第四話 村が動く/電源・冷却・保守
朝。
悠真が目を覚ますと、村の様子がまた変わっていた。
昨日までなかった建物が、いくつも並んでいる。
「……増えたな」
門の数も増えている。
計算所も増えている。
書庫も大きくなっていた。
そして今日は、そこへ向かう人々の数が明らかに多い。
悠真は人の流れについていった。
最初に見つけたのは、大きな建物だった。
中から湯気が出ている。
「ここは?」
「食堂です」
中では大量の食事が作られていた。
算術士が来る。
書記が来る。
伝令も来る。
門番まで交代で食事を取っている。
悠真は眺める。
「計算する人にも食事が必要だから?」
「はい」
「なるほど」
それだけなら普通の食堂だ。
しかし、悠真はふと気づいた。
食堂の裏側に、大量の燃料が積まれている。
火が使われている。
水も大量に使われている。
そして、食事を作るための人員もいる。
「……」
計算機を動かすために、計算しない人間も必要になる。
悠真は少し納得した。
その先には、水路があった。
かなり大きい。
水が絶えず流れている。
「何の水路?」
「冷却用です」
「冷却?」
「計算所が熱くなりますので」
悠真は計算所を見る。
中では算術士が大量に計算している。
人が増えれば、当然熱も増える。
水路から水を引き、建物の周囲を通す。
熱を逃がす。
そして温まった水を別の場所へ流す。
悠真は水路を眺めた。
「計算するだけでも、熱の問題が出るのか」
算術士は今日も黙々と計算している。
さらに進む。
今度は工具を持った人たちがいる。
「ここは?」
「修理です」
壊れた机を直している。
扉を直している。
水路を確認している。
計算所の設備も点検している。
「壊れたら?」
「直します」
「誰が?」
「私たちです」
悠真は頷いた。
「保守担当か」
これも必要な部品だ。
昼。
村長のところへ神託が届いた。
『計算を止めるな』
村長は神託を読む。
そしてすぐに命令書を書く。
「食堂を拡張」
「冷却用水路を延長」
「修理担当を増員」
「燃料を確保」
「交代要員を増やす」
命令が次々と分かれていく。
伝令が走る。
人が動く。
悠真はその様子を眺めていた。
「……」
神託そのものは短い。
しかし、それを実現するためには大量の仕事が必要になる。
計算する。
記録する。
運ぶ。
食べる。
冷やす。
修理する。
休む。
そしてまた計算する。
夕方。
悠真は計算所の外に立っていた。
中では算術士が計算を続けている。
外では冷却用の水が流れている。
食堂では次の交代要員の食事が作られている。
修理担当が設備を確認している。
伝令が走る。
書記が記録する。
門番が門を守る。
村長が全体をまとめる。
悠真はそれを眺めていた。
「コンピュータって……」
少し考える。
「計算する機械だけじゃないんだな」
計算を続けるための環境。
それを維持する人間。
それら全部が必要になる。
「巨大になるほど、周りの方が大変そうだ」
誰に言うでもなく呟いた。
その夜。
悠真が眠る。
翌朝。
目を覚ます。
「……」
村の外に、新しい道ができていた。
その先には、昨日までなかった建物が並んでいる。
悠真は目を細める。
「村っていう規模じゃなくなってきてないか?」
遠くから伝令が走ってくる。
「村長からです!」
「何?」
「新しい計算所ができました!」
悠真は遠くを見る。
さらに遠く。
そこにも建物がある。
一つではない。
いくつもある。
悠真はしばらく黙っていた。
「……次は、村が増えるのか?」




