492話 朝の異変
翌朝。
「こほっ、こほっ……」
目が覚めてみると、風邪を引いていた――
「あ~、こらアカンな。たぶん熱出てくるわ。今日は一日おとなしゅう寝とり」
「ですが……こほっ、こほっ……今日から、お仕事をすると、お約束が……」
――ユナが。
「まぁ、シャワー浴びて、船乗って、遠出して、環境変わって、のぼせるまで風呂に入って、そのあと夜遅くまでゲームしてりゃ、風邪くらい引くわな」
「へ、平気です! お掃除、させていただきますね!」
「て~い」
「ぁう……っ」
とん、っと肩を押せば、そのまま力なく床にへたり込んだ。
抗う力もないらしい。
「すみません……朝寝坊したのみならず、このような……」
朝寝坊といっても、起きてきたらすでに俺たちが働いていたってだけだ。
こっちはいつもの時間に寄付に行って戻ってきている。
ユナが寝坊したってわけじゃない。
そもそも、何時に起きろとも言ってないし。
けどまぁ、そうか。
明日から頑張るってことで昨日は散々飯を食わせたわけで……ユナにしてみたら、相当焦ってるだろうな、今。
やり方をミスったか。
「すまん、ユナ。夜遅くまで付き合わせた俺のせいだ。だから、あんま気にするな」
「い、いえ! とても楽しかったです! ですので……ぁの、謝らないで、いただきたい、です。昨日の楽しい時間まで、否定されるような気がして……」
「それ、俺が言ったヤツじゃねぇか」
「はい。……今になって、あの時のヤシロさんの気持ちが分かりました」
へにゃりと、力なく笑うユナ。
時刻は朝。
開店前だが教会への寄付はもう終わっている。
すでに勢揃いしている陽だまり亭一同が、どうしたもんかとユナを見る。
「あの、どんなことでもいいので、働かせてください」
と言われてもなぁ。
「……ユナ。気持ちは分かるけれど、ここは食堂。病人がフロアに出ると、お客に伝染すかもしれない。それはダメ」
「そうですよ。何も今すぐじゃなくても、元気になってから頑張ってくれればいいですよ。あたしも、ちょっと失敗してお店に立てないくらい体調崩しちゃったことがあったですから」
無茶なダイエットした時だな。
「……その節は、本当にご迷惑をおかけして……マグダっちょにも申し訳なかったです」
そこでお前が萎れてどうする。
体調を崩したことで先輩がへこんだら、後輩は「自分はもっとへこまなきゃ!」ってなるだろうが。
「お気持ち、お察しします、ユナ姉様」
カンパニュラがユナの前に進み出て、ユナの手を取り握る。両手で、包み込むように。
「自分が何の役にも立てていないというのが、おつらいんですよね。分かります。私も、長らく同じような心苦しさを抱えていましたから」
カンパニュラは、両親のやってる川漁ギルドでは戦力になれていなかった。
それを、ずっと負い目に感じていたのだ。
「だからこそ、今だけはぐっとこらえて、体調を戻すことに専念してください。健康になったら、きっと姉様は陽だまり亭にとってかけがえのない戦力になります。どうか、今だけは、この小さな先輩の言葉を信じて療養を取ってください。でないと、ジネット姉様やヤーくんが心配してしまいます」
自分も共感できる心苦しさ。
それを飲み込むことのつらさも分かるのだろう。
カンパニュラが泣きそうな顔で訴える。
酷なことを言っていると承知の上で。
「ゆーにゃ、しんどい、め、ょ? むり、ない、よ?」
「テレサ先輩……」
そこは「ちゃん」とかでいいんじゃないかな?
律義だな、ユナも。
「お気持ちは、嬉しいのですが、私はまだ何もお返しできていません。その上こんなご迷惑をおかけして、さらなる厚意に甘えるのは……」
「じゃあまぁ、仕事させるか」
「お兄ちゃん!?」
「……無理はよくない」
「ユナ姉様のお気持ちも、つらさも分かりますが、体のつらさは我慢させてはいけないのではありませんか?」
「えーゆーしゃ、やさしい、しよ? ね?」
テレサよ。
俺が他人に優しくすると思うか?
