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異世界詐欺師のなんちゃって経営術  作者: 宮地拓海
第四幕

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816/817

499話 ユナ、初めての教会

「おぉおお! 見てくれ、シスター! これ! 可愛いか? 可愛いよな!?」

「はい。とってもよくお似合いですよ、デリアさん」

「えへへ~、ありがとう、シスター」


 おぉ、デリアがお礼を。

 こういう態度が、デリアの口調が許されてるところなんだろうな。


「おにーちゃん! わたしもー!」

「やってー!」

「全員分やったら、指がもげ落ちるわ」


 何人群がってきてんだ。

 ……ひのふのみの……いや、まぁ、昨日領主と給仕長と陽だまり亭メンバー全員にやったのとそんな変わんないか。


「じゃあ、ユナにおにぎり教えてやってくれたら、やってやってもいいぞ」

「うんー!」

「おしえるー!」

「お姉ちゃん、こーするんだよー!」

「え、あの、は、はい! ご指導よろしくお願いします!」


 ガキどもに群がられて、あたふたするユナ。

 ガキどもにまでそんな畏まらなくてもいいのに。


「んじゃ、年齢の高い順に来い」

「はい! わたしが一番!」


 と、女子最年長がやって来る。

 髪も結構伸びて、すっかり大人っぽくなってるな、――ガキの中では。


「可愛いのと大人っぽいの、どっちがいい?」

「可愛いの!」


 可愛いのがいいのかよ。


「……この前、オバサンって言われた」


 ぷくーっと膨れる最年長。

 ちんまいガキに言われたんだと。

 年齢を気にするには、まだまだ早いだろうに。


「そのガキ、どうなった?」

「シスターに叱られてたよ」

「うわぁ……」

「どういう意味ですか、ヤシロさん?」


 いえ、なんでもないです。

 ……そうだよな。年齢いじりとか、常習化すると煩わしいもんな。


「それに、さ……」


 目の前でこちらに背を向ける少女がぽつりと漏らす。


「……大人になったら、ここ、出てかなきゃいけないし」


 成人が近付くと、そういうことも考え始めるのか。


「まだ気が早ぇよ」


 とはいえ、まだまだガキだ。

 成人まで何年もある。


「この近所で仕事を見つけりゃ、いつでも顔を見に来られるぞ」

「陽だまり亭!?」

「そうしたら、全員陽だまり亭に来ちまうだろうが」


 ベルティーナとの約束で、教会のガキどもは陽だまり亭で雇わないことになっている。

 みんな、ジネットと一緒がいいって言うに決まってる。

 誰か一人を雇えば不公平になるし、逆に全員雇ってしまえば、それは自立とは言えなくなる。


 厳しいようだが、その辺はガキどもにもしっかりと言い含めてあるらしい。

 まぁ、俺もその方がいいと思う。


「好きな男でも作って、そいつのそばで働いたら楽しいぞ~」


 女子はこういうの好きなんだろ、と話を振れば――


「だって、陽だまり亭はダメなんでしょ?」

「ん?」

「好きな人、ヤシロお兄ちゃんだし」

「十年早ぇわ、マセガキ」

「もうすぐ成人ですぅ~っだ!」


 髪の毛をくしゃくしゃにしてやれば、俺の手を叩いて反抗してくる。

 ここのガキどもも、こうやって大人になっていくんだろうなぁ。


「カンタルチカはセーフ?」

「あぁ、行ってやれ。どんどん繁盛して、人手不足になってるから」

「カンタルチカなら、陽だまり亭にお手伝いに行けるもんね」

「いや、新人に店を任せて、パウラが陽だまり亭に来るだろうな」

「えぇ~、ズル~い!」


 パウラの行動を見ていると分かる。

 陽だまり亭に来る割合、増えてきてるしな。


「ほい出来たぞ」

「ありがと~! ねぇ、可愛い? きゅんってする?」


 くるっと回って編み込みを見せてくる最年長。


「街で見かけたら、思わずデートに誘っちまいそうだ」

「えへへ~。いつでも誘いに来ていいからね~」

「お前誘ったら、全員ついてくるじゃん」

「こっそり出かけるもん!」

「いや、絶対無理だから」

「も~う! お兄ちゃんは女心を分かってない! そんなんじゃ、結婚できないよ!」

「いいも~ん、俺アルヴィスタンだし~」

「シスター、お兄ちゃんが嘘吐く~!」

「うふふ。嘘ではありませんよ。ヤシロさんほど敬虔なアルヴィスタンはいないくらいですから」

「精霊神様は、おっぱいを許してくださるの?」

「えっと、……それとこれとは話が別です」


 そっと視線を逸らし、逸らしついでに俺を睨んで「もぅ!」と見当違いなクレームを寄越してくるベルティーナ。

 俺、悪くなくない?


