500話 俺たち戦いは、まだこれからだ
振り返ってみると、いろんなことがあったな。
三十五区の劇場はまだかと領民が騒がしいからなんとかしろなんて無茶ぶりから始まって、外周区と『BU』の全教会のシスター・ブラザーを招いての光の行進のデモンストレーション。
そして、薬師ギルドからの難癖と統括裁判所の下っ端貴族からの嫌がらせを突っぱねた。
それらも、なんだか遠い過去のようだ。
「ヤシロ。なに、『全部終わったな~』みたいな顔してるの?」
そういうお前は、なにをニワトリみたいな顔をしてるんだ、ネフェリー。
ニワトリが何鉄砲を喰らったような顔なんだよ、それは。
というわけで、なんとなく最終回風に締めてみたい気持ちになってしまったが、なんでかは俺にも分からん。
たまに、そんな気分になる時があるじゃないか。
イヤホンで音楽聞きながら外を歩いていると、自然とMV撮影ごっこをしてみたくなる、みたいな、あんな感じだろう、きっと。
「ヤシロさん、こんな感じでどうッスか?」
ウーマロが、鶏舎前の広場に設置したアスレチック広場の中でこちらを振り返る。
そう。
俺たちは今、ネフェリーの家に来ている。
この家、入り口に事務所っつーか、外部の人間に対応する場所があって、その横に大きな門がある。
今俺たちがいるのは、その門の中。
行商ギルドとか、他の養鶏場の人間が荷車を停めとくような広い場所だ。
門から鶏舎までは十分な距離が確保されており、途中に手や靴を洗う洗い場がある。
外の菌を鶏舎の中に持ち込まないよう、厳重に管理されてんだよ、一応。
で、その事務所の横の、それなりに――っていうか無駄に広いスペースにアスレチックを作ってみた。
その広さ、なんと3メートル×3メートル!
デカい!
なにもこんなデカくしなくてもいいんじゃないかとも思ったんだが、ヒヨコが想像以上に多くてなぁ。
ヒヨコは一羽辺りの占有スペースがざっくりと0.1~0.2㎡と言われているが、こいつは生活スペースの話で、遊ぶとなるとまた話が変わってくる。
ヒヨコはとにかく走り回るので、ストレスなく遊ぶためにはこれくらいのデカさが必要だったんだよ。
こんなデカいモノ大変だろうと思ったんだが……
「余裕ッス!」
編み込みマグダを見たウーマロは無敵だった。
ヴァルターへの手紙を書いた後で、ハム摩呂に言ってウーマロを呼び出したんだよ。
アスレチック作らせようと思って。
で、やって来たウーマロは、店に入った途端一回気絶した。
「マジ天……」まで言って思考回路がぶっ飛んだらしい。
その後、目を覚ましてからの騒ぎようと言ったら……酷いもんだったぞ。
で、なんでか俺の両手を握って「なんでもするッス!」って言ったので、アスレチックを作ってもらった。
「仕事の合間にちゃちゃっと済ませるッス!」とか言って、マジでちゃちゃっと済ませちまいやがった。
にしても、立派なもんだ。
『ようこそ! ぴよぴよランド』
なんて看板も立っている。
「可愛いですね」
完成形を見たジネットもにこにこしている。
ここにいるのは俺とジネットとウーマロ、そしてこの養鶏場の娘にして最近は実質的な責任者になりつつあるネフェリーだ。
今回のぴよぴよランド建設も、ネフェリーの一声で決まったっぽいし。
「ねぇ、ヤシロ、ウーマロさん! もうヒヨコたちを入れてもいいかな!?」
完成が近付いてきてから、もうずっとネフェリーがうるさくてなぁ。
テンション上がり過ぎて、作業中のウーマロに話しかける、話しかける。
そんなことしたら作業が遅れるってのに。
とにかく、早くヒヨコを遊ばせたいらしい。
「今はどこにいるんだ?」
「今は鶏舎で大人しくしてるよ。いつもはね、裏で走り回ってるの。でも、柵だと脱走しちゃうし、頭を突っ込んで危ないから、小さい箱の中でしか遊ばせてあげられてなかったの」
「今回は、かなりデカいから、存分に走り回れるだろう」
「うん! ありがとうね、ウーマロさん!」
「気に入ってもらえたなら何よりッス」
ウーマロ。そっちにネフェリーはいないぞ。
え、なに? お前って、お尻で相手の顔を見るタイプの生き物?
「じゃあ、連れてくるね!」
ネフェリーが辛抱堪らんとばかりに駆け出し、敷地の中へと入っていく。
ネットとか張って、庭で放し飼いでもいいんだろうが、目を離すととんでもないとこで大怪我するからなぁ、ヒヨコは。
すぐ骨折するクセに高いところに上りたがるんだよ、あいつら。
で、バランス取るのもうまくないから転がり落ちて足を骨折。そして動けずにそのまま……なんて事故が多発するんだ。
なのでまぁ、目の届く範囲で自由に走り回れるこのぴよぴよランドはありがたいだろう。
「こちらでヒヨコさんを飼育するんですか?」
「いや、日中は出しといて、夜は鶏舎に連れて帰るんだ。外に放置すると動物に襲われかねないしな」
野良猫や野良犬ってのはあんま見かけないが、それでも用心するに越したことはない。
そういや、野良猫いないな、この街。
「野良猫っていないのか、この街?」
「どうでしょう? 昔、教会にご飯をねだりに来ていた野良猫がいましたけれど……最近は見かけませんね」
「いつの話だ?」
「わたしが教会にいたころです」
じゃあもう十年近く前か。
もういないかもな。
「いるにはいるんだな」
「はい。あまり見かけませんが」
こんだけ自然が多いと、動物が人間の生活圏に出てくることはそんなにないのかもな。
「鳥は多いッスよ。オイラの家にも、たまに休みに来てるッス。朝に『ひよー!』って鳴くんッスよ」
「ヒヨドリか?」
「さぁ、オイラ詳しくないッスから」
「『ひよー』と鳴くからヒヨドリなんですか? では、ヒヨコさんは『ピヨドリ』ですね」
何がそんなに面白いのか、ジネットがくすくすと笑っている。
わぁ、「ぴよぴよ」言い始めた。
「どうする、ウーマロ?」
「可愛いじゃないッスか。ウチの連中が見たら全員卒倒するッスよ。店長さんのファン、多いッスから」
「そうか、じゃあ出禁だな」
「いや、ウチの連中、一番のお得意さんッスよね!?」
「なにも店に来なくても、金だけ払えばいいだろうが」
「どういう施設ッスか、そこ!?」
ファンなら貢げ、ばかたれ!