飯を食った分を働いて返したいと本人が言ってるんだから、働かせてやればいいんだよ。
無理するのはユナだし。
それで陽だまり亭に利益があれば万々歳じゃねぇか。
「相当ツライ仕事になるが、覚悟はいいな?」
「は、はい!」
「どんな仕事でも文句言わないな?」
「はい!」
「途中で投げ出したり、出来ませんとか、やりませんとか、イヤです、とか、でもとかだってとか、言わないな?」
「はい! どのような仕事でも、誠心誠意、全力で取り組ませていただきます! 約束を違えた時には、『精霊の審判』をかけてくださっても構いません!」
凄まじい意気込みだ。
……が、それはよくない。
「ならまず、あんまりほいほい『精霊の審判』を持ち出すな」
「ぇ……ぁの……ですが、私には、それくらいしか、差し出せるものがありませんので……」
信用の担保となるものが、自分の命しかないと思っているのかユナは。
だから、何かある度に『精霊の審判』を持ち出していたのか。
「陽だまり亭で働く間は、『精霊の審判』を信用の担保にすることを禁じる。急な欠員が出ると、他の人間に迷惑がかかるからな。いいな?」
「は…………はぃ」
自分の意見を通せる唯一の武器を封じられて、不安そうなユナ。
心配せんでも、ここにいる間にいくらでも代わりは見つかる。
なにせここは、この国一番のお人好しが責任者をやってるんだから。
「よしじゃあ、陽だまり亭でかなり重要な、もしかしたら、最も重要と言っても過言ではないかもしれない、す~~~~んごく重要な仕事をやってもらおう。これは、マグダもロレッタもカンパニュラもテレサも経験してきた仕事だ。新人には少々難しいかもしれんが、最後までやり通せるな?」
「は……はい!」
「よし、じゃあ、場所を変えるぞ。マグダ、ユナが階段から落ちないように付き添ってやれ」
「……どこへ?」
「俺の部屋だ」
「………………なるほど」
「え、なんです? マグダっちょ、どんな仕事するか分かったです?」
「……ヒントは、この匂い」
「匂いですか?」
「あっ、なるほど! それは確かに重要なお仕事ですね!」
「かにぱんしゃ、わかった、の?」
「はい。耳を貸してください」
「まって! かんがぇる……」
ロレッタとテレサが頭をひねる中、俺たちは厨房へ入る。
すると、かまどの前でジネットが――おそらく全部聞こえていたのだろうけれど――「しぃ~」っと、人差し指を唇に当てていた。
ジネットの前には土鍋が。
「あぁ、なるほどです!」
「ゎかった!」
「んじゃ、ロレッタとテレサで部屋を整えてきてくれ」
「了解です! 行くですよ、テレサーにゃ!」
「ぁい!」
しゅばっと駆け出し、二階へ向かうロレッタとテレサ。
「……さっぱり分からへん」
「ふふ。レジーナさんもやったことがあるお仕事ですよ」
と、ジネットがレジーナに耳打ちして、レジーナが「あぁ~、なるほど。それかぃな」と納得する。
そして俺へ視線を向けて――
「さすが、この国一番のお人好しが居るお店やねぇ~」
とか言いやがった。
お前の隣に立ってるヤツに言ってやれ、そういうのは。
「……ユナ、足元に気を付けて」
「は、はい。……お手数おかけしてすみません、マグダ先輩」
「……いい。手間ではないから」
マグダに付き添われ、ユナがゆっくりと二階へと上がる。
俺たちも後に続いて二階に入ると――
「あ、もうちょっと待ってです! 今、運んでるですから!」
ロレッタが、まだ寝ているルシアを簀巻きにして抱えてマグダの部屋へ移動させていた。
俺の部屋で寝てたのかよ、領主一同……
「おふとん、でちた、ょ!」
俺の部屋からテレサが顔を出す。
その後ろから、眠たそうなエステラが廊下を覗き込んでくる。
「なに? トラブル?」
「ユナが風邪を引いてな」
「えっ!? 大変じゃないか! 横になりなよ」
「いや、仕事をさせる」
「なにも、体調の悪い時にそんなことさせなくてもさぁ……」
「本人の意思だ」
心配そうなエステラを押しのけ、ユナを連れて部屋に入る。
そして、マグダとカンパニュラによって、ユナがベッドに寝かされる。
「あれ? ……ぇ?」
「さぁ、ユナ。お前はどんな仕事も、最後までやり切る自信はあるか?」
「は……はい? いえ、はい! あります!」
「よろしい。では、ジネット。難しい仕事を、頼む」
「はい」
言って、土鍋を載せたお盆を持って、ジネットが部屋に入ってくる。
「風邪によく効く、薬膳料理というものを作ってみました。この料理の味見と、効果の確認をお願いします」
「あじみ……ですか?」
「はい。実際食べてみて、美味しいかどうか。量は適切か。食べにくくはないか。他にこういうプラスワンがあると嬉しいなとか、これは邪魔だなと思うところを率直に言ってください。これは食堂にとって欠かすことが出来ない大切なお仕事です。みなさん、経験されてますよね?」
「はいです!」
「私の意見も、採用されたことがあるのですよ」
「……我々店員が手を抜くと、お客に手を抜いた料理が提供されることになる。一切の妥協をせずに取り組むべき」
「だいじな、おしごと、ょ!」
「ぇ……っとぉ、つまり、これを食べれば、いいんですか?」
「はい。そして今回は薬膳の効果を確認したいので、食事の後安静にしてどれくらいで具合がよくなったかを報告してください。結果が出るまでじれったいかもしれませんが、他の方法では測れない重要なお仕事だと思って、我慢して体を回復させてくださいね」
「ぇっとぉ……」
まぁ、つまり。
温かいオジヤを食って、風邪が治るまで寝てろってことだ。
「それは、確かに重要な仕事だよね」
「せやな。薬学でも、治験者はものっすごい重要で必要なもんやし、ユナ、大役、しっかりこなすんやで」
「ぇっと…………ですが、これは仕事をしているとは言えないような……」
「ユナ、約束を忘れたか? 『でも』や『だって』は禁止だぞ?」
「はぅ…………そう、でした」
「『どんな仕事でも』『最後までやり切る』んだよな?」
「は、はい……」
「じゃあ、『どんな』簡単な『仕事でも』、最後までやり切れ」
言いながら、頭をぽふっと押さえつける。
お前の反論は聞かないというポーズだ。
「先生……あの……」
「ここはな、こういうとこやねん。今日はウチがずっとそばにおったるさかい、おとなしく言ぅこと聞いとき」
「………………はぃ。ぁの……すみま…………ありがとうございます」
ユナが観念し、俺の部屋で療養することになった。
レジーナが付いていてくれるなら安心だろう。
んじゃ、こっちはこっちで、開店準備でも始めますかね。
俺の部屋を出ると、「何事だ、朝から騒々しい……」と、髪の毛を爆発させたルシアが廊下に出てくる。
どうなってんだ、お前の頭。
「昨日はギルベルタが浮かれておったのでな、乾かしが足りんかったのだろう」
「朝風呂入って整え直すか?」
「いや、それには及ばぬ。ギルベルタが起きてきたら整えてもらう」
今日の給仕長はみんな寝坊している。
なんでも、事前に今日は休みだと言われていたらしい。
それで、ナタリアやイネスはちょっと酒が入っていたのか。
……よかったよ、フロアでナタリア流の『部屋着』にならなくて。
「ギルベルタも、結構遅くまで起きてたからな」
「うむ。今朝は、なるべくそっとしておいてやってくれ」
自分の身だしなみよりも、給仕長の休息を優先させる。
実に貴族らしくない発想だ。
「エステラさん、ルシアさん。朝食はどうされますか?」
「あ、食べる。下におりるね」
「うむ、私もいただこう」
いや、エステラはともかく、ルシアはその頭でフロアに来る気かよ。
ぼちぼち、気の早い客は店に来るぞ?
