357話 共犯者たち
寄付を終え陽だまり亭に戻ると、レジーナがハンドクリームの『試作品』を大量に作ってくれていた。
今ここにいる女子たち全員に一個ずつ配れるくらいの数だ。
「これから研究するさかいに、要望あったら遠慮のぅ言ぅてや。入れもんも今は適当なもんやし、こんなんがえぇとか。些細なことでも、言ぅた方が結果えぇもんが出来るさかいな」
レジーナの言葉に、一同は元気のいい返事をする。
「これで十分だよ~」というのは進歩のためにはよくないとしっかり理解してもらえたようだ。
「絶対条件として、口に入れても安全なもの。燃えにくいもの。ガキが誤って口に入れないような容器。その辺はクリアしてくれ」
「まぁ、そこら辺は当然やな」
「すごい、ヤシロ。そんなのがすぐに思い浮かぶんだね」
パウラが感心しているが、そこは最低ラインだ。
「こういうのは、家事を頑張る母親こそ欲しいもんだろ? だが、母親の手についてるものは、小さいガキの口に入る可能性が高い」
「確かにねぇ。ヤシロって、よくそーゆー女性目線のこと気付けるよね」
そりゃあ、一番お金を落としてくれるのがその層だからな。
「ついでに言えば、男連中が仕事に専念できるのは家と子供を守ってくれている最愛の妻のおかげだよな? そんな妻を労うことを躊躇うような夫は男じゃないだろう。何より、愛する妻にはいつまでも綺麗でいてもらいたい。そうだろう!? ――という煽り文句で、『妻への感謝を込めて、ハンドクリームをプレゼントしませんか』的なキャンペーンをすれば、確実に売れる!」
自主的に「そうだな。プレゼントしよう!」ってヤツにも、「わ~、こんなキャンペーンやってるんだぁ、いいなぁ~、欲しいなぁ~」という妻からのプレッシャーに耐えかねたヤツにも、どちらにも売れる!
「……訂正。ヤシロは、どこまで行っても商売人目線なんだよね」
「まーな」
いまいち感心されていない気がする。
主婦層以外に刺さる宣伝文句もあるんだぞ?
「ちなみに、『綺麗な手で、大好きなあの人と手を繋ごう』――なんてキャンペーンを組めば、若い女子たちにも売れる」
「うっ……それは、ズルいよ」
パウラの頬がぽっと染まる。
心に刺さったらしい。
「『すべさら素肌で思わず繋ぎたくなる手へ』とかどうだ?」
「あぁーもう! 買うわよ! 買えばいいんでしょ!」
試作品を握りしめ、パウラがきゃんきゃん吠える。
ただ、尻尾がわっさわっさ揺れているので、浮かれているようだ。
「カタクチイワシ。このハンドクリームをハム摩呂たんの全身に塗りたくったら、思わず抱きしめたくなるだろうか?」
「塗りたくらなくても、隙あらば抱きしめようとしてんじゃねぇか、お前」
「では逆に、私の全身に塗りたくれば!?」
「ギルベルタからきつめのおしおきが科されるだろうな」
「……くぅっ、ままならぬ!」
ハンドクリームはハンドに使うに留めとけ。
「ミリィ。いろいろ片付いたらハンドクリームの香りについて相談したい。その時には、ラベンダー以外でも香りのいい花があったら教えてくれ」
「ぅん。今日、森に行っていろいろ探してみる、ね」
「パウラ、ネフェリー。お前らもミリィを手伝ってやってくれないか? オシャレ女子代表として意見を聞かせてほしい」
「あたしたちが代表でいいの!?」
「分かった。手伝う。絶対人気の商品になる匂い見つけるんだから!」
喜ぶパウラに張り切るネフェリー。
……とりあえず、ニワトリのニオイとかはやめてくれよ。
「あたい、ホットケーキの匂いがいい!」
「バニラならあるが、……デリア、自分の手を食うなよ?」
「食うわけないだろう、ヤシロ!?」
「……いや、デリアなら分かんないよね?」
「ありそう……だって、デリアだもん」
「なんだよ!? 酷いぞ、お前ら!」
パウラとネフェリーも俺に賛同してくれるようだ。
デリアの場合、疲れた時に、ふと自分の手からバニラの甘い香りがしたら……まぁ、齧りつくだろうな。
痛みを覚えるまで、何回か怪我をしそうだ。
「ノーマ。ホットケーキをもっと可愛くするためにひと工夫したいんだが」
「金型かぃね!?」
「あぁ、そうだ。まん丸いフォルムで、ネコの形とか、ヒヨコの形とか魚の形とか作れないかな?」
「出来るさね!」
「可愛くなり過ぎて、食えなくならない範囲でな」
「くふふふ……、ホットケーキが可愛過ぎて食べられなくなるなんて、ヤシロ、なかなか可愛いことを言うさねぇ」
いや、だから!
お前らがな!
蒸し返さないけど、俺忘れてないからな! 大食い大会の四回戦!
ウサギさんリンゴを食べる俺を見る会場中の人間の目と表情!
いろいろ余計な感情が付随しかねないから蒸し返さないけれども!
