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暇人ぼっち男

 試験当日の朝……



 僕はいつもより1時間早起きして台所に立っていた。

 理由は単純。今日の試験ボランティアを頑張る星歌のために、お弁当を作るからだ。

 先日、星歌に


「明日のお弁当の中身は何が良い?」


 と聞いたところ、案の定


「ポテトサラダ」


 と即答していた。


『しかし、ただポテトサラダを詰めただけでは栄養バランス的にも、ビジュアル的にもよろしくないしなぁ……』


 お弁当箱の蓋を開けたら中身が全部ポテトサラダだなんて、考えただけでも恐ろしい。


「……よし!」

 

 僕は気合いを入れて作り始めた。

 食欲魔神との戦いが、今始まる……!


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ 


 約2時間後―



「キョースケおはよう」

「お、おはよーさん……」


「キョースケなんか疲れてる?」

「い、いや! 目の錯覚じゃないか?」

 

 サッと僕は右腕を背中に回す。

 星歌が小首をかしげながら、こちらをジーっと見てきた。


「おいおい、そんなにジロジロ見るなよ」

「だって何か隠してるでしょ?」

「隠してないよ!」


 僕は、ポテトサラダの混ぜすぎで筋肉痛になった右腕をなるべく星歌に見られないよう配慮しながら、朝ご飯の準備をする。


「それより星歌。寝癖が凄いことになってるぞ」

 

 先程から思っていたが、彼女の髪は凄いことになっていた。

 ショートカットのエメラルドグリーンの髪は、何かのホラー映画に出てきそうなビジュアルをしている。

 僕がクスクス笑っていると


「直してくる」


 と、まだ寝ぼけ眼でそう言い、洗面所へ向かっていった。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 朝食を食べ終えたあと、歯を磨いたり、制服に着替えたりしているとあっという間に家を出る時間になっていた。


「キョースケ遅い。先行っちゃうよ?」

「はいはい。今いきますよ~」


『鍵も閉めたし、忘れ物はないな。』


 玄関前で一通り確認した僕は家をあとにした。



 最寄りの駅まで徒歩で行き、電車に揺られること約40分。

 ソーサレス魔導学園前駅で降りた僕たちは、猛ダッシュで学園に向かっていた。


「おい! 試験の日は登校時間が1時間早くなるのなんで忘れてんだよ!」

「キョースケこそ忘れてた。私の責任じゃない」


 駅から学園まではおよそ15分。すでに登校時間の5分前を切っていた。


「キョースケが家を出るのが遅かったからだよ」

「そんなに大差なかっただろ!」

「キョースケのノロマ!」

「なんだと! お前こそ駅地下のコンビニでポテサラサンド買ってただろうが!」


 と不毛な責任の押し付け合をしながら走る。


『これはヤバいな。人生初の遅刻かも』


 と僕が覚悟をし、星歌を見ると


 「あ! これ美味しい!」


 何と彼女は、今朝の駅地下で買ったポテサラサンドを食べながら走っていのだ。


「今食うんじゃねぇ~っ!!」


 僕の悲痛な叫びが、朝の青空に響いた。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


「な、何とか間に合った!」


 指定の時刻のギリギリ5秒前にクラスに着いた僕は


「に、人間やればできるもんなんだな」


 と息をぜえぜえしながら星歌に言うと、


「流石私たち!」


 と誇らしげにそう言った。


『てかこいつ…… なんでそんなケロっとしてるんだ?』


 いや、今はそれにツッコむ体力もない。

 うへぇと自分の椅子に座る。

 と、ほどなくして担任である島村先生がやって来た。


「よーしっ! 朝のホームルームを始めるぞ! ってどうした坂本!?」

 

 島村先生が僕を見てそう言う。


「い、いえ…… なんでもないです……」

「キョースケは今日遅刻しそうになってた」


 と星歌が先生にチクる


『お前もだろ!』


 僕は心のなかで叫んだ。


「なるほどな。そんなんで今日のボランティアやれるのか?」

「いえ、僕は参加しないので大丈夫です」

「何言ってんだ?  お前は1人に指名されてるぞ」

「え?」

「へ?」


 ・・・ ・・・


 しばらくの沈黙があってから、


「あの―、僕聞いてないんですが」

「あれ?言ってなかったか?」

「言ってないですよ!」

 

 僕は先生を半ば呆れながら睨む。

 それに気づいた先生は、ウインクしながら舌を出して


「ごめんちょ!」

「おいこのやろう!」


『マジかよ!本当に聞いてないんだが……』


 ともかく、一端情報を整理する。


「本当にいるんですか? 僕なんかを指名してくる好き者は」

「あぁ。試験試合は6時からだ」

「6時!? またなんでそんな時間に?」

「お前を指名した生徒による申請だ」


 普通、試験を受けるのは昼間の明るい時間帯なのだが、


『何か事情があるのだろうか?』

 

 考えたが全く見当がつかないのでやめた。


「取り敢えず理解はしたな?」

「まぁ一応は」

「では時間になったら第3試合場にこい」


 先生はそう言うと話は以上だ。とそのまま教室を出てしまった。

 残された僕は


「めんどくさー」と呟く。


『どうしよう。断れないかなぁ…… でも真面目な試験だから勝手なことは出来ないし、


「キョースケ」


そもそもなんで6時なんだ?

やるならもっと早い時間にすれば


「キョースケ!」


 イテッ。頭にチョップされた!

 僕は頭を擦りながら


「なんでしょうか?」

「私そろそろ行くから」

「おぉそうか! 応援いくからね!」

「うん。約束」

 

 星歌と指切りをする。昔から約束事があるとこうしてきた。

 それが終わると、彼女はいつものライフルを背負って教室をででいった。

 ちなみに現在Xクラスに所属している生徒は僕を含めた3人だけで、なおかつその内の1人は休学中で学園には来ない。

 つまり星歌がいなくなると教室には僕だけになってしまうわけだ。


『星歌の試合が始まるまで何してよかなぁ』


 しばらく考えたのちに


『……寝るか』


 やることも友達もいない暇人ぼっち男は、早くも最終手段の眠りについたのだった。



 約40分後、スマホに設定したアラームで起きた僕は星歌の試合会場である第2試合場に向かった。


『ちょっと早く来すぎたかな?』


 そこに到着するとまだ人はまばらで、それほど混んでいなかった。


『まぁどうせなら1番前の席で見させてもらいましょうかね』


 よっと席に座る。時計を見るとまだ試合まで15分あった。


『流石にもう寝れないな』


 と第2試合場の特徴でもある廃墟を模した造りを眺めていた。

 

 この学園には全部で10つの試合場があり、それぞれで造りが異なっている。

 例えば、今いる第2試合場は障害物が多く、スナイパーなど長距離の攻撃が得意な生徒が有利になり、僕が6時に行く予定の第3試合場は最も狭く、近距離攻撃が得意な生徒が好む造りになっている。


『つまり僕を指名した生徒は近距離攻撃が得意ってことか?』


 と、考えている間に試合開始まであと5分を切っていた。


『まぁいいや。とにかく今は星歌の試合を見よう』

 

 僕は頭を切り替えて、試合に向けて集中した。

今回は長めになってしまいました。


次から試合です。やっとかよと思うかたもいるでしょうが、よろしくお願いします!

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