「ジネット、脱衣所でこいつらの髪をやってやるから、準備を頼んでいいか?」
「そうですね。では、厨房は任せてください。カンパニュラさんとテレサさんで脱衣所の準備をお願いしますね」
「承りました」
「うけまたたきまぃま!」
テレサが退化している……
カンパニュラも笑ってる。
勢いだけはよかったからなぁ。
そして、幼い足音が二つ、階段を駆け下りていく。
「別に、貴様にやってもらわずとも……」
「ギルベルタが何かを察知して起きてきたらどうする。いいからやられとけ」
「……うむぅ。エステラも道連れだぞ」
「はいはい」
あからさまに照れているルシアを見て、エステラが笑っている。
エステラは、いろんなヤツに髪梳かしてもらってるから平気だもんな。
ちなみに、脱衣所の準備、なんてものはない。
椅子を置いてブラシでもあればそれで事足りる。
だが、ジネットに言って許可をもらわないと、脱衣所に男女が一緒に入るのはマズいのだ。
……いろいろあったからな、あの脱衣所は。
中から施錠も出来ちゃうし。
なので、ジネットの許可を取り、ジネットが選んだ者が脱衣所の中に同席することで、「やましいことなんか何もないですよ~」という保証とする。
俺が独断したことではなく、家主のジネットが許可して人員まで派遣したということが重要になってくるわけだ。
まぁ、やることは変わんないんだけどな。
やたらと貴族が押し寄せてくるから、いろいろ大変なんだよ、こっちも。
「……ヤシロは上手だから、任せておくといい」
「お兄ちゃん、メイクも上手なんですよ」
「なんで出来るのだ、貴様が? 夜な夜な女装でもして街を徘徊してるのか?」
してるか。
美容は、金になる。
金になるならマスターするでしょう、普通!
「綺麗になるためなら、金に糸目をつけない女性が多かったからなぁ、俺の故郷には」
「そのような不純な動機で身に付けた技術を使われたくないのだが?」
「ツインテールにしてやろうか?」
「やめんか」
ハロウィンの時、楽しそうだったじゃねぇかよ。
「今日一日遊んでいくんだろ? だったら、普段しないような格好で過ごしてみたらどうだ? そこらの町娘みたいな素朴な服でよ」
「レジむぅのベティ・メイプルベアのような感じか?」
アレのどこが町娘だ。
アニメの世界かコスプレ会場にしかいないわ、あんな格好したヤツ。
「貴様に頼むと、バカの一つ覚えのようにツインテールにするのであろうが」
「舐めんなよ、ご令嬢? お前のそのもはもは頭を、可憐に可愛く仕上げてやろうか?」
「面白い。では、ヒツジの服屋を呼んでそれに合う服を見繕ってもらうとしよう」
「お買い上げありがとうございます」
「ウクリネス!?」
ルシアの言葉を聞きつけて瞬間移動してきたのか、ウクリネスが陽だまり亭の二階にいた。
……めっちゃビビった。
「ユナちゃんにお出かけ用のお洋服とかどうかなと思ってお持ちしたんですが、体調を崩されたんですってね? それでお見舞いをと思って、カンパニュラちゃんに通してもらったんです」
下に行ったカンパニュラが通したらしい。
にしても、タイミングのいい。
「ヤシロちゃん、どのようなイメージで仕上げる予定ですか?」
「とりあえず、町娘系かな」
「分かりました、町娘の初デートですね」
「待つのだ、ウクリネスよ。『初デート』などというワードは誰も口にしておらぬぞ!?」
「ですが……ねぇ? ヤシロちゃん」
「そうだな、ウクリネス……任せとけ」
「貴様も、何を了承しておる、カタクチイワシ!? 固い握手を交わすな!」
ズビシッ! ――と、俺とウクリネスの握手にチョップを落としてくるルシア。
「じゃあ、エステラさんとトレーシーさんも、それに合わせましょうね」
「えっ、ボクも!?」
「エステラ様との初デートですね! 喜んで!」
驚くエステラと、ポジティブなトレーシー。
じゃあ、向こうはお揃いにしとくか?
「エステラ、ちょっといいか?」
「へ? なに?」
無防備に近付いてきたエステラの襟足を指ですくう。
「ぅひゃああ!? な、なにさ、急に!?」
首筋が弱いのか、「んばっ!」と、バックステップで逃げていくエステラ。
「ジネット、エビフライが食べたい」
「ボクの何を見て、何を思い出してるのさ!?」
いや、真っ赤になってバックステップするから。
「ちょっと髪伸びたな、エステラ」
「え……あ、まぁ、そう……かな?」
と、自身の襟足を触るエステラ。
「……短い方が、いい?」
「どっちも似合うよ、お前なら」
「…………っまた、そういうことを、平然と……」
だから、前にも言ったろうが。
俺が、長い方がいいとか短い方が似合うとか言ったら、お前はそれに固執しちまうんだから。
案外自分に自信がないんだよな、エステラは。
好きなように、好きな格好をすればいいのに。
なので、俺は何がいいとか悪いとかは言わない。
ただし、これだけは言っておこう!
