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神様の剣と懲りない悪党  作者: すたりむ
二日目:悪党と帰らずの草原
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二日目(7):悪党と魔人たちの会議

「おー、来たかちびすけ! こっちだこっち!」


 馬車の中、バグルルがうれしそうに声を上げた。

 中身は、外とはまた違った奇妙さがあった。まず、外観よりも中がずっと広い。そして、そこかしこに変なお札が貼り付けてある。インテリアと言うには不気味すぎる。


「なあセンエイ。この札いったい――」

「あー! バグルル、また私の鋼呪帯踏んでる!」

「あ? ああ、そういやそうだな。まあいいだろ、がはは!」

「がははじゃねーよ! それデリケートだっつってんだろ! 殺すぞ!」

「うるっせえなあ……なんだよ。新人? じゃなかった、なんか呪剣に呪われたガキが来るっつってたっけか。流れからしてそいつか?」

「ほっほ。すぐ立場が追い抜かれないといいですがねえ、我が弟子よ」

「うるせえジジイ」


 バグルルとセンエイがやんややんやと言い合っているところで、横でテンと、もう一人の若い男が話している。


「わー! 新しい仲間だ! おもしろーい!」

「まるまるー♪」


 横では小さい女の子と、なんかよくわからない小さな空飛ぶ謎生物がはしゃいでいて。


「悪いな、騒がしいところで。こっちだ」


 と、目つきが悪い、俺と同じくらいの年の少年が、俺に手招きしていた。

 とりあえず、呼ばれた方へ行く。


「俺はコゴネル・アングストン。あそこで騒いでいる筋肉馬鹿のバグルルの息子だ。おまえは?」

「ライナー・クラックフィールドだ。ライで通ってる」

「わかった。ライ、最初の注意事項として、この馬車内で暴れるのは厳禁だ。この中には魔術武器もあるし、空間拡張の魔術が壊れるとひどいことになる。だから絶対に喧嘩だけはするな。いいな?」

「わかってるけど……じゃあ、あれは?」


 俺は、恐る恐るそちらを指さした。


「だいたい前々からおまえは雑なんだよバグルル! 私の魔道具はどれもこれも大切なものなんだ、粗末に扱うなと言ってるだろ!」

「ああ!? センエイ、テメエがだらしなくそのへんに置いとくのが悪いんだろうが! ボケてんじゃねえぞ!」

「やるかこのやろう!」

「やらいでかテメエ!」

「……うん。わかった。黙らせてくる」


 コゴネルはうなずいて、軽く詠唱して水のようなものを拳にまとわせると、


「ふんっ」

「あごふっ!?」


 いままさにセンエイと取っ組み合っていたバグルルのあごに拳がクリーンヒットし、もんどり打ってバグルルが倒れた。


「馬車内で暴れるなっつってんだろわかんねーのかこのクソ馬鹿!」

「テメエやりやがったなコゴネル! うおらああ!」

「やるかコラ!」


 ばんっ! とすさまじい音とともに、馬車の壁に貼られていた呪符、その三分の一ほどが一斉に吹っ飛んだ。


「――煩い」

「ごめんなさい……」

「すいません……」

「悪かったよ……」


 センエイ、バグルル、コゴネルの三人が、全員サリに平謝りした。

 ……大丈夫なのかな、こいつら。



--------------------



「じゃあなんだ、おまえら、全員が『公認』魔人ってわけじゃないのか?」


 ある程度落ち着いて自己紹介し、少し話したところで俺はそう言った。

 クランの言葉によれば、彼らは『公認』という称号を受けた特別な魔人で、だから信頼できるという話だったのだが。


「ああ、まあな。俺みたいな未熟者は当然『公認』じゃねーし……実際、この馬車内で公認魔人なんて、三人か四人じゃねえの?」


 言ったのは、ペイという男である。テンの弟子、と紹介された。苦労人っぽい風貌で、俺よりは年上だがどことなく新入り感がある。年下のはずのコゴネルの方が、だいぶ格上っぽく見えた。


