第11話:『伝説の塩とお出汁が、枯れた大地を潤す。聖女のキッチンから始まる産業革命』
お読みいただきありがとうございます!
おかげさまで累計PVも700を超え、夢の4桁まであと少し……!本当にドキドキしています。
厄介な使者を追い払い、平穏を取り戻した温泉旅館。
そこでれいなが取り出したのは、故郷の魂とも言える「あの麺」でした。
真珠塩と最高のお出汁が出会うとき、荒野に新しい風が吹き抜けます。
村づくりの「要」が「街」へと変わる歴史的な瞬間を、ぜひ見届けてください!
「……聖女様、それは何だ? 白くて細長い、不思議な食べ物だが」
ドワーフの親方ガラムが、私の手元を不思議そうに覗き込む。
私が打っていたのは、伝説の真珠塩を溶かした水で小麦を練り上げ、一晩じっくりと寝かせた熟成生地。それを丁寧に伸ばし、包丁で一定の太さに切り揃えたものだ。
「これは『うどん』。私がいた場所の、魂の料理よ」
煮え滾る大釜に麺を放り込む。
大きな木蓋で対流させながら数分。麺が透明感を帯び、踊るように浮き上がってきたところを見計らって掬い上げ、キンキンに冷えた温泉の湧き水で一気に締める。
「エッジ(角)が立ってるわ……良い出来ね」
器に盛られた麺は、まるで真珠のような光沢を放っている。そこに、昨夜から仕込んでおいた黄金色のお出汁をたっぷりとはった。
「さあ、食べてみて。シンプルだけど、一番自信があるわ」
「……いただくぜ」
ガラムが太い指で器を持ち上げ、豪快に麺をすする。
――ズズッ、ズズズッ!!
「……っ!! なんだ、この弾力は!?」
ガラムが目を見開き、器を持ったまま固まった。
「噛むほどに小麦の力強い甘みが広がり、それをこの……魔薬のようなお出汁が完璧に包み込んでいる! 喉を通る時の、この滑らかな感触……喉越しが止まらねぇぞ!!」
「聖女様……これはもはや料理の域を超えています。このお出汁の深み、まるでお正月の精霊祭で捧げられる聖水のようです……っ」
エルフのリーシャも、普段の気品を忘れて一心不乱に麺をすすり、最後の一滴までお出汁を飲み干した。
ドワーフたちは、食べ終わるやいなや、熱い眼差しで私を見た。
「聖女様、決めたぜ。俺たちはこの味を広めるための『場所』を作る! 洞窟の中だけじゃねぇ。この荒野を、世界中の商人が腰を抜かすような『美食の巨大市場』に作り変えてやる!」
彼らの瞳には、かつて王都で失いかけていた「職人の誇り」が、お出汁の熱気で再点火されていた。
ただの避難所だったこの地が、今、一つの「国」として産声を上げた瞬間だった。
第11話をお読みいただきありがとうございました!
ついに「産業革命(美食街づくり)」が本格的に動き出しました。
本場仕込みの「うどん」の描写、お腹が空いていただけたら幸いです。
さて、次回。
この美味しそうな匂いは、ついに「国境」さえも超えてしまいます。
行列の整理をしていたリーシャが、とんでもない人物を見つけてしまうようで……?