「見せパン、へそ出し、キャミソールもきっと似合うぞ☆」
「絶対参考にしない」
似合うって言ってるのに、なびかない!?
あれ、俺が思ってる以上に意思の固い系女子!?
「トレーシーとお揃いでもいいか?」
「えっ? ……無理じゃない?」
髪の長さが全然違うからな。
でも、揃えることは可能だ。
よし、コンセプトは決まった。
まかせとけ。
ばっちり町娘にしてやる。
「……ヤシロ、メイクは?」
「今日は無しだな」
「ば、ばかもの! メイクなしで表になど出られるか、タワケイワシ!」
何言ってんだよ。
町娘がばっちり領主メイクなんかしてたら、おかしいだろうが。
つーか今、まさにノーメイクで男の前に立ってんだろうが、お前。
「だいじょ~ぶ、だいじょ~ぶ、可愛くしてやるから」
「私には拒否する権利があるのだぞ」
「マグダ」
「……しょぼん」
「ズルいぞ、カタクチイワシ!」
効果は抜群だ。
「ところで、ルシア。酒はどうだ? 頭が痛かったり、胸がムカムカしたりしないか?」
「今は貴様にムカムカしておるが、酒の影響はまったくない」
「ジネット、効果が証明されたぞ」
「やっぱり、足つぼはすごいですね!」
「違うよ、ヤシロ! ルシアさんはもともと、翌日にお酒を引き摺らない人なんだよ!」
なんで俺に言うんだよ。
ジネットに言えよ。
そしたら「もっと検証が必要ですね」ってことになるだろうけどな。
まぁ、俺に言っても同じ道をたどることになるけどな。
「そっかぁ、じゃあもうちょっと検証を――」
「さぁヤシロ! 早くルシアさんを町娘にしようじゃないか!」
「エステラ、そなた!?」
「じゃあ、エステラとトレーシーはジネットと一緒に厨房で待っ――」
「ボクたちも町娘にしてほしいなぁ~! ねぇ、トレーシーさん!」
「もちろんです! 今日は町娘として、四十二区を堪能したい気分です! さぁ、行きましょう! 密室の脱衣所へ! ささ、お早く! しっかりと施錠しましょう!」
ちょっと煽れば、エステラとトレーシーがルシアを抱えて階段を駆け下りていった。
どんだけ怖いんだ、ジネットの足つぼが。
「よかったな、ルシアの酒が残ってなくて」
「はい。今日もお酒を飲まれるのでしたら、いつでも言ってくださいね」
悪意のない笑顔を振りまいて、ジネットは弾むような足取りで階段を下りていった。
廊下には、俺の足にしがみ付くマグダと、俺の背に身を隠すロレッタと、そんな二人を守り切った俺だけが残った。
そんな言うほどひどくないんだけどなぁ、ジネットの足つぼも。
脱衣所に入り、ルシアを椅子に座らせて、俺はクシを片手にその背後に立つ。
「んじゃ、いくぞ」
「いちいち言わずともよい。……さっさとやれ」
とか言われたので、さっと髪を掴んでクシを通す。
「ぅひゃぁあああ!? きゅ、きゅうになにをすりゅ!?」
「お前が言ったんだろうが、さっさとやれって」
「ぞ、ぞわぞわさせずにやれ!」
そんなもんは、俺のあずかり知らない領域の話だよ。
あらかじめ「この辺弱いから、気を付けてね」とか言っとけ、じゃあ。
「言えるか、そのようなこと!?」
「ヤシロ、言えないよ、それは……」
「エステラ様、私は、実は耳が……」
「言わなくていいですから、トレーシーさん」
ジネットの足つぼから避難してきたこっちの領主二人も、どっちがいいかを天秤にかけて、俺に髪を触らせる方を選んでいる。
まぁ、もたもたしてる時間はないし、さっさとやってさっさと終わらせよう。
「しかし、めちゃくちゃ絡まってんな、お前の髪」
「痛くしたら、極刑だぞ、ブサホウイワシ」
不作法イワシだと思ってるなら、痛くされる覚悟くらいしとけ。
「いきなりクシだと、髪が切れるな。最初は手で行くぞ」
「え、いや、待てかたくちいわぁあぁああああああ!?」
おでこの方から両手の指を髪の中に滑り込ませ、頭蓋骨に添うように後頭部へと髪を流す。
クレームを入れていたルシアの背中がざわざわざわっと震え、奇怪な声が漏れてきた。
「い、いきなりなにをすりゅ!?」
「いきなりじゃねぇだろ、もはや」
さっきからずっと、髪を梳かすつってんだろうが。
で、何をするか逐一教えてやってんだろうに。
「しばらく指で髪をほぐすから、面白い声は漏らすなよ」
「誰が面白い声など漏らすきゃ!?」
さっきからずっと噛みっぱなしなんだよ、語尾。
厳めしい顔も、ほっぺが真っ赤だから全然威厳がない。
後頭部から首周りにかけての髪が群雄割拠の合戦さながら、強過ぎる自己主張をしている。
絶対にまとまるまいという強い意志を持った毛先。
逆に死んでも離れまいと絡み合う髪束。
やっぱ、ちゃんと乾かさずに寝ると、こうなっちまうよなぁ。
ドライヤーがあれば、もうちょっとなんとかなるんだろうがなぁ。
「ん…………ふ、……むぅ……きゅ……っ」
髪を梳く度にちょっと漏れるルシアの鳴き声。
小鳥か、お前は。
「よし、大分まとまったな」
「うむ、ご苦労」
「こっからだっつーのに」
席を立とうとしたルシアの肩を持って、強制的に着席させる。
