第12話 『お婿さん探しの旅』
翌朝。シュンとネカは馬車に乗って街を出た。
不特定多数が乗る乗り合い馬車ではなく、二人だけの貸し切り馬車である。
ネカがシュンに尋ねる。
「一番近い町や村まではどのくらいなんですか?」
「馬車で二、三時間くらいらしい。寝ててもいーぞ」
「ありがとうございます。でもいまはあまり眠くないので、その……」
「俺と話したい?」
「……はい」
照れたネカがうつむきながら答える。
可愛いなと思いながらシュンが言った。
「じゃなに話す? なんか聞きたいこととかある?」
「そういえば、シュンさんの生まれたとことか聞いたことありませんでしたけど……。どこの出身のかたなんですか?」
「俺の出身? 皇国っていえば分かる? この共和国の隣の、国技がスキルの国」
「あ、はい、分かります。魔法とは別の力が使える人達がいる国、ですよね?」
「そ。俺の『バタフライエフェクト』がそうであるように、ほとんど超能力みたいなスキルを使う国」
「へえ……」
ネカは彼の情報を頭に刻み込む。
「ネカは? 魔法を使ってるのは知ってるけど、スキルは使ってんの見たことないな?」
「あ、はい、わたしはスキルは使えないんです。魔法だけで」
「ってことは王国か帝国辺りの生まれか?」
「王国ですね。王国の外れにある森の、エルフの村で生まれました。それで魔法の才能を見込まれて、魔導の塔に行くことになって、そこで数年修行して……。賢者の称号をもらって、冒険者として活動することになったんです」
「ふーん。故郷に帰ろうとは思わなかったの?」
「お母さんやお姉ちゃん達が……」
ネカは落ち込んだ声をこぼす。
彼女の様子を見て、シュンは彼女の家族になにかあったのだと思った。
「もしかして家族を亡くしちまってたか? だとしたらすまん、嫌なこと思い出さ……」
「お婿さんを見つけるまで帰ってくるなって……」
「…………」
座りながらシュンはずっこけそうになった。
「もしかしてあの街にいたのも?」
「……そんな簡単にお婿さんなんて見つけられるわけなくて……それで各地を放浪している間に、あのかた達と出会ってパーティーに入ることになって。いまに至るというわけです……」
「あー、なる」
ネカは家族に文句を言う。
「まったく、お母さんもお姉ちゃん達も勝手なことばかり言って。だいたいお姉ちゃん達だって独身のくせに……っ」
「まーまー。で? お婿さんは見つかったの?」
「見つかりませんって。だからもう、帰らなくてもいいかなって思い始めてたり」
「ふーん。好きな人とかもいないの」
「す……っ⁉」
ネカの顔が少し赤くなった。あたふたしながら答える。
「い、いませんよっ⁉」
「へえー。じゃー俺がネカのお婿さん候補に立候補したり?」
「な……っ⁉」
「なはは、じょーだんじょーだん。そんな大事なことをこんな簡単に決めちゃダメだしな」
「……っ……⁉」
ふわぁとシュンがあくびをする。
「なんか眠くなってきちまった。朝早かったし、馬車の揺れが心地良いからかな? ちょっと寝るわ、おやすー」
そう言って、シュンは目をつぶって窓枠に頭を寄せる。
すぅすぅとすぐに寝息を立てる彼を見つめて、
「……シュンさんのばか……」
とても小さな声でネカはつぶやいた。
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