「……そういうことなら、ネコ型がいいと思われる。トラっぽければさらに可愛い」
「いやいや、待ってよマグダ! ここはヒヨコじゃない? 絶対可愛いから!」
「でもでも~、ネコもヒヨコも食べられないんだし~、ここはやっぱりお魚が一番だと思うけどなぁ~☆」
わぁ。
各種に応援団が付いた。
ネコ推しのマグダ。
ヒヨコと魚は言うまでもなくネフェリーとマーシャだ。
「待ってよ、マーシャ。魚ならたい焼きがあるじゃない」
「ホットケーキは別腹☆」
いや、めっちゃ同じ空間に収容されるよ。
甘い物の中でもジャンルで胃を使い分けるって、どんだけ胃袋持ってんだよ。牛か。
「じゃあ、ノーマの腕にかかってくるな。一番可愛いヤツを商品化しよう」
「……ノーマ。今日から合宿。完璧なネコ型が出来るまで眠れないと覚悟して」
「私も参加するからね、その合宿!」
「え~……私、明日用事あるのにぃ~☆」
「じゃあ、魚は確定でいいか」
「わ~い、ヤシロ君やっさしぃ~☆」
「あっ、ズルいよヤシロ! そんなにホタテが好き!?」
「……ネフェリー、それは愚問。聞くまでもなく、ヤシロは、ホタテが、好き」
そんな強調しながら言わんでも。
まぁ、好きだけど。
つか、明日の予定については、今ここで触れられたくないんだよ。
だからマーシャを黙らせた。
「ウーマロ、ベッコ。港の仕上げ、よろしくな」
「はいッス! もうほぼ出来上がってるッスから、ニュータウンの工事はいったん保留して、港に全力投球ッス!」
「拙者も、洞窟内の飾りを任された故、張り切って汗を流してくるでござる!」
「デリア。そんなわけで四十二区がバタバタするから、カンパニュラと陽だまり亭を頼む」
「おう、任せとけ! どんな怪しいヤツが紛れ込んできても、あたいが全部ぶっ飛ばしてやる!」
……全部ぶっ飛ばすのは危険だなぁ。
怪しい領主とかギルド長が、結構四十二区に入り込んでくるからなぁ。
「じゃあ、今日と明日、俺とエステラはちょっと忙しくなるから、四十二区のことはお前らに任せたぞ」
「おぅ! あたいに任せとけ!」
「あたしたちも頑張るよ! 最近、イヤな貴族とかがウロウロしてて『あたしたちの四十二区を引っ掻き回さないで!』って頭に来てたところだもん」
「うん。四十二区は、私たちみんなで守るよ。ね、ミリィも」
「ぅん。……みりぃに何が出来るか分かんないけど……でも、大好きな四十二区のためだから!」
「心配ないさね。不届き者は――アタシがまとめて始末してやるさね」
盛り上がる面々を、エステラが嬉しそうな顔で見つめている。
ちょっと泣きそうになってるな。
「みんな……ありがと。ボクたちも、きっちりとケジメが付けられるように頑張ってくるよ」
「任せたよ、エステラ。ヤシロ!」
パウラの声に、全員の視線がこちらを向く。
二種類の視線。
一つは、パウラが言うように「任せたぞ」という期待のこもった視線。
そしてもう一つは――
「まぁ、ワタクシたちはワタクシたちのなすべきことをいたしましょう。ここにいる全員、いいえ、四十二区の全員でこの街を守りますのよ」
――イメルダのように、もう一歩踏み込んだ事情を知る者たちからの視線。
俺とエステラは明日、『ウィシャート邸へ再度話し合いに行く』ということになっている。
というか、俺がそう思い込ませるように全員の前で説明をした。
「今度こそ、しっかり話をつけてきてやる」ってな。
だが、ごく一部の者たちだけは知っている。
明日は話し合いなどではなく――
ウィシャートを叩き潰しに行くのだと。
しくじれば、俺はカエルだろう。
命を失う可能性は、まぁ、さほどない。頼もしい助っ人が大勢いるからな。
その助っ人の一人、ハビエルの娘であるイメルダは詳細を知る者の中に入っている。
俺がしくじり、すべてが裏目に出れば、ハビエルにも少なくない被害を及ぼしてしまう危険があるからだ。
小さな可能性も包み隠さずすべて話した。
最悪の場合、爵位を剥奪されることもあり得ると。
それを分かった上で「任せろ」と言ってくれたハビエルには感謝だな。
ハビエルだけではなく、メドラやマーシャ、そしてルシアにデミリー、マーゥルにドニス。
ついでに、リカルドとゲラーシーも入れてやろう。
トレーシーに関しては、エステラのために動くわけだから、責任は俺よりもエステラに比重がかかっているはずだ。
うまくやってやる。
でなければ、数日後にはこうして笑えなくなってしまう。
とんでもなくリスクの高い賭けだ。
だが、俺たちはベットした。
譲れないリターンのために。
その渦中に、エステラを叩き込むことになるとしても。
「……エステラ」
イメルダに煽られて気勢を上げ盛り上がる一同を見つめながら、小声でエステラを呼ぶ。
「お前には、礼を言わねぇぞ」
一番危険な場所へ連れ出し、誰よりも重い負荷をかけるとしても。
「ふふ、当然じゃないか、ヤシロ。だって――」
俺たちは互いに礼など述べたりしない。
「ボクと君は、共犯だからね」
エステラの拳が俺の胸を叩く。
そして、今朝とは見違えるほどの頼もしい笑みを見せた。
いい顔をしやがる。
だから、俺もお返しだとエステラの胸を叩こうとしたら光速で捕らえられた。
ナタリアにイメルダにノーマにマグダ……
くぅ……どさくさって、どうやったら紛れられるんだろう。
「マーシャ。頼んでおいたものって、今日中に手に入るか?」
「うん。今朝港に届くようにお願いしておいたから、取りに行けばきっともうあるよ☆」
「では、私が行ってまいります」
「あぁ、待てナタリア。マグダ、ロレッタ。たぶん大荷物になるからナタリアを手伝ってやってくれ」
「……任された」
「大船に乗ったつもりでお任せです!」
「あ、じゃ~ねぇ。店長さん、紙とペン貸して~」
「はい。少々お待ちください」
ジネットがカウンターから紙とペンを持ってくる。
そこへ、マーシャがさらさら~っと文字を書き、最後にサインを付ける。
まるでイラストのような、可愛らしいサインだ。
「このマークを見せれば、私からの手紙だってすぐ分かるからね。あ、それでね――」
「ご心配なく。マーシャさんのマークは他の誰にもお見せいたしません」
「うん。さっすがナタリアちゃん。話が分かるね~☆」
マークを見られて悪用されると一大事だ。
コピーでもされたらまたマークを変えなければいけなくなるし、発覚するまでマーシャの名を騙って好き勝手される恐れもある。
きっと、俺らにも見せないようなものなのだろうな、本来は。
少なからず、俺たちのことは信用してくれているようだ。
「このマークは、私の一族しか使っちゃいけないものだから~、ヤシロ君、君なら完璧にコピー出来ちゃいそうだけれど……無断使用したら、責任、取ってもらうからね☆」
その責任って、娘をキズモノにした時と同じ責任の取り方だよな?