 ジネットに視線を向けると、にこにこ顔でこんなことを言われた。


「ヤシロさんは、女の子たちにモテモテですね」

「次から次へと、ひっきりなしだもんな。羨ましいだろ?」

「はい。すごく」


 最年長を放逐したら、すぐさま次のガキがやって来る。

 おぉ、ヤギ耳っこか。

 ここから急に幼く見える。

 このころの二歳三歳差って大きいもんな。


「可愛いのと大人っぽいの、どっちがいい?」

「大人っぽいの!」


 ははっ。

 そう即答できるのが子供の証拠かもな。


「あとでベルティーナもやってみるか?」

「え、あの、いえ、私は……恥ずかしいですので」


 髪を撫でまわされるのは恥ずかしいらしい。

 じゃあ、ここにいる女子みんな、恥ずかしいことされてんのかよ。


「じゃあ、ジネットが覚えて、ベルティーナにやってやるか?」

「そうですね。教えてください」


 飯は各種おにぎりと、ジネットの豚汁。

 これだけあれば何も文句はない。

 マグダのサラダもあるし、こっちは特に何もする必要はないだろう。


 デリアとユナとガキどもが、無限におにぎりを握ってくれてるし。


「まず、こうして髪をまとめて、毛束を作って――」

「あの、獣特徴があった場合は?」

「そんときゃこの辺から」

「なるほど。ここをこうすると、可愛く見えますね」

「わたしの頭で遊ばないでよ~、二人とも~!」


 ヤギ耳をぴるぴる震わせて抗議してくる。

 遊んでねーよ、ちゃんとやってんだろうが。


「私にも見せてください」

「覚えるか?」

「きっと、今後おねだりされると思いますから」

「じゃあ、厨房から寮母のオバサンたちも呼んでくるか?」

「……マグダが行ってくる」

「じゃ、実験台よろしくな」

「やっぱり遊んでるじゃな~い! も~ぅ!」


 ヤギ耳少女の肩に手を置いて言えば、「むぅ~!」っと頬っぺたを膨らませて抗議してくる。

 けど、二秒後には口元が緩んで「えへへ~」と笑顔を浮かべている。

 構われて嬉しいんじゃねぇか。


「シスター、ここに座ってください」

「ジネットは、私を練習台にする気ですか?」

「きちんと可愛く仕上げますから」

「まったくもぅ。あなたは興味があることに没頭すると、周りが見えなくなる時がありますから、そこは気を付けなさいね」


 あぁ、分かる分かる。

 ジネット、好きなことへの集中力半端ないから。


 で、なっかなか納得しなくて延々やり続けるんだ。

 雪だるまとか、テルテル坊主とか。


「あとでケーキをご馳走します」

「仕方ありませんね。でも痛くはしないでくださいね?」


 そうやって甘やかすから、そう育っちゃうんだぞ、母親さんよぉ。

 ジネットも、多少はからめ手を使えるようになってきたってことか……いや、ドストレートの買収だったな、今のは。全然からめてない。


「まぁまぁ、今度は何かしら?」


 寮母のオバサンたちも合流して、賑やかに編み込み教室が開催される。


「ジネット、そこの毛束はもう少し均等に」

「こうですか?」

「緩く編むとこんな感じで、きつく編むとこういう印象になるから――」

「なるほど、強弱をつけることでアクセントになるんですね」

「ねぇ、ヤシロちゃん、ここは?」

「そこはこうして回り込ませると――」

「まぁ、可愛らしい!」

「ねぇ~! わたしの頭、今どうなってるの~?」


 ジネットと寮母のオバサン連中に教えていると、ヤギ耳少女が焦れたように訴えてくる。

 どんなって、お前、そりゃあ――


「なんじゃこりゃ!?」


 気が付くと、ヤギ耳少女の頭が巨大ソフトクリームみたいになっていた。

 昔、一時期だけ流行ったメガ盛りみたいになっている。

 名古屋盛りとか、昇り龍とか言われてた髪型に。


「うふふっ! とっても可愛いですよ」

「うそだぁ! シスター、すっごい笑ってるもん!」

「……個性的」

「それ褒めてないよ、マグダお姉ちゃん!」

「なるほど、ここをこう編むとこんな風に――」

「ジネットお姉ちゃんは、悪いクセが出てるぅ!」


 壷の鑑定士のように、ヤギ耳少女の髪を様々な角度から観察するジネット。

 まぁ、これはさすがにやり過ぎだな。


「わたしもケーキね!」


 へそを曲げたヤギ耳少女に、ベルティーナと寮母のオバサン連中はにっこにこだ。

 へいへい、ケーキね。食わせてやるよ。


「えっと……、カンパニュラ先輩」

「なんでしょうか、ユナ姉様?」

「ここは、毎朝こんな感じなんでしょうか?」

「はい。概ね、このような雰囲気ですね。……騒がしいのはお嫌いですか?」

「いえ。すごく……、すごく楽しいです」

「それなら、これからは毎日、朝起きるのが楽しみになりますよ。私がそうでした」

「朝起きるのが楽しみに……、それって、すごいですね」

「はい。特別が普通になる、そんな場所なんです、ここは」


 おにぎりを握るユナが、カンパニュラとそんな話をして、そしてレジーナに顔を向ける。


「素敵ですね、先生!」

「ウチは、もうちょい静かな方がえぇけどな」


 レジーナはガキにめっちゃダメ出しされてげんなりしている。

 あいつ、おにぎり下手だもんなぁ。


「おねーちゃん、具ー! 入れ忘れてるー!」

「ちゃうねんって、これは敢えて塩だけでやな……」

「だめー! 玉子焼き入れるのー!」

「玉子焼きは別っこで食べるんとちゃうのん?」

「入れるのー!」


 どんな創作おにぎりが出来るのやら。


「ユナ~」

「は、はい!」

「がんばれよ~」

「はい!」


 返事をしたユナの顔は、なんかすげぇキラキラしていた。

 ユナにとっては、これが最初の仕事って感じだろうからな。




「あの……」


 と、ユナがやって来る。

 向こうでは、編み込みを覚えたジネットとベルティーナがガキどもの髪を編み込んでやっている。

 全員を俺がやらずに済んでよかったよかった。

 ガキどもも、ベルティーナやジネットにやってもらった方が嬉しいようだ。


「最初のおにぎりは、ヤシロさんに審査してもらえって……」


 視線を向ければ、マグダがサムズアップしていた。

 別にルールじゃないってのに。


「どれ……、お、上手いな」

「恐縮です!」


 見た目はキレイだ。

 んで、味はっと……


「うん。美味いじゃないか」

「本当ですか!? ……よかったぁ」


 最初の一個は不安だもんな。


「この調子でじゃんじゃん作ってくれ」

「はい。ありがとうございます! ……あ、でももうすでにいくつか作っているんですが……」


 どうやら、最初のおにぎりを取り置いておいて、俺の手が空くのを待っていたらしい。

 なんか、俺が最初の一個フェチみたいな印象与えてないか、それ?


