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策略家の彼とポッチャリな私〜重い愛を乗せて〜  作者: 紫煙 くゆり


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28/42

28.見てしまった

私は、悩んでいた

アレクシス様が嫌いで婚約の話を考えたいと言ったわけではない

アレクシス様の側にいると安心するし色々助けてくれる

でも、この思いが恋なのかどうか分からなくて決断出来ずにいた


今日は気分転換もかねて買い物をしに街に出ていた

日用品や小さな贈り物を選ぶだけ

その時、街の裏通りで偶然、彼の姿を見てしまったのだ


アレクシス様

彼は、柔らかな光に包まれて歩いていた

そして、その隣にいたのは――女性


髪は長く、金色に輝き、とても綺麗な人で

アレクシス様は、その女性の肩に手を添え、笑っている


(……え?)


思わず足が止まる

視線を外すこともできない

胸がどくんと鳴る


(私の事、愛している……って言ったのに何で?その人は誰?)


胸がぎゅっと締めつけられる

彼の声も、手も、笑顔も

私以外の誰かに向けられている


足が震える


逃げたい

見たくない

でも、離れられない


(どうしよう……)


心の奥底で、恐怖と嫉妬が混ざり合う


「……でも」


かすかに、自分を落ち着けようとする。


(もしかしたら、仕事かもしれない……

そういう社交の一環かもしれない……)


だが、目の前の光景

アレクシス様は、楽しそうに笑っている

その笑顔は、私に向けられたものではない


「……いや」


結論が、頭の中で震える声となる


涙が、頬を伝う


それでも、身体はその場を離れられない


買い物なんか来なければよかった

見なければよかった

すぐに離れればよかった


彼は、私の知らない世界で

誰かと笑っている

それがどうしようもなく嫌で、胸が苦しくなる


小さな吐息が、風に混じる


私が抱いていた安心は、一瞬で揺らいだ

「愛されている」という確信が


そして、私はやっと気づいた

私はアレクシス様を「愛している」のだと


初めて出会った日

図書塔で言葉を交わす様になった日

強引な婚約話から、私を救ってくれたあの時

屋敷で、心穏やかに暮らした日々


いつから私は、彼を好きになっていたのだろうか

思い返そうとしても、思い出は一つの点ではなく、線となり、静かに心の奥へと繋がっていく


風が頬を撫でる

街の華やかな喧騒の中、私は一人、静かに佇んでいる


柔らかな午後の光、行き交う人々の笑い声

そのすべてが遠く、まるで絵画の様な世界の中で、私だけが時間の流れから取り残されたように感じた


(……帰ろう)


アレクシス様達が居なくなってどれくらい経っただろうか

私は買い物の事など忘れて、冷えた体を引きずる様に馬車へと乗り込こむ

屋敷へ戻っても心は静まらず、胸の奥に憂いだけが静かに積もっていく

その行き場のない思いは、夜の闇に溶けていく


゛偶然゛アレクシス様を見てしまったレティシア嬢

この偶然が無ければきっと恋心をまだまだ自覚しないままだったでしょうね

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