お姉さんと柴犬だぞ!!
いつもの公園を僕は、散歩していた。
以前、この周辺をナターシャとジョギングした(※第3話参照)事を、思い出した。
とはいっても、僕が昏睡状態の時の夢の可能性もあるのであるが・・・。
それでも僕には、ナターシャは確かに存在していたという自身はあった。
何気に道を歩いていたのだが、見覚えのある人物が僕の目に入ってきた。
いつかの柴犬(※第12話参照)を引き連れて、とても綺麗な女性が歩いてきた。
確かに以前に、僕は柴犬を助けた。
そして、その飼い主と思われるとても綺麗な女性が、アパートに訪ねてきた。(※第12,13話参照)
しかしそれは僕が事故にあって(※第1話参照)、3ヶ月も昏睡状態になっていた間の話である。
つまり、現実世界ではこの柴犬と女性とは出会っていなかった、ということになる。
流石に彼女に声を掛ける勇気は、僕には無かった。
僕はそのままなにも言葉を交わすこともなく、女性とその柴犬とすれ違おうとしていた。
「数彦様・・・・・。」
呟くような声が、僕の背中にかかってきた。
「え!?」
僕は慌てて振り返った。
そのとても綺麗な女性は、僕の顔を見つめてスッと直立していた。
考えられない・・・・・、彼女とは僕が昏睡状態で出会ったのだ。
現実でもその関係が変わらないなど、どう考えても説明がつかない。
「数彦様・・・。
貴方にとって、ナターシャ様は大切な御方なのですよ・・・。」
彼女からの意外な言葉に、僕は自分の頭の回転が追いつかなかった。
「ええ・・・・。
アンタは一体??」
僕はなんと彼女に言えば良いのか、適切な表現が思いつかなかった。
その綺麗な女性は、慌ててシドロモドロな状態にある僕に対して、優しげな笑みを浮かべていた。
「数彦様・・・・。
貴方は、ナターシャ様に再び会いたいのでしょう・・・?」
彼女はまっすぐに、僕の瞳を見つめていた。
その彼女の、態度に僕は答えなければいけない、と思った。
「・・・・・・・はい・・・。」
僕は正直に、返事をした。
「だったら・・・・。数彦様・・・。
貴方のルーツをお訪ねになったら、よろしいかと存じます。」
その綺麗な女性は軽く僕に対してお辞儀をして、意味深な事を言った。
「ルーツ・・・・・・?」
僕は彼女の謎かけ的な事に、考えを張り巡らせようとしていた。
「数彦様・・・。
くれぐれも、ご後悔のなさらないように・・・・。」
その綺麗な女性の顔を見返したつもりだったが・・・、彼女の姿はもうどこにも見あたらなかった。
(!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)
僕の視線の先には、さっきの綺麗な柴犬が一匹だけで姿を消していく様子がみられた。