「よく出来てるから、その調子で頼む」

「はい!」


 元気に返事して、おにぎり隊へ戻るユナ。

 マグダに迎え入れられ、おにぎりを再開する。

 ガキどもはベルティーナたちのところとデリアのところで分かれている。


 もうそろそろ、飯も出揃うな。


「じゃあ、そろそろ飯にするぞ~」

「は~い」


 元気よく手を上げて、ベルティーナがやって来る。

 ジネットに編み込んでもらった髪が揺れる。


「似合うな」

「ありがとうございます」


 あの髪をなでなで出来なかったのが、実に惜しい。


「レジーナ。塩むすびくれ」

「残念やな。今日はウチのも中身入っとんねん」

「なんでだよ!? ブレんなよ!」

「この子ぉらに言ぅてんか」


 小さいガキどもが、レジーナに指導した結果らしい。

 塩むすびは塩むすびで美味いのに。


「自分で作ろっと」

「ほな、ウチのんもよろしく」

「へいへい」


 何個握らされたのか、レジーナは腕が限界のようだ。

 だるそうにぷらぷら振っている。

 つっても、十個も作ってないだろうけども。


「お手伝いしますね」


 速やかに手を洗ってきたジネットが合流する。

 全然足りないもんな、この程度じゃ。


「ユナ、場所借りるぞ」

「は、はい。どうぞ」

「んじゃ、ジネットはこの辺のを」

「ヤシロさんは?」

「塩むすび担当で」

「では、お塩と梅を」

「わぁ、仕事増やされた~」

「ヤシロさんの梅おむすびは、なぜか絶妙に美味しいんですよね。何か秘訣があるんですか?」

「ねぇーよ」


 絶対、ジネットが作った方が美味いから。

 ただ、確かにこだわりはある。

 梅の量とか塩の加減とかな。


 つっても、そんな絶賛するほど味は変わらん。


「じゃあ作るか」

「はい」

「早っ!? お二人とも、手際がよすぎます!?」


 隣で見ていたユナが驚き、なぜかマグダが胸を張る。

 身内自慢か、それ?


「ユナ、これ食ってみろ。美味いぞ」

「で、でも、私は仕事中ですし――」

「本物を知っておくのも、料理するうえでは重要だ。ほれ」


 と、ジネットの鮭むすびを渡す。

 ジネットのおにぎりは美味いからな、感動するぞ。


「んっ!? 美味しいです!」

「だろ? なんでか、ジネットのおにぎりは満腹でも食えちまうんだよなぁ。俺も、もらお~っと」

「では、ユナさん。次はこちらを。ヤシロさんの梅おむすびは、感動の美味しさですよ」

「は、はい! ……んんっ!? これもすごく美味しいです!」

「ですよね。この塩梅がなかなか再現できないんです」

「なにを二人で褒め合ぅとんねんな。どっちも美味しいやん」

「「いや、全然違うんだって」ですよ」

「一緒やん、反応まで!?」


 違うのになぁ!

 分かんないかなぁ!?


「ユナ、塩むすびを口に含んで、この豚汁飲んでみろ。俺のお勧めの食い方だ」

「ヤシロさん、たまにされているその食べ方、お勧めだったんですか?」

「美味いんだよ、簡易ねこまんま」


 ジネットの豚汁が、また白米に合うんだ。


「美味しいです! 口の中で一緒になって、あの、なんと言えばいいのか――」

「わっしょいわっしょいしますよね?」

「え………………あ、ぁはい! わっしょいわっしょいしています!」

「分かんなかったら、無理して同調しなくていいぞ、ユナ」


 その感性、たぶんジネット独特のものだから。


「ちなみに、ベルティーナは美味いものを食って、わっしょいわっしょいしたことはあるのか?」

「わっしょい、わっしょい♪」

「いや、今踊れって言ってんじゃなくてだな」


 おにぎりを持って、両手を振り振り躍り出すベルティーナ。

 えぇい、可愛いな、その動き!

 餌付けされやすいように、ステータス弄ってんじゃないのか、精霊神?


「ん、なるほど。こういう感じなんですね」


 と、ジネットも俺のお勧めの食い方を試している。


「こういう食べ方をするなら、豚汁の塩分はもう少し控えめで――」

「いや、これはたまにやる行儀の悪い食い方だから美味いんだよ。これに合わせちまったら、それはまた、なんか違うから」


 いいんだよ、こういうのは、雑な感じで。


「ユナのおにぎりはどうだ?」

「とても美味しいです。これなら、陽だまり亭でお出ししても大丈夫ですね」

「本当ですか!? でも、あの……見た目も不格好で、そんなに、味も……お二人のと比べてしまうと、やっぱり見劣りを」

「ジネットのは別格だから、比べるだけ無駄だぞ」

「ヤシロさんのは特別なので、比較しなくても大丈夫ですよ」

「おんなじこと言ぅやん、さっきから」


 けらけらと、笑うレジーナ。

 ジネットが真似してくるんだよなぁ。

 真似っこめ。


「まぁ、ウチより上手に出来てるさかい、自信持ってえぇで」


 お前基準で考えたら、大抵のヤツがうまいっつーの。

 ホント、薬関連以外は適当なんだから。


「ユナ、こいつのこと、ちゃんと躾けておいてくれな?」

「そんな! 私が先生に言えることなんて、何もありませんよ!」

「んじゃ、ちゃんと言えるようになったら、正式な弟子として認めてやろう」

「なんで自分がそんな偉そうやねん」

「不出来な師匠の躾けは、弟子の役目だろうが」

「誰が不出来な師匠やねん」

「お尻にぷつっと出来てないか?」

「どれどれ、……あ、ホンマや。って、それはオデキや」

「先生。食事中にお尻を触るのはやめた方がいいです、よ……?」


 そうそう、そんな感じで、常識を教えてやってくれ。

 しかもこいつ、スカートの中に手ぇ入れて、生尻触ったからな?

 オデキの確認は生じゃないと無理だろって?

