第9話:『聖女が消えた王都の食卓が地獄絵図。一方で、私は絶品お出汁でエルフと乾杯しています』
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さて、れいなが温泉旅館(洞窟)でエルフやドワーフと「整って」いる頃。
彼女を「出汁を取るだけの無能」と切り捨てた王都では、恐ろしい事態が起きていました。
「……あいつを、今すぐ連れ戻せぇぇ!」
そんな怒号をどこ吹く風で、今日もお出汁の香りに包まれるれいなの日常をお楽しみください。
「……なんだ、これは。家畜の餌か?」
王都、聖教会の豪華な食堂。
黄金の装飾が施されたテーブルを囲む幹部たちが、目の前の皿を見て顔をひきつらせていた。
そこにあるのは、最高級の肉と野菜を使ったはずのスープ。だが、その色はどす黒く、香りは……ただの「お湯」と「生臭さ」が混ざった、鼻を背けたくなるようなものだった。
「も、申し訳ございません! 聖女れいなの代わりに用意した調理魔導師たちが、総出で作ったのですが……」
「味がない! 深みがない! 喉を通らんのだ!」
一週間前、れいなを「ただの炊き出し係」と罵って追放した大司教が、皿を叩きつけた。
彼らは知らなかったのだ。王都の食事に「魂」を吹き込んでいたのは、食材の質ではなく、れいなが毎日寝る間も惜しんで仕込んでいた「魔法のお出汁」だったということを。
「あの娘が消えてから、国民の不満も爆発寸前です……。『まともなスープを飲ませろ』と暴動が起きかけております……っ」
「……ええい、何を突っ立っている! 今すぐあの女を探し出し、引きずってでも連れ戻してこい!」
かつて彼女をゴミのように捨てた男たちが、今や飢えた獣のような顔で彼女の名前を叫んでいた。
「ぷはぁ〜っ! 温泉の後のこれは、たまらないわね!」
一方その頃。
最果ての地の「洞窟旅館」では、王都の混乱など微塵も知らないれいなが、幸せの絶頂にいた。
「聖女様、この『あご出汁の唐揚げ』というやつ……反則だ。衣はサクサク、中は肉汁とお出汁が溢れ出して……止まらん!」
「リーシャ、食べ過ぎよ。ほら、このキンキンに冷えた『お出汁の冷製スープ』も飲んでみて。火照った身体に染みるわよ?」
「……っ! なにこれ、冷たいのに旨味が濃い……。エルフの里にいた頃の私がバカみたい。ねぇ、もう一杯おかわり!」
露天風呂上がりのリーシャは、すでに「誇り高きエルフ」の面影はどこへやら。
湯船の湿気で少し上気した顔で、私の作った料理を夢中で頬張っている。
ドワーフのガラムたちは、お出汁を隠し味に入れたエール(麦酒)で「乾杯!」と景気良くジョッキを鳴らしていた。
「聖女様、ここは天国だな。王都の連中が今頃何を食ってようが知ったこっちゃねぇが……。あいつら、一生この味は知らねぇんだろうなぁ!」
ガラムが豪快に笑う。
アルベルトさんも、手入れの行き届いた剣を傍らに置き、穏やかな表情でスープを味わっていた。
「……れいな殿。貴女が来てから、この死の地だった荒野が、世界で一番温かい場所に変わりましたね」
「ふふ、大げさですよ、アルベルトさん。私はただ、みんなでおいしいねって言いながらご飯を食べたいだけですから」
私は、新品のキッチンの窓から見える、美しい夕焼けを眺めた。
王都では、私のことを「無能」と呼んだ人たちが必死に私を探しているらしい。
けれど、もう遅い。
だって、ここには私のお出汁を愛してくれる、最高の仲間たちがいるのだから。
「……さて! 明日は何を作ろうかな?」
私の呟きに、シルバーが「ワフッ!」と元気よく賛成の声を上げた。
第9話をお読みいただきありがとうございました!
王都側、かなり困っているようですね。ざまぁみろ……と言いたくなるのをグッと堪え、れいなは今日も平和に美味しいものを作ります。
さて、次回。
平和な旅館に、王都からの「最初の使者」が到着します。
しかし、そこには温泉に入ってパワーアップした(?)最強の仲間たちが待ち構えていて……。




