とっくに調査済みだと思うぜ。そういう認識でことに当たらんといかん」

「だがその割には、俺たちの状況がヌルいのが問題なんだよな……いままで出会った戦力が弱すぎて、逆に気になる。敵の主力は、そして妖術師はどこにいるんだ?」

「さんかく~……」


 首をひねる魔人たち。

 俺はふと、思いついたことを言ってみた。


「情報戦といえば、なんで相手に情報が渡っているかについて、目処はついてるのか?」

「まあ、多少は」


 コゴネルは言った。


「とはいえ、確定情報はほとんどない。敵は悪名高い北の妖術師。どんな秘策でこちらを騙しているかわかったものじゃないからな」

「ふーん……じゃあ、思いついたこと言っていい?」

「なんだ?」

「内(・)通(・)者(・)がいたのでは?」


 言葉に、魔人たちは顔を見合わせた。

 その様子に、俺はピンときた。


「あ、もしかして俺、気を遣われてる? シンの話ならセンエイから聞いてるぞ」

「あの馬鹿、余計なことを……!」

「がはは、しゃーねーだろ。人の口に戸は立てられないとか言うからな!」

「さんかく~☆」


 予想通りだった。やっぱり、シンが疑わしいと、全員が思ってたのだろう。


「とはいえ、それほど詳しくなくてな。シンがどうして疑われてるんだ?」

「いや、あいつは複数の意味で、最初から疑わしかったんだよ。

 まず、あいつは今回の黒幕、グラーネルの弟子だったことがある。この時点である程度、相手と相互に顔が知れていると言っていい。その上で、カイ・ホルサの件があるからな」

「カイ・ホルサ?」

「ああ。『秘剣』カイ・ホルサ。古代に生きた神の名前だ」

「すごい神なのか?」

「悪名と勇名が相半ばだな。世界を滅ぼしかけた『愚者(ザ・フール)』の友だったという逸話もあるし、魔術を神や大巨人に広めた張本人とも言われてる。『魔術神』の異名もあるな。

 そんなこともあって、ファトキア式の神殿ではこいつの信仰は禁止されてる。が、メサイの守護者だったことから、彼らが隠密に信仰ネットワークを維持していてな。『見えざる神殿』と呼ばれている。実のところ、魔人とメサイの縁も、このカイ・ホルサの『神殿』が強く関係してるんだ」

「へえ……それで、シンはそのカイ・ホルサとなんの関係が?」

「とある事情で、カイ・ホルサは力を人間に継承して生き延びていてな。

 現在の継承者がシンだ。だからシンは『見えざる神殿の王子』とか、『ホルサの剣士』なんて異名を持っている」

「ああ、二つ目の名前はフレイアから聞いた気がするな。

 それで、カイ・ホルサが関わってくるとなにが問題なんだ?」

「いや、とある事情でカイ・ホルサは「奥義」っていう……まあ、すごい魔術だと思ってくれていい。そういうのをずっと探求しているらしくてな。

 奥義を質に交渉を持ちかけられたら、簡単には断れないらしいんだよ。これはカイ・ホルサの継承者への絶対命令らしくて、『王子の二重性』って言われているんだ。

 そこを突かれて、敵へのスパイとして振る舞わざるを得なくなった。それが俺たちの見方だ」


 コゴネルは言った。

 なるほど。そして、一応剣の師匠とかを始めとしていろいろ縁があった俺には、それに気を遣って黙っていた、というわけだ。

 もちろんセンエイはそんなの気にしなかったし、さっきセンエイと雑談していたハルカも気にしていないように見えた……いや、あれはセンエイにバラされたから、開き直っただけかもしれないけれど。

 しかし、そうすると俺の予想とは食い違う。


「コゴネル。重要なことだから意見を聞かせて欲しいんだけど」

「お、おう。なんだ?」

「ここの入り口の罠。数日がかりでないと作れないって言ってたよな?」

「そうだけど……」

「二日でできるか? 三日以上かかるか? それを教えてくれ」

「そ、そうだな。俺の見積もりでは……二日は無理だと思う……たぶん」


 言ってからコゴネルは、少し自信なさげにバグルルを見た。


「どう思う、バグルル?」

「ふぅーむ。ちょい難しいな。

 まあ、しかしおまえの言う通りだろ。現状わかる情報だけでも、あの罠は小僧のイェルムンガルド外殻を貫通してる。そのレベルの魔術罠になると、さすがにそうとう時間と手間をかけないと無理だろうよ」

「じゃあシンは関係なさそうだな」

「は?」「え?」「まる?」


 俺の言葉に全員、首をかしげる。


「いや、俺、昨日センエイから聞いたんだけど、センエイは『シンが裏切りそうだから早めに殺そうとした』って説明をしてたんだよ。

 その上、それを途中で仲裁したのがスタージンで、そのスタージンの言い分が『裏切りそうだからといって、裏切る前に制裁するのはよくない』だったらしいんだな」

「ああ。それは俺たちも情報共有してる、けど……」

「じゃあセンエイとスタージンの共通意見として、「二日前」の時点ではシンは「裏切る寸前だけど、まだ裏切ってない」状態だったんだろ。だから罠の設置にはシンは関係ない」

「筋は通ってるな」


 バグルルは、いつものおちゃらけた雰囲気を少し引っ込めて言った。


「そのタイミングでパズが見立てを外すとも思えねえ。それに言われてみれば確かに、その時点で裏切ってたなら、フレイアと共謀してセンエイを抹殺しに動くはずだ。つまり……」

「嘘だろ……振り出しに戻ったぞ。これ内通者じゃなくて、マジで神秘的手段で情報漏洩してたんじゃ……?」

「いや、そこまで深刻に捉える必要あるか? もっと怪しげな奴なら他にいるだろ」

「は?」「え?」「まる?」


 ふたたび俺の言葉に全員が首をかしげる。

 俺は人差し指をぴっと立てて、その名前を告げた。


「ク(・)ラ(・)ン(・)。あいつが最初から敵とつながってたんじゃねえの?」

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