 そこまでこだわるようなボケじゃねぇだろって話だよ。


「まぁ、レジーナに馴染むまでは陽だまり亭で過ごして、頃合いを見て薬剤師ギルドに移籍だな」

「せやね。まずは四十二区にも慣れてほしいさかいな」


 ――ということにして、当面は陽だまり亭に置いておく。


 レジーナが薬師ギルドに狙われていることは、今は伏せておいた方がいい。

 ユナのスタンスもまだ明確ではないし、古巣が今の師匠にちょっかいかけてるとか知ったら、なんでかユナが気を遣うかもしれない。


 そうやって情報を伏せる以上、何も知らないユナを危険かもしれない場所へ送り出すわけにもいかない。


 レジーナの身の安全が確保できるか、ユナが完全に馴染んで、薬師ギルドからのあれやこれやを説明できるまでは、二人とも今のまま陽だまり亭にいてもらった方がいい。


 レジーナもその辺は同じ考えのようで、こっちの話に乗ってきた。


「そもそも、レジーナの家って一人増えても大丈夫なのか?」

「うっとこ、そない広ないからなぁ」

「……『うっとこ』?」


 マグダが首を傾げる。

『強制翻訳魔法』が翻訳しきれなかったらしい。


「『ウチの家』って意味だよ」

「……なるほど」


 教えてやると、深く頷き――


「……では、『ひょっとこ』は『ひょちの家』」

「誰だよ、『ひょち』」

「誰かは知らへんけど、持ち家あるんやね」

「生意気な。俺なんか居候なのに」

「自分も『ひょち』見習って気張って稼ぎや」

「えぇ~、見習うのかよ~『ひょち』~」

「え……っと、『ひょち』さん? とは、実在される方、なのですか?」

「いいえ。ヤシロさんとレジーナさんのお遊びですよ。聞いているととても楽しいので、もっと気楽に耳を傾けるといいですよ」


 やめて、ジネット。

 こんなしょーもないヤツ、真面目に解説しないで、恥ずかしいから。


「けど、店舗以外は、水回りと寝室くらいしかあらへんさかいに、あっこに二人はちょっと狭いかもしれへんなぁ」

「わ、私は、その辺で生活しますので、どうかお気になさらずに」

「その辺でって、お前はパーシーか」

「あぁ、あの養鶏場の前の草むらに生息してはる野生動物の?」

「メイクばっちりタヌキだな」

「なに食べてはるんやろ、あんなとこで」

「ネフェリーに触れた空気じゃねぇか?」

「栄養あるんかいな?」

「美女が口を付けた水くらいはあるんじゃね?」

「そら、特定の人種にはたまらん栄養食やな」

「残念な生き物だよな、パーシー」

「気の毒なお人やなぁ、パーシーはん」

「えっと、この『ぱーしー』さん? も、お遊びの、架空の人物、です、よね?」

「えっと……」

「……残念ながら、パーシーは実在の人物」

「えっ……草むらに住まれて、空気を食べて生きておられる方なのですか?」

「いえ、砂糖工場の責任者で、ちゃんとされた方ですよ」

「砂糖工場の責任者様が草むらにお住まいなんですか!?」

「えっとぉ……」


 ジネットが困り果ててこちらに視線を向ける。

 いいんだよ、事実をそのまま教えてやれば。


 あれは、金を持ってる残念な生き物だって。


 まぁ、そのうち会うこともあるかもしれないし、その時に教えてやればいいんじゃないか。




「あ、しまった」


 朝食の片付けをしている時に、俺は自分の失敗に気が付いた。


「ウーマロを確保しておくのを忘れた」


 あいつ、普通に飯食って帰りやがった。

 で、俺も普通に見送ってしまった。

 すっかりと抜け落ちていた。


「ネフェリーの依頼用に、アスレチックを頼みたかったのになぁ……無料で」

「他の大工はんに頼んだらえぇやん」

「けど、ウーマロじゃないと無料にならないし、クオリティ落ちるし、信頼度が雲泥だし、あと無料にならないから」

「どんだけ確信もっとんねん、無料に」


 だって、ウーマロだし。


「ちなみに、あいつ、タイミングがいいのか悪いのか、マグダの編み込み一回も見てないよな?」

「そうですね。昨日は一日ぐっすりとお休みされていたようで、陽だまり亭にはお見えになりませんでしたし、今朝もマグダさんが編み込みをされる前にお帰りになりましたね」

「よし、マグダ。頼んだぞ」

「……うぃ」

「自分ら、この国ナンバーワンの大工を、よぅそんな気安くアゴで使えるもんやなぁ」

「この国一番の薬剤師もアゴで使ってるからな。一緒、一緒」

「……誰が一番やねんな。面映おもはゆいわ」

「んじゃ三番手くらいか?」

「アホ言ぃな!? ウチより薬に精通しとる薬剤師がどこにおるっちゅーねん! 連れてきてみぃ! 知識量でマウント取って泣かしたるさかいに!」


 そんなムキになるなら謙遜なんかすんなっつーの。


「あ、『精通しとる』いぅても、アレちゃうで? 少年が大人に――」

「その口閉じないと、ベルティーナに突き出すぞ」

「……レジーナさん?」

「まだ口にしてへんさかいに、セーフやん!? な? セーフやったやん、今の!」

「……と、このように暴走することが度々あるので、その制御はユナの仕事」

「え……っと…………が、頑張ります」


 マグダ。

 初っ端から難しい要求してやんなよ。

 まぁ、ゆくゆくは何がなんでも身に付けてもらうスキルになるけども。


「レジーナの家の増築も検討してもらうか。どうせため込んでるんだろ?」

「まぁ、お金は仰山あるけども……ウチの部屋、今が完璧にして究極の状態やさかいなぁ」

「脱ぎ散らかした下着で足の踏み場がなくなる状態を、完璧とは言わねぇよ」

「でも、……『究極』とちゃう?」

「特定の人種に的を絞るな」


 それで喜んじゃう人を部屋に上げちゃダメだろうが。


「ユナはネフェリーと仲良くするように」

「交友関係に口出しする権利、ウチにはあるんやろか?」

「個人の交友関係を縛る権利など、ない!」

「どないしよ……、『ユナちゃんに会いに来ただけだから~』って、ウチの家掃除に来はったら……」

「大丈夫だ。ネフェリーなら、真正面から『貴様の部屋を浄化しに来た』って踏み込んでくるから」

「あの、マグダ先輩。ネフェリーさんと先生はどういったご関係なのでしょうか?」

「……ネフェリーはレジーナにとって、同年代のお母さん」


 言い得て妙だな、マグダ。


「皆様、とても優しい方なので、ユナ姉様も存分に甘えさせてもらうといいですよ」

「え、いい……んでしょうか、……私なんかが……」

「えい!」

「ぇい!」

「ぅにゃあ!?」


 ユナのネガティブ発言にカンパニュラとテレサが飛びつき、それを見たベルティーナが嬉しそうに便乗した。


「えいっ」

「し、しすたーさま、まで!?」


 ベルティーナに抱きつかれて硬直するユナ。

 それをいいことに、ベルティーナはユナの頭を撫で回している。

 編み込みしてるから、撫でる範囲が狭くて不満そうだ。


「これは、いい罰ですね。私も、しばらく陽だまり亭で過ごしましょうか?」


 にこにこと、ベルティーナが満足げに言う。

 ベルティーナも、可愛い女子に抱きつくのは好きらしいな。


「ユナ、抱きつかれながらでいいから教えてくれるか?」

「は、はい! ……抱きつかれながら、なんですね?」


 ベルティーナが退いたそばから教会の女子どもがユナに群がってくっついているので、しばらく好きにさせてやる。

 メンズは来んな。

 何をスケベ面さらして羨ましそうにしてんだ、最年長!