「具体的には、誰が公認で誰が非公認なんだ?」

「そうだな。まあ、まずマイマイとミーチャは公認じゃない」

「うん。公認試験、年齢制限あるからね! それと公用語もしゃべれないとダメ!」

「さんかく~☆」


 隅っこにいた小さい女の子、マイマイ。それからその近くを飛ぶ丸っこい謎生物、ミーチャ。この二人は、それぞれそう答えた。


「次に、たしかコゴネルは試験受けてないっつってたな。……なんでだっけ?」

「バグルルと俺はいつも一緒にいて、バグルルが公認されてる。なら俺は、そんな面倒なのはごめんだね」


 コゴネルは涼やかに言った。


「それから、サリとシンも公認じゃない」

「それは意外だな。なんで?」


 俺が聞くと、サリは恥ずかしそうに、


「字、書くのが苦手。筆記試験で落ちる」

「そっか……」


 他人事でない理由に、俺は気まずくなった。


「僕の方は、ちょっとまた別の事情でね。理由は伏せさせてもらおう」


 シンは爽やかに言った。


「後は、ハルカとうちの師匠、テンは当然公認されてるとして……」

「当然です」

「ほっほ。まあそうですな」


 壁際で我関せず瞑想していた森小人の美女、ハルカと、それから旧知のテンはそろってうなずいた。


「センエイはどうだっけ? 聞いてなかった気がするんだが」

「ああ、そういえば、前の偽名で試験を通ったことがあったな。当然、いまの名前だと無効だろうけど」

「……まあ、あんたらしい理由だわな。

 てなわけだ。公認ってけっこう珍しい立場なんだよ。この規模の魔人たちでもこんな割合だぜ?」

「じゃあ、隊商長のクランが言ってたことは……」

「まあ、当たらずと言えども遠からず、じゃないかね」


 言ったのはコゴネルだった。


「要は、ごろつきじゃなくてちゃんと訓練を積んだ魔人であればいいんだよ。それを立証する方法は『公認』ただ一通りじゃない。

 公認魔人から信頼を得ているのでもよし。公認と関係なしに名が通っているのでもよし。実際、この中でも、サリやセンエイは公認なんて要らない程度には名前が通ってる。それからマイマイみたいに、両親が魔人で小さい頃から訓練を積んだ生粋の魔人ってのもいる。人それぞれだ」

「なるほど……なるほどなー」

「ま、俺たちを簡単に信用しないのはいいことだと思うぜ。そういう意味では俺たちだって、クランのことを完全には信用してねーからな」

「そうなのか?」


 俺は若干、意外に思って尋ねた。

 コゴネルはうなずいて、


「たしかにメサイの隊商と魔人が同行することは多いが、そんな慣例だけで相手を無条件に信用していいほど甘い仕事じゃないってこった。

 ま、実はそういう意味ではライ、おまえは一応信用されてる」

「は? なんで?」

「おまえが、俺たちの敵の計画で現れた奴とは到底思えないからさ」


 コゴネルが言うと、その場の全員がうなずいた。


「正直、イレギュラーすぎる。俺たちですら存在を把握していなかった『抜けない宝剣』。それをなぜか抜ける奴がいたとして、俺たちの目の前にわざわざ出してみせる理由がわからん。作為とするにはあまりにも変なので、逆に偶然だと信じられるわけだ」

「そういうもんか……」


 なんだか、面倒くさそうな話だった。

 とはいえ、隊商代表としてクランではなく俺がわざわざ呼ばれた理由は、なんとなくわかった。そして、こいつらが俺に求めていることも。


(つまり、当たり障りがありそうなことはクランにもしゃべるな、ってことなんだな)


 俺は心の中で、こっそりつぶやいた。

 コゴネルはうなずいて、


「さ、そんなことより本題に入ろう。今後の案件だったよな。サリ、トゥトはなんて?」

【小ネタ】

 魔人たちの馬車にぺたぺた張ってあるお札は、見た目は不気味ですが、実際はサリが作った「精神を安定させるリラクゼーション符」です。

 本来は、魔術に関わる作業を安定させるための符なのですが……今回荒事になりかけた際、サリはそれをある程度強制発動させて無理やり全員の頭を冷やしました。

 暴れていた三人からすると、いきなり冷水ぶっかけられた程度には精神に衝撃があったでしょう。

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