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第三話 村長/制御装置・CPU

 朝。


 悠真が目を覚ますと、昨日までより人が増えていた。


 門の数も増えている。


 算術士の建物も増えている。


 書記のいる建物には、紙を運ぶ人が出入りしている。


 伝令も忙しそうに走っている。


「……」


 悠真は少し離れた場所から眺めていた。


 もう、最初に見た門だけの景色ではない。


 神託が届く。


 門番が動く。


 算術士が計算する。


 書記が記録する。


 伝令が運ぶ。


 それぞれが動いている。


 ただ。


 少しずつ、問題も出てきた。


「どの門へ?」


「第二の計算所です」


「この記録は?」


「書記へ」


「どの書記ですか?」


「……」


 人が増えれば、指示も増える。


 神託を受けた者が、それぞれ勝手に周囲へ伝えていた。


 仕事が重なる。


 伝達が遅れる。


 同じことを二人がやる。


 逆に、誰もやらない仕事も出てくる。


 悠真は少し離れたところで、それを眺めていた。


「規模が大きくなると、門番だけじゃ無理だな」


 その日の昼。


 新しい建物が現れた。


 今までの建物より少し大きい。


 その前に、一人の男が立っている。


 男は周囲を見渡していた。


 人が来る。


 書類が来る。


 質問が来る。


 男は一つずつ確認していく。


「これは第一の門へ」


「これは算術士へ」


「記録は書記に」


「伝令は第二の都市へ」


 人々が動き始める。


 悠真は遠くから見ていた。


「……あの人、何してるんだ?」


 近くにいた伝令が答えた。


「村長です」


「村長?」


「はい」


「ここ、村なの?」


「はい」


 悠真は周囲を見る。


 門がいくつもある。


 計算所もある。


 書庫もある。


 人もかなり増えた。


「……まあ、今は村なのか」


 村長は忙しそうだった。


 夕方。


 村長の前に、一枚の紙が現れた。


 神託だった。


 村長が読む。


『計算所を増やせ』


「承知しました」


 村長はすぐに命令書を作った。


「算術士を増員」


 伝令が受け取る。


「第一計算所へ」


「はい!」


 別の紙を書く。


「書記を増員」


「はい!」


 さらに別の指示。


「門番を増やす」


「承知しました!」


 命令が分かれていく。


 一枚の神託。


 それが複数の命令になる。


 命令が、それぞれの担当へ届く。


 そして人々が動く。


 悠真はその様子を見ていた。


「……」


 昨日までとは違う。


 神託を受け取る人間が変わった。


 そして、神託をそのまま実行するのではなく、必要な仕事に分解している。


「なるほど」


 悠真は村長を見る。


「ここが司令塔になったのか」


 村長はそんなことを知らない。


 ただ、届いた神託を実現するために必要な指示を出している。


 翌日。


 村長の建物には、さらに多くの人が集まっていた。


 神託が届く。


 村長が読む。


 命令書を書く。


 伝令が運ぶ。


 算術士が計算する。


 書記が記録する。


 門番が動く。


 結果が戻ってくる。


 村長が確認する。


 そして次の指示を出す。


 悠真はその流れを眺めていた。


「入力が来て」


 神託を見る。


「処理して」


 算術士を見る。


「記憶して」


 書記を見る。


「運んで」


 伝令を見る。


「実行する」


 門番を見る。


 そして、その全部をまとめている。


 村長を見る。


「……CPUみたいだな」


 悠真は呟いた。


 その夜。


 悠真は村の外から景色を眺めていた。


 門の向こうで人が動いている。


 計算所から結果が戻る。


 書記が記録する。


 伝令が走る。


 村長が命令を出す。


 それぞれが勝手に動いているようで、全体では一つの処理になっている。


 悠真は思った。


「最初は門一つだったのにな」


 今では、もう一つの仕組みとして動き始めている。


 そして翌朝。


 悠真が目を覚ますと、村の外側に新しい建物がいくつも並んでいた。


「……」


 悠真はしばらく黙って眺めた。


「村、広がってない?」


 遠くで、誰かが新しい建物へ入っていく。


 どうやら、この世界はまだ止まる気がないらしい。




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