 四十区に手紙送るぞ?

 スケベ面してたって。

 ルーナとユナって、名前似てるからって、エロい目で見るな。

 あぁ、そう言えば、年齢も同じくらいか?


「ユナ、今年でいくつだ?」

「は、はい。十四歳です」


 年齢も一緒か。


「エロい目でみんなよ、最年長」

「見てねぇーし!」

「……ユナ、あの最年長はエロいので気を付けて」

「そんなことねーよ、マグダ姉ちゃん! ないからな、ユナ!」

「ぇっと、はい。……仲良く、してくださいね」

「く…………っ! こういう穏やかで優しそうな感じも、いいなぁ」

「え、なに? 『ルーナは気が強くて鼻につく』って?」

「言ってねぇし! ルーナは可愛……なんでもねーし!」


 顔が好きなのかよ。

 最低だな。

 女性を見た目で判断するとか、男としてどーなの?


「……ヤシロは、まずおっぱいで判断する」

「だってメンズだもの」


 それは仕方がないことなんだよ、マグダ。

 仕様というヤツだ。


 あぁ、そうじゃなかった。


「ユナは料理が出来るか?」

「えっと、一人暮らしでしたので、自炊はしていましたが……出来ると言えるほどの腕前では……」

「では、陽だまり亭で練習しましょうね。わたしが教えますから」

「よろしいんですか!?」

「はい。時間はたっぷりありますから、ゆっくり覚えていきましょう」

「お姉さんに教えていただけたら……、きっと美味しい料理が作れるようになりますね!」

「それで、レジーナさんを喜ばせてあげましょうね」

「はい!」


 うん。

 ジネットも、「レジーナは料理を覚えない」って認識しているようだ。


「んじゃまぁ、ついでに掃除や洗濯も教わっとけ。そこのそれは、そういうのが一切出来ないから」

「出来へんのとちゃう、やらへんのや!」

「やらないから出来ねぇんだろうが」

「そうとも言ぅな」


 そうとしか言わねぇんだよ。


「お前が面倒を見てやると、レジーナはお前に感謝しまくるぞ」

「せ、先生が、私にですか!?」

「俺らだって、毎日ジネットに感謝してるもん。なぁ、マグダ」

「……そう。店長がいなければ、ヤシロとマグダは身を持ち崩している。特にヤシロ」


 なんで俺に全部おっ被せんだよ。

 お前より出来るからな、家事?


「そんな、わたしはただ、好きでやっていることですので……」

「好きでもなんでも、それで俺たちは助かってるんだ。いつもありがとうな」

「……ありがとう、店長」

「ぅゅ……っ、そう言っていただけると……とても嬉しくて……ダメですね、もぅ、ちょっと泣いちゃいそうになっちゃったじゃないですか」


 目尻を押さえて「えへへ」と笑う、ジネット。

 ホント、感謝が絶えない。


「ユナ。お前の行動には全部価値がある」


 こいつは、それにまったく気付いてないようだけど。


「弟子だからやって当然、下働きだからやらなきゃいけない、なんてことはない。お前の行動にはきちんと価値があって、それはきちんと認められるべきお前の功績だ。胸を張れ」

「そうですね。それを驕る必要はありませんが、こうして感謝をしてくださる方がそばにいると、とても満たされた気持ちになります。それくらいのご褒美は受け取ってもいいと思いますよ」

「ご褒美…………あの、私……」


 どうせ、薬師ギルドでは雑用を押し付けられて、それを当然だと思っていたんだろう。

 誰からも感謝されず、失敗した時だけ罵倒され、失敗していなくても八つ当たりのターゲットにされていたかもしれん。


 そういう、こびりついた頑固なネガティブは、早いうちからこそげ落としていってやらなければいけない。

 取り去るのに時間がかかるんだ、そういうのは。


「もしいつか、レジーナが感謝の気持ちをなくしやがったら、一回飯抜きにしてやれ。そん時の反応を見れば、自分がどんだけすごいことやってたか、理解できると思うから」

「……ふむ。店長が怒ってご飯抜きになったら、マグダなら泣く」

「俺は死ぬかもしれん」

「それは大袈裟ですよ」


 くすくす笑って、にこりと笑う。


「でも、それだけ大切に思ってくださっていると知れて、嬉しいです。ユナさんもきっと、この気持ちが分かる時が来ます」

「本気で何もしないからな、こいつ」

「……レジーナのものぐさは、魔人レベル」

「ウチ、ものぐさな魔人見たことあらへんから、肯定も否定もしにくいわぁ」


 言って、レジーナはユナの頭にぽんっと手をのせる。


「無理して頑張らんでもえぇさかいに、いろいろ教えてもろとき。ほんで、ウチのこと、適度に甘やかしてくれたら、ウチめっちゃ喜ぶさかいに。そん時はちゃんとお礼言うから、受け取ってな?」