「しゅ、淑女の肩に、気安く触れるな、スケコマイワシ!」
スケコマシにイワシを混ぜんじゃねぇよ、分かりにくい。
あと、別にコマシてねぇわ。
「折角もはもは頭になっているから、編み込みをしてやろう」
「折角って……好きでこうなっているわけではないわ」
ルシアは、いっつもツヤツヤの、シルクのような髪をしている。
編み込みとかしたことなさそうなんだよな。
折角髪が長いんだから、いろいろと遊んでみればいい。
というわけで、ルシアの髪を三つ編みにして、くるっとまとめて、サイドアップにしてみた。
頭のサイドに編み込みがあり、左側にツイストパンみたいな感じで髪の束を作り、そこから髪を肩口に垂らしてある。
ジネットっぽい髪型だが、後ろから見るとちゃんと編み込みが見えて、かなりガーリーな仕上がりになっている。
「わぁ、可愛いですよ、ルシアさん」
「はい。幼く見えます」
「ぅぐっ……その誉め言葉は微妙だぞ、トレーシー」
仕上がりを見て盛り上がるエステラとトレーシー。
エステラが鏡を持ち、ルシアに仕上がりを見せる。
「後ろが見えぬのがもどかしいな。何かごちょごちょやっておったであろう? カタクチイワシが」
「すごく可愛く編み込まれてますよ」
「はい。我が区のわらじ名人の編むわらじのように繊細な模様です」
「だから、トレーシー! それは誉め言葉なのか、微妙だというのに!」
トレーシーって、語彙力ないのかな?
あ、エステラに全語彙力を注ぎ込んでるの?
へー、そーなんだー、すげーどーでもいー。
「鏡が二枚あれば見えるから、ウクリネスが来たら確認してくれ」
どうせ、デッカい鏡持ってくるから、あのおばちゃん。
「じゃあ、次はトレーシーな」
「えぇ~、ボクが最後?」
「お前を先に可愛くしたら、トレーシーが取れなくなるだろうが」
「……分かりたくないけど、容易に想像がつくね、それは」
というわけで、先にトレーシーの髪を整える。
サイドアップでもいいのだが、全員同じ髪型ってのも芸がない。
エステラとトレーシーは髪の長さが異なるので、お揃いにしても雰囲気が大きく変わる。
トレーシーとルシアは被るからな。
「トレーシー、髪触るぞ」
「は、はい……」
声をひっくり返らせて、カチコチに緊張しているトレーシー。
「な、なんだか、緊張しますね、男性に髪を触られるというのは」
「俺は男性にカウントしなくていいぞ」
「そういうわけにはいきません。……オオバヤシロさんは、すごい方ですから」
俺なんぞでも緊張するらしい。
割とひどい扱いをしてきた自覚はあるんだが、なんか、今でもまだ敬意を持って接してくれてる気がする。
リカルドやゲラーシーがすっかりと忘れ去りやがった、相手への敬意というものを。
「トレーシーは、真っ当な領主だなぁ……」
「比較対象がリカルドやゲラーシーだったら、みんなその評価になるよ」
いやいや。
ルシアは、いいとこトントンだろう。
美女ボーナスで、かろうじて連中の上にいるだけで。
「トレーシーは、美女ボーナスと巨乳ボーナスがあるから、無条件で優遇されるよな」
「君基準の時だけだよ、そんな優遇が発生するのは」
「エステラは、美女ボーナスが巨乳ボーナスで相殺されちまうからさぁ……もったいない」
「誰の巨乳ボーナスがマイナスなのさ!?」
折角のボーナスがなぁ……
「というか、カタクチイワシよ……よくも面と向かってレディに美女だなんだと言えるな。歯が浮きそうだ」
「お前らは、美人だからな。そこを否定する理由はない」
そんなもん、この街の連中が全員知っていることだ。
「その優位性をもってしても見下げ果ててしまう結果になるって、相当だから、反省しろよお前ら」
「そっくりそのまま、熨斗付けて叩き返すよ、ヤシロ」
「どれだけ功績を積もうと、結果見下げ果てた評価になるおのれを省みろ、チチスキイワシ」
乳好きイワシで何が悪い!?
俺は、自分を偽らず、堂々と生きているのだ!
「あ、あの……もうそろそろ、よろしいのでは?」
「ん? あぁ、すまん。撫で過ぎたな」
しゃべりながらやってたから、トレーシーの髪をずっと梳かし続けていた。
触り心地いんだもんよ、だって。
「ずっと撫でていたくなる髪だな」
「い、いえっ、あの……恐縮です」
おぉ、珍しい。
トレーシーがまともに赤くなった。
「女子みたいだ!?」
「女子なんだよ、トレーシーさんは」
「いやでも、お前にくっついてる時の顔ときたら……」
「それは、ほら……病気だから」
そっかぁ。
病気じゃ仕方ないなぁ……とはならないからな?
許容すんなよ、そんなとこ。
「貴様はほとほと器用だな」
しゃべりながらも、トレーシーの髪を編み込んでいた俺の手元を見て、ルシアが関心を通り越して呆れたように言う。
通り越してんじゃねぇよ。
「トレーシーはサイドを三つ編みにして、ハーフアップにしておく」
髪が長いので、後頭部で小さいお団子を作って、後ろの長さを調整しておく。
これくらいの方が、髪が軽く見えるだろう。
「んじゃ、エステラ」
「う、うん……」
なに緊張してんだ、お前は?
