第57話:『ネオサヌキの全セクターへ一斉デリバリー。ディストピアの飯(チューブ)は、お出汁の前に完全敗北しました』
皆様、いつも本当にありがとうございます!
新タイトルにしてから、PVのグラフがさらに右肩上がりで嬉しい悲鳴を上げております。
本日は、ネット掲示板が大炎上した結果、
ネオサヌキ全域から殺到した注文を一気にさばく大作戦!
合成プラスチックのようなディストピア飯を食べてきた未来人たちの脳を、
職人直伝の「黄金お出汁」で完全にハッキングしに行きます!
「おいおいおい、マジで空を埋め尽くしてやがる……!」
ネオサヌキ・第3セクターの超高層ビルの窓から外を見ていたサイバーギャングの構成員が、咥えていた合成タバコを床に落とした。
ギラギラと輝くネオン広告の海を掻き分けて、夜空から一斉に舞い降りてくる数十、数百の黒い影。
それは、ネオサヌキの最新鋭セキュリティドローンを圧倒する速度で飛行する、異世界の最強モンスター――ワイバーンの大部隊だった。
「ギャアァァァッ!」
一糸乱れぬ完璧なフォーメーションで、タワマンのバルコニーや路地裏のジャンク屋の前に着陸していくワイバーン特急便。
彼らが背負った魔導保温ボックスが開けられた瞬間、冷え切ったサイバー都市に、かつてない大音量の『飯テロ』が炸裂した。
フワァァァァァン……!
伊吹いりこと鰹節、そして最高級醤油が完璧に調和した、あまりにも温かく、あまりにも芳醇な黄金お出汁の香り。
その香気は、都市の換気ダクトを通じて、ネオサヌキ全域へと一瞬で拡散されていった。
「な、なんだこの匂いは……! 脳の嗅覚センサーが、未検出の『幸福物質』を感知してエラーを起こしているぞ!?」
「これが……これが掲示板で噂の『うどん』なのか!?」
飢えた未来人たちが、こぞってワイバーンから丼を受け取る。
彼らが普段食べているのは、栄養素だけを詰め込んだ無機質な合成プロテインのチューブや、パサパサの遺伝子組み換え固形肉。
そんなディストピア飯で麻痺していた彼らの舌に、茹でたてのモチモチ麺と、黒炎竜のジューシーな肉、そして優しさが五臓六腑にしみわたる熱々のお出汁が流れ込んだ。
ズズズ、ズズズズズッ……!!!
都市の至る所で、麺を啜る凄まじい爆音が響き渡る。
「美味い……美味すぎる……! なんだこの麺の弾力は! 我々のサイバー筋肉繊維よりも圧倒的にコシがある!」
「お出汁が……お出汁の旨味が五臓六腑に染み渡って、涙が止まらない……! 私は今まで、一体何を食べて生きてきたんだ……!」
一晩にして、ネオサヌキの食文化は「空飛ぶうどん屋」によって完全に制圧された。
住民たちはチューブ飯をゴミ箱に投げ捨て、こぞって店長(私)のロゴ入りエプロンを着たワイバーンたちを「お出汁の神の使い」と崇め始めたのだ。
サテライトキッチンのモニターでその様子を見ていた私は、ほっと胸を撫で下ろす。
「よし、全セクターへのケータリング、1件の遅延もなく完了ね! 魔王様もワイバーン部隊もお疲れ様!」
「ハハハ! 痛快なり! 電脳世界の者どもが、一斉に我がエプロン姿に向かって平伏していく様は、魔界を統べる以上の快感であったぞ!」
魔王バラドがご満悦で腕を組む。
だが、そんなお祭り騒ぎの通信網の奥深くで、一つの『巨大な影』が静かに動き出していた。
ピッ。
魔導端末の画面が突如として強制ジャックされ、ネオサヌキを支配する最大手の食品メガコーポ『ネオ・フード・インダストリー』のCEOのホログラムが浮かび上がる。
『……警告する、異次元のうどん屋。貴殿らの配る「お出汁」は、我が社の合成食糧シェアを99%破壊する違法なバグデータだ。これ以上の営業は、我が社の私設軍隊をもって、物理的に「消去」させてもらう』
冷酷なビジネスの敵が、ついに牙を剥いてきた。
しかし、私の隣で新ロゴの看板を磨いていたシン君は、めんどくさそうに片目を細めて笑った。
「へえ、私設軍隊ね。……店長、次の新メニューは『サクサクの巨大天ぷら』にしようか。あいつらの装甲車、ちょうどいい揚げるための『型』になりそうだから」
電脳世界の巨大企業VS異世界の聖女&建国王。
お出汁の市場独占を巡る、前代未聞のビジネス(?)バトルが幕を開ける!
第57話をお読みいただきありがとうございました!
ネオサヌキのチューブ飯、我が店のお出汁の前に完全敗北です(笑)。
しかし、利権を脅かされた巨大メガコーポのCEOが黙っていませんでしたね……!
第58話!
攻めてくるメガコーポの超ハイテク装甲車。
それを見た店長(あ、間違えた、れいな店長)が、「ちょうどいい天ぷらの型を見つけたわ」と職人の目で微笑んで――!?
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