「…………はい」


 レジーナを見つめて、なぜか瞳に涙をためるユナ。


「必要としてくださるのが、こんなに嬉しいなんて……初めて、です」

「いや、お前の親父はお前を必要としてたはずだぞ。よく思い出してみろ」

「ぁ……」


 呟いて、ユナの瞳から涙がこぼれる。


「そう、でした。……では、こんなに嬉しいのは、すごく、久しぶりです」


 涙は流れていくのに、ユナの口元は笑っていた。

 それはもう、楽しそうに。

 嬉しそうに。


「こんなに、温かい気持ちになれたのも、久しぶりです」


 ジネットとベルティーナがそっくりな顔でユナを見つめていた。

 何も言わず、優しく見つめ、口元を綻ばせる。


 いろいろ教えてやればいい。


 レジーナの介護を請け負ってくれるなら、どんな技術も無償提供してやろう。

 先行投資だな、これは。




 朝食の寄付を終え、陽だまり亭に戻ると、イメルダが帰り支度を済ませて立っていた。


「あら、お見送りに間に合いましたわね」

「間に合わせたつもりはないんだけどな』


 ちょうど今帰ろうとしていたところらしい。


「飯食ってくか?」

「さすがに一度戻りますわ。ギルドの様子と給仕たちの確認をしませんと」


 ギルドの支部代表であり、館の主でもあるイメルダは、現場の確認をする立場にある。

 状況把握は、何をおいても優先される、管理職の務めだ。


「また後でお伺いいたしますわ。何か、楽しいものを作るのでしょう?」

「ドライ屋か? まぁ、またなんか頼むと思うから、よろしくな」

「お任せくださいまし。……その代わり」


 妖艶に微笑んで、イメルダが俺の耳に唇を寄せる。


「二階でまだ寝ているノーマさんを、よろしくお願いいたしますわ」

「ごめん、交換条件が重過ぎて釣り合ってない気がする!」


 最悪の場合、木材を諦めるから、ノーマをなんとかしてから帰ってくれないかな!?


「では、ごきげんよう」


 俺の願いも虚しく、イメルダは帰っていってしまった。


 ……はぁ~、ノーマ、まだ寝てんのかぁ。


「さぁ、ヤシロさん。開店準備ですよ」


 こちらの陰鬱な気持ちを吹き飛ばすように、ジネットが笑顔を咲かせる。


「ケーキの準備もしませんとね」


 それが、嬉しいらしい。


 ベルティーナとヤギ耳少女をはじめとしたオシャレ女子チームは、後程ケーキを食いに来るそうだ。

 仕込みを、ユナに手伝ってもらうとするか。


「デリア。もしかしたら途中で抜けるかもしれないから、店を頼むな」

「おう! あたいに任せとけ!」

「ジネットも連れていくかもしれんが」

「マグダとロレッタがいれば大丈夫だぞ」


 すっかり頼もしい先輩だ。

 それで、実際安心できちまうんだからすごいよな。


 マグダとデリアなんて、最初は接客業が不可能だと思ってた二人だし、ロレッタはやかまし過ぎてカンタルチカをクビになったヤツだ。

 それが、店長不在の陽だまり亭を回してるんだから、時間ってのは偉大だな。


「どこかにお出かけですか?」

「ウーマロが来て、時間があるようならネフェリーのところへな」

「えっと、ヒヨコさんのアスレチック、でしたっけ?」


 そうそう。

 ネフェリーへのお礼の件、ちょっと楽しめるプレイスポットを作りにな。


「ノーマが起きて来たらドライ屋の構想を練る」

「ヤシロさんは、三十五区から戻ってもお忙しいんですね」


 ジネットがくすくすと笑うが、忙しくなったのはその三十五区から領主がわんさかくっついてきちまったせいでもある。


「とりあえず、ケーキの仕込みをしつつ、開店準備だな」

「はい」

「……ユナ。ロレッタが来る前に作業を終わらせて、驚かせたい。手伝って」

「はい! お任せください!」

「……カンパニュラとテレサも」

「はい。どのような分担になさいますか?」

「あーし、おそうじ!」

「……では、配置を発表する」


 マグダが張り切って後輩たちに指示を飛ばす。

 残念ながら、デリアは掃除隊からは除外されてしまったが。


 まぁ、掃除はな。

 デリアはな。

 大雑把だから。


「……デリアはフロア担当」

「おう、任せとけ!」


 返事をして、すぐ行動に移る。

 フロア担当といえど、客が来るまでヒマというわけではない。

 荷物ラックの準備やコート掛けの点検。

 水の準備なんかもやっている。


「ヤシロさんは?」

「とりあえずヴァルターに手紙を書くよ。あとでロレッタに、エステラのとこまで届けてもらう」

「では、厨房は任せてください」

「いっつも丸投げだよ」

「そうでもないですよ」


 感謝の言葉をもらい、いつもよりも張り切っている雰囲気のジネット。

 今日のジネットはちょっとすごいことになるだろう。

 あぁいう顔をしているジネットは、いつも以上に仕事が早くなるんだ。

 きっと、俺が厨房に入ると、逆に足手まといになっちまう。


 今は大人しく、自分のやるべきことをやっておく。


「酒は、その種類によって器を変えるべきだ。なぜなら――」


 ヴァルターが食いつきそうな文言をひねり出し、答えを教えず存分に匂わせる文章を書いていく。

 さぁ、食いつけ、ヴァルター。


「楽しそうやなぁ、自分」

「金の匂いがするからな」

「これが流行ったとして、どういう経路で自分にお金が入ってくるねんな?」

「これでヴァルターが釣れたら、今後いろいろ融通が利くだろうが。そっちだよ、メインは」

「それ、ウチには慈善事業に見えるんやけどなぁ」

「お前は、エロいもんばっか見てるから目が曇るんだよ」

「ほんまや、世界がうっすらピンクがかっとるわ」


 わぁっと驚いたふりをして、ケラケラ笑うレジーナ。

 随分とリラックスしている。

 こんな、大勢の人間が集まるフロアにいるってのに。


「絵ぇでも添えたらどない? 自分、うまいやん」

「そうだなぁ……じゃあ、ちょっと本気出すか。ハム摩呂」

「よばれたー!」

「俺の部屋に行って画材道具一式持ってきてくれ」

「うんー!」


 とってってってー! と、駆けていくハム摩呂が、厨房の手前でこちらを振り返る。


「はむまろ?」

「お前だ、お前。いいから行ってこい。あとでケーキ食わせてやるから」

「うほほーい!」


 ゴリラになってんぞ。


「……っくりしたぁ。いつからいたん、ハムっ子はん?」

「俺が手紙を書き始めた時から、テーブルの下にいて、俺の足にしがみ付いてたぞ」

「言ぃ~やぁ。ウチが『テーブルの下は見えてへんからセーフ理論』で、スカート全めくりするタイプの女子やったらどないしてんな?」

「そんな理論を振りかざす女子のことまで考えてやるほど、器はデカくねぇよ」

「でも、実在したら?」

「テーブルに潜り込む」

「何をおっしゃってるんですか。懺悔してください」


 なんでか、タイミングよく出てきたジネット。

 懺悔センサーでもついてんのか?