全然信用されてない。物凄ぇデッカイ釘を刺されちまったな、おい。
マーシャの一族に加われば、そのマーク使っていいんだもんな。うんうん、理に適ってるよ、その責任の取り方。
絶対使わねぇ。
「マーシャの一族になったら、俺もホタテで隠すのかぁ……厳しいなぁ」
「何を言っているんだい、君は?」
「エステラの言う通りだ。貴様など、アサリで充分であろう」
「何を言っているんですか、ルシアさん!? ボクはそんな話はしてないですよ!?」
「ん? カタクチイワシに乳はないのだから、アサリで十分であろう?」
「ぐ…………あ、あぁ~……ですよねぇ」
「あれあれぇ? エステラは、何を隠すと思ったのかなぁ~☆」
「と、とにかく! ヤシロはマーシャの一族のマークを悪用しないように!」
しねぇよ。
するなんて言ってないだろうに。
あと、……アサリじゃ無理だっつの。
ほら貝持ってこい、ほら貝。
「では、荷物を受け取ってまいります、ヤシロ様。脳内桃色タイフーン様」
「誰が脳内桃色タイフーンさ!?」
「……行ってくる、ヤシロ。エロス大明神様」
「エロス大明神でもない!」
「行ってくるです! お兄ちゃん! エステラさん!」
「その並びで言われると、ボクの名前がエロスの代名詞みたいでイヤな感じだよ!」
「あたし、普通に挨拶したですのに!?」
エステラの被害妄想が加速している。
この街では「レジーナ」が下ネタの、「エステラ」が思春期の代名詞になる。うん、きっとなる。
「ジネット。これからちょっとレジーナの家に行ってくる。ナタリアたちが戻ったら、魚を三枚におろしといてくれるか?」
「あ、お荷物って海魚なんですね」
「あぁ。俺が戻ったらにぎり寿司を教えてやる。港の完成まで時間はないが、存分に練習してくれ」
「はい! 楽しみにしています!」
魚の処理はジネットに任せておけば間違いないだろう。
酢飯も作っておいてもらおうか。手巻き寿司で作ったことがあるからやり方も知ってるし。
「ねぇねぇ、ヤシロ君。魚を捌くなら私もお手伝いできるよ☆」
「えっとマーシャは……」
エステラに視線を向ける。
「夕方にメドラさんたちと話し合いをするから、それまでは自由にしててもらっていいんじゃないかな?」
「じゃあ、にぎり寿司もやってみるか?」
「わ~い、お料理~☆」
おにぎりがうまかったマーシャなら、にぎり寿司もそこそこいいものが出来るだろう。
「それじゃあ、みんな。各々よろしく頼む」
「おう、任せとけ! 陽だまり亭は、あたいとカンパニュラたちで守ってやる。な?」
「はい。お店のお手伝いはお任せください。ヤーくんとエステラ姉様は、ご自身のなすべきことに集中してください」
「おてちゅらい、すゅー!」
あぁ、いかんいかん。
留守にすることが不安になっているようだ。口数が増えてるな、俺。
自分一人で出来りゃ、こんな不安を覚えることなんかないんだろうが……
今回のことに関しては、他人に任せなきゃいけな部分が多い。
何より、「知らないうちに解決してた」では済まされない連中が割といる。
俺が一人で勝手やって、事後報告――じゃあ、納得しないだろうしな。
中間管理職みたいでヤだねぇ。
実行は他人任せで、責任だけ全部自分が引き受ける。
胃がひっくり返りそうだ。
だが、それを乗り越えていかなきゃいけないんだよな。
俺ではなく、エステラたちが過去にケジメをつけるために。
そして、こいつも――
「レジーナ。協力してくれるな?」
「なにやらされるんか、まだ聞いてへんけど……ま、ふわふわ系女子に変装せぇっちゅう無茶振りをも乗り越えたウチや。大抵のことやったらやったげるで」
レジーナが嫌がるかもしれない頼り方になるが、早期解決のために利用させてもらう。
「エングリンドの名を貸してほしい」
「…………」
レジーナの瞳の色が深くなる。
おそらく、バオクリエアにいる間中ついて回ったであろう『エングリンド』の名。
その名のせいで一目を置かれ。
その名のせいで貴族に目を付けられ。
その名のせいでいろいろとつらい目にも遭ってきたのだろう。
レジーナがバオクリエアで最新鋭の研究に携われたのは、エングリンドの名のおかげであるのかもしれないが、その恩恵以上にエングリンドの名はレジーナに不利益をもたらせたはずだ。
どこまで行ってもついて回るエングリンドの名。
それを嫌って、レジーナは国を出たのかもしれない。
だが、今回はそのエングリンドの名を貸してもらう。
これ以上ない説得力のために。
「……まぁ、同じ利用されるにしても、楽しい結末に結びつくやり方の方が何十倍もえぇわな」
「おぅ。お前が喜びそうな結末を見せてやるよ」
命の危機にも、誰かを失う恐怖にも怯えずに済む、平穏な日常。
好きなことに没頭し、気が向いた時に息抜きが出来る。そんな当たり前の毎日。
レジーナみたいな引きこもりには、そういう平穏が何よりも尊いに違いない。
「好きなだけ引きこもれる日常を、お前にプレゼントしてやる」
「いやっ、そんな魅力的なもんくれはるのん? ほな、ウチも全力で協力せなアカンなぁ」
けらけらと笑って、静かな声で言う。
「ほな、詳細を聞かせてもらおかな」
「あぁ。お前の家で、ゆっくりとな」
昨夜は、レジーナの精神がまだ安定していなかった。
あの状況では出来ない話だった。
一夜明け、レジーナも多少は落ち着いただろう。
死の恐怖が付きまとうバオクリエアから逃げ帰ってきたばかりで申し訳ないが、もう一度バオクリエアと向き合ってもらうぞ。
バオクリエアの侵略馬鹿が、当面はこちらへちょっかいかけられなくなるようにな。
