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神様の剣と懲りない悪党  作者: すたりむ
二日目:悪党と帰らずの草原
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二日目(9):悪党、翻弄される

 会議が終わって馬車を出て、俺はうーんと伸びをした。


「密度が濃くて疲れる会議だったなあ……」

「ほっほ。ああいう会合は慣れないと疲れますからな。まあ、お疲れ様でしたぞ」

「どうも。……あれ、なんでテンはここに?」


 言うと、テンはほっほっほと笑って、


「言い忘れておりましたからな。昼にお譲りした霊薬、あれの有効期限はおよそ半日弱。効果が切れると……」

「切れると?」

「すとんと、はっきりわかるレベルで疲労が身体に戻ってきます。まあ、そうなる前に眠るのが一番ですな」

「いや、俺、夜の歩哨にくじで当たっちゃったんだけど。どうしてくれんの?」

「ほっほっほ。まあ、同じ時刻の当番の方に配慮してもらうんですな」


 言いたいことだけ言って、テンは去って行った。


「……ここに来てそんな話をされてもなあ」


 まあ、そのときまでに疲れてなければいいという話でもある。

 霊薬のせいでさっき鍛錬した疲労はまったく感じない。が、これは疲れが取れたわけではなく、疲労感を感じなくさせられているだけなのだろう。だったら、歩哨のタイミングまで眠ってしまえばいい。

 後は、組む予定の相手にあらかじめ声をかけておく必要があると思うのだが……


(たしか、俺のパートナーはあのマイマイとかいう女の子だっけ)

「シン!」

「やあ、ライ氏。どうしたんだい?」

「いや、今日の歩哨で組む相手と、前もって挨拶しときたくて。マイマイって子なんだけど」

「マイマイか……」


 言うと、シンは少し難しい顔をした。


「え、なんかあんの?」

「いや、別に。ただ単に、さっき会議が終わると同時に外に飛び出していったので、どこにいるかわからないんだ」

「そっか……」

「えいっ。とつげきー!」

「うええ!?」


 ぼすん、と背後から衝撃が走り、俺はその場にぶっ倒れた。

 あやうくシンを巻き込むところだったが、そこはさすがのシン。華麗な身のこなしでちゃんと避けてくれた。

 ……ではなく。


「こら、誰だこんないたずらしやがった奴は!」

「えへへー、あたしだよー!」


 俺の非難にもどこ吹く風。噂をすればの女の子、マイマイは俺にのしかかりながらにっこり答えた。


「今日はライ兄ちゃんがあたしとペアなんでしょ? よろしくね!」

「あ、ああ。よろしく。それで、なんだけど……」

「というわけで親睦を深めるために探検だー!」

「話聞けコラ! ていうかどこ行く気!? そっちは草原だろ!」

「うん。聞いて聞いて! ここは帰らずの草原って言ってね、人間が通ろうとすると弧竜が襲いかかってくるから、怖くて誰も近寄れないんだって!」

「それは知ってる。俺が聞きたいのは、なんでそんな怖いところにおまえが行こうとしているか、なんだけど」

「だってお宝とかあるでしょ? 前人未踏の土地だよ?」

「ないない」

「あ、ほらきらきら光ってる! あれきっとお宝だよ、ライ兄ちゃん!」

「違うだろ。あれは宝石虫もどきという人食い魔物で、宝石に化けて人を襲うんだぞ」


 俺はあえて怖い方を説明して、マイマイを止めようとしたのだが。


「え、宝石虫もどきはないでしょ。あれって洞窟に出現する魔物じゃない?」

「……そうなの?」

「どっちかっていうと宝石虫の方じゃないかなあ。畑とかに巣を作るためにでっかい穴を掘るんで嫌われてて、それで人里から逃げてこの草原にいるんだね!」

「そこまでわかっててなんでお宝だと思った……?」

「え? そう言った方がライ兄ちゃんを説得できそうだから」

「意外と狡猾だなおまえ!」


 やはり小さいと言っても魔女。油断ならない。


「えー、行こうよー。宝石虫がいるってことは地下道があるってことだよ。そこにお宝があってもおかしくなくない?」

「それは宝石虫が掘った穴であって人工物じゃないんだから、お宝もないんじゃね?」

「でもほら、竜は財宝を巣穴にため込む性質があるって、そういう伝説が」

「竜の巣穴なんかに入ったらそれこそ竜に殺されるだろうが!」

「そこであたしの幻術の出番だよライ兄ちゃん! 竜だろうとあたしの幻を見破ることは不可能!」

「で、目だけ対策して臭いをごまかし忘れて食われるまでがワンセットだよな」

「え、なんでこの前あたしがやらかした失敗をライ兄ちゃんが知ってるの?」

「…………」


 俺は助けを求めるように、シンを見た。

 シンはあははと笑って、


「まあ、こういう子なんで、暴走しないように見張りをよろしくね、ライ氏」

「いや待ったチェンジ! 今回それだとまずいんだっての!」

「らーいにーいちゃーん! 早く行かないと追いてっちゃうよー!」

「だからおまえは草原に突進してくんじゃねええええええ!」




 その後、一刻ほどをかけて全力で遊び倒すことで、俺はマイマイをなんとか草原から遠ざけることに成功した。

 当然、まったく休めなかった。どうしよ。

【テンの霊薬について】

 いわゆる栄養ドリンク的なアレです。

 魔術的なものですが、身体への悪影響は乱用しなければほとんどありません。

 ただし効果時間が切れるとリバウンドがすごいことになります。

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