「ファンといえば、ウチの大工で無謀なヤツがサワーブに通ってたんッスよ」
サワーブといえば、四十一区の美魔女、オシナの店だな。
素敵やんアベニューが出来てから、常連客が増えて、そこそこ忙しくしているらしい。
あくまで客席数は増やさず、マイペースに営業してるみたいだけどな。
「で、先日、何を血迷ったのか、オシナさんにプロポーズしたらしいッス」
「え、命知らず」
オシナの親友、メドラだぞ?
絶対口出してくるぞ、メドラなら。
下手したら死ぬのに、なにやってんの、その大工?
「で、結果は?」
「玉砕ッス」
だよなぁ。
オシナが大工ごときに靡くとは思えない。
あいつ、自分の生活リズムを崩されるの嫌いそうだし。
「それで言われたらしいんッスよ。メドラさんにタイマンで勝つか、ヤシロさんを超えたら考えてあげるって」
「なにその不可能な条件? あいつはかぐや姫か」
「かぐやひめ?」
「俺の故郷の昔話でな、結婚したくないから求婚者に無理難題を押し付けて、最後は祖国に帰っていっちまう姫さんがいたんだよ」
「あぁ、そんな感じかもしれないッスね。メドラさんに勝つのもヤシロさんを超えるのも不可能ッスからね」
いや、メドラはともかく、俺を超えるのは不可能ではないぞ。
ただ、そこらの大工ごときには負けないってだけで。
「それでそいつ、ヤシロさんを超えようと、巨乳美女がお酒の相手してくれるお店に通い始めたんッス」
「どこで張り合ってんだよ!?」
まぁ、それでも負けないけどね!
「その大工、名前はなんてヤツだ? 話をせねばな」
「叱るッスか?」
「いや、その社交場の詳細を――」
「ぴよ!」
なんか、ジネットにヒヨコで怒られた。
あれ、人間の言葉忘れた?
なんならアスレチックで遊んでくる?
「ごめ~ん! みんな集めるのに手間取っちゃった~」
ネフェリーが木の箱を抱えて戻ってくる。
結構デカい。
覗き込めば、ヒヨコがみっちりとひしめき合っていた。
「ぴよ~!」
可愛いのか、そうか。
で、ジネット。しゃべって。
「可愛過ぎて、ぴよぴよが伝染っちゃいました」
「あ~、分かるぅ~! 私も、しばらくぴよぴよ言っちゃう時あるの~!」
「ぴよぴよ」
「ぴよっぴ!」
「なんか、和むッスね」
「そだねー」
なんか、二人とも、昭和味があるよなぁ。
「まぁ! よくも言ったわね!」とかいう怒り方しそうだもん、二人とも。
「それじゃあ、放してもいい?」
「どうだ、ウーマロ」
「もちろん大丈夫ッス! 安心安全で、可愛さ保証ッスよ!」
「それじゃあ、みんな、遊んでおいで~!」
ネフェリーが木箱を倒すと、中からヒヨコが一斉に飛び出していった。
「ぴよぴよぴよ! ぴよぴよぴよぴよ!」
すげぇ、うるせぇ。
けど、顔をしかめたのは俺だけで、元気に走り回るヒヨコを見て、ジネットとネフェリーの表情筋が融解していた。
ぴよぴよと走り回るヒヨコたち。
10センチほどの丘を駆け上り、その先の滑り台を滑り、トンネルをくぐって、砂場で寝転んで砂浴びをする。
「か、かわいいですっ!」
「これ、ヤバいね! ウチの子たち、可愛過ぎる!」
ジネットとネフェリーがヒヨコにハートを射抜かれている。
ウーマロですら「可愛いッスねぇ」と頬を緩めている。
「あ、見てください、ネフェリーさん! ヒヨコちゃんが、滑り台を登ってますよ」
「あはは、滑るんじゃなくて登るんだねぇ~」
まぁ、動物って、こっちが想定してることをなかなかやってくれないもんだからな。
なんで滑り台を登るかねぇ。
「もっと高くしたら滑りそうだけど、そうすると怪我をする危険があるんだよね」
ヒヨコはすぐ骨折するからな。
なので、10cm以上の段差は作っていない。
落ちてもコケる程度の、低いアレチックばっかりだ。
「でも、走り回っているだけで、十分可愛いですよ」
「ルールを守れば、触っても大丈夫だぞ」
「いいんですか!? そうなんですか、ネフェリーさん」
「乱暴にしなきゃね。この子たち、すっごく人懐っこくて、すっごく可愛んだよ~」
「あの、ヤシロさん! そのルールというのを、教えてください!」
触りたくて仕方ないらしいジネット。
目が真剣だ。
「まず、掴まない、押さえつけない、ぐりぐり撫でない」
ヒヨコの体に負荷のかかる触り方は厳禁だ。
「あと、10cm以上体を持ち上げない」
落ちたら骨折するくせに、連中は飛び降りようとするからな。
「こうやって、両手ですくい上げるようにして少し持ち上げるくらいなら大丈夫だぞ」
ヒヨコを両手でそっとすくい上げる。
すると、別のヒヨコが俺の手の上に飛び乗ってきた。
「『ま~ぜて』だそうですよ」
くすくすと笑うジネット。
だけどな、これが危ないんだよ。
こうやって飛び乗ってきて、勝手に落ちて、勝手に骨折するから。
「あとは、指で優しく突っつくくらいなら平気だ」