目先の美味そうなエサに釣られて欲をかいてるバカ王子の視線を別の方向へ向けさせる。
そして、バオクリエアの情勢は、バオクリエアの中だけでカタを付けさせる。
それまで、オールブルームに手を伸ばせないように、もう一度膠着状態に戻ってもらう。
……まぁ、そうすると、マグダの両親の帰還が遅れることになるのだが。
少なからず、もう一年二年は先延ばしにさせてもらう。
それだけの時間があれば、きっと四十二区は今よりもっと強くなれる。
外周区と『BU』との連携を強め、外からの脅威を跳ね返せるくらいに成長させられるかもしれない。
今先延ばしさせることで、二度と手出しが出来なくすることも可能かもしれない。
そのための煙幕を張らせてもらう。
マグダには、悪いけどな。
マグダは、……うん。ちゃんと甘えさせてやろう。
いつか、両親がこの街へ戻ってくるその日まで。
「エステラよ。私とギルベルタも少し外すぞ。一度三十五区へ戻ろうと思う。だが、夕刻までには戻る」
「はい。慌ただしいスケジュールで申し訳ないです」
「そなたが気にすることではない。こちらも、覚悟を決めて望んでいることだ。行くぞギルベルタ」
「はい。急がせます、馬車を。時刻に間に合うように」
言うが早いかルシアはギルベルタを連れて陽だまり亭を出ていく。
「ワタクシも一時お暇させていただきますわ。お父様と話をしなければいけませんので」
明日で状況が大きく変わってしまうかもしれないハビエル父娘。
いろいろと話し合うこともあるだろう。
「あたしとネフェリーも家に戻るね」
「何かあったらいつでも呼んでね。すぐに飛んでくるからね」
「ほんじゃ、アタシも戻って金型の研究でもするかぃね」
「みりぃも、お家帰るね。ぱうらさん、ねふぇりーさん、あとでお話聞きに行くね」
そうして、急遽一泊することになった連中も、それぞれ自宅へ戻り日常業務の準備に入る。
賑やかながらも穏やかだったお泊まり会が終わり、日常が戻ってくる。
この日常を守るために、俺たちも動き出さなきゃな。
「エステラ、準備はいいな?」
「うん。いつでもどうぞ」
「じゃ、ジネット。行ってくる」
「はい。お気を付けて行ってらしてください」
太陽のような笑顔に見送られ、俺たちは陽だまり亭を出発した。
家に着くなり、「ほな、荷物置いてくるさかい、ちょっと待っとって」とレジーナは奥の私室へと入っていった。
そして。
「なんやのん、これー!?」
と、悲鳴を上げる。
あぁ。そういえば、ネフェリーたちが張り切って掃除してたっけな。
「じ、じじ、自分! ウチの私室入って、なにしたん!?」
飛び出してきたレジーナに掴みかかられるが、濡れ衣だ。
「俺は奥には入ってねぇよ。怖ぁ~い監視がいつも一緒だったからな」
と、エステラを指さしておく。
「安心していいよ、レジーナ。ヤシロがここに来る時は常にボクが一緒だったから」
「え、……ほな、奥のアレは、領主はんの仕業かいな?」
「ボクも奥へは行ってないんだ。ここでヤシロを見張る役目を担っていたからね」
「ほなら………………ニワトリはんやな!?」
大正解。
「ネフェリーを筆頭にロレッタやデリアたちが掃除してたぞ」
「マグダやナタリアもね」
「あと、イメルダがお前に言いたいことをリストアップしてたっけ?」
「あぁ……なんや、箇条書きの『ここを直せ!』みたいな紙が壁に掲げられとったわ……」
「けど、ミリィもいたから、変なことにはなってないだろ?」
「なんでそんな総出でウチの家来てんねんな……?」
「ボクも奥は見てないんだよね。ちょっと見てきていい?」
「えぇけど……ウチの趣味やないからな?」
レジーナが釘を刺したということは、相当ファンシーな仕上がりになっているのだろう。
実際、エステラが入っていった奥の私室から「うわぁ……」というエステラの素直な声が聞こえてきた。
「俺も見てきていいか?」
「自分はアカン」
「なんでだよ?」
「…………におい、残ったらイヤやもん。……いろいろ思い出してまうし」
……ぐっ。
そうかよ……
つか、もじもじすんのやめてくんない?
「いや~、アレはすごいね。意図は分かるし、すごく可愛い仕上がりだとは思うけど……あそこに住むとなると、ちょっと考えちゃうかも」
エステラをして「ないわー」判定が下った『すごく可愛い』らしい部屋。
ネフェリーの趣味全開なんだろうな。
ネフェリーなら、黒電話にレースのついたピンクのカバーとかつけてても不思議じゃないし。
まず黒電話がないんだけど。
「ぬいぐるみがいっぱいあったね」
「丹精込めてくれはったんやろうけど……あれ、どないしよ?」
ぬいぐるみは場所を取るからなぁ。
自分が気に入って手に入れた物ならともかく、思い入れのないぬいぐるみは結構対処に困る。
教会のガキにでもプレゼントしてやったらどうだ?
「あとさ、ヤシロ。レジーナのタンスの封印なんだけど……」
「なんだよ? 俺は封印破ってないぞ?」
「いや、ネフェリーが封印を破って、ナタリア式トラップを仕込んで再封印してたよね?」
エステラの言う通りだ。
タンスの中が整理されてるわけがないとレジーナの封を開け、ナタリア式の新たな封印がなされた。
「その封が、今はこーゆー物に変わってるんだけど」
と、エステラが広げてみせたのは、もこもこと可愛らしい羊のイラストが描かれた紙だった。
「……ウクリネス」
「確認してないから分からないけれど……たぶん、見たことない下着がいっぱい入ってると思うよ、レジーナ」
「ヒツジの服屋はん……どんだけウチにふりふり着させたいねんな……」
ウクリネスの執念を感じる。
……つか、あいつ、鍵はどうしたんだよ?
