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クロー!! 暗黒の一族…  作者: masahiro taxi


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第17話:三つの種、一つの檻

第17話:三つの種、一つの檻

1. 葬られた世界の「真実」

凪は壊れたスマートフォンの残骸を一瞥すると、冷えたコンクリートの壁に背を預けた。

「いいか、これからこの世界の『不条理』の構造を教えてやる。耳をかっぽじってよく聞け。これはお前たちが生き残るための、唯一の教科書だ」

凪の瞳が、暗闇の中で鋭く光る。

「まず、お前を襲ったあの白い連中。奴らは『エンジェル』だ。全世界に約100万人いる。神の使いだなんて崇める奴もいるが、実態はただの『掃除屋』だ。自分たちが何者か分かっていない無自覚な個体も多いが、一度牙を剥けばその数は脅威だ」

湊は息を呑んだ。あの圧倒的な力の持ち主が、この世界に100万人も潜んでいる。

2. 社会を統べる「デーモン」

「次に、『デーモン』。全世界に約1万人。エンジェルに比べれば数は少ないが、こいつらはタチが悪い。ほとんどの個体が自覚を持っていて、人間社会の心臓部に食い込んでいる」

凪は嘲笑するように唇を歪めた。

「政治家、官僚、そして自衛隊の上層部。社会のシステムを動かしているのはデーモンどもだ。お前が自衛隊員殺しの容疑者に仕立て上げられたのも、そのロジックだよ。奴らにとって、自分たちの庭を荒らすイレギュラーは、国家という暴力装置を使ってでも排除すべき対象なんだ」

指名手配。メディアの捏造。すべては、デーモンが支配する「人間の皮を被った社会」が、湊を消し去るために動かした歯車に過ぎなかった。

3. 血筋ではなく、予測不能な「バグ」

「勘違いするなよ、湊。これらは遺伝子だの血筋だので決まるもんじゃない」

凪は突き放すように言った。

「俺たちは、ある日突然、何の前触れもなく生まれる『突然変異ミューテーション』だ。普通の親から生まれ、普通に育ち、ある瞬間を境に『人間ではない何か』へ変異する。遺伝子情報にも残らない、進化の袋小路に生じたエラー。それが俺たちの正体だ」

「……そして最後が、俺たちだ。種族名は『クロー(カラス)』」

凪は自分の背後、闇に溶ける黒い翼を指した。

「全世界に、たったの100人。お前もそうだったように、自分が何者か知らないまま変異し、『普通』を演じている無自覚な奴も多い。今言った三種族の中で、肉体的な能力はクローが圧倒的に上だ。……だが、あまりに数が少なすぎる」

凪の声に、微かな、しかし深い孤独の色が混じった。

「100人で世界を相手に戦うのは不可能だ。だから、逃げるか隠れるか。それがクローに許された唯一の生存戦略なんだよ。……どうだ? これがお前たちが迷い込んだ世界の正体だ」

4. 理由なき駆除

呆然とする湊に、凪は追い打ちをかけるように冷酷な現実を突きつけた。

「奴らが俺たちを追うのに、大層な正義なんてない。……お前は、目の前を飛ぶ不快な虫に理由を聞いてから叩くか? 奴らにとって俺たちは、突然変異で生まれただけの、ただそこにいるだけで『生理的に許せないバグ』なんだよ。害獣を駆除するのに、慈悲も良心も必要ないだろ?」

重苦しい沈黙が地下空間を支配した。

湊は結衣の震える肩を抱き寄せた。100万人、1万人。そして、自分たちはわずか100人。

自分たちがどれほど絶望的な包囲網の中にいるのか、ようやく理解できた。

「俺と一緒に来い。それが、お前たちが生き延びる確率が最も高い道だ。……もちろん、拒否して一人で死ぬ自由もあるがな」

凪の申し出は、救済というよりは冷徹な計算に基づいた提案だった。

だが、湊と結衣に、それを断る術はなかった。

大学も、名前さえも失った今。この冷たい瞳の「同族」にすがる以外、明日の太陽を見る方法は残されていなかった。

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