第6話:『最初の移住者は、お腹を空かせた職人集団!?』
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伝説の塩を手に入れ、さらに守護者ゴーレムまで(餌付けで)手懐けてしまったれいな。
拠点となる洞窟に戻ると、そこには意外な先客が待っていました。
「……腹が減って、もう一歩も動けぬ……」
岩陰で倒れていたのは、立派な髭を蓄えたドワーフたち。
どうやら彼らも、王都の「味のしない食事」に絶望して逃げ出してきたようで……?
聖女の出汁×伝説の塩。
最強のコンビネーションが、職人たちの魂に火をつけます!
「シルバー、ただいま! ……って、あら?」
真珠塩を抱えて洞窟に戻った私を待っていたのは、シルバーの歓迎の遠吠え……ではなく、地響きのような「グゥゥゥ〜……」という、盛大な腹の虫の音だった。
洞窟の入り口付近、岩陰に固まって倒れ込んでいるのは、背は低いが横幅の広い、筋肉質の男たち。
土に汚れた立派な髭と、背負った大きなハンマー。
「ドワーフ……? アルベルトさん、これって」
「あぁ。見たところ、王都お抱えの建築職人団のようだ。なぜこんな最果ての地に……」
アルベルトが駆け寄り、一人のドワーフの口に水を差し出す。
ドワーフの親方らしき男は、力なく目を開けると、ひび割れた声で呻いた。
「……メシだ……。味のする、まともなメシを食わせてくれ……。王都のメシは……あんなものは、もう食い物じゃねぇ……」
どうやら彼らも、例の「王都の食卓崩壊」の被害者だったらしい。
体力自慢のドワーフにとって、味も栄養も感じられない今の王都の食事は、死刑宣告に等しかったのだ。
「わかったわ。今すぐ作るから、待ってて!」
私はすぐさま火を起こした。
手元には、最高級の『真珠塩』と、シルバーが獲ってきた野生のイノシシ肉、そしてアルベルトが採集してくれた肉厚の山菜。
(塩が良ければ、シンプルな料理が一番映える!)
鉄鍋でイノシシ肉をじっくりと炒め、溢れ出した脂に直接『真珠塩』を振りかける。
そこに一晩寝かせておいた濃厚な一番出汁を注ぎ込み、山菜と一緒に煮込む。
味付けは、塩と出汁。それだけ。
けれど、立ち上る湯気は、暴力的なまでに食欲をそそる芳醇な香りを纏っていた。
「……なんだ、この匂いは……っ」
死に体だったドワーフたちが、一人、また一人と鼻をピクつかせ、ゾンビのように起き上がってくる。
「はい、召し上がれ! 『イノシシ肉と山菜の塩出汁煮』よ」
木の器に盛られた黄金色のスープ。
親方が震える手でそれを口に運ぶ。
「――っ!?!?!?」
目を見開き、ドワーフの親方は絶句した。
噛みしめるたびに溢れる肉の旨味。それを、真珠塩の透き通った塩気がキリリと引き締め、最後に出汁の深い余韻が喉を駆け抜ける。
「……う、うめぇ……! 生きてる……俺ぁ、今、生きてるぞぉぉ!!」
親方が叫ぶと、他のドワーフたちも競い合うようにスープを啜り始めた。
「王都のスープは錆びた釘の味だったが、これは……これは神の雫だ!」
「この塩、伝説の塩湖のやつか!? 信じられん、こんなに甘い塩があるなんて!」
涙を流して完食したドワーフたちは、食べ終わるやいなや、私に向かって一斉に頭を下げた。
「嬢ちゃん……いや、聖女様! 俺たちをここで使ってくれ! このメシが食えるなら、この最果ての地に、王都より立派な城だって建ててやる!」
「ええっ、城!? いえ、まずはみんなが寝泊まりできる家からお願いしたいんだけど……」
「任せとけ! 腕が鳴るぜ!」
こうして、私の村に「最強の建設チーム」が加わった。
美味しい匂いに誘われて、最果ての荒野に少しずつ、けれど確実に『国』の形が出来上がりつつあった。
第6話をお読みいただきありがとうございました!
ドワーフたちの胃袋も、無事に(?)ガッチリ掴んでしまいましたね。
職人の手が加われば、洞窟生活も一気にグレードアップするはず。
ですが、急速に発展するこの地を、王都側が放っておくはずもなく……?




