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星歌の魔力属性

「これより第2試合場によるクラス分け試験を行う! 

 試合数は全部で30戦だ。」

 

 ソーサレス魔導学園の先生方による試合の注意事項が言い渡される。


「尚、今回の試験は相手の胸に付いているバッチを先に破壊した者が勝者となる」

 

 何でもこの方法が昔からの伝統なんだとか。


「1年生は不正行為のないよう、在校生はなるべく手を抜かないようにする事!」

「それでは早速試合を始める!」

 

 先生のその言葉と同時に、会場は熱気につつまれた。

 僕は頭上に設置された、対戦の組み合わせが書いてある電子パネルを見る。


『えーっと星歌は…… 5番目か』


 僕はしっかりと順番を確認して備える。


 後で「見てませんでした。」


なんて行ったからには殺されるだろうからね。

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 と、第1試合が早くも始まっていた。

 

 ハンドガン型の魔兵器を持った1年生が第2試合場の特徴でもある障害物に隠れて、槍型の魔兵器を持った先輩の隙を伺っている。

 先輩は常に周囲に警戒を巡らせていて、なかなか隙を作らない。流石3年生だ。


『この勝負、先に動いた方が負けるな』と僕は思った。


 その直後、1年生が動く。

 まるで強襲するかのようなそれは、一見この均衡した状態を打破する良い案だと思われるが、それは経験値が自分と同じ相手にのみ有効な技だ。

 その証拠に先輩はニヤリと笑いながら槍を構える。

 まるで「そう来ると思ったぜ」と言うかのように……。

 1年生が魔弾を放つ。バッチを狙ったその攻撃は、まっすぐに先輩の胸元へ向かう。

 その時、先輩が僅かに光った。

 自分の魔力を使ったのだろう。構えていた槍が燃え盛る。

 その槍で軽く周りを薙ぐと、魔弾が消えていた。

 それに対し、1年生が一瞬ではあるが唖然とする。だがその一瞬を見逃す先輩ではない。一気に距離を縮め、バッチを破壊した。

 

 そこで、試合の終了を告げるブザーがなった。


「そこまで! 勝者、赤サイド!」


『おぉおぉー!』と観客が声をあげる。第1試合が開始5分で終った。


『なるほど。あの先輩の魔力属性は《火》か。』


 属性自体は珍しいわけではないが、1番汎用性が高く、応用のきく属性だ。

 対して1年生の方は悔しそうにしている。だが、あのバッチを正確に狙える技術はなかなかのものだ。それにこの勝負は勝ち負けで決まるのではないので、


『そんなにしょげることないよ!』と僕は心のなかで慰めておいた。


「では続いて第2試合を行う!」


 先生方は今の1年生の評価が終ったのか、そう告げた。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ 


 そうして試合は進んで行き、遂に星歌の番になった。


「では、第5試合を始める!選手は速やかに入場しろ。」

 

 会場の赤側から星歌が入場してくる。肩にはいつものライフル型の魔兵器を担ぎ、首にはヘッドホンを掛けている。

 そして青側からは1年生がやってきた。その子も星歌と同じ狙撃手なのか、ライフル型の魔兵器を持っていた。

 毎度お馴染みである試合前の注意事項が二人に言い渡される。

 その間、星歌は周りをうろちょろと見渡していた。


『なにやってんだあいつ?』


 星歌は僕と目が合うと、どこかホッとしたような表情を浮かべ、そこから真剣に先生の話を聞き出した。


「それでは試合を始める!」


 ブザーの音がなり、試合が始まった。


 まずはお互いに距離をとり始めた。

 言わずと知れたことだが、ライフルは近距離の相手は撃てない。ましては星歌の魔力属性なら尚更だ。

 やがて互いに良い位置を見つけたのか、動きを止めた。


『ここからが正念場だな……』


 見ている僕も緊張するような空気が流れる。

 一瞬でも体を出したら撃たれるという恐怖感、集中を切らさない精神力。スナイパーの戦いは他の戦闘よりも時間と労力を使うのだ。

 ここで1年生が魔力爆弾を投げる。

 おそらく星歌を移動させ、その隙を狙う作戦なのだろう。


 聞くだけで逃げ出したくなるような爆弾の音が、会場に響く。


『あれは移動せざるを得ないな』


 と僕の予感は的中。星歌がどんどん相手から離れていく。


 ここで1年生は爆撃を中止した。

 普通、爆弾などの直撃を回避するときは、左右に動くものだ。

 なのになぜ、わざわざ命中率の低くなる後ろへ逃げるのか? と僅かな違和感を感じたのだろう。


 僕は心のなかでその疑問に答える。


『それが星歌の魔力属性なのさ』


 やがて星歌は1年生と対角線上― 1番離れた場所で動きを止めた。そこで星歌がライフルを構える。

 相手は


「そんなところから撃てるか」


 とバカにするように余裕の表情を浮かべる。

 しばらくして、星歌がいつも首に着けているヘッドホンを耳へと動かす。

 直後、彼女が僅かに光り始めた。

 星歌はいつも狙撃するときには必ずあの仕草をする。恐らくあれが魔力属性を使うトリガーなのだろう。

 

 静寂な会場の中で、1つの発砲音が鳴り響く。

 

 途中の障害物や距離的にみて、通常なら絶対に相手へと届かない状況。

 にも関わらず星歌は引き金を引いた。

 圧倒的な長距離から放たれた1発の魔弾は、当然ではあるが障害物に突っ込む形になる。

 これでは相手に当たらない。誰もがそう思ったことだろう。

 

 しかし、そうなる直前……


 魔弾は障害物を〔すり抜けた〕

 

 まるでそこに最初から何もないような、弾は減速せずにむしろ加速してゆく。

 

 これこそが星歌だけが持つ魔力属性《俯瞰》の効果だった。


 その属性の効果は

〔相手からの距離が遠ければ遠いほど自身の身体能力や技の威力、その命中率が上がる〕というもの。

 要するに、相手から距離をとればとるほど、ダメージが大きくなるという魔力のなかでも取り分け珍しいものなのだ。

 相手の1年生へと魔弾が迫る。

 彼女は明らかに動揺していた。

 我にかえり、避けようとするがもう遅い。


 バッチの割れる音が会場に響いた。

 

 星歌の放った魔弾の威力はそれに収まらず、さらに1年生を吹き飛ばす。


「試合終了!勝者赤サイド!」


 先生がそう告げる。

 ややあってから


「うおおぉぉぉ!!!」

 

 と、会場が一気に盛り上がった。

 

 見ていた僕は、星歌に


「お疲れ様」と声をかける。

 

《俯瞰》の属性効果で聴覚が飛躍的に上がっている星歌は、僕の声を聞き取り、


「お腹すいた」


 となんとも気の抜けたセリフ。


『やれやれ……』


 と肩をすくめる僕だったが、

 心のなかではこの幼なじみを誇りに思っていたのだった。

遅れて申し訳ございませんでした。

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