ヒヨコを降ろし、ヒヨコのノドをぷしっと突く。
ははっ、逃げられたか。
「ヤシロはさすがね。ヒヨコの扱い、よく分かってるじゃない。まぁ、そこまで慎重にしなくても、大丈夫だけど……でもそうね、不特定多数の人に触ってもらうようにするなら、それくらいのルールは必要だよね」
実際、落ちないようにしっかり注意を払ってやれば、1メートルくらい持ち上げたって問題はない。
ただし、事故が起こってからでは遅いのだ。
なので、最初から事故が起こらないルールを作っておく。
「両手でそっと、ですね」
ジネットがヒヨコをすくい取ろうと腕を伸ばす。
が、ヒヨコが固まって逃げていく。
それを追いかけるジネット。
逃げるヒヨコ。
追うジネット。
逃げヒヨコ。
「ま、待ってくださ~い!」
「おーおー、翻弄されとるなぁ」
「ヒヨコに負けるのって、ジネットくらいだよね」
ネフェリーが笑うが、どれくらいの力加減か分からずにおっかなびっくり腕を伸ばしてりゃ、そりゃそうなる。
「うぅ……触らせてもらえませんでした……」
諦めたらしい。
「でも、こうして元気に走り回っている姿を見られるだけで、癒されますね」
囲いの上からヒヨコを見下ろすジネット。
「ウーマロ、これくらいの高さの椅子、用意できるか?」
「それくらいならすぐッス」
「いや、数がいるから新人にでも作らせてきてくれ」
「いや、すぐ出来るッス」
「新人教育しろよ」
「お客様が使うものは、一切の妥協が出来ないッス」
お前は、ずっと現役でいるつもりか?
いるつもりなんだろうな。
「随分と低い椅子なんですね」
俺が指定したサイズを見て、ジネットが言う。
「低い椅子だと目線が落ちてヒヨコが見やすいってのと、座ってるとどうしても自分の膝の上にヒヨコを乗せたくなるだろ? それをやられて、万が一ヒヨコが落下しても、椅子が低いと怪我をする危険が減る」
「何から何まで考え尽くされているんですね」
「ヒヨコのこと考えてくれて、ありがとね、ヤシロ」
ヒヨコファーストな発想に、ネフェリーがにっこにこだ。
ガキと動物を掛け合わせると事故が起こる。
それをゼロに出来ない以上、起こる事故をなるべく小さなものにする努力が必要になる。
ヒヨコにもしものことがあったら、やらかしたガキも、その親も、ネフェリーも、ヒヨコも、もしかしたら設計したウーマロまで気に病むかもしれないからな。
「これで、安全に、思う存分ヒヨコちゃんの可愛さを堪能できますね」
ヒヨコが可愛過ぎて、ヒヨコさんからヒヨコちゃんに呼び方が変化しているジネット。
気付いているのか、無意識なのか知らんが、相当気に入った様子だ。
だが、甘い。
こいつらは、まだもう一段階可愛くなる。
「でもやっぱり、ヒヨコには触りたいし、なんなら独り占めにしたいだろ?」
「それは……、正直に言えば、……はい、少し、そんな欲望が」
欲望って……
動物にもみくちゃにされたいなんてのは、大抵の動物好きが思い描く夢のシチュエーションだろうが。
そんなシチュエーションを可能にする方法がある。
しかも、小銭が稼げる。
「というわけで、これを用意した」
小さな袋に入れた、アワやヒエ、穀物の実だ。
トウモロコシを荒く砕いた欠片なんかも入っている。
こいつを手のひらに載せて、そっとぴよぴよランドの中に手を入れると――
ぴよぴよぴよぴよ!
「ヒヨコちゃんが集まってきました!?」
「すっごい大人気! いいなぁ、ヤシロ! いいなぁ!」
エサを入れてやれば、警戒心の低いヒヨコは人間の手からエサを食ってくれる。
それも、群がって、四方八方から突っついてくるのだ。
これは楽しいぞ~。
「あ、あのっ、ヤシロさん! わ、わたしも! 出来れば、わたしにも!」
「私もやりたい!」
ジネットは辛抱たまらん様子で、ネフェリーもキラキラした目をしている。
「んじゃ、手のひらを出せ」
「はい!」
「は~い」
ジネット、肩の力抜け。
顔、すごいことになってるぞ。
差し出された二人の手のひらに同じくらいずつエサを載せてやる。
「一緒にやるか? 独占してみるか?」
「えっと……」
逡巡するジネット。
「たぶん、独占できるのは今だけだ」
「ネフェリーさん、お願いがあります!」
「いいよ、ジネット。先にやって」
「ありがとうございましゅ!」
勢いよく頭を下げ過ぎて、ちょっと噛んでやんの。
「あはは。こんな必死なジネット、初めてかも」
「そうか? 割とこうなるぞ、ジネットは」
ベルティーナ曰く、夢中になると周りが見えなくなるらしいから。
「で、では……ヒヨコちゃ~ん、ごはんで――ほにゃぁああああ!? いっぱい来ました!?」
ジネットがエサの載った手を囲いの中に入れると、獰猛な獣がぴよぴよとエサに喰らいつき、むさぼり始めた。
ぴよぴよぴよぴよ!
