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策略家の彼とポッチャリな私〜重い愛を乗せて〜  作者: 紫煙 くゆり


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30/42

30.贈り物

午後の陽射しが柔らかく石畳を照らし、大通りは行き交う人々で賑わっていた

色とりどりの布地、繊細な装身具、陽光を反射する硝子細工

それらを、私は馬車の窓越しに見つめている

向かいの席には、アレクシス様


「揺れは大丈夫ですか?」


「はい

お気遣いありがとうございます」


アレクシス様は私を心配し、言葉をかけてくれる


今日は婚約の記念に「お互いに何かを送り合おう」という、アレクシス様の提案で街に出かけている

立ち寄ったのは、落ち着いた佇まいの装身具店

硝子ケースの中には、精巧な細工の髪留めが幾つも並んでいる

ルビー、サファイア、琥珀、翡翠、どれも息を呑むほどに美しい


「どれも素敵ですね」


思わず吐息がこぼれる


「目移りしてしまいそうです」


指先をケースの縁に添えながらそう言うと、隣に立つ彼の気配がわずかに近づいた


「ええ、色々ありますね

ですが……私はもう決まっています」


その視線は一点を見つめていた


「もう、ですか?」


思わずアレクシス様を見上げた


「はい、こちらです」


迷いのない指先が示したのは、銀地に淡い水色の石が控えめにはめ込まれた髪留めだった

華美ではない、けれど凛とした気品があり私の好みの物だった


「……お決まりになるのが早いですね」


そう言うと、彼はわずかに首を傾ける


「迷う必要がありませんでした

貴女によく似合います」


彼は一歩、距離を詰める

アレクシス様は一呼吸おき、微笑む


「私が選んだものを、レティの髪に留めておきたい

毎日でなくとも構いません

ただ、選択肢の一つにその髪留めの存在を思い出して下さい」


そう言い静かに微笑む

その顔を見て心臓が早く脈打つのを感じる


「次はレティが選んでください」


そう言われ、私は平静を装い紳士用品を扱う場所を見る

私も早く何か見つけないと

焦っている私に気が付いたのか声をかけてくれる


「時間はまだまだありますので、焦らなくてもいいですよ

貴方が選んでくれるのなら、いくらでも待ちます」


その言葉に背中を押され、私はじっくりとケースの中を覗き込む

そこで一組のカフスボタンが目に留まった

銀の縁取りがされ、飴色の石が控えめに光っている

落ち着いていて、上品で、知性的なデザイン


「……これ」


指差すと、彼は少し意外そうに目を見開いた


「あの……アレクシス様は、派手なものはお好みではないかと……」


言い終わる前に、彼は小さく息を吐き、まるで堪えるように目を伏せる


「困りましたね」


なにか怒らせてしまったのかと、心臓が跳ねる


「とても素敵な品です」


そう言って、カフスボタンを手に取る


「私の装いに、貴女が選んだものが加わる」


指先で石をなぞりながら、続ける


「しかも、あなたの瞳と同じ色の宝石がはめ込まれ物を選んでくれるとは思いませんでした」


そういわれて初めてて気づく


「あの、そういうつもりでは」


とっさに言い訳のように口に出す


「そうなのですか?

でも、私はそのつもりで髪留めを選びました

私の色を纏って欲しい……と」


そう言われて、髪留めにはめ込まれた宝石がアレクシス様のアイスブルーの瞳によく似ていたのを思い出し、途端に顔が熱くなるのを感じる


「レティはきっと無意識にその色を選んだのです」 


そう、断定される

私が返答に困っていると、アレクシス様はさらに言葉を続ける


「これから先、他のものを身につける理由がなくなりました」


そう言って、今まで見た事がない蕩けた顔のアレクシス様がそこにいた



店を出ると、夕方の光が街を包む

馬車を待つ中、自然に私を守る位置にアレクシス様が立つ


「本日は、良い買い物でした」

「そう、ですね」


隣に立つアレクシス様の体温を感じながら店での言葉を思い出す

「私の色を纏って欲しい」

その言葉は甘く私の心に染み込んでいく

飾りとしての価値なんて、きっと些細なものだろう

それでも、そこに込めた想いや、互いを思って選んだ時間は、何ものにも替えがたい

二人で贈りあった、この小さな品々は私達の宝物になった

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