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クロー!! 暗黒の一族…  作者: masahiro taxi


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第38話:密室の暗号

第38話:密室の暗号

1. 因果の引き金

タクシーに乗り込み、自動ドアがパタンと閉まった直後の密室。

運転手がメーターを入れ、車を滑り出させた瞬間、助手席に座る凪がバックミラー越しに、後部座席の湊へ冷徹な視線を走らせた。

「湊。お前の身勝手な行動が、結果としてこの世界規模の事態を引き起こしてしまったんだ」

凪の低い声が、車内の狭い空間に響く。

それは、これまでの数々の選択――結衣を助け、クローとしての存在をデーモンや世界に露呈させてしまった湊の「引き金」に対する、厳しい事実の突きつけだった。湊は言葉を失い、自分の膝の上で拳を強く握りしめた。

しかし、凪は責め立てるような口調のままではいなかった。

「……しかしながら、今更嘆いてもどうしようもないからな。起きてしまった因果はもう変えられない。嘆く暇があるなら、この状況でどう生き残るかだけを考えろ」

凪はそう言って、前方の道路へ視線を戻した。突き放すようでいて、それは「過去を悔やむな、前を見ろ」という凪なりの冷たい激励でもあった。湊は小さく「……ああ」と答え、胸の奥で覚悟を新たに固めた。

2. 隠蔽されたダイアローグ

タクシーは中央道を都心に向けてひた走る。凪はすぐに頭を切り替え、淡々とこれからの計画を口にし始めた。

「都内に潜入後、まずは月島へ向かう。そこがアジア圏から集まる同族たちの最初の合流地点だ」

「全員で何人になるんだ?」

「俺たちを合わせて二十人強。すでに月島のもんじゃ焼き屋を一部屋、二十人分で予約してある。ただ、言うまでもないが、完全に戦闘状態だ。酒はなしだぞ」

「わかってる。……敵の数は?」

「ホテルニューオータニに結集したデーモンが千。都内全域に潜伏しているエンジェルは数万規模と見ていい。まともに正面からぶつかれば、数秒で消し飛ばされる」

もし、バックミラー越しに耳を傾けている運転手がこの内容を真面目に整理すれば、国家転覆か世界の終わりを企むテロリストの会話にしか聞こえなかっただろう。

しかし、凪はあえて隠語を使わず、堂々と実音で話していた。すべては凪の計算通りだった。案の定、運転手は「チップを五万もくれる奇特な金持ちが、最近流行りのネットゲームか何かの熱いオフ会計画を話している」としか思っておらず、楽しげにハンドルを握っている。一般人にとって、この世界の真実はそれほどまでに「目に入らない」ものだった。

3. ゲリラ戦の思想

「何日間の潜伏になるか分からん」

凪はスマホの画面で暗号化されたマップを示した。

「月島近郊の一軒家タイプのシェアハウスを、丸ごと一棟、貸切で押さえてある。しばらくはそこが前線基地だ。……だが湊、最悪の事態は想定しておけ」

凪の視線が、再びスマホから湊の横顔へと移る。

「ひとたび戦闘が始まれば、二十人がバラバラに分断される可能性が高い。数で圧倒的に劣る俺たちが生き残る道は一つだけだ。……幸い、俺たちクローは単体での能力がズバ抜けている。ゲリラ戦なら、奴ら泥飾りの軍隊や、数だけの掃除屋どもに負けはしない」

一撃離脱、徹底的な隠蔽、そして各個撃破。不敵に笑う凪の横顔には、絶望的な戦力差を前にしても揺るがない、冷徹な闘争本ネーションが宿っていた。

4. 流れる灯りと、残した温もり

「……ああ。分かった」

湊は短く答え、中央道の窓の外へと視線を戻した。

タクシーはすでに調布、世田谷へと差し掛かっている。車窓を流れる東京の夜景は、まるで無数の星を散りばめたように煌びやかで、美しかった。だが、凪の話を聞きながらも、湊の心は未だ高尾に残してきた少女の元にあった。

(結衣……)

お前の身勝手な行動が引き起こした――凪のその言葉は、結衣を巻き込んでしまったという意味でもあった。毅と美玲が護衛についてくれたとはいえ、もしここから先、自分たちが失敗すれば彼女の命もない。「必ず戻る」という約束を守るためには、何が何でもこの東京の地獄を生き延び、デーモンの中将が仕掛けた包囲網を食い破らなければならない。

息が白くなるほどに冷え切ったガラスに指先を触れながら、湊は胸の奥で、結衣の流した涙の温もりを何度も確かめていた。首都高速の複雑な分岐点が、彼らを乗せたタクシーを、怪物たちの待つ不夜城へと容赦なく導いていく。

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