「だって、……ルシアさんもトレーシーさんも、なんか、照れてたから」
「男に髪を触られるのに慣れてないだけだろう」
「ボクも慣れてないけどね」
どこに対する反発だ、それは。
「じゃあ、触るぞ」
「う、うん……お手柔らかにね」
「『胸柔らかに』だったら、どんなによかったか……」
「うるさいよ、さっさとやりなよ、お腹空いてるんだよ、ボクは」
ちょっと緊張していた可愛げのある表情をかき消して、「すん」っとした無表情を鏡越しに向けてくるエステラ。
へいへい。
そんじゃ髪に触りますよっと。
なでなで。
「ただ撫でてるだけじゃないか!? 梳かしなよ!」
いや、別に、梳かす必要もないくらい整ってたんで。
「ルシアにやったヤツ、やってやろうか?」
「いや、いい! いらない!」
とか言うエステラのおでこから指を髪の中へ滑り込ませて、後頭部へ髪を流す。
「ぅひゃぁああああ!?」
これ、ぞわぞわするんだよなぁ。
細い棒が並んで円になってる、ヘッドマッサージャーみたいに。
俺は結構あのヘッドマーサージャーが好きだ。
『ぞわ気持ちいい』から。
「……いらないって、言ったのにぃ」
まぁ、エステラちゃん、お耳が真っ赤。
「タコなら食いごろだな」
「誰がタコさ! もう、あとで懺悔だからね」
それは、監視員のカンパニュラとテレサの意見次第だな。
「ボクもトレーシーさんと同じ髪型にするんだっけ? 出来るの?」
「ショート用のハーフアップってのがあるんだよ」
エステラは、ショートカットだがそこそこ髪が長い。
最近はちょっと伸びてきているしな。
なので、小さい三つ編みくらいは出来る。
少し編み込んで、後頭部に小さいお団子を作って、まとめた髪の毛を「くるりんぱっ」とねじってやれば――
「ほい、ショートカットのハーフアップだ」
「素敵ですエステラ様!」
光速で、トレーシーが抱きついた。
すごい破壊力。
「へぇ~……こんなヘアアレンジもあるんだぁ」
「今度ナタリアに教えといてやるよ」
「たぶん、これを見て独学でマスターすると思うよ。……うん、ナタリアが好きそう、こういうの」
「やるのがか、見るのがか?」
「ボクにやるのが、かな」
子供のころから、髪をやってもらってたんだろうなってのがよく分かる。
結構気に入ったようで、エステラはいろいろな角度で鏡を覗き込んでいた。
「カンパニュラとテレサもやってやろうか?」
「よろしいのですか?」
「ぃいの!?」
「あぁ、その代わり――ルシアとエステラの悲鳴は、ただの事故だったということに……」
「買収するんじゃないよ、こんな幼気な少女たちを」
「ふふ。悪意がなかったことは、証明させていただきます。『ただのイタズラでしたよ』と」
それ、地味に懺悔喰らいそうなラインだなぁ……
よし、カンパニュラとテレサをめっちゃ可愛く仕上げてやろう。
「まぁ! 素晴らしいですね! はい、交代です!」
脱衣所を出ると、ウクリネスがいて、でっかい荷物を抱えて俺と入れ替わりに脱衣所へと突入していった。
あぁ、エステラたち、まだまだ飯にはありつけないんだろうな。
「あ、ヤシロさん。いかがでしたか?」
「ウクリネスが食いつくくらいの出来栄えにはなったぞ」
「そうですか」
厨房に入ると、ジネットが笑顔で出迎えてくれる。
くすくすと笑うジネット。
ジネットの向こうには給仕長が勢揃いしていた。
「起きてきたのか」
「起きていました。ただ、我々がいないという理由でヤシロ様とイチャつくかと放置していたのですが、案の上でしたね」
何してんのナタリア?
陽だまり亭、絶対安全領域じゃないからな?
あ、何かあったら飛び出して絶対に間に合うポジションで待機してたの?
あ、そー。
「おはようと挨拶する、私は、友達のヤシロに」
「おう、ギルベルタ、おはよ……すごい頭だな」
「ぬかりない、甘えのために」
ギルベルタの頭は、ルシア以上にもはもはしていた。
いやいや、お前、それわざともはっとさせただろ?