 なんとか破壊してくんない、それ?


「おにーちゃん、もってきたー!」


 ハム摩呂が画材道具一式を持って戻ってくる。

 じゃあ、カクテルグラスのイラストでも描くか。


「よいしょ」

「なんで当たり前みたいな顔で人のヒザの上に乗ってきてんだ?」

「ここ好きー!」


 そうかい。


「邪魔すんなよ」

「してないー!」


 ポジティブだな。


「いや、絶対邪魔やろ、そのポジション」

「邪魔じゃないよ?」

「いや、ハムっ子はんが言ぅんかいな、それ」

「…………じゃま?」

「邪魔ちゃうんやって! そこにいとき!」

「うんー!」

「…………ズルない、今の顔?」

「クレームは長女に言ってくれ」


 ハムっ子の教育は、俺の管轄外だから。


「こんなもんか」

「はっや、うっま、きっよ」

「早い、うまいはいいけど、器用をその言い方すんな」


「きっしょ」かと思って、一瞬ビックリするから。


「透明を絵ぇで表現できんの、すごいな。何もないんと違ぅて、ちゃんと『透明なんがある』って見えるもんなぁ」


 見えないものを描く方法はいくつかある。

 川の水やグラスなんかは、結構研究されてて、リアルに見せる方法が結構あるんだよ。


「こういうコップは見たことあらへんけど、確かに可愛らしいなぁ。女子らぁが好きそうやわ」


 と、薄桃色のカクテルが注がれたカクテルグラスのイラストを見つめるレジーナ。

 その顔、お前も興味惹かれてる女子の一人だって、雄弁に物語ってるぞ。


「ちなみに、これの正しい楽しみ方は、こんな感じだ」


 静かなバーのカウンターで、一組の男女がカクテルを楽しんでいるイラストを描く。

 男は背中を向けており、女は大人っぽい笑みを男に向けている。

 二人の間には赤いカクテルと青いカクテルが並んで置かれ、そこに存在しながらも二人の世界には介入しないバーテンダーがカウンターの中でグラスを拭いている。


 シェイカーはまだ見せない。

 現物を生で見せた方が、インパクト強いからな。


「こらまた、オッシャレやなぁ」

「ノーマが好きそうだろ?」

「最初三十分は、こんなムードを楽しめるやろうなぁ」


 そうか、三十分しかもたないか。

 泥酔するほど飲まないのが、大人のマナーなんだけどなぁ。


「こんな色のお酒って、あるん?」

「着色するのが多いな」


 ブルーキュラソーなんかは、鮮やかな青色をしているが、着色料で青くしていることがほとんどだ。


「『ねるねるねろ~ぜ』みたいな色とは違うんやね」

「アルコールだからな、ここまでの青は出ねぇよ」


 化学反応では、ここまでの青は出せない。


「カクテルは、雰囲気を飲むものだ」


 なので、色にはこだわりたい。

 昔は、原材料の色を大切にしていたのかもしれんが、現代カクテルを知っている身としては、合成着色料で鮮やかな色を求めてしまう。


「つーわけで、協力よろしく」

「また、難しい要求を簡単に押し付けてきはるんやろうなぁ~」


 それはお前、『信頼』ってヤツだよ、うん。


「まぁ、カクテルの開発はオモロそうやし……」


 俺のイラストを指で撫で、そっと見つめて――


「ウチも、こんなん割と好きやし」


 目を細めて笑う。

 レジーナも女子だなぁ。

 ロマンティックなムードとか、案外好きなのかもしれないな。


「グラスが完成したら、それでまた飲ませてな?」

「あぁ。ホンモノを楽しませてやるよ」

「そら、楽しみやな」


 にっと笑って、自分の脳内世界へと潜っていく。

「着色料で、アルコールに影響受けも与えもせぇへんヤツやったらあの辺やろか……」とか、口の中でぼそぼそ独り言を言い始めたのでそっとしておく。

 考えをまとめてる時に横やりを入れるべきじゃない。


 それに、頭を使ったレジーナは、こっちが望む以上の成果を持ってきてくれることがほとんどだからな。



 俺はレジーナを放置して、手紙を書き上げた。

「こんなもん、カクテルグラス作って持っていかないわけにはいかないじゃないか!」って内容の手紙を、な。







あとがき




燃え尽きております、宮地です☆


書ける時はめっちゃ書けるんですが

書けない時はとことん書けないんですね


今まさにちょこっと書けない時期で

GWは一切書かずに充電しようと決めました


見てなかったドラマとか、最新刊買わずに三年くらい放置したコミックとか

そういうのを吸収する期間にします


気付いたら追ってたマンガも三年くらい買ってなくて

これは最新刊まで読むの大変だな~とか思ったんですが

案外2~3冊なんですね。

1年1冊ペースなんですね、コミックって

さらっと読めちゃしました


いやぁ、いいですねぇ

久しぶりに「マンガ読んだ!」って気分でした


一時期、

流行をリサーチするためにかなり多くのコミカライズ作品を読み漁っていたんですが

最近はもう、好きなヤツだけ読んでます


京都ものは結構好きで読んでまして

一時期どさっと増えたんですが、

増えた時期が同じだったので同じようなタイミングで終わっていって

(^^;

また京都マンガ探しませんとね


あと、一時期溢れかえっていたご飯系も、一応落ち着いてきたんですかね?