俺かエステラに話を通さないと入れないはずなのに。
「エステラ……」
「え? あぁ、うん。あの後、ネフェリーたちが掃除しに行きたいって言ってたから鍵を貸し出したよ」
「……そん時だな」
「領主はん……頼むわ、ホンマ」
「いや、だって、みんな悪意はないからさ……」
「悪意はなくても……キッツいでぇ?」
「それは……うん。ごめん。責任持ってボクがみんなに言っておくよ。あと、ぬいぐるみの対処もボクがするね」
本人のいないところで盛大に盛り上がってしまったのだろうが、プライベートスペースは本人が一番くつろげる状態にしておきたいもんだからな。
良かれと思っての暴走。よくあることだ。
「ま、怒ってるわけやないから、そのへんはえぇ感じに言うといてな?」
「もちろんだよ」
「勝手なことしやがって! 迷惑だ!」という感情ではなく、「住みにくいから元に戻すぞ」という思いだ。
……まぁ、レジーナの場合、多少強引にでも部屋のチェックをして定期的にお掃除隊を送り込むくらいする必要はあるだろうけどな。
「店舗が手付かずやったから、完全に油断しとったわ……」
「こっちは、みんな怖くて手が出せなかったんだろうね。よく分からない薬品が多いから」
昨夜は、店舗部分までしか入らなかったからなぁ。
「あ、よかった! ほこりちゃん、無事やん!」
レジーナが店舗の隅へ駆け寄っていく。
「……ほこりちゃん?」
「レジーナの親友だ」
ひょいっと、大きく成長した綿埃をつまみ上げるレジーナ。
「ただいまやで~、ほこりちゃ~ん」
「レジーナ……医者に診てもらった方がいいよ」
「残念だな、エステラ。四十二区にはレジーナよりも医学に精通した者はいないんだ」
故に、レジーナの病は誰にも治せないのだ。
仮に伝説の名医がこの街にいたとしても不可能だろうがな!
「ほんで、ウチの名前を何に使う気なん?」
ほこりちゃんを元の位置に戻し――いや、掃除しろよ。戻すな戻すな――レジーナが真剣な表情を向ける。
えぇい、くそぅ。真面目な表情のせいで直前の奇行をツッコミにくい!
「説得力が欲しい。そして、バオクリエアを黙らせたい」
第二王子派のワイルが四十二区へやって来た。
第二王子派は、一応レジーナ寄りの派閥ではある。だが、完全にレジーナと同じ思想というわけではない。
そして、第二王子派の中には第一王子派と内通している者がいる。
なので、レジーナがオールブルームにいることは、第一王子派にも知られているだろう。
四十二区というピンポイントにまで絞れているかどうかは分からないが、この国にいることまでは確実に把握されている。
だからこそ、その名前を使って牽制することが出来る。
「連中の作戦はすべて筒抜けだと知らしめてやり、エングリンドが全力でその目論見をぶっ潰すと宣言すれば、下手なことは出来なくなるだろう」
オールブルームとバオクリエアは遠く離れた国だ。
移動距離から考察すれば、北海道の最北端から九州最南端か、沖縄くらいの距離はあると思われる。
それだけの距離を越えて工作するのはなかなか難しいものがある。
特に、バオクリエアは先んじている技術力を最大の強みとしている国だ。
自分たちの最高峰よりも進んだ技術と豊富な知識を持つ人物がこちら側にいるとなれば、攻撃の手を緩めざるを得ない。
中途半端なちょっかいは盛大に迎撃され、その分バオクリエアからの侵略意思の証拠として逐一記録されることとなる。
うまい具合に「GYウィルスはエングリンドの手によって無効化された」という情報がバオクリエアまで届いてくれれば、同じ手で攻めてくることはなくなるだろう。
それは、GYウィルスを名実共に封じることになる。
何より、エングリンドには逆らえない貴族連中もいるんじゃないか?
いろいろと裏を知っているであろうレジーナ。それを敵に回せば我が身を亡ぼすと、危機感を抱くヤツも少なからずいることだろう。
「その気になれば、自派閥から爪弾きにされてしまいそうな秘密を暴露することも出来る――なんて相手が何人かいるんじゃないか?」
「せやねぇ。下っ端の弱小貴族まではよぅ分からへんけど……そこそこの重鎮やったら、いくつか握っとるなぁ。社会的に殺せるような猛毒を」
その事実を、当人だけが知っていればそれで十分だ。
下っ端が「攻めろ」と気勢を上げても、上から力で抑え付けてくれる。
誰しも、自分の身が一番可愛いもんだからな。
「あとは、俺が仕込んだ毒が効いてくれば、バオクリエアは当分身動きが取れなくなるだろうよ」
俺はバオクリエアに対する影響力を持っていない。
だが、バオクリエアの内部を引っ掻き回す術なら持っている。
「……自分、もうすでになんかしたんかぃな?」
「まぁ、ちょっとな」
「え、いつの間に? ボク、聞いてないけど?」
「いや、話したはずだぞ」
俺は、やろうとしていることはみんなエステラに話している。
ただ、その行動がどこに、どのように作用するかまでは話していないけどな。
「まぁ、えぇわ。バオクリエアが勢いついとる原因の一端はウチにもあるさかいな」
GYウィルスの基礎を作ってしまった過去。
悪用された被害者であろうと、レジーナはそれをずっと悔やんでいる。
それを潰せるなら、自分の名を使うくらいは厭わない。
そんな強い意志が見え隠れする瞳をしている。
「自分のやりたいように、盛大にやったってんか」
「おう。それともう一つ」
レジーナなら、うまい具合に出来るんじゃないかな~ってことがあるんだよなぁ。
「お前さ、MプラントとGYウィルス、作れねぇ?」
「……はぁ?」
レジーナが盛大に呆れた顔をし、俺は満面の笑みを浮かべた。
レジーナの家を後にした俺たちは、陽だまり亭へ向かって歩いていた。
明日の準備のために必要なので、帰り道の途中でセロンのところに寄ろうかとも思っていたのだが、もっといい方法があることに思い至ったので準備がちょっと楽になった。
やっぱり、機転が利く頭を持っていると何かと便利だよなぁ。
「まぁ、おかげでセロンの出番はなくなったけどな!」
美人な嫁さんと毎日イチャイチャしているイケメンなど、出番削除の刑が相応しい!