「何をもってわざとと定義するのか、によりますね」
「甘えがそこにあるというのであれば、これは必然とも言えます」
と、頭もっはもはのイネスとデボラがすまし顔で立っている。
すまし顔でボンバーヘッドって、かなり面白くなってるぞお前ら。
初対面の『BU』会談の時にそれだったら、好感度爆上がりしてただろうってくらいに。
「まぁ、もはもはしてしまっているのですから仕方ないですね、ここは整えていただかないと」
「って、さっきまで綺麗にセットされてた髪がなぜかもはもはになっているようだが、ナタリア?」
「人生とは、何が起こるか分からないものですね」
まったくだよ。
なんで給仕長がみんなしてこうなっちまったのか、それはきっと精霊神にも分からねぇだろうよ。
「脱衣所は使えないから、ここですることになるぞ?」
今は領主連中が着替え中で、俺は入れないから。
「厨房で髪を整えるのは、不衛生ではないですか?」
「まぁ、この一角は大丈夫だ」
たまにマグダの髪をやってるし、書類関係がある場所で、小さい机があってちょっとした事務が出来る場所だ。
ついでに、祖父さんの隠し扉付き戸棚のある場所でもある。
「ただ、鏡はないぞ」
「大丈夫です」
「我々くらいになれば」
「触れている指の動きで」
「推測できる、どのような髪型になったのかが」
「そうなのか、すげぇな、ネネ!?」
「い、いえっ、私には無理です!」
一人、もはもはに参加していないネネに話を振る。
やっぱ、お前は出来ないのか。
ある意味、個性がすごいな、ネネ。
給仕長に囲まれてるのに、ずっと普通。
秀でた才能の開花が一切ない。
「ロレッタの普通キャラもここまでかなぁ」
「ちょっと待ってです! 普通キャラになった覚えはないですけど、そう言われるとちょっと負けたくない気がしてきたです!」
とかなんとか叫びながら、ロレッタがフロアから飛び込んでくる。
「って、みんなどうしたですか、その頭!? さっきまで綺麗に整ってたですよね!?」
「突風が吹くと、髪がこうなることがありますよね」
「厨房に突風は吹かないですよ!?」
「えぇ、ですから、こうなることがありますよねという、世間話です」
「脈絡がなさ過ぎて、ややこしいですよ!?」
返しが普通だなぁ、相変わらず。
「ロレッタ。お前がナンバーワンだ」
「なんか嬉しくないです、そのナンバーワン! ネネさん、もっと頑張ってです!」
「え、えっと、なにを、でしょうか?」
おろおろするネネ。
「普通を頑張れ」ってよ。
「じゃあ、まずはネネからな」
「えっ!? 私はもはもはしていませんが?」
「みんな、自分の主にやってやりたくて、手元見たいんだってよ」
「我々は一度見れば覚えられますが、ネネさんは無理でしょうから、この後四連続独占でご覧ください」
「いえ、事実ですけど、ぶっ刺してこないでください、ナタリアさん!?」
「我々は仲良く見学させていただきます」
「ご協力をお願いしますね、ネネさん」
「いや、あなた方の主は男性ですよね、イネスさん、デボラさん!? 編み込みするんですか!?」
「いいなぁ、思う、私は。待ち遠しい、自分の順番が」
「無邪気で可愛いですね、ギルベルタさん!? 抱きしめますよ!?」
は~い、ネネ。お前も壊れ始めてるから、落ち着け。
「ネネも、結構髪長いな」
「……ショートヘアが似合いませんので」
「そんなことないと思うけどな」
「数年前、バッサリと髪を切ったとき、給仕全員から『六歳児のようだ』と……」
あぁ、顔が幼いから子供っぽく見えるのか。
それは分かるな。
とはいえ、そこまで器用ではないからトレーシーほど髪を伸ばすと仕事に支障が出る。
んで、この長さなのか。
「それじゃ、ちょっと大人っぽく、アップでまとめてみるか」
今回は領主連中が編み込みしてるんで、給仕長も編み込んでみよう。
身分差とか考慮すると、一段回落としたヘアアレンジにするべきなんだろうが、今日はいいや。領主を埋没させ、町娘化計画を完成させてやる。
「ほい、完成。どうだ?」
「く……くすぐったかったです」
おやぁ?
気付いたら、ネネの顔が真っ赤だった。
「ネネ、彼氏とかいたことないのか?」
「あ、ありませんよっ!? そんなの……出会いもないですし」
「ちなみに、どんな男が好みなんだ?」
「そ、そんな、好みなんて……あ、でも、一緒にピクニックに行ってくれるような優しい人がいいです」
「手作り弁当持ってか?」
「はい。それで、一緒に原っぱで食べて、『おいしいね』とか言ってくれたら、もう……うきゅっ!」
「「「「かわヨ!」」」と抱きしめる、私は」
「ぅひゃぁああ!?」
ギルベルタがネネにしがみ付いた。
「す、すみません、今のはちょっと、口が滑って……あ、あのっ、忘れてください!」
「ネネさん」
「な、なんでしょうか、ナタリアさんっ?」
「ハム摩呂さんという男性がいまして――」
「勧めんな」
絶対ピクニック行ってくれるけども。
「うははーい!」ってお弁当食うけども!
「ネネさんはお料理が出来るんですね」
「いえ……それが、まったく」
「ダメじゃん」
イネス~?
ばっさり切り捨てないであげて。
この子、そういう子なんだよ。
案外、なんも出来ないの。
トレーシーからの好感度だけで給仕長やってる子だから。
「今度教える、私は、かわヨのネネに、お料理を」
お前は、おにぎりを鈍器みたいに固く握るような腕前だろ、ギルベルタ?
教えるな。そして広めるな。
「じゃあ、次はギルベルタやるか?」
「お願いしたい、私は」
ネネがどいた椅子に、ギルベルタが座る。
「友達のヤシロ、私は」
椅子に座るなり、こちらも見ずにギルベルタが言う。
「何がだ?」
「好きな男性のタイプ」
「そうかい」
「そう」
「んじゃ、とびっきりサービスして可愛くしてやるよ」
「嬉しい思う、私は」
にこにこと、無邪気に笑うギルベルタ。
まぁ、『友達の』だしな。
深い意味はないのだろう。
よくも悪くもまっすぐなギルベルタらしい発想だ。
「私もコメツキ様です」
「では私もコメツキ様で」
「サービスを引き出す合言葉じゃないから、それ」
「○○の番組見ました」で割引してくれる、町の洋食屋とかじゃないんで、ウチ。
「ずっと、お慕い申し上げております、ヤシロ様」
「面白がらないでくれるか、ナタリア」
「ですので、なでなでを多めにお願いします」
「希望する、私も、それを。多めが嬉しい思う、なでなでは」
「へいへい」
「では、私もなでなで大盛りでお願いします。好きですので」
「めちゃラブなでなで」
「だぁ、うっさい! 今ギルベルタやってるから、もうちょい待ってろ!」
で、デボラ。
お前のは「なでなでが好き」って意味になってるから!
