第10話:『王都から「連れ戻し隊」が来ましたが、護衛のシルバー(伝説の魔獣)が欠伸一つで追い返しました』
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お出汁がつなぐ縁によって、気づけば周りには最強の仲間たちが。
そんな「癒やしの楽園」に、空気の読めない王都の騎士たちが土足で踏み込んできます。
「無礼を許してやるから戻れ」という傲慢な態子の使者に、伝説の魔獣(温泉でリラックス中)が下した裁きとは――?
「おい、無能聖女! どこに隠れている、さっさと姿を現せ!」
ドワーフたちが整えてくれた美しい石畳の門前。
静かな朝の空気を切り裂くような、下品な怒鳴り声が響いた。
現れたのは、王都の紋章をこれ見よがしに掲げた十数名の騎士たち。その中心には、私を追放した際に鼻で笑っていた若手の神官・ケビンがいた。
「あら、お客様? ですが、あいにく本日は予約で満席ですよ」
私がエプロン姿で門の前に立つと、ケビンは勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「ふん、相変わらず薄汚い格好をしおって。……喜べ、れいな。大司教様が慈悲をくださった。お前が泣いて謝るなら、また王都の厨房で雑用をさせてやるとのことだ。さあ、今すぐ跪いて感謝し、我らについて来い」
あまりの言い草に、私は呆れて溜め息をついた。
王都の食卓が地獄絵図になっているから連れ戻しに来た、なんて口が裂けても言わないつもりらしい。
「お断りします。私はここで、私の料理を待ってくれる人のために作りたいんです」
「……何だと? 貴様、この騎士団の武力が怖くないのか! 強硬手段を使ってでも――」
ケビンが剣を抜きかけた、その時だった。
「――ふわぁぁ……。朝から騒々しいな、人間ども」
背後の温泉旅館(洞窟)から、のっそりと巨大な影が現れた。
銀色の毛並みを朝日に輝かせた伝説の魔獣、シルバーだ。
彼は、お出汁のたっぷり染みた朝食を食べ、足湯でリラックスしたばかりで、最高に「機嫌が良かった」。
「な、なんだこの巨大な狼は……!? ヒッ、伝説の『フェンリル』だと……!?」
騎士たちが一斉に青ざめ、後ずさる。
シルバーは、震え上がるケビンたちの目の前で、これ見よがしに大きな欠伸を一つした。
それだけで、凄まじい魔圧が突風となって騎士たちを襲う。
「ひ、ひぃぃぃ! 助けてくれぇぇ!」
ケビンは腰を抜かし、騎士たちは武器を放り出して、来た道を全力で逃げ帰っていった。
戦うまでもなかった。格が違いすぎたのだ。
「……シルバー、ありがとう。ちょっと驚かせすぎじゃない?」
私が苦笑いしながらシルバーの首元を撫でると、彼は「当然だ」と言いたげに鼻を鳴らし、また温泉の方へ戻っていった。
「さて、邪魔者もいなくなったことだし。今日はドワーフさんたちに頼まれていた『特製出汁うどん』を打ちましょうか!」
不毛の地だったはずのこの場所は、今や誰も寄せ付けない、世界で一番贅沢な「聖域」になろうとしていた。
「……ふふ、シルバーったら。でも、この平和を守るためには、ただ追い返すだけじゃ足りないかもしれないわね」
私は遠ざかる騎士たちの土煙を見つめながら、手元にある「真珠塩」の小袋を握りしめた。
「このお出汁と塩があれば、この荒野を誰もが羨む場所に変えられる。……よし、まずはみんなのお腹を、もっと驚かせてあげようかな!」
――だがこの時、れいなはまだ知らなかった。
彼女が次に作り出す「一杯の麺」が、大陸中の商人と、歴史に埋もれた伝説の職人たちを呼び寄せる「号砲」になることを。
第10話をお読みいただきありがとうございました!
シルバーの欠伸一つで解決。これぞ「最強の護衛」の風格ですね。
王都側は一度の失敗では諦めないでしょうが、今のれいなの周りにはシルバー以外にも「守りたい」と思ってくれる仲間が山ほどいます。
次回の更新もお楽しみに!




