第7話:『ドワーフに「寝床」を頼んだら、一日で「最高級温泉旅館」が完成していた件』
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前回の「イノシシ肉の塩出汁煮」で完全に胃袋を掴まれたドワーフたち。
彼らに「雨風がしのげる寝床を作ってほしい」とお願いしたのですが……。
どうやら、一流職人の「本気」というものを、私は甘く見ていたようです。
「聖女様、これが俺たちの挨拶代わりだ!」
一夜明けて完成したのは、家というより……?
最果ての荒野に突如現れた「癒やしの楽園」をお楽しみください!
「……ちょっと待って。私、寝る場所を作ってって言ったわよね?」
翌朝。
昨日のお礼に朝食を作ろうと外に出た私は、目の前の光景に、持っていたお玉を落としそうになった。
昨日までただのゴツゴツとした岩山だった洞窟の入り口が、わずか一晩で、見事な木組みと石造りの「門構え」に変わっていたのだ。
「おぉ、聖女様! お目覚めか!」
親方のガラムが、誇らしげに鼻の下の髭を揺らす。彼の背後には、昨日まで行き倒れていたとは思えないほど活き活きとしたドワーフたちが並んでいた。
「寝床なんてのは、ただ寝られりゃいいってもんじゃねぇ。聖女様のメシを食うにふさわしい『器』が必要だろうが!」
「いや、でもこれ……」
案内された中に入って、私はさらに絶句した。
洞窟の冷たさはどこへやら。壁は滑らかな漆喰で塗られ、床には香りの良い木材が敷き詰められている。
さらに、奥からは「コンコン」と心地よい水の音が聞こえてきた。
「まさか……これ、お風呂?」
「ただの風呂じゃねぇ。裏の岩場を掘り進めたら、魔素が浄化された『霊泉』が湧き出ててな。もったいねぇから、露天風呂に仕立てておいたぜ!」
そこには、白煙が立ち上る見事な岩風呂が完成していた。
最果ての荒野を見渡せる絶景のロケーション。湯船の縁には、冷たい飲み物を置くための小さな棚まで備え付けられている。
「……信じられん。王都の最高級スイートルームですら、これほどの情緒はないぞ」
アルベルトさんが、温泉の湯気を浴びながら呆然と呟く。
シルバーに至っては、すでに自分専用に作られたらしい「大型犬用(?)足湯」に浸かって、とろけるような顔をしていた。
「聖女様、極め付けはここだ!」
ガラムが胸を張って指差したのは、私の部屋……ではなく、その隣にある広大なスペースだった。
最新の石造り竈が4つも並び、調理台は使いやすい高さに設計された大理石。
床下には温泉の熱を利用した「床暖房」まで完備された、まさに魔導式・最高級システムキッチンだ。
「これなら、どんな料理でも作れるだろう?」
ドワーフたちがニカッと笑う。
彼らは、自分たちが美味しいものを食べるために、全力を尽くしたのだ。
「……ありがとう。みんな。こんなに素敵な場所にしてくれるなんて」
私は胸が熱くなるのを感じながら、さっそく新品の竈に火を入れた。
「こんなに良いお風呂とキッチンがあるなら、最高に『整う』朝ごはんを作らなきゃね」
今日のお品書きは、真珠塩で一晩漬け込んだ山鳥の「塩焼き」と、温泉の熱でじっくり火を通した「温泉卵のお出汁がけ」。
そして、炊き立ての麦飯。
湯上がりのドワーフたちと、最強の護衛騎士、そして魔獣。
最果ての地の「洞窟旅館」に、今日も幸せな匂いが充満していく。
だが、この時。
私たちはまだ知らなかった。
この場所から立ち上る「あまりにも美味しそうな匂い」が、はるか遠くの森に住む、誇り高き『あの一族』まで届いてしまっていることを――。
第7話をお読みいただきありがとうございました!
ドワーフたちの技術、恐るべしです。一夜にして洞窟が最高級旅館になってしまいました。
美味しいご飯を食べて、温泉に浸かって……。
そんなスローライフを楽しみたいれいなですが、どうやら次なる「お客様」がやってくるようです。




