第56話:『ネオサヌキに轟く爆音。サイバーパンクな電脳都市に、魔王軍のワイバーン特急便がガチで着陸しました』
皆様、いつも本当にありがとうございます!
タイトルとあらすじを新装開店仕様にリニューアルし、我が『空飛ぶうどん屋』はさらにパワーアップしました!
本日は、謎の電脳世界『ネオサヌキ』からの初オーダー。
注文主は、掲示板でうちのメニューをバグだと言っていた「名無しの料理人」さんです。
ネオン光るサイバー都市のど真ん中に、漆黒のワイバーンが最高速度で突っ込みます!
『オーダー承認。次元座標α-001、転送ゲート、オープン――!』
魔導端末が激しく電子音を鳴らすと同時に、キッチンの前に巨大な『光の円環』が出現した。その向こうに見えるのは、空を覆うほどの巨大なホログラム広告と、怪しいネオンがギラギラと輝く、見たこともないサイバー電脳都市の夜景だ。
「よし、魔王様! 準備はいい!?」
私が叫ぶと、新ロゴ入りの特製エプロンをバシッと叩いた魔王バラドが、不敵に牙を剥いた。
「ククク……任せておけ、聖女れいな。この『黒炎竜の肉うどん』、1秒の遅れもなく届けてみせよう。おい、我が軍の精鋭たちよ! 速度を落とすな、次元を音速で突破せよ!!」
ギャアァァァァッ!!!
魔王の号令とともに、保温・耐衝撃魔法を完璧に施された「うどんボックス」を背負った特攻ワイバーンが、光のゲートへと猛然と飛び込んでいった。
◇
一方、並行電脳セクター『ネオサヌキ』のチュウオウ区。
路地裏のジャンク屋でデリバリーアプリを弄っていた青年、通称『名無しの料理人』は、合成プロテインのチューブを齧りながら、ハッカー用のゴーグル越しに画面を眺めていた。
「ハッ、やっぱりバグか。注文は通ったみたいだけど、配達員の現在地が『異次元・魔王城サテライトキッチン』って……どんな高度なタチの悪いジョークだよ」
ネオサヌキの食事は、今や機能性だけの味気ないディストピア飯ばかり。本物の「出汁」や「小麦のコシ」なんて概念は、とうの昔にロストテクノロジーとなっていた。
「まあ、どうせ配達なんて来やしな――」
ドゴォォォォォンッ!!!!
「うおわぁぁっ!? な、なんだ、テロか!?」
突如、ネオン看板が乱立する高層ビルの隙間を縫って、凄まじい爆風が巻き起こった。
ホログラムの歌姫がノイズでブレる中、夜空から轟音と共に舞い降りてきたのは、サイバー都市のドローンなんかよりも遥かに巨大で、凶悪な漆黒の鱗を持つ生きた竜――ワイバーンだった。
「ギチチチチッ!」
「ひ、ひえっ……!? か、怪獣……!?」
腰を抜かす青年の前に、ワイバーンは完璧なブレーキングで着地。
そして、背中のハイテク(魔導)ボックスから、1滴のスープもこぼれていない、信じられないほど芳醇な香りを放つ漆黒の丼を、器用に爪でつまんで差し出してきた。
『お待たせしました。空飛ぶうどん屋デリバリーです。……代金は電子マネーが使えないので、そこのジャンクパーツの魔導コアでいただきますね』
ワイバーンの頭上に設置されたスピーカーから、シン君の爽やかな拡声音声が響く。
手渡された丼からは、ネオサヌキの人間が一度も嗅いだことのない、伊吹いりこと濃口醤油、そしてジューシーな肉の香りが爆発的に立ち上っていた。
「これ……合成化学物質じゃない……。本物の、本物の『飯』だ……!!」
青年が震える手で箸を取り、ネオンの光に照らされるスープを一口啜った瞬間、ネオサヌキの電脳ネット掲示板に、歴史を揺るがす大バグ(衝撃)が書き込まれることになるのだった。
第56話をお読みいただきありがとうございました!
サイバーパンクな都市にガチのワイバーンが着陸するシュールさ、書いていて最高に楽しかったです(笑)。
次は1時間後、第57話!
本物のうどんの味を知ってしまった電脳都市の住人たち。
「あの謎の出汁をデリバリーしろ!」と、ネオサヌキ中のハッカーやサイバーギャングから注文が殺到して、サーバー(端末)がガチで大炎上!?
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