「……君、まだセロンにつらく当たってるのかい? そんなにウェンディと結婚したのが羨ましかったのかい?」
「アホめ。『ウェンディと』じゃない。『美人と』結婚したのが腹立たしいのだ」
「『妬ましい』の間違いだろう、君の場合」
これは妬みではない!
怒りなのだ!
夜寝る時にも朝起きる時にも隣に美人がいるんだぞ?
地獄の業火すら生温いわ!
「セロンは、一生妻の手料理しか食べられないの刑になればいい」
「セロン、激やせしちゃうよ、それじゃ……」
ウェンディ、得意料理は『千切りレタスの乗っけ盛り』だもんな。
いい加減、包丁くらいは使えるようになったのだろうか。
「セロンに何をお願いするつもりだったんだい?」
「粘土だ」
「ねんど? またボクたちの人形でも作るのかい?」
「なんで俺たちの人形なんて発想になるんだよ?」
「だって、さっきレジーナのところでイリュージョンとかなんとか言ってたから」
レジーナの家を出る前に、ちょこっと火の粉を分けてもらったのだ。
使用用途を聞かれたので「ちょっと、イリュージョンをな」と答えたんだが……
「また大脱出をするのかい?」
「しねぇよ」
イリュージョンと言えば大脱出と、エステラの脳内では固定されてしまったようだ。
そんなに楽しかったか?
そもそも――
「イリュージョンと言えば隠れ巨乳がばぃんでぼぃんだろうが!」
「あれはイリュージョンじゃないよ!」
いいや!
あれを見た四十二区男子は一人の例外もなく「イリュゥゥージョォォーン!」って叫ぶもんね!
女子を直視できないウーマロと、女子に興味がない金物ギルドの乙女以外は。
……例外いまくりじゃねぇか。どうなってるんだ四十二区は!
「イリュージョンのタネ教えて」
「あとでな」
「見せてくれるのかい?」
「ヤダよ。もったいない」
「もったいない?」
「このイリュージョンは、服を犠牲にするんだ。なので、ぶっつけ本番でやる」
内容だけは教えておいてやる。
隣でエステラにびっくりされると、ウィシャートの心に余裕を与えてしまいかねないからな。
誰も驚いていない中、自分だけが度肝を抜かれているって状況は、絶妙な緊張感を相手に与えてくれるものだ。
「じゃあ、何に使うつもりだったの、粘土?」
「ん? あぁ、ウィシャートの館へ通じる隠し通路があったろ?」
「グレイゴンが通ろうとして通れなかった、アレかい?」
グレイゴンがウィシャートに会いに行こうと隠し通路に入ったものの、鍵を全部取り換えられて半泣きになっていたソノ通路だ。
「あそこの鍵の複製を作ろうと思ってな」
「はぁ!?」
「意外と簡単なんだぞ? 粘土を鍵穴に突っ込んで、ちょっと特殊な薬剤で硬化させるだろ? それを反転させて型を作り、そこに鉄を流し込めばいっちょ上がりってなもんだ」
「か、かか、鍵って、そんな簡単に複製できるようなものなのかい!?」
「まぁ、ちょっと特殊な薬剤と、ちょっとした技術が必要だけどな」
「君以外には真似できないような技術なんだろうね?」
「さぁな。教えてやれば結構誰でも出来ると思うぞ」
「その技術の流布を厳禁とするよ! 絶対にダメだからね!」
「分かった。じゃあ俺が独占しておこう」
「君が使うのも禁止! どうしても必要な場合は、ボクの許可を取ること!」
「なんで俺がお前の言うことを素直に聞かなきゃいけないんだよ。なんのメリットもないのに」
「嫌だと言うなら、今聞いた話を全員に話す」
ん~……メリットはないが、どえらいデメリットが出来ちまったなぁ。
鍵の複製が出来るなんて知られたら、どれだけの人間に責められるか……
忍び込んでもいないのに懺悔させられそうだ。
「分かったよ。お前の条件でいい」
「まったく……君は本当に危険な存在だよね」
ばーろー。
この街の鍵のレベルが低過ぎるんだっつーの。
「まぁ、君が悪用するつもりだったなら、もうとっくに被害は出ているだろうし、そもそもボクにそんな情報を漏らしたりしないだろうから、一応は信用しているけどね」
「そりゃどうも」
わざわざ教えたのは、こうして信用を勝ち取るためだ。
あと、出来ればこの街の人間にはもうちょっと警戒心というものを持ってもらいたいとも思っているがな。
その気になれば、いくらでも悪さし放題なんだぞ、こっちは。
領民全員、俺の鋼鉄の自制心に感謝をするべきだ。
「ちなみに、そのちょっと特殊な薬剤って、作れるの?」
「材料ならレジーナのところに揃ってたな」
「君たち二人が敵に回らないよう、ボクは細心の注意を払うようにするよ」
エステラがぶるっと身震いをする。
そーそー、そーゆー警戒心って、大事なんだよー。
「が、その加工には結構時間がかかる。グレイゴンの使おうとした通路だけで十個も鍵があるなら、きっと他のところにも鍵がわんさか取り付けてあるんだろう」
「そうかな? グレイゴンが使おうとした通路はウィシャート家以外の者が使える唯一の抜け道だから、特別厳重にしてただけじゃないのかな?」
「あのしみったれた渋ちんのウィシャートが、グレイゴンのためだけに鍵を十個も買い替えるかよ。どっかの鍵と交換したんだろうぜ。どーせ」
「あぁ……なるほどね。鍵が合わなければ『鍵が変わった』としか思わないもんね」
たぶん、グレイゴンはその可能性に思い至らず、『使えなくなった鍵』を捨ててしまったことだろう。