獰猛に、ぴよぴよ!
「かっ、可愛いです! 可愛過ぎます!」
ジネットの表情筋が、液体になった。
ものすげぇ緩んでる。
「わっ!? 手に! 手に乗ってくれました! あ、こっちも!? え、あなたもですか!? ちょっ、無理ですよ、これ以上は!? あのっ、あぁぁああ、可愛過ぎて止めるなんて出来ません~!」
「すっごい楽しそうだね、ジネット」
「満喫しとるなぁ」
「店長さん、小さい生き物が好きッスからねぇ」
手や腕に飛び乗ってくるヒヨコにビックリしつつも、好きにさせてやっているジネット。
「これ、くちばしは痛くないんッスか?」
「あ、それは大丈夫。えへへ~、それもヤシロのアイデアなんだけどね」
ネフェリーが俺を見て目を細める。
「たまに、ウチの子たちが仲間を突っついちゃうことがあって、それで以前怪我しちゃった子がいて、そしたら、その怪我した子がいろんな子に突っつかれちゃって、隔離しなきゃいけなくなったんだけど――」
ヒヨコは、ストレスを感じると仲間を突っつくことがある。
過密飼育などで一羽当たりの占有スペースが狭くなると、ヒヨコは激しいストレスを感じ、仲間の羽根をむしったり突っついたりと攻撃的になってしまうことがある。
そして、羽がなくなって肌が見えたり血が出たりすると、他のヒヨコがエサと誤認して突っついてしまうことがあるんだ。
赤くて動くから、目についてしまうんだろうな。
「それを防ぐには、熱したコテでくちばしの先をカットしなきゃいけないんだけど……」
「ヒヨコのくちばしには血管も神経も通っているから痛みを感じるし、血が出ることもあるんだ」
「それは……可哀想ッスね」
まぁ、その辺は賛否両論ある部分なんだが、ネフェリーは出来ないって言ってたから、「やった方が他のヒヨコのためだぞ」って説得するのはやめた。
その結果、俺が出した答えが――
「表面がざらざらしたエサ皿を使ってね、くちばしが自然と丸くなるようにしてるの」
「それは……痛くないんッスか?」
「爪をヤスリで整えるようなもんだ。突っつく時に刺さるくらい鋭い部分だけが丸くなっていくから、突っつかれても痛くないぞ。な、ジネット?」
「はい。なんだかくすぐったくて……うふふ、ちょっと気持ちいいです」
日本だと、そこまで丸まることはないとされていたんだが……ここのヒヨコはよほど食い意地が張っているのか、痛みに鈍いヤツが多いのか、「これでもか!」とエサに首を突っ込んでどんどんクチバシが丸まっていってるんだよな。
こいつらくらいたくましいヒヨコなら、クチバシカットしても大丈夫なんじゃねぇかと、俺は秘かに思っている。
「もうちょっと大きくなると、攻撃力が上がるから、その時に突っつき癖のあるヤツはくちばしをカットするんだぞ」
「大丈夫。『ダメよ』って言い聞かせて、大切に育てるから」
ネフェリーは、プロなのかお花畑なのか。
ただ、実際ネフェリーが育てた鶏はしつけが行き届いていて、問題行動を起こす個体が少ないのだとか……マジかよ。
「あっ、ご飯がなくなってしまいました」
「じゃあジネット、交代ね! さ~ぁ、みんな、美味しいご飯だよ~」
ジネットと場所を代わりネフェリーがヒヨコまみれになる。
物凄く楽しそう。
これ、たぶん流行るな。
「で、このエサを、1カップ10Rbで売ればいくらかの収入が見込めるだろう」
「そんなちょっとなの? ぼったくり過ぎじゃないかな?」
カップの中にちょっとだけ入っているエサを見て、ネフェリーが不安そうな顔をする。
原価にすると0.1Rbくらいか?
原価倍率100倍のぼろい商売だ。
粗利率が99%とか、美味し過ぎる!
「これはエサ代というより、触れ合い代だ。1カップにあんまり入れ過ぎると、ヒヨコが満腹になって食いつきが悪くなるし、順番待ちの時間が長くなるぞ?」
「あ、それもそっか」
「ご飯がなくなるのは寂しかったですけど、他にもやりたい人がいるのであれば、独占にならない方がいいですね」
ヒヨコに突かれる楽しさを実感した二人が、納得して頷いている。
「実際、さっき渡したのはこの程度の量だったけど、そこそこ堪能できたろ?」
「そうですね。とても楽しかったです」
「客を一回で満足させちまうともう来なくなるかもしれんが、もうちょっとやりたかったって気持ちで帰せば、またすぐやりに来る。客とはそういう生き物だ」
「言い方に悪意はあるけど、でも、ヤシロの言うとおりね。こっちも商売なんだから、そこはちゃんと理解してもらえるように、私たちからも説明するよ」
「あと、エサの総量をあらかじめ決めておいて、上限に達したら売り切れってことにしておけ」
「食べ過ぎは、体に良くないもんね」
「エサがなくても『上限』って理由があれば納得せざるを得ないし、入場料を払って入ってきた客がそれで納得してくれるなら、次回また入場料を払ってエサやりに来る。入場料一回分儲けられるぞ」
「もう、ヤシロはそういうセコいことばっかり言うんだから。お客さんの満足度が一番でしょう?」
ばか、ネフェリー!
