第60話:『未来都市のフランチャイズ化は大成功。……って、一仕事を終えた夜のキッチンで、シン君の距離感がバグってます』
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ネオサヌキの巨大企業を下請け(笑)にし、ひと段落ついた我が店。
今夜は、新装開店の片付けを終えた、少し静かな夜のお話です。
いつもよりちょっと「糖度マシマシ」でお届けしますので、
お出汁の湯気で顔を赤くしながらお読みください!
「ふぅ……。これで、ネオサヌキの全セクターへの配送ルートも完璧に整備されたわね」
電脳世界との通信を閉じ、私はサテライトキッチンのカウンターに寄りかかって、大きく深呼吸をした。
一時はどうなることかと思った「時空管理者」の襲来から、メガコーポとのビジネス交渉まで。激動の数日間だったけれど、私たちの『空飛ぶうどん屋』は、また一つ大きな壁を乗り越えたのだ。
見上げれば、シン君がデザインしてくれた新しい黄金のロゴ看板が、異世界の美しい月明かりに照らされて静かに輝いている。
「本当にお疲れ様、店長。レイナの作るお出汁の魅力は、科学技術が発達した未来の世界すらも、一晩で変えちゃったね」
いつの間にか、すぐ隣にシン君が立っていた。
いつも通り、胸元に新ロゴが綺麗にプリントされた特製エプロンを身に付けているけれど、その表情はいつもの悪戯っぽい「バイト君」のものではなかった。
深く、吸い込まれそうなほど神々しい黄金の瞳が、じっと私を見つめている。
「……シン君? どうしたの、そんなに改まって」
「ううん。ただ、こうして店長と一緒に、新しい看板を掲げて、新しい場所へうどんを届けられるのが……すごく嬉しいなと思ってさ」
シン君が一歩、距離を詰めてくる。
静まり返ったキッチンに、トントン、と彼のエプロンの紐が揺れる小さな音が響く。近い。いつもより圧倒的に距離が近い。心臓がトクン、と跳ね上がる。
「あのね、レイナ。僕は『創世の神』なんて呼ばれて、この世界のシステムを創ったけれど……そんな退屈なプログラムよりも、店長が一生懸命に茹で時間を計っている横顔を見ている方が、何万倍も価値があるって本気で思ってるんだ」
シン君の手が、そっと私の頬に触れた。彼の指先から、心地よい体温が伝わってくる。
「だからね、世界がどれだけ広がっても、電脳世界と繋がっても……店長の隣の『特等席(一番の常連)』は、絶対に誰にも譲るつもりはないから」
月光に照らされた彼の顔が、ゆっくりと近づいてくる。
未来都市のネオンよりも綺麗な黄金の瞳に、顔を真っ赤に染めた私の姿が映り込んでいた。
「……あ、あのね、シン君! 次のメニューの『サクサク大エビ天』、シン君の分は特別に大盛りにしてあげるからっ!」
恥ずかしさに耐えきれず、私が思いっきり明後日の方向のトッピングの話を叫ぶと、シン君は一瞬目を見開き――それから、いつも通りの悪戯っぽい、けれど最高に愛おしそうな笑顔を咲かせた。
「あはは! やっぱり店長には敵わないな。うん、楽しみにしてるよ、レイナ」
新ロゴの看板の下、私たちの絆は世界を超えて、さらに深く結ばれていく。
胃袋も、そして心も完全にハッキングされた創世の神様とのうどんライフは、まだまだこれからが本番のようだった。
第60話をお読みいただきありがとうございました!
祝・60話記念回!ということで、シン君の独占欲がちょっと溢れてしまう夜でした(笑)。
照れてエビ天の大盛りで誤魔化すレイナも、我ながら書いていてニヤニヤしてしまいました。
次は1時間後、第61話!
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