09
「こづえ」
「来てくれたんですね」
今日は朝から脳内が忙しくていけていなかった。
まだお誕生日というわけではないけどこのまま帰ることになると思っていたからこれは嬉しい。
「もしかして誕生日のことで真剣に悩んでいたりとか……する?」
「はい」
「一応聞いておくけどどっちでやるつもりなの?」
「それは私のお家ですかね」
「まあ、その方がやりやすいか」
当日付近になったら食材なんかを買い込んで試してみなければならない。
その練習をしてもなお、彼女のお家で一発勝負は精神に悪いからこのまま私のお家にしてもらえるのが一番だ。
「私、誕生日に期待とかしていないから緩くやってくれればいいわ」
情けない話だけどそれぐらいでいてもらえた方がよかった。
あまりに期待されてもただご飯を作り、買ってきたプレゼントを渡すだけだからがっかりさせてしまう。
「あ、意地悪がしたいとかじゃないけど集まるなら二人だけね」
「わ、分かりました」
言うことを聞かなかったばかりに「それじゃあやらせないわ」とか言われても困るので言うことを聞いておくしかない。
いらないかもしれないけどつばさには今度合わせることで気になるそれをなんとかしよう。
「じゃ、これ以上はやめにして帰りましょ、どんどん寒くなるわよ」
「分かりました」
帰ったらご飯を作りつつ続きを考えよう。
マフラーはしていなくても買っておいた手袋のおかげで登下校は辛くない。
「本当に今更だけどその手袋って元々持っていた物なの?」
「いえ、クリスマスの翌日に買ってきたんです」
結局、お買い物にいってから少しして彼女が来てくれたから数日間顔を見られなかった、なんてことはなかった。
だから私の中で最高の冬休みだったとそういう結論になったのだ。
「なによ言いなさいよ、別に一緒にいるときに言ってくれれば私も付いていったのに」
「これは完全に私だけにしかメリットがないですから」
「一緒に買いにいけたらこうして手を冷えさせなくて済んだのよ? 私にだってメリットはあったわよ」
でも、もう言っても仕方がないことだからここで終わらせておく。
それと彼女のお家に着いたのもあった。
流石に連日上がらせてもらうわけにもいかないので挨拶をして別れようとすると「待ちなさい」と。
「こそこそされて傷ついたわ、だから家には入れてあげない」
「はい」
「でも、解散にするのもなしね。だってそれってやり逃げじゃない」
えっと……?
帰るのも駄目、上がるのも駄目となれば外にいなければならないことになるけど……。
「罰としてそこに座りなさい、あんたにはまだまだ付き合ってもらうわよ」
「だけどこれだとさやも冷えてしまって罰を受けているみたいになってしまいますよね?」
私に罰を与えたいなら自分だけは暖かい屋内にいてそこから電話を掛けるとかいくらでもやりようがある。
「私達なんてどうせほとんど暖かい屋内にはいられないんだからこれぐらいで罰になるわけがないでしょ」
「で、では、私もさやといられるので罰にならないのですが……」
「う、うるさい、いいから早く座って」
つ、冷たい……。
いつもはスカートなんか履かずに長ズボンばかりを選択しているからその差が大きかった。
「やっぱりなんか可哀想だから丹下も呼ぶことにするわ」
「そうですかっ」
「む、なんでそこでほっとしたような顔をするわけ?」
「仲間外れにしたくないんです、こうして自然と別れてしまっているときはどうしようもないですけどね」
今日もわざわざ顔を出してくれて挨拶ができた。
午前中なんかは私の話を聞いてくれてごちゃごちゃしたそれに押し潰されずに済んだ。
全ては無理でも可能な限りでは三人でいられた方がいい。
大事な話がしたいとき以外はそれでいいのだ。
「なんだ、あんたは二人きりがいいとか考えていなかったのね」
「大事な話があるのでそのときは二人きりの方がいいです、だけどそれ以外のときは三人で楽しく盛り上がりたいです」
「大事な話?」
「はい、お誕生日のときに言いたいことがあるんです」
「や、そういうのって隠しておくもんでしょ」
彼女はこの話がいい話なのか悪い話なのかは分からないから心の準備ができるように先に伝えておきたかった。
あとはこうして先に出しておけば当日になって「やっぱりできません!」みたいに逃げることができなくなるのがいい。
つまり彼女のことを考えているようでほとんどは自分のことしか考えていないのだ。
「大事な話ねえ。じゃあ、誕生日になったらしてもらいたいことがあるからあんたも覚悟をしておくように」
「わ、分かりました」
「別にそんな不安そうな顔をしなくてもいいわよ」
「さ、さやも不安にならないでくださいね」
もう後戻りはできない。
真っすぐに告白をしてバッサリと振られてしまった方が言えなかったときよりも遥かにマシだから。
あと、多分告白をすることよりもどんな料理にするのかで不安になっているので私はそのことで脳を使うべきだった。