地道に調査すれば、十ヶ所の鍵を開けられたかもしれないのに。
「――と、そんなことを考えていてふと思いついたんだ。合い鍵をわざわざ作らなくても、すでにある鍵を使えばいいじゃない、ってな」
「すでにある鍵……で、ウィシャートの隠し通路の鍵が開くのかい?」
「違う違う。ウィシャートの鍵を開けようと考えるから合い鍵って発想で立ち止まっちまうんだよ」
「でも、開けるのはウィシャートのところの鍵だよね?」
「今はな」
「……今は?」
だから、とっても単純な話なんだって。
「今から行って、通路の鍵を全部付け替えちまおうぜ」
「はぁ!? 付け替えるも何も、そもそもどうやって今ある鍵を開けるのさ?」
「俺なら、カギを開けることくらい二秒もあれば簡単に出来る」
「そうだったね。……その技術、悪用しないようにね」
分かってるっつの。
だから、使う度にお前に報告するって面倒くさいルールも律儀に守ってるだろうが。
「だが、鍵を付け替えちまえば俺以外の人間でも簡単に開けられるだろ。なにせ、鍵は手元にあるんだから」
「君以外の……あぁ、ハビエルたちに渡すんだね」
俺たちがウィシャートと話をする際、ハビエルたちには館を取り囲んでもらう。
内部に突入する際、鍵があれば侵入が簡単になる。
「ウィシャートは、自分の鍵が開けられることに警戒をしているかもしれないが、数さえ変わってなきゃ別の鍵に付け替えられていても、たぶん明日まで気が付かないぞ」
「けど、それだと見た目が同じような鍵が必要だよね……あんまり高級な鍵は用意できないよ?」
「大丈夫だ。一ヶ所に十個も鍵を付けてるんだぞ? どーせ安物だよ。で、他の場所の鍵と交換しても分からないってことは、他の鍵も安物だ」
「君の推測は潔過ぎて不安になるよ……」
だが、案外人間なんて生き物はそういうもんだったりするのだ。
あれもこれもと危険性をいくつも思い浮かべて「絶対無理だ」と心が折れてしまいがちだが、現実は意外と単純なもんだ。
だからこそ、ド素人丸出しの泥棒が盗みを成功させちまうのだ。
人間の警戒心が最新鋭のセキュリティ並みに研ぎ澄まされていれば、素人窃盗団なんぞが蔓延るわけがない。
「まぁ、どっちにしても、ウィシャートの館へは行かなきゃいけないんだ。エステラ、今から大至急鍵を大量に用意してくれ」
「そんなにいるかな?」
「抜け道の鍵を全部付け替えてやれば、ウィシャートの泣きべそが見られるかもしれないぞ」
俺たちに追い詰められたウィシャートは、きっと抜け道を使って逃げ出そうとするだろう。
だが、その抜け道の鍵が付け替えられていたら……
「開くはずの扉が開かず、扉の前で絶叫するかもな。数日前、せせら笑ったグレイゴンと同じように」
「なるほどね。分かった。余るくらいに用意しておくよ」
というわけで、俺は途中でエステラと別れた。
エステラは金物ギルドへ向かうのだろう。
今ならもうノーマも帰っているだろうし、対応してくれるはずだ。
俺はというと……
「にぎり寿司講習会、だな」
ジネットとマーシャが今か今かと待ち構えているであろう陽だまり亭へ向かって、少しだけ歩く速度を速めた。
あとがき
さて、前回は正面から見たおっぱいの形で9つのパターンに分かれるというお話をしましたが、今回は横から見た時の形状で6つのパターンに分けて解説を致しましょう!
ふっくらした半球型、なだらかな皿形、少々垂れ下がった長めのヤギ型と……
あ、この話、シリーズ化しない感じですか?
じゃあ、ブラジャー選びにおけるバージスラインの重要性とかも?
では、その辺りは各々独自でお調べください。
というわけで、
乳タイプの宮地です。
乳房の大きさの違いが、おっぱいの決定的差ではないということを……教えてやる!(赤い彗星ヴォイスで)
ふふん、
乳タイプともなると言うことが違いますよね。
はてさて、本編では
一夜明けてまたしてもレジーナの家へ向かったヤシロですが――
レジーナとの会話、飛んでない!?
と思われた皆様……そこはわざとです☆
な~んやかんやお話があったんだろ~なぁ~と思っておいてください。
さぁ!
準備も整いつつ、
いよいよウィシャート潰しの始まりか!
――というところで、次回はお寿司回です☆
(*´▽`*)おすし~
たぶんなんですが……
あくまで予想ですよ?
お寿司で一話使い切っちゃいそうだなぁ~……
(・_・;)あくまで予想なんですけどね
いやはや、世の中思いがけないことが起こるものです。
ウィシャート、まさかの置いてけぼり!(*´艸`)
それはいいとして、
ここ数日、立て続けに驚くような事が起こったのでランキング形式でご紹介してもよろしいでしょうか?
まず、第三位!
仕事中、職場の女性係長が私のところに来たんですけども――
女性係長「山下君、ちょっといい?」
宮地「……やました?」
女性係長「あっ!? ごめんなさい。今、山Pにハマってて、彼が出てたドラマ片っ端から見てるのよ。なので、頭の中が『ヤマシタ』一色で……」
宮地「その人と間違えられたのは人生初ですよ」
女性係長「ううん。間違えてない。私の視界の中で宮地君が山Pに塗りつぶされてるだけ」
宮地「なんて幸せな世界で生きてるんですか!?」
見るモノすべてが山Pに見えるそうです。
皆様も、ドラマの見過ぎにはご注意を。
第二位!