店の利益が一番に決まってんだろうが!
「入場料って必要かな?」
「ルールを守らせたいならな」
無料だと、人は自然とそれを下に見てしまうことがある。
「金を出させることで、ある程度の足切りをすることが可能になる」
無料と有料では、そこに集まる者の品位や民度が若干異なる。
「でもさ、『お金払ったんだから自由にさせろ~』って人も、いるんじゃないかな?」
「そういうヤツは摘まみ出していい」
「素敵やんアベニューのみなさんにもおっしゃっていましたね。ルールを守らない方を注意しないということは、ルールを守ってくれている真面目なお客さんを蔑ろにすることになる――でしたよね」
「そうだ」
いつだったか、誰かに言ったそんな言葉を覚えていたジネット。
だったら、陽だまり亭で傍若無人の限りを尽くしているあの領主どもにキツく言ってやればいいものを。
言うはヤスシ、行うはキヨシってことかねぇ。
……難し、だったっけ?
「とりあえず、常に監視員は置いとけよ。客を信用しているからこそ、監視員を置けるんだって気持ちでな」
「そうだね。悪気がなくて間違ったことしちゃう人も、いるかもしれないしね」
まぁ、そういう解釈もあるな。
「客を締め出すことに抵抗があるなら、見るのはタダ、触るのとエサやりは有料ってことでもいい。そこの特等席に座った者だけがヒヨコと遊べるってな」
「そうだね。走り回ってるところを見てるだけでも、可愛いもんね。うん、それはいいな。そうしようかなぁ」
ネフェリーも、つくづく商売に向いてない。
もっとあくどく金を稼ぐことも出来るってのに。
「ならせめて、ベビカスでもそこら辺で売っとけよ。新鮮卵を使用しましたってな」
「わぁ、それはいいね! うふふ、収入上がっちゃうかも」
こんだけやって上がんなきゃ嘘だろ。
ベビカスを売るのはいいんだな。
締め出すって感じが、たぶんちょっと引っ掛かってんだろう。
引っ掛からなくていいのに。
「簡易氷室と氷を買い込む気概があるなら、ここの卵を使ったアイスクリームを売ってもいいんじゃないか?」
「アイスクリーム!? え、出来るの? ウチで!?」
金属でケースを作って、簡易氷室に入れておいて、氷に塩でも振りかけておけば中はガンガン冷える。
まぁ、翌日への持ち越しは厳しいだろうが、その日売り切れる程度の量を毎朝仕込むなら、おそらくは可能だろう。
小さい氷室でも作っておけば、この街の気候なら深夜から早朝にかけてかなり冷えてくれる。
日中は庫内の氷で保温して、まぁ、なんとかやりくり出来るだろう。
……つか、この街の氷室が俺の知ってるものよりも高性能過ぎて、いまだに驚いてんだが?
普通、氷を入れておいても氷点下にはならない。
氷が徐々に溶けるから、庫内は0度付近になるはずなんだよ。
なのに、ここの氷室は氷点下まで冷える。
原理? 知らん。
あれを作ったウーマロと、アドバイスしたらしいアッスントにでも聞いてくれ。
もしくは、でたらめな天候を操る精霊神にな。
一応、氷室を深く掘るとか、小さく隔離した空間で氷に塩を振るとかすると、氷点下まで下げることは出来るが……どうなってんだかな、あの氷室。
入り口付近は0~10度未満。
奥に行けば氷点下。
氷もじゃんじゃん作れるんだぞ?
理解が及ばねぇよ、この世界の物理法則は。
「新鮮な牛乳と美味しい卵のアイスクリーム……いいね、それ! 今度エステラに相談してみる!」
販売許可は領主の仕事だからな。
「ジネットも手伝ってやれ」
「はい。ぜひ協力させてくださいね、ネフェリーさん」
「うんうん! 頼りにしちゃう!」
すごいはしゃぎようだ。
東側、オシャレな物少ないからなぁ。
「ワッフルコーンでも作って、バニラアイスにカラースプレーでもまぶしておけば『映える』ぞ」
「ワッフルコーンとはなんですか!?」
「カラースプレーってなに? ジネットは作れる?」
「カラースプレーは作れますよ。以前不思議なお菓子の時に作りましたから」
『ねるねるねろーぜ』の時にな。
ワッフルコーンは、フライパンか、ワッフル型の鉄板で焼いた生地を、熱いうちに丸めて作る、アイスの下のコーンだ。円錐の、アレ。食べられるヤツ。
ワッフルで作ると「サクッ」ではないけど、なかなかいい味わいが出る。
「ただし、アイスのケースもワッフルの鉄板も、なんならベビカスの鉄板も、氷室の庫内を覆う金属板も――全部ノーマの仕事になる」
「うわぁ……」
と、ネフェリーの素直な感想が口から漏れ、ジネットが笑った。
けど、やりたいんだろ?