「うふふ……」
こちらの惨状を見て、ジネットが料理をしながら肩を揺らす。
「ジネット」
笑ってんじゃねぇよ、と視線を向けると、ジネットはこちらを向いてにっこりと微笑み――
「わたしも、ヤシロさんが好きですよ」
――と、言ってきた。
それを催促したわけじゃねぇよ……
なでなですんぞ、お前も。
……ったく。
あとがき
あなたのハートにチェックメイト☆宮地です。
……ふむ、ダサい。
やはり今は、国内回帰!
日本こそが世界の最先端!(って言ってる人をこの前見たので信じてみる!)
というわけで、
あなたのハートに王手飛車取り☆宮地です。
うん、そーゆーことじゃないらしい。
難しいですね、カッコイイって
どうも!
母親に「可愛い」と言われて以降、基本褒められていない、宮地です
……世界が全員母親なら、ちやほやされたのでしょうか?
(・_・;
エステラやルシアがオシャレして、可愛く変身です☆
……ヤシロ、完全に別カテゴリーに入れられてますよね?
貴族令嬢の髪の毛撫でまくりですよ、あの男?
(・_・;
けどまぁ、オシャレして街をうろつく領主たちが見られるので良しとしましょう☆
というわけで、
ルシアたちを連れて四十二区を歩くので、ユナには一時退場していただきました☆
風邪です
というか、
私なら、これだけ環境が変わって、テンション上がって
見たことないもの体験しまくったら、絶対寝込むな~と思いまして。
ユナもきっとそのタイプ。
気を遣い過ぎる人は、きっとそうなっちゃうんですよ
分かる、分かる。
うん( ̄▽ ̄)うん
ユナの四十二区体験は、風邪が治ってから、です☆
ユナ、
陽だまり亭最初のお仕事は、味見(笑)
あとは薬膳の効果調査ですかね
ベッドの寝心地調査も出来れば、住環境が改善されるかもしれません。
放っておくと焦って休まないだろうから、
近くにレジーナを置いておきます
レジーナ係も担当です
それが一番重要かもしれません。
きっとこの日、陽だまり亭の下ネタ率は下がるでしょう。
平和だ……(*´▽`*)
それはそうと、
前日にめっちゃはしゃいで、翌朝体調崩した時の罪悪感、
あれ、なんなんでしょうね?
(^^;
やってもぅたなぁ~!
っていう「あいたたたぁ」感
味わったことがある方も多いのではないでしょうか?
そういえば、修学旅行の二日目に熱出してたヤツいましたっけね?
長崎に行って、二日目は現地学習だったんですけど、その間ずっと旅館で寝てたヤツがいて
……正直、ちょっとうらやましかったり
いえ、雨だったんですよ
かなりすごい雨で、お土産屋さんの紙袋が雨で濡れて、突風で煽られて、持ち手の紐のところから「ビリー!」って破れて、カステラ「ころんころんころ~ん!」ってオランダ坂を転げ落ちていって……散々だったんですよ、その時の私。
いや、あれは班別自由行動の時でしたっけ?
とりあえず、部屋で寝てたかったなぁ~って思ったものでした
いや、実際寝てたヤツはつまんなかったって泣いてましたけども
そりゃそうですよね
どんなに大変でも苦労しても、旅先の思い出って大切ですよね
うんうん
にしても、
箱潰れて、濡れて、中身ぐっちゃぐちゃのカステラを食べた時は悲しかったですけどね!
自分用に6本買ったんですよ。
プレーンとチョコと抹茶を2本ずつ!
……めっちゃ重かったです
プラス、家族用に各1本ずつ買って、
ご近所さんに頼まれてたのも1本買って
計10本持ってグラバー園とかオランダ坂とか歩いて、路面電車乗って、
雨で紙袋破れて、現地の見知らぬお家に飛び込んで「ごめんなさい、ガムテープ貸してください!」ってお願いしたら
「そんなんじゃ無理よ!? ほら、このポリ袋あげるから!」って、持ち手の付いたナイロン袋をいただいて
……長崎の人、神(*´▽`*)
って感動した思い出があります。
一応、ぐちゃぐちゃになったのは自分用にしましたよ?
一瞬、家族用にしようかとも過ぎったんですが……まぁ、自分用でいいかと。
ちなみに、6本の自分用の内、2本は現地で消費してきております☆
( ̄▽ ̄)
クラスメイトに食われたなぁ~
盗賊ですよ、連中は!(笑)
悪ノリする男子、便乗する女子!
まったく、とんでもない連中です
(*´ω`*)楽しかったなぁ~修学旅行
そういえば、現地に行くまで
長崎ちゃんぽんのこと、
長崎皿うどんと勘違いしてましたっけねぇ
ぱりぱりの麺にあんをかけて食べるインスタントのがあったんですよ
あれが出てくるんだと思ったら、なんか太い麺のラーメンみたいなのが出て来て
当時、あんかけ系が苦手で、なんとかお子様ランチにしてくれないかと
同じ班の人間と訴えたんですが却下され、
学校指定の食堂しか使っちゃダメで、その店にはちゃんぽんとお子様ランチしかなかったんですよ。
で、仕方なくちゃんぽん食べたら
めっちゃ美味しくて!
あんかけ、美味いじゃん!? って
一瞬で寝返りましたね
ただ、めっちゃ量が多くて、
夕飯、一切食べられませんでしたけども!
懐かしい……(*´ω`*)
また行きたいですねぇ、長崎
この次こそ――
前日に張り切り過ぎて、現地に着いた翌日に熱を出してお部屋で寝て過ごすんだ☆
Σ(゜Д゜;)いや、無駄過ぎる!?
いつか訪れたい街トップ10に刻んでおきますね、長崎
次回もよろしくお願いいたします
宮地拓海