またその係長関連の話なんですが……
女性係長「吉田く~ん(仮名)!」
宮地「(吉田って……そんな人うちの課にはいないだろうに。またなんかのドラマにハマってるのかねぇ……)」
吉田(仮名)「はい。なんですか、係長」
宮地「吉田(仮名)、いた!? って、えっ!? アレ、誰!?」
宮地さん、4月のまるまる一ヶ月間、新しくやって来た派遣社員に気付かず!
……ビックリしました。
同じフロアで仕事してるんですけど、五月に入って初めて気付きました。
係が違うので接点こそそこまでないんですが、彼のデスクの近くを何度も通っていたはずなんですが……
まぁ、言い訳をするなら、
急な新人教育でバタバタしていたから……
しょーがないですよね(≧∇≦;)
一ヶ月くらい気が付かないなんて、よくある、よくある!
吉田(仮名)「宮地さんは人の顔と名前を一切覚えてくれない人だと教わりました(きらきら)」(*´▽`*)
宮地「一体、誰がそんなことを……」
中村(仮名)「自分、宮地さんに半年新人教育していただいて、他部署に配属されて三ヶ月後に『え~っと、名前なんだっけ、待ってね、今思い出すから………………上田?』って言われましたよ~」
宮地「情報源はお前か松田!?」
中村(仮名)「ね? このように」
人の顔と名前、覚えないんじゃないんですよ?
すぐ忘れるんです。
物忘れがいいんです、私(*´▽`*)ぽじてぃぶ
社会人シッカク?
いいえ、まんまるです!
まんまる社会人です!
というわけで、第一位!
宮地さん、死亡説が流れる!(≧∇≦)
いえね、これもビックリしたんですけど、
五月に入ってすぐ、実家から電話がかかってきたんですよ、朝。
あ、私ゴールデンウィークとか関係ない会社なので
世間様が浮かれている日でも出社するんですけどね……くすん。
出社前の時間に電話がかかってくることってそうそうないんですけど、
その日はかかってきまして、
「珍しいなぁ~」とか「なんかあったのかな~」って電話に出たら、
母が物凄い緊迫した雰囲気で
母「大丈夫か!?」
って。
いや、こっちこそが「大丈夫か!?」ですよ!?
何があったの!?
母「生きてるか? 無事か!?」
宮地「いや、何が? 元気元気。今から仕事行くし」
母「そうか……よかったぁ。死んだかと思った」
宮地「なぜに!?」
母「あんた、誕生日だったでしょ?」
宮地「先月ね」
母「長男が誕生日おめでとうメール送ったんだって」
宮地「いい歳したオッサンがいい歳したオッサンに!?」
母「で、半月経っても返信がないから……ほら、あんたはマメだから絶対返信するじゃない?」
宮地「メール? 来てないけど?」
母「そうなの!? で、その話を聞いて昨日私もメールしたのよ。けど、今朝になっても返信ないから、もしかしてって……ほら、怖い病気とか、東京の方は感染者も多いでしょ? だから、死んだかもって、長男が」
宮地「いやいや、至って健康だから!」
実家の方で、どうやら「あいつ、死んだんじゃね?」という話になっていたようです。
死んでなくても入院して連絡できない状況なんじゃないかと。
いや、ないですよ!?
ストレスは物凄かったですが、元気でやってますよ!?
ただ、メール、来てないんですよね。
スマホを調べても、どっこにも着信の履歴がなく、
あ、スマホに変えたんです、私ってば、ついに!
これまで折りたたみ式のケータイ(ガラケーとは意地でも言わない!)だったんですが、
キャリアが「もうガラケー辞めるっぽ」って宣言したので仕方なく。
3Gにさよならを告げ、5Gのスマホへ!(3Gとか5Gとかよく分かんないですが、店員さんの言うがままに機種変しました)
で、スマホの使い方を教えてくれた近しい人がいるんですが、
その人とは普通にメール出来てるんですよ。
おかし~なぁ~と思いつつ、母との電話を切り、
スマホについて調べてみたところ――
私がメールだと思っていたモノ、メールじゃなかった!?
ショートメッセージっていう、電話番号でやり取り出来るメッセージアプリ?
的なものでした。
ケータイで言うショートメールみたいなもの、ですかね?
とりあえず、メールアドレスを使って連絡してくる母たちからのメールが届く場所ではなかったと。
で、スマホをいじって『メール』を見つけ起動させたら
『使用前に設定をしてください』
――って、設定すらしてませんでしたorz
設定したら未読のメールが2桁件……orz
まぁ、ほとんどが企業のDMでしたけども。
そんな中、ありましたよ、実家からのメール。
最新のものは「連絡が取れなくて心配しています。短くてもいいので至急連絡ください」というものでした。
……うん、そりゃ心配しますわな。
ごめんね、マイファミリー!(´;ω;`)
スマホが使いこなせないオジサンでホントごめん!
文字でやり取り出来るモノは全部『メール』だと思い込んでてごめん!
でもほら、母だってゲームは全部『ファミコン』って言ってたし、
アニメもOVAも全部『マンガ』って言ってたし、
あんな感じ!
……まぁ、今や母の方がゲームとアニメに詳しいんですけども。
でもまさか、死亡説が流れるとは思ってみませんでした。
連絡が付かなくてもツイッターでも見てくれれば元気なのは分かるかと思うんですが…………あ、ダメだ。ツイッターは見せられないや。
いえ、あの、
私、自分の誕生日に『おっぱいデコレーションチーズケーキ』の画像をアップしてまして……うむ、家族には見せられませんね!
秘匿しておきましょう!
というわけで、
皆様も大切な方にはこまめに連絡してあげた方がいいですよ☆
もう少し落ち着いたら、
スマホを使いこなせるようにいろいろいじってみます!
お勧めのアプリ(いまだに『ソフト』って言ってしまいますが)があったら教えてください☆
たぶん、使いこなせませんけれども(≧∇≦)
次回もよろしくお願いいたします。
宮地拓海