顔に書いてあるぞ。くちばしの横らへんに。
「ごめんくださ~い」
「ごめんなしゃ~い」
ネフェリーが腕を組んでいろいろ考え始めたころ、事務所の方から元気な声が聞こえてきた。
この声は。
「ユナさんとテレサさんですね」
ジネットの表情がぱっと華やぐ。
ちょっと時間をかけ過ぎたのか、様子を見に来られたらしい。
「ちょっとのんびり遊び過ぎたか」
「そうかもしれませんね。わたしがはしゃぎ過ぎてしまいました」
いいんだよ。
そもそも、ジネットがいつも陽だまり亭にいるから、たまには息抜きさせてやろうっていう俺やマグダたちからの気遣いなんだから。
「こっちだ~!」
「あ、はい! あちらですね、行きましょう、テレサ先輩」
「はい!」
そんな声がして、ユナとテレサがやって来る。
「入ってもよろしいでしょうか?」
「うん、いいよ~。入っておいで、ユナ」
「失礼します」
事務所横の大きい門をくぐって、ユナが中に入ってくる。
「わぁ!」
「ひよこー!」
俺たちの向こうでピヨピヨ騒いでいるヒヨコに目が行き、ユナとテレサの表情が明るくなる。
「な、なんですか、これは? とてつもなく可愛いのですが!?」
おぉ、ユナの食いつきがすごい。
可愛いの、好きなんだ。
で、そんな反応をすると、ネフェリーが喜んじゃうぞ。
「分かる!? やっぱりユナっていい子! 大好き!」
「ぅにゃうっ!?」
嬉しさが突き抜けユナに抱きつくネフェリー。
それ、一応ユナへの罰なんだけど。
失敗してないのに罰を与えちゃダメだろうに。
「あ、ごめん、嬉しくて、つい」
「い、いえ。私も、あの……嬉しいですし」
「ヤシロ、大変! ユナが可愛い!」
「ネフェリーって、結構こういうとこあるよな?」
「可愛い女の子がお好きですよね。モリーさんとか」
そうそう。
そういう系が大好物なんだよ、ネフェリー。
他が酷過ぎて、あんま目立ってないけども。
他が酷過ぎるから。
「ねぇ、ユナ、テレサ。手、出して」
ネフェリーに言われて、素直に手を出す二人。
そこにヒヨコのエサを載せて、「じゃあ、その手をこの中にそっと置いてみて」というネフェリーの言葉に素直に従う。
従順だな、こいつら。
「何する気か先に言えよ!」とか、思わないのかねぇ?
「わぁあ!?」
「ぴよぴよ~!」
あっという間に群がられて、手のひらを突かれまくるユナとテレサ。
ユナは最初戸惑ったようだが、すぐに順応し、次第に笑みが広がっていく。
テレサは最初から笑顔全開だ。
っていうか、テレサ。ヒヨコに群がられて「ぴよぴよ~!」って……ハビエルに見せたら吐血じゃすまんな、これは。
「可愛いですねぇ」
「ねぇ~!」
顔を見合わせてえへへと笑う。
それからしばらくして、「もうないです。おしまいです、ほら!」っと空になった手のひらをヒヨコたちに見せつけて証明するユナ。
ヒヨコ相手にそこまで律義にならんでも。
なんにせよ、このぴよぴよランドは成功するだろうってことが、この二人の笑顔ではっきりした。
じゃ、あとは、アイスとベビカスと、オリジナルのヒヨコグッズだな。
ハンドクリームポーチとか売っとけばいい。
バニラアイスを売るなら、バニラの香りのリップとかな。
そういうこじつけでも、案外客は喜んで買っていくから、アッスントと相談していろいろ作るといいぞ。
これで、少しくらいは東側も盛り上がるだろう。
「はぁ……楽しかったです」
ユナが、ほわ~っとした顔をしている。
物凄く癒されたようだ。
「お遣いご苦労さんだな」
「いえ。マグダ先輩がお気遣いくださったんです。ゆっくりと四十二区を散歩してくるようにと」
「俺たちへの伝言は? ぼちぼち帰ってこいって?」
「あっ、そうでした!」
慌てた様子でカバンからメモ帳を取り出し、伝言を読み上げる。
「えっと、ノーマ様が起きてこられて、ドライ屋と温度計について話を詰めたいとおっしゃっておりまして、ヤシロさんがお戻りになるまで陽だまり亭にて、カクテルの練習をしながら待っていると」
「なに!? 急いで戻らねば!?」
「――と、そのように言われるであろうと、マグダ先輩が予測されておりまして、その場合は以下のように伝えるよう仰せつかっています。『ふふふ、残念。もう揺れない振り方を教えた』」
「ちきしょー!」
「……あの、ノーマ様は、ヤシロさんがお姉さんに振り方を教えた時もその場におられましたので、最初からご存じだったようでしたが……」
「これもヤシロさんたちのお遊びなんですよ。ただ、ヤシロさんは悪い子でしたので、あとで懺悔してください」
「なぜだ!?」
揺れるシェイカーも見ていないというのに!?
「お姉さんは、ヤシロさんのことをなんでもご存じなんですね」
「そんなことは……、でもヤシロさんは素直な方なので、割と分かりやすい方ですよ」
おいおい、ジネット。
風評被害もいいとこだぞ。
このポーカーフェイス界の王者、キングポーカーフェイスである俺が、分かりやすいわけないだろう?
「それと、ユナ。ノーマ様はやめてやれ」
「ですが、シャワーを作ったとてもすごい方ですし」
「本人が嫌がるぞ。いや、へこんで面倒くさいことになるぞ」
「そう……なのでしょうか?」
「まぁ、ノーマお姉ちゃんとでも呼んでやればいい」
「そんな呼び方…………えっと、ご本人様に確認してみます」
確認したら、きっとそう呼ぶことになるだろうな。
いや、さすがにお姉ちゃんは拒否られるか?