まだまだいろんな方向性のご飯ものがあるようですが

私が読んでいたものは軒並み終わっちゃいましたね


読んでいたマンガが終わると

清々しい反面、ちょっと寂しくもあり


そして何より


……新規開拓、しんどい

(・_・;


どうにも腰が重く、

安心感が欲しいお年頃でして

(^^;


また何かいい出会いがあれば追いかけましょうかねぇ


コミカライズはそんなに……だけど原作めっちゃ面白い! とか

逆に、コミカライズ面白過ぎて原作追いかけたら……あれ? みたいなのがあったり

面白いですね


コミカライズされてない面白いものとかもあって

たまたま巡り会えた良作には感動します。

本当に、まだまだ出会っていない良作、名作、神作っていっぱいあるんでしょうねぇ


こういう書けないタイミングでいろいろ漁るのは面白いですよね


皆様はどういうタイミングで新規開拓されているんでしょうか?

広告とか、「この本を買った人はこんな本も~」的な感じで見かけてでしょうかね?


私は「このジャンルが読みたい」っていう感じで検索して、そこから探すので

出会いのチャンスを取りこぼしている気がします

まったく読まないジャンルに案外合うヤツがあるかもしれないですしね

ちょっと違うアプローチで探してみるのも面白いかもしれませんね

(*´ω`*)


ヤンキー、復讐、デスゲームは読まないんです

絶望とか欲望とか、あんまり好きじゃないもので


でも、ミステリーは好きなんですよね

人死ぬんですけどね

復讐とか、絶望とかあるんですけども

やっぱり、主軸がどこにあるかの差なんでしょうかねぇ


案外、ヤンキーがデスゲームで復讐するお話とか、読んでみたらハマるかも?

……ん~、どうでしょう?(^^;



ミステリーといえば、

Huluで、十角館の殺人があったので、まとめて一気見したんですね

面白かったですねぇ

ドラマを久々に見ました

ただ、ただ……っ!


物語の象徴たる『十角館』を設計した建築家が、中村セイジ

その弟が、中村コウジロウ


はじめ、私聞き取れてなくて、『コウジさん』だと思っちゃったんですね


なので、

お兄ちゃんがセイジで弟がコウジさんって


千原兄弟やがな!?Σ(゜Д゜;)


って思ってしまって、

もうそれ以降、真面目に話入ってこなくなっちゃって

(^^;


私「あ、コウジさんじゃなくて、コウジロウさんって名前なのか、ジュニアさんは」

家族「ジュニアさんじゃないんだわ、そもそも」


主人公「それじゃあ、セイジさんが設計されたご自宅に、火を付けたのは……」

コウジロウ「これね、びっくりしたんですけど、家、グワァー燃えて、えらいこっちゃやでこれー言ぅて、火元どこやねーんって、いろっいろ調べた結果、原因、――セイジやったんっすよ」

家族「いや、そんなジュニアさんみたいな言い方してなかったから!?」



素晴らしいドラマでしたので、機会があれば是非ご覧ください☆


 Σ(゜Д゜;)フォローになってない!?



書くのも楽しいですが、見るのも楽しいですね

まぁ、書く方がやっぱり楽しいですけども

いろんなものを見たおかげで、またぼちぼち書けそうです


このあとがきも、ストックなくなっちゃって、書いて出ししているので

最近身近な話ばっかりで……(^^;すいません



本編の方では

ユナを存分に堪能していただく回でしょうか?

いや、教会っ子とかもなかなか元気でしたね


ヤギ耳っ子には、そろそろ名前をつけてあげた方が楽になりそうですね

今後も何かと出てきそうですし(笑)


本編に登場しないエナさん(アッスント嫁)ですら名前ありますからね

何かいい名前を考えてみたいと思います


その前に、教会を卒業する子に名前をあげた方がいいんですよね

もしかしたら、カンタルチカの新人ウェイトレスになるかもしれませんし

そしたら、どこに住むんでしょうか……ランドリーハイツ?

わぁ、すごく陽だまり亭圏内(笑)


たしか、設定上は、

最年長が男の子の14歳で

その次が女の子の13歳だったような……まぁ、その辺の細かい数字はいいじゃないですか☆


ノリで生きていきましょうよ、ね! ね!



資料見ずに書きますので間違ってたらごめんなさいね――

ロレッタが今年17歳だったはずなので

(開始時ヤシロが16歳の時に15歳で、今ヤシロが18歳なので、たぶん17歳のはず)

長男次男が16歳

次女が15歳

三女が14歳……だったかな?


じゃあ、ユナは三女と同じ年齢……


三女、ユナ、モリー


14歳はいい子ばっかり!?Σ(・ω・ノ)ノ!



※資料見ずに書いてます! 違うかもしれません! 間違ってたらごめんなさい!



年齢って、うっかり間違うことが多いので

本編内ではあんまり言及しないようにしております(^^;


ウーマロさん、何歳なら都合がつくんでしょう?

ポジション的に結構なオジサンのような……

普段のノリや周りの反応からそこそこ若いような……


あの人はかなり年齢不詳なんですよね



頼り甲斐的にベッコより年上っぽいですし

ウッセよりは若そう


まぁ、ウーマロは年齢とか関係ないんです

( ̄▽ ̄)


ウーマロはウーマロなのです!



資料はあるんですが、更新してないところがあるので

いつもドッキドキです(笑)



その辺を如何にうまく誤魔化して描くかが腕の見せ所です☆

今後の宮地さんの活躍に、乞うご期待☆


ミスがあったら、そっと心の扉にしまっておいてください、ね☆



今後とも、飽きれずに、広い心でお付き合いいただけると嬉しいです。



次回もよろしくお願いいたします。

宮地拓海

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます!いやしかし!無性におにぎりが食べたくなる話でした。豚汁付きならもう御馳走!沢庵あれば毎日同じで良いですね。わっしょい祭りもありがとうございました!ベルティーナ様の親子わっしょ…
ヤシロ…そして宮地さん、世の中には女性をおっぱいで見てない男も男性もメンズも居ますからね? なんだったら見た目をあまり気にせず性格で判断してる人間も居ますから… あ、ちなみにこれは聖人って意味ではなく…
京都マンガで読んでる読んでたのは であいもんや京都寺町三条のホームズとかかなぁ ご飯系なら 異世界居酒屋「のぶ」や衛宮さんちの今日のごはんとか 他にもあるけどぱっと思い浮かんだのはこんな感じですね
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