でも、ノーマだからなぁ。
「ところで、ドライ屋ってなんッスか、ヤシロさん?」
「あぁ、まぁ時間がある時に説明してやるよ」
「あるッス! オイラも陽だまり亭に戻って、マグダたんの可愛い編み込みに祈りを捧げに行くッス!」
なに、お前ヒマなの?
いろいろ建ててほしいものとかあるのを、遠慮してたんだけど?
「じゃあ、道すがら説明するとして――ネフェリー、時間があるなら陽だまり亭でワッフルコーンでも試作してみるか?」
「わぁ! いいね! やりたい! お邪魔してもいいかな、ジネット?」
「もちろん、歓迎しますよ」
「じゃあ、そこらの妹を捕まえて、ロレッタにカラースプレーを作っといてもらうか」
あれ、地味に乾燥させるの大変だし。
「ストックが少しならあると思いますよ」
「いつ作ったんだ?」
「ホットミルクに浮かべてあげると、マグダさんがとても喜んでくださいますので、つい」
「商品用じゃねぇのかよ……」
身内を甘やかすために食材を使うとは……
いや、まぁ別に悪いことじゃないけども。
「それじゃあ、それを使わせてもらってもいいか?」
「はい。基本はアイスクリームなんですよね?」
「あぁ。アイスを、もっとしっかりとした固いクレープにのっけて食べるってイメージだな」
「それは楽しそうですね」
アイスは、今んとこ陽だまり亭でしか出してないから、器に盛りつけてスプーンで食うのがスタンダードになっている。
ここらでコーンを登場させてもいいだろう。
アイスを丸く掬い取るスクーパーはあるし、ちょちょっと改良するだけで見た目がぐっと華やかになる。
単純なんだよ、消費者なんてもんは。
「それじゃあ、一回ヒヨコたちをお家に返してくるね。先に行ってて」
「ん、じゃあまた後でな」
「うん!」
と、ネフェリーが鶏舎の方へ駆けていく。
「待っていてあげないんですか?」
ユナがそんなことを聞いてくる。
おそらくマグダやノーマに「そこまで急がなくていい」とか言われてここに来てるのだろう。
だが、ネフェリーは待たない。
「たぶん、軽く体を洗って、服を着替えてくるだろうから、俺らが待ってるとプレッシャーになるだろ?」
「そうですね。ネフェリーさんはとてもオシャレさんですから、準備をしっかりとしたいはずです。わたしたちは先に戻って、ゆっくりと待っているくらいがちょうどいいですね」
「なるほど……お二人とも、さすがです」
そんな驚くほどのことじゃない。
緊急事態でもない限り、それぞれの歩調で生きてりゃいいんだよ、人間なんてもんは。
「ウーマロのペースに合わせろとか言われたら、俺でも死ぬ」
「ヤシロさんッスよ、このペースを調整してるのは」
お前が無節操に仕事を引き受けるからだろうが。
イヤなら断ればいいじゃねぇか。
「イヤじゃないから困ってるんッスよ」
やははと、困ったような顔で笑う。
これ!
この顔!
この顔が、なんか、ちょっと女子の間で人気出始めてるんだと!
ウーマロが、女子にガツガツしてないからって、優しい穏やかな人みたいな印象でさ!
照れ屋で可愛いとか!
あり得なくね!?
「ウーマロのは照れ屋じゃなくて病気だし、こいつは案外精神論、根性論のパワハラ上司なんだぞー!」
「どこに向かって発せられてる悪口ッスか……まぁ、否定は出来ないッスけども」
よくよく見るとヒドイヤツなんだから。
そこんとこ、理解しとけよ、女子!
ちなみに、俺はめっちゃいい男☆
「ヤシロさんの方が、おモテになっていると思うんですが……」
「ヤシロさんは、そういうお遊びが好きな方なんですよ」
遊びじゃない!
戦争だ!
「あ、そうだ。ユナ、ちょっとそこで待ってろ」
養鶏場を出て少し行った先。
細い道の傍に生える草むらの中に腕を突っ込む。
ガサガサ――お、捕まえた。
「ユナ、これがパーシーだ」
「ちょっ、あんちゃん、なにすんだし!? 首掴むなって、マジで!?」
「ひっ!?」
草むらから男が出て来て、ユナが悲鳴を上げる。
なんて素直な感情表現。
よく見とけ、パーシー。
今のが、一般的な女子の反応だからな?
陽だまり亭にたむろしている変態耐性のある女子連中が、特殊なんだぞ?
「今日も暇そうだな」
「仕事の合間を縫って来てんだって、マジで!」
合間に来れる距離じゃねぇだろうが。
「モリーがまた家出するかもなぁ」
「しねぇーし! しても行き先陽だまり亭だから安心だし!」
安心すんな、妹の家出を。
「ところでパーシー。養鶏場のぴよぴよランドは知ってるな?」
「あれ、マジいいな! めっちゃ可愛かったよ、マジで!」
お前が可愛いって言ってんのは、ぴよぴよランドを喜んでたネフェリーが、だろうが。
そこじゃねぇんだよ、主役は。
「そこでな、アイスクリームを売ることになりそうなんだ」
「アイス? 陽だまり亭の? モリーが毎日のように食べたい食べたい言ってるヤツか?」
モリー……自制はしろよ。
食いに来てもいいけども。
「ガキがヒヨコを触って遊んでる時、引率の親は暇だろ? そこで、ママさん好みの甘いスイーツを売っておけば売れるだろ」
「なるほどね~。で?」
察しの悪い。
スイーツだっつってんだろうが。
砂糖寄越せや。
まぁいい。
これを言えば、砂糖は使い放題になる。
「近くの農場の新鮮なミルクと、ネフェリーのところの美味い卵を使ったネフェリーアイスだ。そのアイスに甘みを与えるのは――?」
「ウチの砂糖しかねぇって、マジで!」
「じゃあ、牧場と養鶏場と砂糖工場のコラボ商品だな」
「お、オレとネフェリーさんのコラボ商品……!?」
牧場が完全に削除されたな、こいつの中で。
「砂糖、好きなだけ使ってくれし!」
「んじゃ、試食会に来るか?」
「行く!」
「砂糖は?」
「取ってくる!」
と、猛ダッシュで帰っていくパーシー。
「……モリーが付いてきそうだな」
「でしたら、たくさん用意しておかなければいけませんね」
ジネットよ。
またモリーにダイエットさせる気か?
ハロウィン前に合宿するのが定番になりそうだな、このままじゃ。
「あの……先ほどの方は……」
「砂糖工場の、一応工場長だ。実際は妹が全権を握っているけどな」
「えっと……なぜ、草むらに?」
「環境がいいんじゃないか?」
「えっと…………艶のいい草、ですね?」
いいんだぞ、ユナ。
そんな、なんでもかんでも無理やり褒めなくて。
「あいつの思考回路だけは、理解できないッスね」
「お前もきっとそう思われてるぞ」
「いやいや、オイラはただ純粋にマグダたん一筋なだけッスから」
あいつもネフェリー一筋らしいぞ、どうやら。
こんなパーシーと背中合わせなウーマロが、ほのかに人気がある事実は、やはり認められない。
ウーマロの病気を、もっと大々的に宣伝しなければな。
俺たちの戦いは、まだこれからだ。
そんな決意の中、俺は陽だまり亭へ戻った。
あとがき
祝! 500話!
\(≧▽≦)/
思えば随分と遠くへ来たものです
皆様と共に歩み続けて十数年
積み重ねてきた時間の重みを、改めて感じます
一体、本編中、何度『おっぱい』と言ったのでしょう
何度揺れたのでしょう
何バウンドしたのでしょう
( ̄▽ ̄)積み重ねた歴史!
本当にありがとうございます!
というわけで、ヒヨコ回です(笑)
Σ(゜Д゜;) 500話目にやることか!?
なんならもう、ヒヨコ書き過ぎて
『500話』って書きたいのに、変換候補の最初が
『500羽』になっちゃうくらいのヒヨコ回です☆
当初の予定では、この辺で四幕終わる予定だったので、
最初だけまとめっぽい始まり方をしてみました☆
もしかしたら、そのまま勢いでまとまるかとも思ったんですが、まぁ、まとまりませんでしたよね(^^;
というわけで、四幕、まだまだ続きます
まぁ、言うても
こんな面倒な始まり方をして100話で終わるなんて思ってなかったですよ、私もね☆
異世界詐欺師といえば、150話ですよ
150話でひとまとまりなわけですよ、むふふん☆
……絶対あと50話では終わらない
(・_・;
まぁ、話数は気にせず思う存分書かせていただきます
一体、四幕がどこまで続くのか、それは神のみぞ知る☆
一幕のころは、毎日書いて出して、書いて出してってしてたんですよね
もう、勢いで書いて、あとがき書いて、公開して、感想返しもその日のうちにして
Σ(゜Д゜;)めっちゃ書いてたな!?
強かったですねぇ一幕のころは
だって、何を書いても矛盾とか破綻とかしないんですもの
全部が初登場の設定で、
全キャラが初登場で、
過去も未来も作り放題、書き放題☆
今は、過去のデータを確認するのにかなり時間使いますからねぇ
(^^;
ヤシロのことをなんて呼んでいたのかってだけでも、いちいち調べないと……
そしてまぁ、後日譚とか追想編とかやって、第二幕に入ったんですが
二幕は確か一ヶ月分くらいですかね?
ストックをしてから始めたんですね
それでもやっぱりストックがどんどんなくなり、終盤は書いて出しになり
なんとか破綻することなく100話書いて二幕が終わったような、そんな気がします
それ以降、かなりがっつりとストックを作ってから新章を始めるようになったんですが
まぁ、毎回後半はストックがなくなって、書いては公開、書いては公開という感じになってますね
それもこれも、
予定にない寄り道が多いせいで!
……すんません(・▽・;)
で、三幕くらいからですかね
日常回はめっちゃいっぱい書けることに気が付きまして(笑)
ジネットの料理のように、やればやるほど体力が回復していくという効能が発見されまして
四幕ではフル活用です☆
(≧▽≦)/
おかげさまで、休載というか、公開一時停止みたいな事態には陥らずに続けられております
あぁ、そういえば一幕の時も「忙しくなったら挿話!」ってやってたましたね
物語を押し進めるパワーはないけども、日常回でまったりと公開することは出来る!
って、昔からやってたようです
Σ(゜Д゜;) 変わってない!?
そんな綱渡りでも、500話までやってこられました
それもひとえに、一緒に楽しんでくださる読者の皆様、
執筆に協力してくれるオフラインの同士
そしておっぱいのおかげです!
ありがとうございます!
すべての読者様と、すべてのおっぱいに感謝を
\(*´▽`*)/
500話という節目でヒヨコ回とか書いておりますが(笑)
今後とも、こんな感じで、少しでも皆様に楽しんでいただけるヤシロたちの物語を書き続けていきたいと思います
改めまして、
感謝の気持ちと共に、
今後ますますの御贔屓とお引き立てのほど、よろしくお願いいたします
一緒になって楽しんでいただけると最高に幸せです
ここまで、ずっとありがとうございます!
ここから、またよろしくお願いいたします!
宮地拓海




